Appendix

広告

Entries

GNI(国民総所得)やGDPは景気実感と乖離 市場GDPだと日本は回復していない


 GNI(国民総所得)という指標が今注目を浴びています。
国民総所得(こくみんそうしょとく、Gross National Income)とは、略してGNIと呼び、1990年代半ば以前に経済活動の指標として使われていた国民総生産 (GNP, Gross National Product)と、税制の計算上の適用有無の違いがあるもの近い指標である。日本の国民経済計算(国民所得統計)では、2000年に大幅な体系の変更が行われた際に統計の項目として新たに設けられた。現在経済指標として多く使われている国内総生産 (GDP, Gross Domestic Product) に「海外からの所得の純受取」を加えたものである。

国民総生産と国民総所得は、名目では一致するが、実質では若干の差がある。これは、実質国民総所得では、実質国民総生産では考慮されていない、輸出入価格の変化によって生じる実質的な所得の増加分を「交易利得」として加えているためである。
Wikipedia

 昔はGNPだったのが、GDPに変わりました。ここでGNPに似たGNIに主役交代となると、先祖返りみたいな感じですね。
GNIが注目される背景

日本は2005年に総人口が減少をはじめているなど高齢化や人口減少が今後も進むことが見込まれる。このため、今後は労働力人口の減少から国内総生産をベースとした高い経済成長は難しい。こうした中でも対外資産から得られる利子や配当などの所得が増えることによって、国民総所得をベースとした経済成長が持続する。国民総生産 (GNP) に代わって国内総生産 (GDP) が経済政策の目標となってきたが、2006年に経済産業省の産業構造審議会新成長政策部会がとりまとめた新経済成長戦略などで、国民総所得 (GNI) を重視すべきであるという提言が行われるようになっている。

 これに関連した記事を一つ読んだところ、こちらではGNPとGNIの差異を以下のように説明していました。
政策理念と乖離するGNI目標:日経ビジネスオンライン
永濱 利廣 2013年7月25日(木)

 GNIとは、かつて各国の富の測定に使われたGNP(国民総生産)と概念的に等しい。今では国内で生み出された付加価値の総額であるGDPが世界で一般的だが、これに企業や個人が海外から受け取った利子や配当などを加えたのがGNIである。つまり、GDPに利子や配当などの受け取り分から支払い分を引いた所得収支を加えたものがGNIとなる。そして、国民の豊かさを測る1人当たり所得は、国内所得ではなく国民所得のほうが適切としている。

 この背景には、グローバル化の時代にあって、海外から得られる所得が重要になっていることがある。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130722/251387/?n_cid=nbpnbo_mlp&rt=nocnt

 さて、"6月14日に閣議決定された骨太方針"では、名目・実質GNIについて"1人当たりGNIを10年後に150万円以上増加させるとした"そうです。

 ただ、このGNIの目標達成が本当に国民にとって幸せであるか?と言えると、難しいところがあるようです。
 安倍政権の思惑通りに年率2%程度の消費者物価上昇率を実現できれば、低めに出るGDPデフレーターの上昇率も1%に届く可能性が高い(図表2)。こうなれば、GDP成長率は仮に2%でも名目は目標の3%に届き、同時に企業の海外進出や人口減少が続くことになれば、1人当たりGNIの増加計画は達成可能となる。しかし、海外からの利子や配当等の大半を受け取るのは企業であり、企業が人件費を増やさないと、個人が実際に受け取る所得の増加は見込めない。

 今回、1人当たり所得が150万円増えるという言い方をしているが、近年はGNIに占める雇用者報酬の比率は5割程度であり、企業が内外で稼いだ所得も含む。このため、GNIの構成比が変わらなければ、150万円増えたとしてもそのうち約半分が雇用者報酬に回ることになる。

 しかし、統計がさかのぼれる1994年第1四半期と直近の2013年第1四半期のGNIと雇用者報酬の変化額を比較すると、実質ではGNIが57兆円増加しているのに対し、雇用者報酬の増加は17兆円にとどまる(図表3、4)。そして、名目に至ってはGNIが8兆円減少しているのに対し、雇用者報酬は18兆円も減少している。これは、企業が内外で稼いだ所得の増加がGNIの拡大要因となっても、雇用者報酬が増えなかったために、経済成長と国民の景気実感との乖離につながってきたことを意味している。

 GNIが増えたときに雇用者報酬が同じ割合で増えるわけではなく、雇用者報酬はずっとずっと低い程度しか伸びないと考えなくてはいけませんね。

 この後難しい話だなぁというところが続くのですが、"GDPやGNIでは景気と関係ない非市場取引を含むことや、モノやサービスの時価に価格調整や品質調整を施す"といった違いが問題になるとのことです。

 これは結局現在のGDPにも問題があるという話で、以下のように説明されています。
 まず、GDP統計では賃貸と自己所有の居住活動を整合的にとらえるため、自己所有の家でも家賃を払う想定で架空の帰属家賃を計上する。さらに、景気とは全く関係ない一般行政、教育、外交、警察、消防、司法などの政府消費も計上される。

 こうした非市場取引の割合は、日本の名目GDPではこの1994年第1四半期から2013年第1四半期にかけて6.2ポイントも拡大している。実質GDPがリーマンショック前の水準に近いところまで回復しているのに対し、非市場取引を除いた実質市場GDPは依然としてリーマンショック前の水準には程遠い回復にとどまっている(図表5)。つまり、90年代後半以降の実質GDPの増加は非市場取引の増大によるところが大きく、これが景気実感との乖離を生み出している。

 この図表5を見てみます。

 2013年3月の実質GDPはリーマンショック以降最高に近い値で、520兆円を超えています。リーマンショック前は530兆円程度で、最低のときは約480兆円ですからもう一息といった感じに見えます。

 なお、「リーマンショック以降最高に近い値」という曖昧な書き方になったのは、2011年にも520兆円を超えていた時期があり、どちらが上か見えづらいからです。

 ええ、2011年にそんなに回復していたの?実感ない!ってな話ですけど、これがまさに作者の言う「景気実感との乖離」ですね。


 そこで非市場取引を除いた実質市場GDPを見てみると、実質GDPとは全然感覚が違ってきます。

 リーマンショック前の実質市場GDPは360兆円程度、最低が310兆円程度なのに対し、2013年3月は340兆円程度しかありません。

 最低のときから+30兆円ではあるものの、リーマンショック前まではまだ20兆円もあります。つまり、まだリーマンショック前の水準には全然近づいていないわけです。

 また、実質GDPで見たときのように「リーマンショック以降最高に近い値」ってことは全然なく、2010年以降は2013年3月より高い実質市場GDPは何度も出ています。つまり、現在はリーマンショック以降で見ても特に良い景気ではないということになります。

 ずいぶんと違うものですね。
 また、モノやサービスの時価を集計した名目GDPに価格調整や品質調整を施したものが実質GDPであるが、こうした調整も景気実感との乖離をもたらしている。品質調整とは、例えばパソコンの単価が20万円で変わっていない場合でも、機能が2倍になっていれば価格は半値になったとみなす統計処理である。従って、機能が2倍になったパソコンの値段が変わらなくても、実質GDPでは2倍の付加価値額として計上される。

 しかし、向上したパソコンの機能をすべて使いこなしている利用者はどれだけいるだろうか。利用者が活用していない品質調整の分は、需要側から見れば架空の付加価値にすぎない。従って、品質調整も含んだ実質GDPは現実よりも過大推計され、景気実感と合わない一因になっている。

 以上の理由から、GDP統計に対する世間の期待と現実の間には大きなギャップがある。実際、名目GDPはリーマンショック以降に底打ち感が見受けられるが、非市場取引部分や価格・品質調整部分を簡便的に除去した名目市場GDPをみると、名目GDPよりも右肩下がりの傾向が強い(図表6)。つまり、人々の平均的な景気実感の水準は名目GDPの減少傾向すらも下回っている可能性がある。

 とりあえず、GDPは目標とするには適していない感じです。
 GDP統計を景気判断のよりどころとする政策当局や企業経営者の意識を変える必要がある。GDP統計は非市場取引も含めた一国の経済活動水準を包括的にとらえるための国際基準統計であり、日本の景気を判断するには問題があると割り切るべきだ。こうした事情を理解している一部の市場関係者の間では、全産業供給指数を重視する向きもある。

 全産業供給指数は、消費、投資、輸出入といった各最終需要の動向を供給面から捉えた統計である。本統計は、供給側の指標である鉱工業出荷内訳表、鉱工業総供給表、第三次産業活動指数及び建設業活動指数を需要項目別に再集計して作成されることから、供給側から見たGDP速報値の性格を持ち、国内経済の動向を把握する上で重要な指標となる。

 本統計は経済産業省が作成しており、2カ月前のものが毎月20日頃に公表される。また、統計作成開始からの動きを見ても、実質GDPと似通った動きをしていることに加え、毎月公表されるため、毎四半期公表のGDPよりも景気動向の変動をより短いスパンで捉えることができ、経済の動きを早く知ることが出来るメリットがある。

 (中略)また、実質GDPでは持ち家の帰属家賃など本来の生産活動ではない部分も含まれる。従って、企業の生産活動を基にした景気実感という観点からすれば、実質GDPよりも全産業供給指数の方が優れているといえる。

 ただ、GDP統計は国際的に見て最も標準的な統計であることからすれば、作成側としてもこうしたギャップを解消する努力が必要だろう。例えば、GDP統計のうち市場取引部分と非市場取引部分を区分し、市場取引部分を核にして世間の景気実感に近い「コアGDP」を作成・公表するといった工夫を検討すべきである。

 特に安倍政権では、“民間活力の爆発”を成長戦略のキーワードとし、民間の活力こそがアベノミクスのエンジンと強調しているのであれば、アベノミクスの成否を見る上では、市場GDPが最も理にかなった政策目標変数ではないだろうか。

 でも、まあ、政権的には実際の景気を表せる値にすることよりも、目標達成がしやすいGNIの方が良いって思惑が働くような……。


 関連
  ■世界各国のGDPランキング ~183ヶ国の順位~
  ■1人当たりGDPランキング3調査 日本は世界で何位?
  ■貿易黒字、貿易赤字に意味はない?
  ■1月の日本の貿易赤字過去最大 原因は円安、LNG・原油、中国など
  ■日本の一人当たりGDP、ドル換算で過去最高に
  ■その他の経済について書いた記事

Appendix

広告

ブログ内 ウェブ全体
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示









Appendix

最新投稿

広告

定番記事

世界一スポーツ選手の平均年収が高いのはサッカーでも野球でもない
チャッカマンは商標・商品名 じゃあ正式名称・一般名称は何?
ジャムおじさんの本名は?若い頃の名前は?バタコさんとの関係は?
ワタミの宅食はブラックじゃなくて超ホワイト?週5月収10万円
朝日あげの播磨屋、右翼疑惑を否定 むしろ右翼に睨まれている?
レーシック難民は嘘くさいしデマ?アメリカの調査では驚きの結果に
赤ピーマンと赤黄色オレンジのパプリカの緑黄色野菜・淡色野菜の分類
アマゾンロッカーってそんなにすごい?日本のコンビニ受け取りは?
就職率100%国際教養大(AIU)の悪い評判 企業は「使いにくい」
ミント・ハッカでゴキブリ対策のはずがシバンムシ大発生 名前の由来はかっこいい「死番虫」
移動スーパーの何がすごいのかわからない 「とくし丸」は全国で約100台
ビジネスの棲み分け・差別化の具体例 異業種対策には棲み分けがおすすめ
主な緑黄色野菜一覧 と 実は緑黄色野菜じゃない淡色野菜の種類
タコイカはタコ?イカ?イカの足の数10本・タコの足8本は本当か?
トンネルのシールドマシンは使い捨て…自らの墓穴を掘っている?
ユリゲラーのポケモンユンゲラー裁判、任天堂が勝てた意外な理由
好待遇・高待遇・厚待遇…正しいのはどれ?間違っているのはどれ?
コメダ珈琲は外資系(韓国系)ファンドが買収したって本当? MBKパートナーズとは?
大塚家具がやばい 転職社員を通報、「匠大塚はすぐ倒産」とネガキャン
不人気予想を覆したアメリカのドラえもん、人気の意外な理由は?

ランダムリンク
厳選200記事からランダムで









アーカイブ

説明

書いた人:千柿キロ(管理人)
サイト説明
ハンドルネームの由来

FC2カウンター

2010年3月から
それ以前が不明の理由