歌舞伎関係の話をまとめ。<今や相撲は外国人観光客だらけ…歌舞伎も需要があるのでは?>、<歌舞伎は外国人観光客に人気になる?好きな人に理由を聞いてみた>、<新しいものを取り入れたスーパー歌舞伎、保守派からは酷評される>などを書いています。
また、<歌舞伎の特徴はネタバレOK!なぜネタバレしても大丈夫なのか?>、<ドラマの人気回だけ何度でも再放送という上演スタイル>、<主人公が出ない話ばかり上演される現在の歌舞伎の不思議さ>といった話もまとめました。
2023/05/19追記:
●新しいものを取り入れたスーパー歌舞伎、保守派からは酷評される 【NEW】
2022/04/02まとめ:
●歌舞伎の特徴はネタバレOK!なぜネタバレしても大丈夫なのか? など
●今や相撲は外国人観光客だらけ…歌舞伎も需要があるのでは?
2019/09/22:同じページの後半にまとめた過去投稿では、歌舞伎はどうしてもハードルが高いという話を書きました。そういったハードルの高さはなく、むしろわかりやすいので全然共通点はないのですけど、相撲の
規制しても幕内割合や優勝が多い外国人力士が必要な意外な理由は?という投稿を思い出して、歌舞伎も外国人に人気が出るのでは?と思いました。
この相撲の投稿のタイトルだけ見ると、歌舞伎役者にも外国人役者を入れろって話かと思うかもしれませんがそうではなく、思い出したのは、この投稿の中で出てきた外国人客による大相撲への貢献が大きくなっているという話の方。歌舞伎ももっと積極的に外国人観光客を狙うのはどうでしょうか。
で、検索してみると、
歌舞伎・能 外国人客にらむ 音声ガイドや英語公演|エンタメ!|NIKKEI STYLE(2017/6/14 日本経済新聞 夕刊)という記事が出てきました。すでにやっているみたいですね。多言語の音声ガイドを用意したり、英語の解説つき公演を増やしたりするなどして試行錯誤しているそうです。
具体的には、国立劇場チケット売り場に、「Discover KABUKI―外国人のための歌舞伎鑑賞教室」など、外国人向けに英語などで書かれたチラシを新たに導入。日本の高校生向けに開催している「歌舞伎鑑賞教室」の一部の公演を、英語を交えたり、英語の字幕をつけたりするということもやっています。
なお、すでに「日本の歌舞伎は外国人に人気」と言われることもありますが、たぶん大げさでしょう。上記のように外国人観光客を呼ぶ取り組みは始まったばかりですので、現状、「歌舞伎は外国人に人気」とはまだ言えないと思われます。可能性を探っている段階なのでしょう。
●歌舞伎は外国人観光客に人気になる?好きな人に理由を聞いてみた
もう一つ歌舞伎と外国人というキーワードの検索で出てきたのは、
歌舞伎に魅せられて――海外の視点から見た日本の魅力(前編) | Mugendai(無限大)(2014.8.12)という記事。すでに歌舞伎が好きな外国人の話みたいですね。読んでみると、記事で話を聞いていたのは、チェコ大使館で一等書記官兼チェコセンター所長を務めていたペトル・ホリーさんという方でした。
ペトル・ホリーさんは14歳から日本に魅了され、名門カレル大学日本学科で学び、早稲田大学大学院では歌舞伎、鶴屋南北を研究したそうです。研究では焦点を日本の古典芸能、なかでも歌舞伎に絞りました。能、狂言、浄瑠璃、文楽、常盤津…いずれも素晴らしいけれど、歌舞伎に一番魅了されたといいます。
ただ、歌舞伎が好きな理由はちょっと歌舞伎の良さが伝わらないもので、参考にならないかもしれません。「日本の若者は歌舞伎をあまり観ないようですが、実にもったいない」とおっしゃっていたのですけど、以下のように言われたからと言って「よし歌舞伎を見よう!」と思う人はあまりいないと思われます。
「文通していた日本人が、外国人向けに日本の古典芸能を紹介したビデオテープを送ってくれ、それに、今は二代目猿翁を名乗っておられる先代市川猿之助丈の『義経千本桜』「四の切」が収められていたのです。それを観て、あまりの美しさと迫力に震えました。こんなにすごい芸能があるのかと」
良さをうまく説明できないとなると、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるといったやり方しかないかもしれません。歌舞伎と琴線が合う外国人を見つけ出すためにまず広く浅い入り口を用意して、有望な人だけ深く好きになってもらうとい地道なうやり方。最初にあった高校生向けに歌舞伎をやっているというのもそういう狙いでしょう。楽してファンを増やす方法はなさそうでした。
●新しいものを取り入れたスーパー歌舞伎、保守派からは酷評される
2023/05/19追記:以前歌舞伎のことをほとんど知らなかったときに、三国志を題材にした「スーパー歌舞伎」というものがあると、三国志関係のところから知って感心しました。感心したというのは、こうやって時代に合わせて新しいものを取り入れて変わっていくのは大事なことだと私は考えていたためです。
逆に時代が変わっているのに変化せず「伝統だから変えるべきではない」「今の若者はわかっていない」と観客のせいにする人たちは、歌舞伎に限らず大嫌い。ただ、一方で「伝統を守るべき」と考える人も多く、こうした伝統を変えていくことを批判する人が多いのもまた事実。実際、ウィキペディアを見ると、大体私が思ったような流れがあったようです。
<スーパー歌舞伎(スーパーかぶき)は、三代目市川猿之助(引用者注:その後「市川猿翁」を襲名)が1986年に始めた、古典芸能化した歌舞伎とは異なる演出による現代風歌舞伎>
<スーパー歌舞伎の成り立ちについて、創始者である二代目猿翁(三代目猿之助)は、梅原猛とよもやま話に講じる中で出来たアイディアであったとしている。猿之助と梅原はたびたび演劇について討論し、おおむね以下のような結論にたどり着いた。
「江戸時代にできた古典歌舞伎の美意識や発想、演出法や演技術は素晴らしいが、物語は当時の世界観や道徳観による忠君愛国や義理人情的内容で、真に現代人の胸に迫るところが少ない。それに対しテーマ性のある内容を持つ明治以降の新歌舞伎は、近代劇的リアリズムを取り入れたため、歌舞伎本来の魅力であるべき歌(音楽性)と舞(舞踊性)に乏しく楽しくない。両方の長所を兼ね備えた"新・新歌舞伎"を創造すべきだ」[6]>
<3代目猿之助は、スーパー歌舞伎創作以前から宙乗りや派手な立ち回りなどエンターテイメント要素の強い「猿之助歌舞伎」を得意としたが、歌舞伎ファン以外に話題を広げた一方で、一部の保守的な論客からは酷評された[1]。
スーパー歌舞伎ではさらに古典歌舞伎の踊りや立ち回り、見得、ケレン(観客を驚かせるような演出)、隈取り、下座音楽といった演出法や演技術を意識的に取り入れる[2]一方、中国の古典や日本の古代神話など、従来の歌舞伎の枠にとらわれない題材を脚本化した。猿之助はスーパー歌舞伎の特徴のひとつとして「真に現代人の胸に迫る物語性」を挙げ[2]、壮大で骨太な物語が基調となっている。制作に当たっては現代劇や京劇など多ジャンルの出演者やスタッフを取り入れて創作され、煌びやかな衣装と最新の照明や舞台装置、雄大な劇伴音楽などで世界観を作り込む、現代劇と古典歌舞伎の融合的作品群である[3]。 >
(
スーパー歌舞伎 - Wikipediaより、一部順番入れ替え)
●歌舞伎の特徴はネタバレOK!なぜネタバレしても大丈夫なのか?
2016/9/23:「歌舞伎ソムリエ」を名乗るおくだ健太郎さん。彼がいくつかを主催している歌舞伎トーク会、観劇会において、鑑賞の前に食事会などをする場合は、その場で、セリフも動きもそれにいたる背景も、説明してしまいます。いわゆるネタバレをしまくっているトーク会なんですね。
このため、初めて来た方には、「演目を見る前に、話の内容をそんなに説明してしまっていいんですか」と驚かれるといいます。これについては、「もし私が歌舞伎ソムリエではなく、アガサ・クリスティのソムリエだったら、お客さんから総スカンです」としており、歌舞伎ならネタバレしても良いという理解です。
対談していた書評サイト「HONZ」代表の成毛眞さんは、「歌舞伎はネタバレされていても、十分楽しめます」と応じています。それだけでなく、以下のように「ネタバレしてもらわないとわからない」という面があるのでないかという話もしていました。歌舞伎が現代人にとって難解すぎるためです。
<むしろ、物語の内容を知らないと、何を言っているのかも、話の流れもわからなくて、終わってから「何だったんだ」と思うかもしれない>
(
歌舞伎とは「連ドラの人気回だけ絶賛再放送」、ネタバレ上等!|成毛眞・おくだ健太郎のビジネスマンよ歌舞伎を学べ|ダイヤモンド・オンライン 成毛眞・おくだ健太郎 2016年9月10日 より)
うちでは「歌舞伎の特徴はネタバレOK」として、「歌舞伎の魅力はネタバレOK」とはしませんでした。これはやはり歌舞伎の短所を示していると思うんですよね。ネタバレがOKどころかネタバレが必要だというのは、それだけわかりづらいため。例えば映画で「この映画だけ見てもよくわからないので予習が必要です」と言われて、「わあ、すごく見たい!」とはならないでしょう。視聴者のハードルを上げるものです。
ただ、歌舞伎でネタバレがあった方が良い、予習をした方が良い理由は他にもあります。これも結局魅力を高めるものでも仕方ないものでもなく、上演側による勝手な都合なのですけど、本来は長い話の一部だけ上演というのが普通のため、そこに至るまでのストーリーを抑えていた方が良いためです。
●ドラマの人気回だけ何度でも再放送という上演スタイル
私も歌舞伎を見に行ったときにこれがすごく不思議で堪らなくて、歌舞伎好きの人に質問したことがあるのですけど、歌舞伎では人気のある部分だけ上演してそれ以外やらないってのを平気でするんですよ。むしろちゃんと全部見せるということは、現代ではほぼ全く行われていません。
部分抜き出しなので、前後の繋がりなんかクソ食らえ。そのため、不人気回は数十年上演なしなんてことにもなります。これについて、「連ドラの人気回だけ絶賛再放送」と記事では表現されていて、非常にうまいたとえだと感じました。こうやって言うと、切り出して上演することが魅力のようにも感じてきます。
おくだ <かつては、日の出から日の入りまで続けて、つまり通しで上演していましたが、今は、見る方も演じる方もそれでは大変なので、さまざま演目のうち、人気のある段が切り出され、上演されることがほとんどです。全10回の連続ドラマがあったとして、人気のある第7話だけが繰り返し上演されているような状態だと思っていただけるといいと思います>
成毛 <そうか、ドラマのタイトルが『菅原伝習手習鑑』、ある放送回のタイトルが『寺子屋』というわけですね。でも、連ドラの第7話を楽しむには、第1話から第6話のあらすじ、それから最終回くらいは知っておいた方が楽しめますよね。だから、あらかじめ筋を押さえておいたり、イヤホンガイドを聞いたりしながら見物するのがいいのです>
●主人公が出ない話ばかり上演される現在の歌舞伎の不思議さ
こういったしくみのために、本来の主人公が全く出ない話ばかり上演というさらに不思議なことにもなっています。対談ではこれをスピンオフ作品にたとえていました。本来の主人公が全く出ない作品の例としては出ていたのが、『菅原伝習手習鑑』でした。
『菅原伝習手習鑑』に出てくる武部源蔵という人物は、元々は菅原道真の門下にいた人で、『菅原伝習手習鑑』はその菅原道真が時の左大臣藤原時平によって太宰府行きを命じられたあとを描いた作品です。当然、この作品の主人公は菅原道真となります。
ところが、『菅原伝習手習鑑』で人気があって何度も“再放送”されている『車引』、『賀の祝』 そして『寺子屋』には、菅原道真を演じる役者さんは出てこないというのです。おくださんはこれを「今で言うスピンオフのようなもの」と表現していました。前述の通り、うまい表現だと思います。
このように、先の難解さと合わせて、現代の歌舞伎は全体に親切な設計とは言えず、初心者である一見さんお断り的な敷居の高さがあります。これは当然、他のエンターテイメントとの競争では不利に働いてしまう要素ですので、歌舞伎の魅力を伝えるには様々な工夫が必要になるでしょうね。
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