2013/9/10:
●本格的・全体的な好況とは別の話…経済効果の嘘
●思いつきで増額…クールビズの経済効果1000億円はいい加減
●経済効果の嘘 他の消費が減る共食いを無視した金額?
●大型連休で消費が増えるって本当?前後の出費を見てみると…
●本格的・全体的な好況とは別の話…経済効果の嘘
2013/9/10:
ロンドン五輪は経済効果1.5兆円だったのに東京は150兆円ってあり得るの?などの話をやった関係で検索していて、そうだったのか!と思った話がありました。
ただ、その話をする前に、「経済効果」の一般的で淡白な説明をどうぞ。
デジタル大辞泉の解説では、経済効果を以下のように説明しています。
<ある現象やブームなどが、国・地域の経済に及ぼす好影響の総体。本格的・全体的な好況を引き起こすわけではなく、特定の業種が一時的に潤う利益の合計>
よく読むとこの説明においても、<本格的・全体的な好況を引き起こすわけではなく>というネガティブな注意書きが出ていますね。今回の話もこういった「経済効果」という良さげなイメージに騙されているといった話です。
●思いつきで増額…クールビズの経済効果1000億円はいい加減
ロンドン五輪は経済効果1.5兆円だったのに東京は150兆円ってあり得るの?は、皆さんご承知の通り算出はいい加減なものだよねっ…て話を書きましたが、それ以前の考え方でまず問題があるようです。
あっちで書いたオリンピックの場合はまたちょっと違うところがありますが、わかりやすかったのが
経済効果,Check経済用語にあったクールビズの例です。
第一生命経済研究所は中央官庁で2005年6月から始まったクールビズの経済効果を、約1,000億円と算出。内訳は直接の経済効果が約619億円、衣料関連の小売業などへの間接的な恩恵も含めた全体の波及効果で約389億円(元サイトでの合計約1008億円から逆算)というものです。
このうち波及効果については、例の「いい加減だよね」という説明があり、"「あること(そのテーマ)」に少しでも関係あると「計算した人が思いついたもの」を積算したもの"と書かれていました。
●経済効果の嘘 他の消費が減る共食いを無視した金額?
これらは前回と同じいい加減さ。一方、直接の経済効果の算出で根本的に問題なのは、クールビズによる"追加出費があっても他の支出は抑えないという、言わば都合のよい前提となっている"ということです。
具体的にクールビズの場合は、以下のような変化があったことがわかっています。うちでは短くするために「共食い」という言い方をしたのですけど、支出先を変更したことで経済的に打撃を受けている業界のことを「経済効果」は無視しているとされていました。
<内閣府が実施している景気ウォッチャー調査では、(中略)「本来、夏物のジャケット、ワイシャツ、ネクタイを取り揃えて販売しているが、クールビズの影響でバランスが崩れている」、「クールビズの影響か、40代の客を中心にスーツの来客が激減しており大きな打撃を受けている」といった現場の声も取り上げられています>
全体としてはマイナス面をプラス面が上回ったという見方であるものの、クールビズ商品に支出をかける代わりに他の商品への出費を抑えているという部分は軽視されがちです。
しかも、上記は衣料品関連の声しか取り上げておりませんので、他分野にまでわたって出費を抑えている可能性すらありますし、薄く広く出費を控えた場合にはマイナス面の効果がわかりづらくなっていそうです。
●大型連休で消費が増えるって本当?前後の出費を見てみると…
これで思い出したのが政治家の好きな新たな連休創設の話。
祝日を増やしても経済効果はない?消費は増えておらず逆効果の可能性もで紹介した話ですが、確かに連休は平日より出費がいくらか大きいことがわかっています。
しかし、同時に大型連休の前後は出費を抑えるという傾向が出ていました。結局、支出先を変更しているだけというところが大きく、全体でならして見るとそう大きな効果があるわけではないということになっていたのです。
そちらの指摘でもっともだなと思ったのが、休日を増やしても給与が増えるわけではなく、使えるお金というのは基本的にいっしょだということ。使えるお金がいっしょなのであれば、他のものを買い控えるという行動は合理的です。そして、先ほどのクールビズに関しても、やはり同様のことが言えそうでした。
●経済効果は新たな付加価値ではない!需要の先食いにも注意
先のサイトでは経済効果について、<特定のイベントを通して、それに関連したお金の流れがどのくらいの規模になるかを予測したもの>としていました。その上で、「新たに付加価値が生み出されるもの」ではないという重要な指摘をしています。。端的に言えば、
無から有を生み出すものではないという言い方もされていました。
新たな商品の出現などにおいて、これまでにない需要や雇用などを生み、マイナスよりプラスが大きいという場合はあるでしょう。ただ、そのマイナスの方も考えていないと、かなりその数字は過大に算出されているということになります。イメージがだいぶ異なりますね。
最初に出したオリンピックの話はまた少し特殊なのですが、このオリンピックに関連した投資は結局「需要の先食いではないか?」という批判もあります。これは消費税増税と似た感じでしょうか。増税による駆け込み需要なんかは、一時的に消費が増えても「需要の先食い」に過ぎないという批判があります。上記の考え方を見ていると、こういった需要の先食いも経済効果の中では考慮されていないのではない感じでした。
支出先の変更や需要の先食いによって必ずその経済効果がゼロもしくはマイナスになってしまう…みたいな極端なものではありませんが、相当都合よく見積もられた数字であることには気をつけねばなりません。オリンピックの方でも書いたように、やはり経済効果の数字をそのまま無邪気に伝える報道は罪だと思います。
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