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古い産業の衰退や斜陽企業の倒産はむしろ日本の経済成長に繋がる?


 企業を潰した方がむしろ経済が成長するというのは、妙な話だと思うでしょうけど……。
競争力のない「ゾンビ企業」は市場から退出せよ!生産性向上に不可欠な資源の移動|伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論|ダイヤモンド・オンライン
2013年7月16日 伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授、総合研究開発機構(NIRA)理事長]

 経済成長というと、既存の企業や産業が生産力を高めるというイメージを持つ人が多いかもしれない。しかし、現実の成長経済を見れば、生産性の低下している産業から高い生産性を期待できる産業に、資本や労働が移動することのほうが重要である場合が多い。また、同じ産業内でも、競争力の落ちた企業が淘汰され、競争力の高い企業や生産者に資源が移動していくことが大きな意味を持つ。
http://diamond.jp/articles/-/38716

 戦後日本の主流産業の変遷は、上記の理屈で説明できるとのこと。
 戦後日本の産業発展の軌跡にも、そうした点が顕著である。戦後からしばらくは、日本の産業の中心は繊維などの軽工業であった。これらは重要な輸出産業として、経済復興を支えてきた。

 よく言われるように昔は繊維が花形でした。しかし、今は全くそんな話聞きませんね。落ちぶれたのです。
 しかし、日本が本格的に高度経済成長に入っていくころには、重化学工業化が進み、鉄鋼や石油化学などの産業が成長の原動力となった。

 今度は重化学工業が主役となります。いわゆる「重厚長大」な産業です。

 ところが、これもずっと主役いうわけにはいきませんでした。
 日本の産業構造が次に大きく変わるきっかけとなったのは、1970年代に2度起きた「石油ショック」である。石油をはじめとする資源価格が高騰することで、重化学工業は構造不況業種になってしまった。

 "この時期に日本の産業構造が重厚長大から軽薄短小にシフト"、次に来ている主役は今日でも主役だと思われている産業です。
自動車産業が日本の主力産業としての位置を確立するのは、1980年代になってからのことである。

 しかし、歴史は繰り返すことからも、いつまでも自動車が日本の中心であり続けることはありません。いつかはまた主役交代の日がやってきます。

 それがいつか?というと、伊藤元重さんは「今だ」と思っているようです。
 現在の日本経済が、上で取り上げたような大きな産業構造の変化と同じくらい重要な転換期に直面していることは間違いない。日本経済を取り巻く環境は大きく変化している。

 高齢化と人口減少、アジア近隣諸国の急成長による旧来の製造業における競争激化、アジア市場の中間所得層急拡大によるビジネスチャンスの増大、ITなどの分野における急速な技術革新、などである。

 こうしたさまざまな環境変化を前提として考えれば、日本の産業構造が大きく変わらないはずはない。生産性の低い産業から高い産業へと産業構造の中心が移っていき、日本はより高い生産性と成長率を確保できるようになるはずだ。

 この主役交代劇は乱暴に言うと、将来性のない落ち目の主流産業にそのまま衰退してもらうことです。

 私は普段から古い産業を保護するのはかえって経済成長を抑制するものであり、それより新しい産業に思う存分伸びてもらった方がいいと書いているので違和感ないのですが、なかなか意外な見方だと思います。

  ■弱い企業は助けるな、潰せ!国家社会主義的な成長戦略は時代錯誤

 同様に斜陽の企業もそのまま消えていってもらいましょう……というのが、次に来る話です。
 生産性の低い分野から高い分野への資本や労働の移動というと、どうしても産業間の調整ばかりを想定しがちだ。たしかに、上で述べたように産業構造の変化によって産業間の資源移動が進むことは、日本の経済成長率を高めるうえで重要である。

 ただ、産業間の調整と同程度に、産業内の調整も大切だ。つまり、同じ産業のなかで、生産性の低い分野から高い分野に資源を移動させ、全体の生産性を高めるのである。

 伊藤元重さんはここから持論の農業の話へ持って行っていました。
 産業内調整が重要となる分野の典型が農業である。日本の農業生産額の実態を見ると、プロ農家と呼ばれるような生産性の高い農業者が全生産額のかなりの部分を供給していることがわかる。一方、農業者の圧倒的多数を占める兼業農家の多くは、その所得の大半を農業以外の活動に依存している。

 多くの農家は高齢化が進んでおり、後継者がいないところも多い。日本にある農地をきっちり維持するものと想定すれば、そうした農地を今後はより少ない農業者が利用することになる。つまり、農業者一人当たりの耕作面積が拡大するということだ。

 このような調整が進むことは、全体として農業分野の生産性を高めることにつながる。もちろん、それにはある程度の時間がかかるだろう。また、調整の過程で広大な耕作放棄地が出てきており、農地の移転がうまくいっていない面があることを示している。こうした点の是正が、農地政策の大きな課題であることは言うまでもない。

 ただ、同じ農業のなかで、より高い生産性を実現している農業者に農地が集約していくことは、日本の農業全体の生産性を高めるうえで重要なカギを握っている。

 しかし、次のようにも書いており、言いたいのは農業だけではなかったようです。
 産業内での調整が重要なのは農業に限らない。商業活動、さまざまなサービス産業など、多くの中小規模の供給者が活動している分野では、生産性の高い生産者に資源が移動していくメカニズムが重要である。規制緩和は、こうした資源移動を進めていくうえで欠かせない。

 最近倒産危機とよく報道されている「エレクトロニクス産業」なんて具体的な業界の名前も出ていました。(シャープ、パナソニック、ソニーなどなどですね)
 海外の日本専門家と話をすると、「日本にはゾンビ企業が多くいる」という説に触れる人が多い。(中略)

 ゾンビ企業とは、本来なら倒産するか吸収されて消えるべきなのに、さまざまな理由で存続している企業を指す一般呼称である。生産性の低い生産者から高い生産者に資本や労働が移動するというのは、生産性の低い企業が退出していくことを意味する。しかし、日本ではこうした企業の新陳代謝を遅らせる要因がいろいろあるという。

 たとえば、本来であれば倒産や廃業しても仕方がない企業でも、金融機関はその存続を助けようとする。資本の効率性を高めるという市場原理では説明できない行為だが、日本ではこうしたことがいろいろなところで起きている。

 中小企業の経営者にも、うまくいかないビジネスを早く畳んで次のビジネスに挑戦したい人もいるだろうが、金融機関から借りた融資を個人保証しており、なかなかそうしたことが叶わないケースが多い。

 政府も中小企業の破綻を避けるため、さまざまな制度を用意している。条件が厳しくなった企業に金融機関が融資を続けるように、政府がその融資を保証するといった制度が導入されることもある。企業の破綻を防ぐと言えば聞こえはよいが、結果的にゾンビ企業が多く残り、資源の移動が妨げられることになる。

 大企業でも、利益のあがらないビジネスは早めに売却するなどして、より高い利益を見込める分野に資源を集中させることが望ましい。しかし、従業員の雇用を保証する現行の雇用制度のもとでは、そうした構造調整を断行するのは難しいようだ。

 こうした状況をまとめると、「日本には多くのゾンビ企業がいて、日本の成長を妨げている」ということになる。

 ただ、こういう話は政治家は好まないでしょうね。現在多くの従業員のいる産業・企業を救う方が、政治的には確実にプラスになります。

 国民の見る目が試されるのですけど、その国民もたぶん受け入れ難い説でしょう。

 このようにしてゾンビ企業は生き残っていくのかもしれません。


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