2019/12/18:
●公平性の問題に「身の丈に合わせて」と回答、英語の民間試験中止に
●もう一つの目玉、国語の記述式問題も中止に… 公平性に問題があり
●やはり公平性がキーポイント、国益を損なう国語の記述式問題導入
●国語記述式問題・英語民間試験、原因は政治主導の教育再生実行会議
●公平性の問題に「身の丈に合わせて」と回答、英語の民間試験中止に
2019/12/18:安倍政権は2020年度から始まる新しい大学入試の英語で、民間試験を活用する予定でした。当初の計画では、受験生は、新しい「英検」や「GTEC」(ベネッセが実施)など七つの民間試験で、試験前に選んだ2回までの成績が大学へ通知されることになっていたようです。
ただ、民間試験では地元で受けることができないという問題が発生します。多くの場合、都市部で実施されるため、離島や都市部から離れた場所に住む受験生は、試験の会場へ足を運ぶ必要があり、さらに、宿泊費もかかる人が出てきます。もちろん試験は無料ではないため、ここでも費用がかかるでしょう。
また、本番前の練習ということで、敢えて大学に通知せずに試験を受けておくという使い方も考えられます。受験生の家庭環境や居住地によって、差が生まれやすい制度でした。「公平性」に問題があったのです。
そこで、安倍首相の側近としても知られる萩生田光一・文部科学大臣に公平性に関する質問が出ました。すると、よりによってこの公平性について、「自分の身の丈に合わせて2回(の英語民間試験)をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」と回答。「貧乏人は貧乏人なりに頑張って」という内容だと考えざるを得ません。
(
「身の丈」発言は英語入試を「正しく」表した - 刀祢館正明|論座 - 朝日新聞社の言論サイト 2019年10月30日より)
これは、特に最後の練習にテストを受けるパターンだとわかりやすいですね。お金持ちは何度か練習してから本番の2回を受ければいいけど、「(貧乏人は)身の丈に合わせて2回をきちんと選んで勝負して頑張って」と言っているわけです。
●もう一つの目玉、国語の記述式問題も中止に… 公平性に問題があり
さらにもう一つの安倍政権の目玉であった国語の大学入学共通テストでの記述式問題についても見送りとなりました。これもやはり問題が大きかったということ。ただ、受験生や保護者、教師などはギリギリまで振り回された格好で、最悪である問題放置のまま導入よりはマシとはいえ、かなり辛いことになりました。
「新しい試験がどうなるか不安だったので、混乱が一段落するという意味でほっとしています。これまでの国の対応は優柔不断で、どっちに転ぶのか分からない期間が少し長すぎたと思います。国の人たちには、僕たちの受験を甘く見ないでほしいと言いたいです」(高校2年の男子生徒)
「実際に私たちも試行調査の記述式問題を採点してみて、公平性にかなり振れ幅があると感じていました。生徒たちには入試の情報に振り回されないよう落ち着いて勉強するよう伝えてきましたが、この時期の発表はあまりにも遅く、かわいそうだと思います。国には入試改革全体の目的を、今一度、見つめ直してほしいです」(国語を担当する内田洋教諭)
(記述式問題 導入見送り 生徒 保護者 専門家は… | NHKニュース より)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191217/k10012218191000.html
ネットでは「反対した人が悪い」という責任転嫁がありそうですけど、そもそも新テストに問題があったというところが原因。改悪を予定しておいて問題を指摘されてやめて逆ギレというのは、たいへんみっともないでしょう。代々木ゼミナール教育事業推進本部の佐藤雄太郎本部長は以下のような問題を指摘しています。
「驚いたがいろいろと課題が多いことは指摘されていたのでやっぱりなと思いました。(中略)採点者の力量や知識、経験などで点数が左右される言われてもしかたがないと思う。どうしても記述式を入れるなら採点者を国に任せるなど、責任の所在をはっきりとさせることが必要だ」
●やはり公平性がキーポイント、国益を損なう国語の記述式問題導入
上記までを見てわかるように、国語の記述式問題もやはり「公平性」がキーポイントだったんですね。教育社会学が専門の松岡亮二早稲田大学准教授は、さらに以下のような指摘をしていました。
「自己採点が難しいと、受験時の判断で経済的に恵まれている受験生は私立や浪人を選択肢に強気にいける一方で、恵まれない受験生は受験をやめたり、志願する大学のランクを落としたりするなど、『見えない被害者』を生んでいた可能性がある。また、今回進められてきた入試改革は従来のセンター試験よりも明らかに試験制度が複雑すぎた。複雑化すると対策のビジネスが生まれ、格差が拡大するおそれがある。行政は政策を考える上でそうした懸念も織り込むべきだった」
英語のテストのときに、立憲民主党の枝野幸男代表は、理想通りには行かない現実を冷静に認めつつも、非常に熱い正論を言っていました。政府の公平性に関する意識は、あまりにも低すぎたように思えます。
「現実的には生まれ育った家庭環境によって教育の機会はすべてイコールにはならないという現実があるが、いかにイコールにするかが政治の役割だ」
(萩生田大臣の「身の丈」発言追及へ 立憲 枝野代表 | NHKニュース 2019年10月26日 より)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191026/k10012151821000.html
なぜか公平性を敵視する人もいるのですけど、本来能力が高い人が評価されず、能力が低い人が過剰評価されてしまうというのは、日本にとって問題。企業で言うと、わざわざ採用試験の精度を下げて、優秀じゃない人を雇う確率を上げるわけですからね。
このように公平性を軽視するのは国益を損なう売国的な行為であり、なぜ公平であろうとすることを敢えて攻撃するのか理解できません。そんなに日本を悪くしたいのでしょうか?
●国語記述式問題・英語民間試験、原因は政治主導の教育再生実行会議
先の松岡亮二早稲田大学准教授は、「やりっぱなしの改革はもうやめて、議論や政策決定のプロセスの透明性を高め、導入がもたらす効果についてきちんとしたデータを得て、検証していかないといけない」とも指摘していました。
有料記事であり、冒頭しか読んでいないのですけど、どうも今回の件は政治主導が悪い方向に出た模様。実を言うと、私も以前は政治主導の強化を支持していたんですよ。ただ、実際にそれによって起こったのは、日本を悪くすることばかり。政治主導が強すぎることには問題が大きいと認めざるを得ない状況になりました。
<今回の入試改革の出発点は、安倍晋三首相肝いりの教育再生実行会議の13年の提言だった>
(
政治主導の「砂上の楼閣」 文科省は追認、制度設計甘く 共通テスト「記述式」 会員限定有料記事 毎日新聞2019年12月17日 20時35分(最終更新 12月17日 20時35分)より)
教育再生実行会議については、最近、
教育再生実行会議メンバーがヤバイ 差別,ニセ学位,飲酒運転擁護,研究不正擁護などを再投稿しています。悪いメンバーを選んだ結果、やはり日本を悪くした…というもので、問題の根本的な原因はおかしなメンバーを選んだ安倍首相にありますね。
【本文中でリンクした投稿】
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