2013/8/29、2014/2/17:
社長の息子だからこき使え!と鍛えられた佐藤順一社長
お酒のカクヤスが無料配達を始めた理由
配達の範囲設定はかなり適当だった
無料配送は間違いから始まった…佐藤順一社長「頭が良かったらやってなかった」
有料だった配送料が無料になったのはクレームをつけられたため
「潰す会」ができるほど嫌われたカクヤス
2018/11/08:
言うほど安くない?ネットの評判
●社長の息子だからこき使え!と鍛えられた佐藤順一社長
2013/8/29、2014/2/17:お酒屋さんのカクヤスの話…ですが、「引用多すぎ」と批判されていたので全面的に書き直し。すごくへこみましたが、よくいただく中傷ではなく正当な批判です。ご指摘はごもっともですので訂正します。申し訳ありませんでした。
引用していた記事は、
同業他社が“潰し”に来たらどうするか? カクヤス 佐藤順一社長(安田 育生 2013年6月21日(金))というもの。
佐藤順一社長は世襲で社長になったようですが、特別扱いされて苦労しなかったというタイプではないようです。むしろ「社長の息子が入ってきたぞ。こりゃいいや、何でもあいつにやらせちゃえ」ということで、他の社員からこき使われたとのこと。
そのまだ社長じゃなかったときだと思いますが、バブル崩壊後に佐藤順一社長は「ディスカウンター」と呼ばれるぽ店の売り方をしたいと思い、父に頼んで1店舗でそういう試みをします。「ディスカウンター」と言うとわかりづらいですが、一般的には「ディスカウントショップ」と言われるもの。要するに安さを売りとするお店です。
●お酒のカクヤスが無料配達を始めた理由
ただ、"当時のディスカウンターのビジネスモデルというのは、倉庫型の巨大なお店に広い駐車場を備えて、車のお客様を集客し、大量陳列、大量販売、そしてセルフゆえにローコスト"というもの。なので、カクヤスのような"小さなコンビニの跡地"でやるお店では真似できません。
そして、当然、ディスカウントショップのような価格も出せない…ということになります。佐藤社長はこのままだと"環七(東京の都心部外縁を走る環状道路、環状七号線、カンナナ)の向こう側にあるディスカウントショップに行く"と考えました。
そこで対抗策として編み出したのが今のカクヤスの"無料お届けサービスの原点"である「お届けサービス」です。これは「ディスカウンターが絶対にやらないサービス」だと考えたためです。なぜかと言うと、「一番コストがかかりますから」という理由です。ただし、当時は配送料があり、300円でした。価格は結構適当に決めたそうです。
●配達の範囲設定はかなり適当だった
しかし、これよりおもしろかったのが、「商圏」の話。実はこの設定というのもかなりいい加減だったそうです。「当時のディスカウンターはクルマのお客様を前提に、店を中心にだいたい半径5㎞の範囲にチラシを撒いてたんですが、ウチはろくな駐車場がないでしょう。とすると自転車の商圏だな」で1㎞に。
さらに、実際に地図上に店を中心に半径1㎞の円を描いてみたら、ちょうど大きな団地の3分の2くらいをカバーすること判明。この団地を全部カバーするとなるともう少し必要で1.2㎞。だから1.2㎞と決めてしまったといいます。
ところがこの適当な商圏設定が偶然うまく…という、おもしろい話だとてっきり思ったら、そうじゃなかったのです。"フタを開けてみたら、売りとなるはずだった配送ではなく、店の方が圧倒的に売れたんです。9割が店舗で1割が配送くらいの割合"でした。
●無料配送は間違いから始まった…佐藤順一社長「頭が良かったらやってなかった」
"ある意味嬉しい誤算"ではあります。しかし、ディスカウントショップに対抗できないと考えて、わざわざ無理してやった配送サービスが全くの無駄になりました。これは"競争相手の設定を間違ってた"せいです。
「自分で半径1.2㎞に商圏を設定しておきながら、その商圏内にはディスカウントショップは1軒もない。つまり商圏のはるか外側にあるディスカウンターを競争相手として見ていたわけです」(佐藤社長)
では、誰が本当のライバルだったのか?と言うと、近所の酒屋さんでした。「お客様は実際には近所の酒屋さんと比べての価格優位性でウチを選んだ」ために、9割が店舗で売れたというわけ。「私がもう少し頭が良かったら配送はやってなかったと思います」とおっしゃっていました。
●有料だった配送料が無料になったのはクレームをつけられたため
「店の方が売れ出したのだから配送は止めよう、とは思わなかったんですか」との質問には、「いったん始めたら止められなかったといったところですかねえ」と答えています。しかも、配送の300円の価格にも文句をつけられたといいます。
"町の酒屋さんはタダで届けてくれる"という感覚があり、"自力で持ち帰らなくちゃいけない"ディスカウントショップの感覚ではないために、「酒屋が配送料取るってどういうことよ」と不満をぶつけられます。完全にニーズを読み違えました。
ただ、「バイトの時給÷3」で設定していた配送料300円をきちんと計算してみると、そんなにいらないことがわかりました。"まとめ買いをして下さるので、配送の方がものすごく効率が上がっていた"という理由。
そこで、今ならネットショップでよくあるような「1万円以上まとめて買っていただいたら無料」という設定に、試しに変えてみました。すると、これにも文句が来てもう少し緩い設定に。この文句と緩和の繰り返しで少しずつ甘くするにつれて、配送無料となってしまいました。
当時の配送無料は「あくまでそっとです。配送料を下さいと言わなくしただけ」というもの。ただ、これが配送無料が売りのカクヤスとして後の成功に繋がるのですから、最初に競争相手を間違えたことは怪我の功名ですね。
Wikipediaでも、「東京都全域と神奈川県・大阪府の一部の地域で無料配送しているのが特徴」としていました。
●「潰す会」ができるほど嫌われたカクヤス
もう一つ印象に残ったのが、嫌な業界の縄張り体質。何でも小売に縄張りはないそうですが、業務用はあるそうです。カクヤスは銀座に業務用を出店するようになって、最悪の事態になります。こんな感じです。
・父が業界の会合に呼びつけられて、つるし上げ。
・「明日から我々は120社でカクヤスを攻めるぞ」と、つまりウチの顧客を奪い取ってやると言われた。
・カクヤスを潰す会なんてものが発足。120社から1社あたり3万円ずつ会費を集めて探偵を雇い、ウチの納入先に対する納入条件を調べさせるとまで言われた。
ただ、聞き手である安田育生ピナクル社長兼CEOは「くだらないですね」と述べています。「ホントにそんな経済合理性に反すること、実行したんですかね」というビジネス的な感覚での疑問です。
佐藤社長は「したみたいですよ。ウチの納入価格を調べて、それよりも安い価格で見積もりを入れて来られたことはずいぶんありましたし、それで顧客を奪われたこともありました」と答えています。しかし、安田育生社長の直感は正しかったです。結局、カクヤス潰しは長続きしませんでした。佐藤社長は言います。
「そんなことで顧客を奪っても。ウチが憎くて奪っただけなんで、そのお客様に対する愛着なんて何もない。そういう気持ちって必ずお客様に伝わるんです。だから一時的に奪われることはあっても、結局取り返せるんです。お客様の方を向いて商売をやるということがいかに大切か、この一件で本当に思い知らされました」
本当にそんなのあったの?話作っていません?というすごい話ですが、本当なら恐ろしい業界だなぁと思わせる話です。
●言うほど安くない?ネットの評判
2018/11/08:全体に読み直して微修正していたのですけど、そこで思ったのは、カクヤスはそれほど安くする必要はないのではないか?ということでした。最初の投稿では、無料配送はライバルをディスカウントショップだと間違えてしまったがために始まったという話があります。本当のライバルは町の酒屋だったということでした。
同様に価格についても、ライバルが町の酒屋であるのなら、ディスカウントショップに負けない価格にする必要がありません。町の酒屋に負けない価格にすれば、十二分に稼ぐことができそうでした。
検索してみると、信頼性が低い
ヤフー知恵袋ですけど、「もっと安い所はいくらでもあります。ただ、配達してくれる事を考えると利便性はありますよね?」という評判がやはり載っていました。
ただし、これは2011年のもの。当時よりネット通販の利用者が増えており、カクヤスのライバルもネット通販に変わった可能性を感じます。となると、町の酒屋に負けない価格だけでは不十分になっているかもしれません。
で、もう少し最近の評判を…と見てみると、カクヤスがそもそもネット通販をやっていて、
【楽天市場】なんでも酒やカクヤス 楽天市場店 | みんなのレビュー・口コミなどが出てきました。そういえば、私もネット広告を見たことがありましたわ。
ネットの場合、ほとんどの配達で送料無料ではなく、送料は普通にかかるようです。こちらでは2,636 件レビューがあり4.61という良い評価。「このショップさんは何時も、注文後、スピーディーに配送手配をして頂ける」などのレビューがあります。ネットでやって行けているという時点で、十分安いのかもしれませんね。
2018/11/19:投稿直前に気づきましたが、そもそもお酒の場合は、価格の割に配送料がかかるなどの理由で、ネットが安くないという可能性もありそうです。そう考えると、ジャンルによっては、リアル店舗でも頑張れるものってありそうですね。
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