武雄市のツタヤ図書館は最初おもしろいと思いましたし、人気もあるようです。ただ、いろいろと問題点がありそうで、税金の使い方としてはふさわしくない感じでした。(2013/9/14)
2013/9/14:
●武雄市のTSUTAYA図書館が人気すぎる
●雑誌販売で運営コスト削減とCCCは説明
●TSUTAYA図書館はIT利用も特徴
2018/02/09:
●多賀城市のツタヤ図書館、価値のない中古本を高価格で大量購入
●市場価格の2倍から10倍の価格で購入か?
●本を借りるだけでポイントがつくTSUTAYA図書館
●TSUTAYA図書館には問題点もある
2019/08/31:
●海老名市ツタヤ図書館では規約違反 でも見て見ぬ振りで放置?
●新館長も規約違反、仕事をもらうためにツタヤは嘘をついた?
●武雄市のTSUTAYA図書館が人気すぎる
2013/9/14:結構問題点も指摘されていた武雄市のTSUTAYA(CCC)図書館。どんなもんかな?と記事を一つ読んでみました。
武雄市の図書館は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が佐賀県西部にある武雄市から運営を任されています。2012年11月から2013年3月までの一時休館の期間で内部を大幅改装。2013年4月にリニューアルオープンしたところ、6月末までの3カ月間で、利用者数は累計で26万に達しました。
多くの利用者が訪れる狙いは、居心地の良い空間でゆったりした時間を過ごすこと。館内にはスターバックスコーヒーの店舗があり、買った飲み物などは、館内のどこにでも持ち歩けます。
広いカフェスペースでも、好きな雑誌を持ってきて読むことができます。この雑誌は貸し出しをしておらず、CCCが販売しているもの。購入する前でも手に取って読むのは自由にできるので、こういった形も可能なようです。
(
CCCがITで武雄市図書館を“改造”。3カ月で26万人が利用:日経ビジネスオンラインより)
リニューアル前の1年分の利用者数を超えているというので、すごい人気です。ただ、以前
本来の役割を忘れた図書館は泥棒と同じ 電子書籍の敵は図書館だというのを書いていて、そもそも図書館はどうあるべきなのか?というところで引っかかりますけどね。
また、数字にごまかしありがあるという指摘もありましたので、
ツタヤ図書館は税金を使った利益供与 武雄市・高梁市で問題にというのも書きました。
●雑誌販売で運営コスト削減とCCCは説明
上記で出てきた雑誌販売は運営費の一つのようです。以下のように説明されていましたが、
ツタヤ図書館は税金を使った利益供与 武雄市・高梁市で問題にでは、やはり嘘だと指摘されていました。
雑誌は購入して貸し出すのではなく、販売に切り替える。CCCはそんな運営コスト削減の策を講じる一方で、「究極の読書体験」を提供できる場づくりを目指した。つまり、図書館利用者を顧客とみなし、その顧客が経験を通して得る価値、すなわちカスタマー・エクスペリエンスを高めることにこだわった。
「自分を含めて本好きが長く過ごしたくなる図書館にしたい」(樋渡市長)という要望を受け、改装に当たって、東京・渋谷の代官山 蔦屋書店などで実績があるカフェ併設スタイルを採用した。
スターバックスコーヒーの店舗を設置したり、書庫をなくすなどして利用者のスペースを広げたりした。広げたスペースには代官山蔦屋書店のものと同じデザインの書棚や机、椅子などを配置。書庫をなくす代わりに、約20万冊の蔵書は、すべて書棚に並べた。
「書庫をなくす代わりに、約20万冊の蔵書は、すべて書棚に並べた」ということは、普通の図書館だと並んでいない本が大量にあるってことですね。マイナーなものがそうなんでしょうか?
書棚の間を利用者が見て回る楽しさを演出するため、書棚への並べ方に工夫を凝らす。利用者に身近なテーマの本は図書分類に基づく並びをやめ、「グルメエッセイ」「手芸」といったジャンルごとにまとめた。(中略)
従来の並べ方だと、釣りの本は芸術の書棚、ガーデニングは産業の書棚、と分かれていた。リニューアル後は、趣味の書棚に集約。書店にいる感覚で、本を選べるようにした。
●TSUTAYA図書館はIT利用も特徴
その他の特徴も書かれていたものの、思ったより物足りない内容でした
20万冊ものなかから、1冊を探すとなると、見上げるほど高い書棚が並んだり、入り組んだ配置になっている場所もあったりして一苦労だ。そこでその苦労を、ITを組み込むことで解消させる。
具体的には、書棚スペースに、iPadベースの検索機を分散配置させている。利用者はタッチパネルの操作で、読みたい本を検索すると、配置場所が地図で示されるようにしている。印刷もできるので、利用者は迷うことなく目当ての本がある書棚に行き着ける。(中略)
国内に住んでいる人であれば、手続きするだけで借りられる。そのため武雄市外の利用者が半数を占めている。500円の宅配サービスで借りた本をどこからでも返却できるサービスも提供しているので、首都圏から借りにくる利用者もいるという。
●本を借りるだけでポイントがつくTSUTAYA図書館
もっと知りたいなと思ったので、もう1本別な記事も読んでみました。
佐賀の「TSUTAYA図書館」、好調に広がる波紋 :日本経済新聞
2013/5/19 21:20
佐賀県武雄市が、「サービス向上」を掲げて今春オープンした民間企業運営の図書館が注目を集めている。カフェや書店の併設などが話題を呼び、来館者は前年の5倍に急伸。近隣の書店などは「客を奪われる」と悲鳴を上げ、運営方法を巡る批判もくすぶる。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1602D_Z10C13A5CC1000/
こちらは負の面も突っ込んでいて、良さげですね。
市は昨年5月、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を市立図書館の指定管理者とし、5年間運営を任せる方針を発表。市が約4億5千万円、CCCが約3億円を負担して建物を改装し、4月1日からオープンした。
開館時間は午前9時~午後9時と4時間延長し、年中無休に。TSUTAYAのポイントカード「Tカード」を図書館利用カードとして使え、1回の貸し出しで3ポイント(3円)がつく。
タダで借りるのにポイントがつくんですね。これも貸出量増加に貢献していそうです。
司書13人はCCCが継続雇用し、レンタル店などの利益で人件費を賄う。市は年間1億1千万円の委託料を支払い、直接運営と比べ年1千万円のコスト削減を狙う。
直接運営と比べて1千万円も減るそうですが、割合としてはあまり差がないです。ただ、これはやはり数字にごまかしありとのこと。本当は逆に増加していると、
ツタヤ図書館は税金を使った利益供与 武雄市・高梁市で問題にの記事では、書かれていました。
●TSUTAYA図書館には問題点もある
さて、悪い話の方です。
一方、地元の書店やDVDレンタル店には脅威だ。市内で書店を営む男性は「売り上げが約1割減った」と肩を落とす。「市が税金で書店を誘致したようなもの。太刀打ちできず、このままでは廃業するしかない」
商業店舗を併存させる運営方法を巡り「来館を書籍販売やレンタル利用など自社の利益に誘導している」との批判に対し、市は「年間約600万円の適正な賃料を受け取っている」(担当者)と説明する。
Tカードのポイント付与は、書籍の無償貸与を非営利に限定している著作権法に抵触するとの指摘もあるが、市は「窓口業務省力化への協力の対価であり問題ない」(同)との見解を示す。
私は「町の本屋を守らなくてはいけない」みたいな意見には同調しません。競争で負けるのは仕方ないことです。
ただ、武雄市のケースは税金で民間の書店などを脅かしています。
本来の役割を忘れた図書館は泥棒と同じ 電子書籍の敵は図書館だがそもそもそういう話であったように、図書館の役割としてそれでいいのか?という問題です。この利益誘導の話は、
本来の役割を忘れた図書館は泥棒と同じ 電子書籍の敵は図書館だでも出てきます。
TSUTAYA図書館は電子書籍とはまた違う意味で、図書館とは本来どうあるべきか?という問題を投げかけているようです。
●多賀城市のツタヤ図書館、価値のない中古本を高価格で大量購入
2018/02/09:新しい記事じゃないのですけど、
ツタヤ図書館 古本を市場価格の9倍で大量購入の疑い…1冊ごとの価格精査せずどんぶり勘定 Business Journal / 2017年1月14日 6時0分(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)というものを。こちらは武雄市ではなく、宮城県・多賀城市のケース。多賀城市では、市長サイドが新図書館の運営を強引にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に決めたといわれているそうです。
2016年9月21日に開催された宮城県・多賀城市議会決算特別委員会で、ツタヤ図書館問題を追求している共産党の藤原益栄議員が、中古本の選書リストに価格欄がないことをもとに、価格をつけずにまとめ買いしたことについて問いただしていました。これは個別に価格の妥当性はチェックしなかったことを意味し、図書館としては異例だそうです。
まとめ買いが必ずしも悪いか?というと、そうではないでしょう。手間を掛けずに、一括で大量注文することにより安く買うといったことができそうです。ただ、このケースがやはり問題だと感じたのは、価値の低い本を高く買い取っていたと見られるためです。
●市場価格の2倍から10倍の価格で購入か?
追加蔵書として購入した図書の1冊当たりの平均単価について質問すると、担当課長は「新刊本2085円、新古書本(中古本)920円」と回答。しかし、リストには、市場価値が極端に低い本が大量に含まれています。
藤原議員は、古書店の店主から得た情報として、出版から5年以上経過した古本の販売価格は100円以下で、5年未満でも300~500円だと紹介。上記は相当高いと思われます。
また、2013年からCCCが運営している佐賀県・武雄市図書館の場合は、諸経費込みで756円なのですが、多賀城市はさらに高いみたいですね。藤原議員は、装丁の経費は総額738万5000円、冊数で割ると単価が211円、輸送費が1冊当たり11円で、本の単価に足すと1142円になると試算。担当課長に確認すると、事実だと認めたそうです。
これは、ツタヤ図書館が好きな人でも擁護できない内容ではないでしょうか?
●海老名市ツタヤ図書館では規約違反 でも見て見ぬ振りで放置?
2019/08/31:ツタヤ図書館では、コンスタントに問題が起きますね。佐賀県武雄市に続く2番目のツタヤ図書館として誕生した神奈川県海老名市立中央図書館。2019年3月まで館長をやっていた高橋聡さんは、議会で「自館を頻繁に留守にして他県へ営業に飛び回っているのは不適切」」と批判されていたとのこと。
「館長は常勤でない」とツタヤ側は説明。ただ、そうなると、「中央図書館長がCCC図書館カンパニー社長と兼業していることは、図書館長の事務掌握を定めた図書館法13条違反にあたるのではないか」と議会で指摘されたそうです。規約違反なら問題だろうと思うのですけど、それ以上書いていないのでどうもなあなあで済まされている感じですね。
こうした追求を逃れるためなのか、2019年4月からは館長が変わりました。ただ、本来変わったらOKという問題ではないでしょう。例えば、民間企業で規約と異なる運営をしていた場合、損害賠償などの問題に発生しても仕方ありません。ツタヤは特に信頼できないので、あらかじめ規約違反した場合の多額の違約金などを設定する必要があるかもしれません。
(
海老名市のツタヤ図書館、館長が司書資格を持っていないと発覚…重大な契約違反の疑いも | ビジネスジャーナル 日向咲嗣/ジャーナリスト 2019.07.16より)
●新館長も規約違反、仕事をもらうためにツタヤは嘘をついた?
さらに、大急ぎといった感じで、2019年4月から就任した高橋哲(あきら)新館長も負けず劣らずに問題。この方も司書資格を持たず、図書館勤務経験もまったくない…という“ド素人”だったのです。
そして、これがまた海老名市が指定管理者を公募した際の募集要項の、「統括責任者(館長)は、類似施設で責任的立場に従事した経験のある者」を満たしていないと考えられます。
ひょっとしたらそもそもツタヤは規約を満たす人材がいないのかも。これは本来ならとれなかった仕事を嘘をついて獲得しているということですから、大問題なんですけどね。また、この問題についても海老名市は積極的に対応せず、ツタヤの運営ありきになっている印象を受けました。癒着・利益供与的な問題もありそうです。
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