マッハバイト(旧名ジョブセンス)や運営するリブセンス、村上太一社長の話をまとめ。<マッハバイトのパクリサイトは次々撤退 なぜうまくいかなかった?>、<巨大企業リクルートもマッハバイトを作れない…その理由とは?>、<リブセンス村上太一・史上最年少上場社長>、<マッハバイト(旧ジョブセンス)はなぜ祝い金を始めたのか?>などをまとめています。
2023/01/15まとめ:
●マッハバイトはなぜ祝い金を?リブセンス村上太一・史上最年少上場社長インタビュー記事など
●マッハバイトのパクリサイトは次々撤退 なぜうまくいかなかった?
2013/9/6:
Business Media 誠:仕事をしたら“最年少上場”だった(前編):なぜリブセンスにできて、リクルートでできなかったのか――成果報酬型のビジネスでは、インタビューアーがバイト求人サイトであるマッハバイト(当時の名前はジョブセンス)には、パクリサイトが多く出たことを指摘していました。ちょっと売り上げが伸びてくると、たくさんの企業が同じようなサービスを始めたんだそうです。
しかし、ほとんどの会社はうまくいかず、サービスを撤退。その要因として、マッハバイトを運営する村上太一社長は以前「先行者利益があったから」だとしていました。マッハバイトの特徴は「広告掲載料は0円」であるだけでなく、「成果報酬型」であるということ。これは他のサイトでも簡単に真似ができます。一見、他のサイトでも簡単に対抗できるように思えます。
ところが、意外なことに、バイトの求人を出す企業側にマッハバイト以外のサイトを使う理由がほとんどなかったとのこと。パクリサイトが現れても既に「成果報酬型です。広告掲載料は0円です」というマッハバイトがあったために、広告を出す企業側は積極的にパクリサイトを使う理由がなかったという説明でした。
これには、「広告掲載料は0円」であったとしても、保守コストや管理コストがかかるということが関係します。掲載料金がとられないとはいえ、サイトユーザーが少なければ実際にアルバイトを雇うことができないのでお店側としては意味なし。わざわざユーザーが少なくて求人を決めづらい新規サイトを使う理由がなかったのということです。
●巨大企業リクルートもマッハバイトを作れない…その理由とは?
また、「なぜリブセンスにできて、リクルートでできなかったのか」という元記事のタイトルになっているリクルートが同様のサービスをできなかった理由についてインタビューアーは質問。村上太一社長は「全従業員の5%」と営業が非常に少ないことを挙げて、以下のように答えていました。
・村上太一社長
<なぜそんなに少ないかというと、企業は広告費が0円なので、一度使うと「ま、継続してみるか」と感じていただくケースが多い。なので営業コストをあまりかけなくても、運営できるビジネスモデルなんですよね。
一方、リクルートジョブズは営業スタッフをたくさん抱えていらっしゃる。成果報酬型のサービスに切り替えてしまうと、その営業スタッフが余ってしまう。この問題があるので、成果報酬型に切り替えることが難しかったのではないでしょうか>
後に読んだ記事によると、リクルートって特に超営業職重視の企業だったらしんですよ。普通の企業以上に営業職の存在を重視するために、その営業職を軽視するかのようなやり方は難しかったのかもしれません(この部分2023/01/15追記)。飽くまで村上太一社長の想像ですが、この営業職に絡みさらに以下のようにおっしゃっていました。
・村上太一社長
<また既存のサービス(広告掲載料有料)は、営業スタッフがたくさんいるのでコストがかかってしまう。その負担は誰がするのか。結局のところ、クライアントが負担しなければいけません。一方、成果報酬型は営業コストを下げているので、低価格でサービスを提供できる。そのため、売り上げがどうしても下がってしまうんですね。
話を整理すると(1)営業スタッフを切りたくない(2)売り上げは下げたくない――この2つがネックとなって、なかなか成果報酬型のサービスを始めることができなかったのかもしれません>
●ネット企業で大事なこと…ネットで松井証券がのし上がれた理由
私が村上太一社長のセンスを気に入っている点の一つが、ネット企業の本質を理解していることでした。非常にインターネットサービス向きな人ですし、ここらへんは世代の価値観の違いがリクルートの間で出たのかもしれません。インタビューアーは、前述の話を聞いていると、1990年代後半の証券業界を思い出しました、と言っていました。
当時出てきたネット証券は営業スタッフをほとんど抱えていないので、手数料を引き下げることができたといいます。一方、店舗を構える証券会社は営業スタッフをたくさん抱えているので、手数料をなかなか引き下げることができませんでした。そのため、店舗を構えるほとんどの証券会社は常に後手後手だったそうです。
ところが、既存企業でも松井証券のように外回りの営業を廃止して、ネット証券に切り替えたところもあると指摘。この松井証券はすごいですね。基本的に人は保守的な動物であり、なかなか元からあるものを切り捨てることができないものです。今、松井証券はネット証券の代表格となっています。切り替えの早さが効いた形です。
●成果報酬型のサービスはマッハバイトでなくてもできた
インタビューアーは、「ちょっと嫌な言い方になりますが、成果報酬型のサービスは誰かがどこかのタイミングでやっていた可能性が高いのではないでしょうか」と聞いていました。ただ、村上太一社長は怒った風でもなく、以下のように回答しています。これがまさに先程も出てきた先行者利益ですね。
・村上太一社長
<世の中のビジネスモデルの大半は、他のモデルの焼き直しです。例えば、飲食業界では「俺のフレンチ」が話題になっています。「俺のフレンチ」といえば、原価率は高いけれど、客の回転率を上げることによって、売り上げを伸ばされている。
回転率を上げることで、低価格にする――。この仕組みは他の業界でもすでにあって、それを「俺のフレンチ」ではうまく取り入れたのではないでしょうか>
「俺のフレンチ」の話は
俺のフレンチ・俺のイタリアンで、立ち飲み格安ミシュラン級料理で書いています。かなりぶっ飛んだ発想の企業です。
あと、上記の部分からは、村上太一社長が「求人」という分野よりも、「ビジネスモデル」に目が行っているところを強調しておきたいです。「求人」がメインの会社ではないのです。私はこれも当初から村上太一社長で気に入っている点です。
この後、「リブセンスは求人や不動産などの情報を提供されていますが、新しい領域も検討されていますよね?」といった話が出てきていますが、このようにリブセンスは創業事業である「求人」という枠にとらわれていない、しかもそれを社長が意識してやっているというのが、リブセンスの強みだと思います。
●マイナビバイト、アルバイト情報サイト顧客満足度でトップに
2019/04/11:上記を書いてからだいぶ経っており、その後、マッハバイトを運営するリブセンスの株価は暴落していました。マッハバイトもその後苦戦したのではないか?と思っていたものの、意外なことに業界ナンバーワンみたいですね。成功報酬型以外のバイト求人サイトと比較してもマッハバイトが一番のようです。
「マッハバイトが一番」だという理由は、「オリコン顧客満足度」を展開する株式会社oricon MEが発表した『アルバイト情報サイト』についての満足度調査の結果によります。これは、過去5年以内にアルバイト情報サイトに掲載された求人に応募し、アルバイト・パートとして就業した経験のあるという実際のサービス利用者に聞いた調査です。
このオリコンの満足調査では、5項目のうち、「登録のしやすさ」、「情報量・わかりやすさ」、「検索のしやすさ」、「検索結果」という4項目でマッハバイトが1位になりました。1位を逃した「サイト・アプリの使いやすさ」も2位ということで、内容的にも圧倒的な完勝での1位だったようです。
<『アルバイト情報サイト』ランキング>
1位 マッハバイト
2位 タウンワーク
3位 バイトル
4位 マイナビバイト
5位 LINEバイト
6位 イーアイデム
7位 an
8位 フロムエーナビ
9位 エンバイト
●マッハバイト1位、スマホ時代にマッチしたのが理由か?
マッハバイトの特長とされる成功報酬。記事の時点では、採用が決まると最大1万円のボーナスを付与するというサービスを展開中でした。実際の利用者からも、この点が好評であり、調査に参加したサービスの利用者からは以下のような感想が出ていました。
「20年近く専業主婦で久しぶりのお勤めに気後れしていたのにボーナスに背中を押されて申込みました。結果感謝しています(50代 女性)」
「採用後、マッハバイトからボーナスで一万円が振り込まれ、とても嬉しかったです(30代 女性)」
また、総合トップであった以外に、デバイス別の「スマートフォン」などの5分野で1位を獲得しているといいます。「サイト・アプリの使いやすさ」は2位でいたが、スマホ分野では1位ですし、現在は重要性が高いスマホでの利用にうまくマッチしたサービスを展開できているのが総合1位となった理由の一つかもしれません。
●リブセンス村上太一・史上最年少上場社長
2011/11/13:最初に目にした記事は、
速報!史上最年少上場社長登場、リブセンス上場へ アルバイト求人サイト運営会社、社長は25歳。 原 隆 2011年11月1日(火)ですが、速報記事ですので中身は全然ない記事でした。
村上太一社長は1986年10月27日生まれの25歳。国内における史上最年少上場となる。
村上社長がリブセンスを設立したのは2006年2月8日。早稲田大学政治経済学部に入学した翌年春に起業している。これまでの最年少記録を持っていたのはアドウェイズの岡村陽久社長で上場時の年齢は26歳2カ月12日。今回のリブセンスの上場により記録を大幅に更新した。
大幅に…という話ですが、その前も26歳2カ月12日ってめちゃくちゃ若いじゃないですか!
●採用祝い金のある求人サイトジョブセンスを運営
で、この後各紙の詳しい記事を待っていたのですが、さっぱり出てきません。仕方ないので、検索して自分で過去の記事を探して読んでみます。良さげだったのは、
第4回 文化になるWebサービスを――リブセンス 村上太一 岑康貴(@IT自分戦略研究所)(@IT 2010/3/18)でした。
こちらによると、リブセンスは、「採用課金型」の料金形態と「採用祝い金」制度というユニークな特徴で売り上げを伸ばしたアルバイト情報サイト「ジョブセンス」(2018/03/09追記:現在はマッハバイトに改名)を運営するベンチャー企業。早稲田大学の大学生が2006年2月に設立した会社です。
早稲田大学に入学後、村上氏は「ベンチャー起業家養成基礎講座」という講座と出合う。講座終盤に開催されるビジネスプラン発表会の優勝者には、大学のインキュベーション施設のオフィスが1年間、無料で使えるという特典があったのである。これ幸いと講座に参加し、優勝してオフィスを手に入れた村上氏は2006年、リブセンスを立ち上げた。最初は村上氏を含めて4人でのスタート。そのうち2人はエンジニアだった。
「僕自身、小学生のころ、1995年に初めてパソコンを触ってインターネットにはまった世代。中学生のときにはJavaを触ったりしていましたし、Webサービスが大好きなんです。生粋のエンジニアというわけではありませんが、仕組みはある程度、理解しているし、エンジニアの気持ちも分かっているつもりです」
アルバイト情報サイトからスタートし、現在も人材系のサービスが売り上げの大部分を占めるが、村上氏は「人材ビジネスだけをやりたいわけではない」と語る。あくまで、Webビジネスが軸なのだという。
●「やめ方が分からなかった」から続けて突然売上上昇
最初から成功したというわけではなく、最初は苦戦していたようです。
「最初の1年はまともに売り上げが立たなかったんです。採用課金に採用祝い金と、それまでにないビジネスモデルでしたから、そもそも本当に成り立つのだろうかと不安でした。やめようと思ったことは何度もあります」
ではなぜやめなかったのか?と言うと、「やめ方が分からなかった」(村上社長)という拍子抜けする理由。ただ、"数少ないとはいえ顧客がいた。顧客がいる以上、責任がある。いきなり「やめます」とはいえなかった"とも記事には書かれていました。
ただ、2年目に入ったころから、売り上げが一気に上がり始めたとのこと。しかも、特にきっかけは思いつかない、と村上社長は話していました。
●「ナンバーワン」と「オンリーワン」を目指す
村上社長は今後の事業について、「ナンバーワンを取るサービス」という軸と、「オンリーワンを取るサービス」という2つの軸で考えているとのこと。両方は欲張りな気がするものの、むしろ安全を考えてという説明でした。
「ジョブセンスは求人サイトですから、すでに市場が存在します。つまり、ナンバーワンを取りに行く。一方で、まだ市場がないような領域のサービスを作ってオンリーワンを取りに行くことを始めたい」
オンリーワン狙いの軸のみだと事業が成り立たない可能性があるため、危険だ。だから「両軸が必要」だと村上氏は繰り返す。
「市場がない領域のサービスをヒットさせられれば、市場をつくれるだけでなく、その市場の代名詞になれる。いい換えれば、文化になるサービスに成長する。そういうサービスを作りたい」
既存企業と同じことをやってもシェアを奪えるわけがないのですから、同じ市場で勝負しているふりをして実は新たな市場を築いているというのは大事。良い考え方ですね。
●「将来は社長になる」起業を意識し始めたのは小学生のとき
もう一つそれより前の記事で、
業界初の求人サイトを開発した学生社長 リブセンス社長 村上太一 2008年6月20日 ダイヤモンド・オンラインというものも見つけました。
通常の求人サイトでは、枠の大きさに応じて、企業は求人広告を出す際に費用を支払います。しかし、リブセンスでは、採用が決まるまでいっさい費用が発生しない成功報酬型。なおかつ求職者には祝い金まで支払うというしくみ。これ自体が「オンリーワン」的なものでした。
ここでは、過去の話が出ています。そもそも村上が起業を意識し始めたのは小学生のときだとのこと。経営者だった両祖父へのあこがれもあり、「将来は社長になる」と決めていたといいます。ただ、小学生の頃はよく考えずに憧れるので、だから成功したってわけではないと思いますけどね。将来の夢を実現しない人も多いです。
とりあえず、村上社長の場合、その思いは年を追うごとに強まり、着々と準備を進めていくことに。高校時代には、すでに簿記2級に加え、合格率が30%を切る超難関の国家資格、システムアドミニストレータ(情報処理技術者試験の一つ)の資格を取っていたそうです。
ちょうどいことに、入学していた早稲田大学が起業講座を開設すると知ります。コンテストの優秀者には、事務所として大学施設を1年間、無料で借りることができる特典付きとあって応募。「自分もアルバイト探しに苦労し、顧客目線に立てると思ったから」という求人ビジネスで、最優秀賞をとり、3人で資本金300万円を出し合い、念願の起業にこぎ着けたそうです。
●マッハバイト(旧ジョブセンス)はなぜ祝い金を始めたのか?
ただし、当初は苦戦。毎日、5~8社程度に営業をかけるとともに、ページビューをいかに向上させるか研究。いわゆるSEOで、特定の検索エンジンを対象とし、検索結果でより上位に現れるようにウェブページを書き換えるようにしました。
結果、グーグルで「アルバイト」「バイト」と検索すれば筆頭にくるようになると、企業広告の数はうなぎ登りとなって成功したというわけです。祝い金だけでなく、これがかなり大きかったと思われます。(2020/09/27追記:なお、SEOではその後グーグルによる禁止事項が増え、リブセンスがこれに引っかかってペナルティで検索順位が下がり、株価も暴落するということが起きています。業界の動向を理解しているSEO専門企業ではなく、独自研究だったことが災いした感じです)
この記事によると、「祝い金」は最初からじゃなかったみたいですね。そして、「採用が決まらなければ費用がもらえない」ので、「求職者に報告をさせる」という大切な話が、今まで読んだ他の記事では出ていませんでした。この工夫は、なるほどと思います。
記事によると、祝い金は集客の意味もあるものの、成功報酬型を採るリブセンスにとっては命綱だと表現されていました。というのも、実際に採用が決まらなければリブセンスとしても費用がもらえないために、採用の確認は必須。祝い金があることで、求職者が自ら報告してくれるというしくみです。頭いいですね。
とりあえず、以上。新しい記事が見つからないため、今のところあまり注目されていないみたいですけど、今後はどうなるのでしょうかね?
●最年少上場は通過点、むしろこれからが正念場
2011/12/8:上記を書いたときにあんまり注目されていないみたいと書きましたが、その投稿にはボツボツと人が来ていますので、それなりに注目されているみたいです。さらに新たなインタビューも見つけることができましたので、そちらも紹介。
渦中のひと 最年少上場は通過点 村上 太一 リブセンス社長の 告白(日経ビジネス2011年11月14日号)という記事ですが、記事タイトルは冒頭の言葉によります。
これだけの注目を頂いて、正直驚いています。上場は大変うれしいことですが、あくまでも通過点です。むしろこれからが正念場になります。
起業した時から、事業を大きくしていくことは考えていましたし、そのプロセスの1つとして上場は必要だと思っていましたから、それを通過できたことに、今は喜びを感じています。
●リブセンスは人材仲介業ではなくネット企業
新しい話としては、「僕らは人材仲介業ではなく、ネット企業」であるとして、以前も書いたSEOとともに以下の点を挙げていました。
僕らの競争力は、人材仲介のビジネスモデルそのものではありません。ネット技術こそが強みなのです。
どういうことか。顧客との接点は、サイト画面ですね。この画面操作を、どう使いやすくするか、24時間365日考え続けている、とイメージしていただければ分かりやすいでしょう。
例えば、サイトの中に検索窓があります。ここに、「漫画喫茶」と入力して検索すると、通常ならば「漫画喫茶」が含まれる情報が出力されてきますよね。でも、我々のサイトでは、「ネットカフェ」といった近いキーワードの結果も併せて表示します。ですから、ハンバーガーのアルバイトを検索した人に、似た労働条件の牛丼店の募集案内も結果として見せるような仕組みを作っています。
また、上場の理由の1つが「知名度を高めて、優秀なエンジニアを集めたかった」というのも、人材仲介企業ではなく、ネット企業であることを裏付けている感じです。
●リブセンスはリクルートとは似て非なる会社
こういった企業ですから、当然人材ビジネスの世界の雄「リクルートとは似て非なる会社」であるわけで、次のように違いを説明しています。
私なりに分析した結果ですが、リクルートをはじめとした、これまでの人材仲介業は、自前の媒体を用意し、そこに大量のクライアントからの求人広告を出稿してもらう形で成長を果たしてきました。極めて労働集約的な事業となります。だから、営業マンが多いほど売り上げも増える。規模を追うビジネスです。
ところが、リブセンスは違う方法論を取っています。営業マンはほとんどいません。代わりに、出稿も集客もネットでほぼ完結させています。おまけに、成功報酬まで支払うので、収益はリクルートに比べれば少ない。しかし、固定費はほとんどかかりませんから、小さな儲けを積み上げても、それなりの金額になるのです。これが、ネットビジネスの本質だと思いますし、だからこそ、僕らはネットの技術力を磨き続けています。
「ネットビジネスの本質」という見方は私も賛成ですが、これをもって「インターネットは市場を狭くする道具だ」とみなす人がいます。ただ、それは一面的な見方に過ぎず、リブセンスのお陰で得をしているたくさんの人材がほしい人、仕事がほしい人がいるのです。
●「1人が世界を変えるサービス」を開発したい
話が逸れていきそうですので、インタビューの方に戻ります。
同じ世代の起業家仲間はたくさんいますが、僕らの世代と先輩起業家の方々とは、「起業」に対する考え方が少し違うかもしれません。うまく言えないのですが、同世代には、「お金持ちになりたい」「名誉を得たい」というような野心を抱いている人が少ないと思います。むしろ、「優れたサービスを生み出して、人々の生活に役立つモノになればいい」という思いの方が強いんです。
「世界と戦う」という意識も薄いかもしれません。というのも、ネットはそもそも世界と直結しているので、いいサービスを開発してユーザーに受け入れられれば、そのまま世界中で売り込める時代になっているんです。例えば、米アップルのiPhoneのアプリを開発して、それが優れていれば、そのまま「AppStore」で販売できて、世界に広まっていく。国境を意識する必要がないんです。
だからこそ、まず日本で「不可欠だ」と感じてもらえるサービスを開発したい。例えば、料理のレシピサイト「クックパッド」やレストランの口コミサイト「食べログ」は、そんな存在になりつつありますよね。まずはそれに近づくことが、僕らの目標です。
ネットの世界って、社員が多ければいいモノが生まれるわけではありません。1人の天才エンジニアが、世界を変えるサービスを生み出すことがある。そこに無限の可能性を感じるし、日本からでも世界に誇るサービスが生み出せると考えています。
「そのまま世界中で売り込める」は、私も期待しています。ウェブの世界では海外、特にアメリカのサービスが悔しいほど普及しています。日本は文化が違うと言いつつも、現にこうやって浸透しているものがあるんですから、その逆を行くことも可能なはずです。
また、先の話の「営業マンはほとんどいません」「出稿も集客もネットでほぼ完結させています」「固定費はほとんどかかりません」というのも、私がインターネットサービスに期待する理由です。
日本の現在の核である製造業にはオートメーション化を進める、あるいは他に代替できないことをするといった道があるものの、人件費の高さというハンデがあります。その占める割合が低くて済むというのは、人件費の高い先進国にとっては最大の魅力だと思うのです。
●求人だけじゃなくて不動産なども…共通点と言えるものは?
2019/02/03:「リブセンスは人材仲介業ではなくネット企業」に絡む話が、
創業10年を超えデータ企業へ脱皮/リブセンス 代表取締役社長 村上太一 Taichi Murakami(2018年03月12日)にありました。
祖業の「マッハバイト」や「就活会議」「転職会議」は仕事関係ですが、不動産情報サイトやインタビュー当時やっていて後に手放したファッションECのwaja(ワジャ)といった一見関係ないものをやっています。これを踏まえてでしょうが、インタビューアーが「これまで御社は求人サイトの印象が強かったですが、今やデータ企業として脱皮されようとしていますね」と聞いていました。共通点と言えそうなのは、データ解析的なところみたいですね。
現在、データテクノロジーへ投資していて、リブセンスアナリティクスというデータ収集の基盤を強化。「今のところ、データテクノロジーは自社サービスの質向上に役立てていますが、今後はこのノウハウを他社サイトに導入するようなビジネス展開をして、よりスケールさせていきたい」と村上太一社長は言っていました。
●リブセンスは求人の世界に「成功報酬型」を取り入れた
2011/12/19、2019/02/21:史上最年少上場社長リブセンスの村上太一さんについては興味があって、以前にも書いています。そのときに紹介した記事以外にも2つ記事を読んだのですけど、あまり感じるところが無かったので取り上げませんでした。
でも、最近読んだ
若者よ、史上最年少25歳で上場の村上太一氏に続け!(登録要 ダイヤモンド・オンライン 2011年12月14日 山崎 元)の方はちょっとおもしろいところがありました。
まず、求人広告のビジネスでは、かつては紙媒体の就職情報誌や、近年ではインターネット上のサイトに求人主が広告費を払って、求人広告を掲載するビジネスモデルが主流であったと説明。このモデルでは、広告を取るための営業力やサイトの集客力(ページ・ビューなどで測られる)などが重要。コストがかかる点に、参入障壁がありました。
ところが、リブセンスがジョブセンス(後のマッハバイト)で採用した、求人が成功して採用に至るまで雇い主側で費用のかからない成功報酬型のビジネスモデルだと、求人広告を出す側のハードルが下がります。また、求人広告が集まりやすくなることによって、求職者側も1ヵ所のサイトを見に行くと多くの求人案件にアクセスできるので、求人・求職両方の側にとってメリットがあるとしていました。
「求人広告」ではなく、単なるインターネット広告の場合、近年というわけではなく、昔から「成功報酬型」広告は主流の一つ。リブセンスは、求人の世界に「成功報酬型」を取り入れたと言うと、スマートかもしれません。
●ネットビジネスでの起業のメリットとは何か?
あと、記事は若者、あるいはサラリーマン、退職者にも起業を勧める内容でした。村上社長の起業は、大学1年生時と早いが、学生時点での起業、それもなるべく早い時点での起業には、少なからぬ合理性がある、と山崎 元さんはしています。
理由の一つは、インターネット関連のサービスのビジネスで起業することを考えると、製造業などと比較して、設備やマーケティングの費用はそんなにかからないこと。また、サービスをリリースしてからその成否に関して決着が付くまでの期間は短いことも挙げられています。
これらはインターネットビジネスでの起業の利点といえるもの。以前も出てきたものですが、再度強調しておこうと紹介しました。
(2019/02/21:ただし、その後、
起業家の成功率 年齢は若い方が良い・ワンマン社長が良いって本当?で、若い方が起業の成功率上がるは嘘だった…という話をやっています。若者が起業すべき…というススメは自体は、慎重に判断する必要がありそうです)
●お金や名誉や自己顕示欲のなさは最近の起業家のトレンドか?
それから、前回も引用した
渦中のひと 最年少上場は通過点 村上 太一 リブセンス社長の 告白(日経ビジネス2011年11月14日号)では、以下のような部分がありました。
"同じ世代の起業家仲間はたくさんいますが、僕らの世代と先輩起業家の方々とは、「起業」に対する考え方が少し違うかもしれません。うまく言えないのですが、同世代には、「お金持ちになりたい」「名誉を得たい」というような野心を抱いている人が少ないと思います。むしろ、「優れたサービスを生み出して、人々の生活に役立つモノになればいい」という思いの方が強いんです"
これを引っ張り出してきたのは、
お金や名誉に興味はない!ほしいのは“自由”だけ!なぜゆとり起業家はガツガツしていないのか(ダイヤモンド・オンライン 2011年12月14日 梅田カズヒコ)を読んでいて共通点を感じたためです。
この記事は20歳の女子大生の起業家のインタビュー。インタビューアーは、普通、社長になろうとする人はお金が欲しいとか、名声とか名誉とか、つまり自己顕示欲の現れがあるのに感じられないとしていました。
それに彼女は「面白いことをやっていたいだけです。あまりお金が欲しいとか、地位とか名誉とかには興味はないです」「(お金は)人並みにあれば充分です」といった回答をしていました。
●やりたい仕事がわからないからこそ起業するメリットがある?
あと、この方がおもしろいと思ったのが、「やりがいを求めている」といったこととも違うとしていたこと。やりがいと言うよりは、自由度を求めている感じです。
「やりがいと言えばとても就活的ですが、私としてはもう少し違うイメージです。例えばAと言う仕事に興味を持っていても、突然Bに興味を持つかもしれない。一般的な企業ではAという仕事を命じられたらBの仕事はできません。でも、自分が経営者の場合はその時自分が一番興味ある分野に打ち込めることだと思うんです」
先の学生時点の起業は失敗したら普通に就活すれば良いという利点もあったのですが、以前の
起業・ベンチャー推奨 ホリエモン「一番安全」Chikirin「大企業に就職するより圧倒的に得」でも書いたように、肩肘を張ったものではない軽くてゆるい起業というのが、日本でももっとあって良いと思っています。
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