<当初から医師やユーザーから問題が報告されたのにカネボウは軽視>、<カネボウの白斑美白化粧品、引用論文を改ざんして認可された可能性>、<カネボウの白斑化粧品美白成分ロドデノール、2007年に危険性指摘>、<そもそも安全性問題について議論しないまま承認…国も問題か?>などの話をまとめています。
●「化粧品は肌に悪い」は迷信だけど、最近でも健康被害出る事件
2022/03/21追記:「化粧品は肌に悪い」は迷信…といった話を別記事で書いていたのですが、最近でもマジで健康被害が出る事件があったことを思い出します。これは、<カネボウの白斑美白化粧品、引用論文を改ざんして認可された可能性>などの書いていた話。以降、これらの投稿をまとめておきます。
2013/9/9:とりあえず最初に、カネボウの白斑美白化粧品問題の概要がわかりやすい短い記事を紹介。<白斑問題、カネボウ開発の美白成分が原因 学会が発表>(日本経済新聞)では、以下のように報じていました。たぶん2013年9月7日の記事ではないかと思われます。
<カネボウ化粧品の美白化粧品で肌がまだらに白くなる「白斑」の被害が相次いでいる問題で、日本皮膚科学会(東京)は7日、同社が開発した美白成分「ロドデノール」が原因の可能性が高いと発表した。
ロドデノールを含む化粧品の使用をやめた患者の多くは白斑の部分に色素の再生が始まり、改善傾向がみられるという。カネボウ化粧品によると、「白斑」の発症者は8月25日時点で8678人確認されている>
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG07024_X00C13A9000000/●当初から医師やユーザーから問題が報告されたのにカネボウは軽視
カネボウの白斑美白化粧品問題はタイミングが合わず、うちでは投稿していませんでした。ただ、今回問題だなと思って、うちでも取り上げようと思うきっかけの記事がありました。それは、NHKクローズアップ現代の内容を記載した<カネボウ「白斑症の美白化粧品成分」大学教授の論文改竄して認可申請 : J-CASTテレビウォッチ>(2013/9/ 3 15:13)という記事です。
<白斑症状は使用を中止すれば多くの人は治るとされているが、2年以上経っても消えない人もいる。
「クローズアップ現代」が注目したのはカネボウが独自に開発した美白成分のロドデノールだ。中村幸司NHK解説委員は「色素細胞が作り出すメラニンの量を抑えることで肌を白く保つ成分とカネボウは謳っていました」という。しかし、ロドデノールによって色素細胞そのものが破壊されるケースがあることがわかってきた。また、20年前、ロドデノールを生産していた工場で従業員が白斑を発症していた。
*NHKクローズアップ現代(2013年9月2日放送「最新報告 カネボウ『美白』問題」)
http://www.j-cast.com/tv/2013/09/03182825.html?p=all 上記はまだ問題性の低い部分で、本当に問題なのはこれから。「美白化粧品の有害性について、早い段階から医師やユーザーによって情報が寄せられていた」(キャスターの国谷裕子さん)というのです。一方で、、「当初、カネボウの担当者は連絡があっても化粧品によるかぶれだろうという認識で、事態の深刻さを理解していなかった」(中村幸司NHK解説委員)とされていました。
●カネボウの白斑美白化粧品、引用論文を改ざんして認可された可能性
この時点でも既に「悪質」。ただ、もっと問題な話がこの後出てくるんですよ。過去に白斑を発症させるという出来事があったにもかかわらず、ロドデノールは医薬部外品として認可されていたのです。「なぜ認可されたのでしょうか」という質問に、中村幸司NHK解説委員は以下のように回答していました。
「医薬部外品として認可するかどうかは、最初に医薬品医療機器総合機構で審査されます。この時、カネボウが提出した報告書が問題でした。山口大学医学部の福田吉治教授の論文を引用し、
白斑は完治するという報告書を提出しました。しかし、オリジナルの福田教授の論文には
完治しないと書かれていました」
事実だとすればたいへん悪質です。ただ、この記事でのコメントには、"山口大学福田先生の文献はラズベリーケトン(ロドデノールの誘導体)であって、ロドデノールそのものではない"とありました。なので、うちのタイトルでも「可能性」にとどめています。さらに、気になったので検索もしてみました。
<ロドデノールの原料は食品の香料などに使われるラズベリーケトンという物質です。実はラズベリーケトンも20年以上前、国内で白斑の被害を引き起こしていました。被害にあったのはラズベリーケトンを作っていた工場の従業員たち。時間が経っても白斑は完全には治りませんでした。カネボウはラズベリーケトンに水素を結合してロドデノールを生成。美白に有効だとして販売しました>
(カネボウ美白化粧品問題の新たな真相「ラズベリーケトン」|クローズアップ現代より)
http://tv-blog.blog.so-net.ne.jp/2013-09-02 これ、J-CASTがNHKの放送内容を「ラズベリーケトン」を「ロドデノール」に勝手に書き換えているのかもしれませんね。元の放送は上のような事実関係だったのでしょう。なお、上記ブログは非常に丁寧に内容を記載していて、驚くほどです。クローズアップ現代の詳細を知りたい方は是非どうぞ。
話が逸れちゃいましたけど、問題はカネボウが論文を改ざんして証拠とした可能性があるという点です。これはたいへん悪質です。許されません。たとえこの書き換えがダイレクトに認可の可否に繋がらなかったとしても、論文の内容を変えて提出したということ自体が問題。この時点で悪質性が高いです。
改ざんが許されてしまうとなると、要するにどうにでもできるわけですから、認可そのものが意味をなしません。制度を根本から否定するものでしょう。検索してみると現時点ではこの論文の件でどうこうとはなっていないようですけど、大いに問題視し、事実であればカネボウには何らかの形で責任を取らせるのが妥当なくらいの不正行為です。
●カネボウの白斑化粧品美白成分ロドデノール、2007年に危険性指摘
2013/9/13:上記を投稿した後荷で出た記事をいくつか。前回メインで扱った問題の成分ロドデノール。実は2007年の厚生労働省の審議会において、安全性に疑問が示されていたようです。<07年に「危険性」指摘 カネボウ白斑 美白成分>(東京新聞、2013年9月12日 朝刊)では、以下のように書いていました。
<カネボウ化粧品の美白化粧品で肌がまだらに白くなる白斑(はくはん)の症状が出た問題で、二〇〇七年に開かれた厚生労働省の審議会で白斑の原因とみられる美白成分「ロドデノール」の安全性に疑問が示されていたことが当時の議事録で分かった。(中略)
疑問が示されたのは、ロドデノールを含んだ化粧水について審査した〇七年九月の薬事・食品衛生審議会の化粧品・医薬部外品部会。皮膚科の専門医である委員の一人(故人)が、ロドデノールのもととなる成分について「顔につけて日に当たると事情が変わる可能性もある」と、肌トラブルの危険性を懸念していた>
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013091202000133.html●そもそも安全性問題について議論しないまま承認…国も問題か?
では、なぜ承認されたのか?と言うと、結局"安全性問題について議論しないまま終了"したため、"美白化粧品は医薬部外品として承認され"てしまったというわけのわからないものです。こうなってくると、カネボウ以外も問題なのですが、当事者らは何とも感じていないようでした。
<議事録によると、この委員は懸念を示したうえで、資料提示を要求。しかし事前審査した独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は「把握していない」と返答しただけで、議論は別の話題に移ってしまった>
<当時の審議内容についてPMDAの広報担当者は「手元に資料がなかったので『把握していない』とした。重要度によっては追って回答することもあるが、メーカーの試験は十分で委員にも理解いただいていたと判断した」と、追加の資料提供をしなかった理由を説明。また審議に参加した当時の委員は「詳細は記憶にないが、特段の問題はなかったと思う」としている>
ずさんですね。前回、私は論文の改ざんを許してしまうと、医薬部外品として認めるかどうかの審査する制度そのものを無力化すると批判したのですが、それ以前に審議会は既に形骸化してしまっているのかもしれません。下手に危険性について考えてしまうと面倒くさいので、見なかったことにして仕事を終わらせてしまったように見えます。
●事なかれ主義だった国…同時にカネボウも「事なかれ主義」体質
審議会の審査の様子には「事なかれ主義」という言葉を思い出してしまいました。一方で、この「事なかれ主義」という批判は、カネボウについても外部有識者による第三者調査から指摘されています。<カネボウ:外部調査「事なかれ主義」…「白斑」問題>(毎日新聞 2013年09月11日 21時28分)では、次のように書いていました。
<カネボウ化粧品の美白化粧品で大規模な白斑被害が広がっている問題で、11日公表された外部有識者による第三者調査結果は、顧客や社員、医師から繰り返し寄せられた被害報告を放置してきた同社のずさんな姿勢を浮き彫りにした。(中略)
調査報告書などによると、カネボウは2008年9月、美白成分「ロドデノール」を配合した化粧品の販売を開始。少なくとも11年の年初には使用者に白斑被害が出始め、同年10月にカネボウに最初の被害報告が寄せられた。ところが、同社はその後の被害報告も含め「病気による症状」と判断し適切な対応をとらなかった。結局、問題発覚は被害者を診察した医師から症例報告があった今年5月までずれ込み、被害者は9月1日時点で9959人に拡大した。(中略)
カネボウは伝統的に販売員の役割が強く、「クレーム対応も販売員の接客の延長になっており、お客様が『病気だ』と納得すればそれでよしとしてしまっていた」(カネボウの夏坂真澄社長)。さらに独立した品質管理部門もなく、異常が発生した時に、どこに情報を集中すべきか定まっていないなど体制にも欠陥があった。【松倉佑輔、西浦久雄】>
http://mainichi.jp/select/news/20130912k0000m020095000c.html また、別記事<「白斑は病気」カネボウ、遅きに過ぎた対応>(013年9月11日20時50分 読売新聞)によると、"13年5月に問題を把握してから、7月4日の商品回収発表まで約2か月かかった点も、「遅きに過ぎた」"ということで、問題把握後もやはり後手に回ったそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130911-OYT1T01105.htm
●品質管理部門がなく組織の独立性が高い…特殊な組織だったカネボウ
品質管理部門もないってすごい会社であり、信じられませんが、ここに会社の姿勢がよく表れています。「顧客のことは会社として考えていない」という象徴ですね。よくこんな会社が化粧品のトップ企業の一つになっていたものだと驚きます。
それと同時にこんな会社が数多くの化粧品を売ってきたというのは恐ろしいことだとも思いますが、実際に今回その恐ろしいことが起きてしまいました。カネボウのこの独特な組織については、<白斑問題を招いた、カネボウのたこつぼ風土>(東洋経済オンライン 長瀧 菜摘 :東洋経済 記者 2013年09月12日)という記事もありました。
<「(各部門が)互いにフィードバックしたり、分析し合ったりという機能が極めて脆弱な、当社の組織体制に問題があった」。カネボウ化粧品の夏坂真澄社長は9月11日、第三者調査委員会の報告に続いて開いた会見でこう語った。カネボウは社員の専門性を高めるため、入社時に配属された部署からほとんど異動がない人事制度を採ってきた。そのため、施策の判断や実行において各部門の独立性が高まる一方、部門間での情報共有や業務連携が進まない“たこつぼ化”が進行した。これが、白斑問題の根本にあると言ってもいい>
実は、カネボウでは、親会社である花王の顧客情報管理システム「エコーシステム」があったものの、運用面では統一化が徹底されなかったとのこと。さらに白斑症状については、「病気であり、化粧品とは無関係」という同社の研究開発側の「思い込み」(中込氏)で、重要度の低い「問い合わせ」扱いにしていました。
<カネボウ社内で美容部員の複数名に白斑が出ても、それが全社的な問題であるとの認識に至らなかった。第三者調査報告書は、「安全管理や品質管理を使命とする部署のものとしては、その結果を重く受け止めてしかるべき対応をするのは当然」と、同社の責任を厳しく追及している。
「エコーシステム」の導入時にも、品質管理部門での研修は行われていたものの、新システム導入に当たって顧客情報の収集や分析を全社にどう生かしていくかという経営陣の議論は、当時の記録を見ても行われた形跡がないという。つまり、専門部署に一から十まで任せっきりであったワケだ。花王の青木秀子品質保証本部長・執行役員も「マニュアルだけではダメで、一つ一つ、どう使うべきかを伝えることが不十分だった」と話す>
http://toyokeizai.net/articles/-/19398 システムとしては難しいところで、現場が強い会社、異動がない人事制度といったものは支持する人も多いでしょう。しかし、安全性に関する問題ではそんなこと言っている場合でなく、優先してやらなくてはいけないものです。親会社の花王も現場任せなところがあり、責任の一端がありますね。
品質管理部門がないというのは会社の姿勢の象徴だと先に書きましたが、システム→安全軽視という順番ではなく、安全軽視→システムという因果関係でしょう。現場重視の会社の全部が全部安全軽視で、品質管理に関わる部門すらないということはないはずです。
安全についての対策を社全体としてやろうと誰も考えなかった時点で、やはりカネボウという会社は特殊であり、「終わっていた」んだと思います。
●弁護団「カネボウ化粧品の白斑問題の慰謝料が不十分」全国で集団提訴
2015/04/18:久々に、
カネボウ白斑問題、賠償求め集団提訴 全国一斉に82人:朝日新聞デジタル(2015年4月17日18時56分)という続報が出ていましたので、追記しておきます。
<カネボウ化粧品の美白化粧品で肌がまだらに白くなる「白斑」の症状が出たとして、関東の7都県に住む女性27人が17日、同社に計約4億7860万円の損害賠償を求める集団訴訟を東京地裁に起こした。この日は他に大阪、札幌、福岡など全国の6地裁・支部でも計55人が一斉に提訴。各地の弁護団によると、原告は全国で計179人となった>
カネボウ化粧品社は症状の程度に応じて慰謝料などを支払っています。しかし、弁護団は「不十分で基準も不明確」としており、提訴に至った模様です。
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