2013/8/4:
実はウォルマートよりずっと悪いアマゾンの営業利益率
営業利益もフリーキャッシュフローも減少傾向
アマゾンが成長する理由 電子書籍やビデオが強い
アマゾンは今後クラウドで稼ぐ?売上高が70%も増加
アマゾンはまだ変身を残している…良くなるのはこれから?
アマゾンを殺すのはアップルかグーグルか?
●実はウォルマートよりずっと悪いアマゾンの営業利益率
2013/8/4:当初のタイトルは、「アマゾンが今後成長する理由・しない理由」というどっちなんだよ?というものにしていました。これは、単純に良い情報と悪い情報の両方あるという話です。
アマゾンは、ウォルマートになれるか(FINANCIAL TIMES 2012年8月7日(火))では、ウォルマートが30年にわたり6~8%の営業利益率を叩き出してきたのに対し、アマゾンは2004年の同6%をピークにその後5年間、ポイントを下げ続け、2011年12月期は2%近くにまで落ち込んでいることを指摘しています。
アマゾンは何かと言うと、ウォルマートと比較されます。アメリカではそういう立ち位置なんでしょうね(記事のFINANCIAL TIMESの本社はイギリスですけど)。とりあえず、この利益率低下というのは、当然悪い話です。
そして、利益率低下の一因として考えられているのが、顧客への配送料の一部をアマゾンが負担していること。配送料の負担コストは今や売上高の5%を占めるまで拡大。利益をとことん削っても顧客を集めようというところに注力していると考えられていました。
●営業利益もフリーキャッシュフローも減少傾向
一方で、アマゾンを評価する人々は、同社を評価する基準として営業利益率は適切でないと反論しているとのこと。以下のようなキャッシュフローの問題です。
・アマゾンは、顧客からの支払いを受けるより、はるかに長いスパンで仕入れ先に対して支払いを行う。2011年には買い入れ債務の回転日数が90日、そして売掛債権の回転日数は16日だった。
・在庫管理に長けていることもキャッシュに余裕を生んでおり、同社では過去5年間、こうした資金がフリーキャッシュフローの3分の1近くを占めてきた。つまり、営業利益率は同社のキャッシュを生み出す力を正しく評価していない。
ただ、この反論でも留意すべき点が2つあるとのこと。
(1)アマゾンではこの数年、営業利益もフリーキャッシュフローも減少傾向にある。
(2)成長が鈍化すれば、こうした運転資金による恩恵は減少する。
アマゾンのジェフ・ベゾスさんは長期的視野で経営しますので、利益率の低さは想定内という可能性があります。しかし、営業利益もフリーキャッシュフローも減少傾向というのは、いただけないですね。不安材料です。
●アマゾンが成長する理由 電子書籍やビデオが強い
でも、この後もう一度反論があります。これが、当初のタイトルがどっちつかずになった理由です。
(1)電子書籍やオンラインビデオなど電子メディア事業の利益率が上昇している。これらは配送コストがかからないし、需要は間違いなく拡大を続ける。
(2)ほかの小売りや起業家などサードパーティーに対して、同社はネット販売のプラットフォームや配送センターを利用してもらうというサービスの提供に注力しているため、利益率の改善が見込める。同サービスを利用する企業から、利益率の高い手数料を受け取れるため。
物流の強さはアマゾンの特徴です。かつてアマゾンの本質は、ネット企業というより物流企業と言われていたことがありました。しかし、電子書籍なんかは間違いなくIT企業的なものですし、アマゾンはクラウドサービスの先進企業でもあります。
●アマゾンは今後クラウドで稼ぐ?売上高が70%も増加
上にはないですけど、このクラウドサービスなんかは新たな資金源となりそうですし、利益率も良いんじゃないでしょうか?…と書いていたら、次にそのクラウドサービスの話が出てきていました。1回読んだ記事なんですけど、昔過ぎてすっかり忘れていましたわ。
(3)米シティグループの試算によると、他社にコンピューティング機能やクラウドストレージを提供するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)事業における売上高は今年、22億ドル(約1700億円)に達する見込み。この分野を専門にする競合の米ラックスペースは、営業利益率が12%だという。
実際に、大半がサードパーティーからの手数料とAWSによる、2012年第1四半期のアマゾンのサービス事業の売上高は、前年同期比で70%近く増加し、全売上高の15%を占めている。
●アマゾンはまだ変身を残している…良くなるのはこれから?
成長する理由はもう一つ。全部で4個でした。
(4)アマゾンの利益率が悪いのは同社がまだ投資段階にあるから。
今年、売上高の伸びより増加率が大きかった支出分野は、技術とコンテンツ(音楽とビデオの権利取得及び研究開発費)、マーケティング(キンドルの販促費)、設備投資(2011年12月期中に、オフィスと配送センター、データセンター合わせて約170万平方メートルの拡張を行った)の4つ。設備投資が減れば、利益などへの影響は大きくなる。
ここらへんはジェフ・ベゾスさんの長期的視野と関連する点ですね。ただ、最先端であり続けるためには設備投資も続ける必要があるかもしれません。
●アマゾンを殺すのはアップルかグーグルか?
こういった感じでやっぱりアマゾンは成長だ!という結論になるかと思いきや、もう1回不安点の指摘があります。目まぐるしい記事ですね。
記事では、これらの強気のシナリオを実現するには、同社の大きな強みである低価格が危うくなっているという、大きな問題を解決しておく必要があるとしていました。
これは支払っていなかった税金、売上税のこと。要するにアマゾンは税金逃れをしているから安いという話。この税金の話は別でやる予定です。(確か、
Amazonの税金問題 日本の消費税逃れとフランスの反アマゾン法が該当の投稿だったと思います)
さらにネガティブな話がもう一つ。
アマゾンのコア事業である利幅の薄い小売りは、競合が比較的分散した従来型の小売りであり、こうした小売りは一般的に一貫したオンライン戦略をなかなか打ち出せずにいる。だが、利幅が厚いウェブサービスの提供や電子メディア事業の競合は、資金力が豊富で、メディアやクラウドサービスの将来を見込んで積極的に事業を展開してきた米アップル、米グーグル、米マイクロソフトといった企業だ。よってアマゾンが成功を収めたとしても、その先には厳しい戦いが待っている。
アップルの没落がニュースになることが多いですけど、ポストスティーブ・ジョブズで筆頭に挙がるのはアップルの社員ではなく、アマゾンのジェフ・ベゾスさんです。その見方が正しければ、アマゾンはアップルやマイクロソフトには負けない…となりそうです。
ただ、競争相手として一番怖いのはまだ創業者が健在で、企業文化的にも自由さの残っているグーグルじゃないかとも思います。
【本文中でリンクした投稿】
■
Amazonの税金問題 日本の消費税逃れとフランスの反アマゾン法【関連投稿】
■
■アマゾンのジェフ・ベゾスCEO、トヨタのカイゼンに学ぶ ■
アマゾンの家電で不当廉売?仕入れ値を下回る価格の長期販売で日本の家電量販店潰し ■
アマゾンの全品送料無料終了、本当の理由 そもそも無理?佐川急便・日本郵便に負担 ■
アマゾンロッカーってそんなにすごい?日本のコンビニ受け取りは? ■
ネット・コンピュータ・ハイテクについての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|