うちで集めている重大ニュースの方でだけメモしていて、単独記事ではやる気がなかったんですが、こちらでも。
やる気がなかったというのは、この手の失言話が私は好きじゃないし、興味もないためです。重大ニュースのメモでもこう書いていました。
言わなくていいことを言う麻生太郎さんらしい発言。
麻生太郎さんがドイツ国会議事堂放火事件をわかっていないという指摘はもっともだとは思います。
ただ、やはり過剰な失言攻撃だと思います。この手の失言問題は私はほとんど支持しません。
ドイツやユダヤ人からの反発はごもっともでしょうけど、大騒ぎしすぎです。
ところが、珍しく早々と撤回した麻生太郎さんのコメントも変なんですよね。
朝日新聞デジタル:麻生氏が発表したコメント全文 - 政治
2013年8月1日11時46分
麻生太郎副総理が1日に発表したコメント全文は次の通り。
◇
7月29日の国家基本問題研究所月例研究会における私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。
私は、憲法改正については、落ち着いて議論することが極めて重要であると考えている。この点を強調する趣旨で、同研究会においては、
喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪(あ)しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげたところである。
私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい。
http://www.asahi.com/politics/update/0801/TKY201308010051.html 麻生太郎さんが"落ち着いて議論することが極めて重要であると考えている"というのは、元発言を読むとよくわかるんですけど、後はあれ?と思う内容。
下手に省略すると印象操作を疑われるので、長いですが、以下そのまま元の発言を。
朝日新聞デジタル:麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細 - 政治
2013年8月1日2時18分
麻生太郎副総理が29日、東京都内でのシンポジウムでナチス政権を引き合いにした発言は次の通り。
僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。
そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。
私どもは、周りに置かれている状況は、極めて厳しい状況になっていると認識していますから、それなりに予算で対応しておりますし、事実、若い人の意識は、今回の世論調査でも、20代、30代の方が、極めて前向き。一番足りないのは50代、60代。ここに一番多いけど。ここが一番問題なんです。私らから言ったら。なんとなくいい思いをした世代。バブルの時代でいい思いをした世代が、ところが、今の20代、30代は、バブルでいい思いなんて一つもしていないですから。記憶あるときから就職難。記憶のあるときから不況ですよ。
この人たちの方が、よほどしゃべっていて現実的。50代、60代、一番頼りないと思う。しゃべっていて。おれたちの世代になると、戦前、戦後の不況を知っているから、結構しゃべる。しかし、そうじゃない。
しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。
そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。
ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。
靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かに、きちっとお参りすればいい。
何も、戦争に負けた日だけ行くことはない。いろんな日がある。大祭の日だってある。8月15日だけに限っていくから、また話が込み入る。日露戦争に勝った日でも行けって。といったおかげで、えらい物議をかもしたこともありますが。
僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。
昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。
だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。
わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。
http://www.asahi.com/politics/update/0801/TKY201307310772.html 太字にした部分以外にも「しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに」「30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた」など、憲法改正は静か行うべきと麻生太郎さんが主張しているのは間違いありません。これは一貫しています。
しかし、先ほどの撤回コメントの
"喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪(あ)しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげた"
"私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らか"
はちょっと難しいです。
前半は確かにナチスに否定的なものの、下記の問題の発言のあたりとは無関係です。
だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。
わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。
一番問題となっている「あの手口学んだらどうかね」は皮肉として言ったという意味なのかもしれませんけど、「みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね」と肯定的な発言をしています。
また、「わーわー騒がないで。」と切れているのでわかりづらいですが、これは他に前後にかかる部分がないため、ナチス憲法を指していると考えられます。
すると、麻生さんがご自分の静かな憲法改正という思想と合っているナチス憲法制定の過程を肯定的に捉えたと、聴衆が考えるのはおかしくないですし、むしろそう考えざるを得ません。
悪い例として挙げたとみなすには、無理があります。
また、上記の部分がナチス憲法が"喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった"と判断するのも難しいものがあります。
何しろ"みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね"と言っているのですから。
ただ、ここの部分は麻生太郎さんの元々の発言に矛盾があります。
"ある日気づいたら"や"だれも気づかないで変わった"というのは、ナチスの憲法改正が国民に知らされないまま行われたと麻生太郎さんが考えているように見えます。
ところが、その直後で"みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね"と言ってしまっているため、ドイツ国民に周知されて納得した上で憲法が改正されたということになり、矛盾しています。おかしいです。
繰り返すように私はこの失言攻撃を支持しないのですが、麻生太郎副総理の元の発言も撤回コメントも意味不明なことは確かです。
(8/2追記:朝日新聞デジタル:ナチス発言「国内外への恥」 麻生氏批判、改憲派からも
http://www.asahi.com/politics/update/0801/TKY201308010146.html" 昭和史に関する多くの著書がある作家の半藤一利さんは「ワイマール憲法は『ある日気付いたら変わっていた』というものではない。小党乱立の政争に国民があきあきしていたところにナチスが登場。『一度やらせてみよう』と権力を持たせたところ、暴走して手が付けられなくなってしまったのが真相だ」と話す。
「ドイツ国民はそうした政治の怖さを経験し、反省している。ナチスを手本に改憲を目指そうなどとは、とんでもない」
広渡清吾・専修大教授(ドイツ法・比較法社会論)によると、ナチスはワイマール憲法を廃止せず、ヒトラー内閣がどんな法律も制定できる全権委任法を作って憲法を骨抜きにしたのだという。「誤解に基づく発言で、日本の政治家のクオリティーの低さを表した。改憲を論じるのに、不確かな知識で軽々に論じている。発言の撤回以前に、不見識を恥ずべきだ。ドイツでこんな発言をしたら、即座に議員辞職です」
安倍晋三首相の任命責任を問う声もあがる。改憲派として知られる小林節・慶大教授(憲法学)は「ナチスは政治に暴力を用い、立憲主義を否定した。それに学べと言うのは論外だ。麻生氏は現職の副総理で、首相経験者。内外に恥ずかしい発言で、安倍首相の責任で辞職させるべきだ」という "
8/4追記:私の認識も甘かったですね。
欧米感覚を日本に当てはめる必要があるのか?と最初はちょっと思ったんですけど、元総理であるだけでなく現役の副総理でもあります。広島・長崎の原爆の話をジョークのように軽々しく言わんだろうという指摘も誠にその通り。国際的には確かに完全にダメでしたね。
麻生太郎さんって英語はペラペラだけど、話せるというだけで国際感覚はさっぱりないんだなぁと思いました)
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