違和感あるかもしれませんので、先に表記について。
超伝導(ちょうでんどう、Superconductivity)とは、特定の金属や化合物などの物質を非常に低い温度へ冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象。電気工学分野では「超電導」と表記されることもある。
Wikipedia 今回の元記事では「超電導」の表記の方です。
夢の超電導送電、日本勢が“走る”:日経ビジネスオンライン
森岡 大地 2013年8月5日(月)
7月24日、世界初の超電導ケーブルによる電車の走行試験が東京都国分寺市の鉄道総合技術研究所(鉄道総研)で公開された。
超電導とは、特定の金属や化合物を超低温に冷却した時に、電気抵抗がゼロになる現象のこと。この技術を応用して作った線材を断熱パイプなどに収めたのが、超電導ケーブルだ。
液体窒素などの冷媒を内部に流して超電導状態を維持することで、一般的な銅線を使った場合などに比べて、
送電時の電力損失を劇的に減らせる。1986年に比較的高い温度で超電導状態になる「高温超電導体」が開発されて以来、世界各国で研究開発が進められてきた超電導による送電がいよいよ現実のものとなる。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20130731/251776/?n_cid=nbpnbo_mlp 超電導ケーブルの魅力は、電力損失だけではありません。
「送電ロスの削減だけでなく、回生エネルギーの有効活用にも超電導ケーブルは効果的」。鉄道総研研究開発推進室担当部長兼、超電導応用研究室長の富田優博士は語る。
「回生エネルギー」とはまた聞き覚えがありませんが、
"電車を停止させる際、モーターを発電機として使い、運動エネルギーを電気として回収したのが回生エネルギーだ"
とのこと。
既に回生システムは実用化されており、このエネルギーを電線を通じてほかの電車へと供給することはできるが、送電線の電気抵抗が大きい現状のシステムでは、近くにいる電車にしか供給できない。
だが、超電導ケーブルなら原理上、電車がどこにいても電気を融通し合えるようになる。トータルでの電力削減効果は、5%程度が見込まれている。
5%ってどうなんでしょうね。長い目で見ると意味がありそうですけど。
ただ、これまた別の効果があります。
さらに、車両への電気供給の効率化や平準化により、数キロメートルおきに設置されている変電所の削減や集約化などの効果も期待できる。
これで変電所の設備費用も減らすことができます。また、変電所が減るということはそれに関わる人員の人件費も削減できるかもしれません。
こうやって積み重なってくると、やはり結構大きなものになりそうです。
今回の31メートルケーブルを使った走行試験で取ったデータを検証し、秋以降には310メートルのケーブルを使ったより実践的な実証実験も計画。「実際の鉄道網への敷設まで想定したもので、実用化への大きなブレークスルーになる」と富田博士は力を込める。実用化までは、5年程度を見込む。
この超電導送電の実用化の目途で、日本に大きなチャンスが生まれているそうです。"超電導ケーブルや線材の開発で世界をリードする"企業が多いためです。
高温超電導体は数種類あり、例えば、レアメタルのビスマスを使った超電導体では住友電気工業がリードする。また、古河電気工業やフジクラなど国内のほかの電線メーカーは、レアアースのイットリウムを使ったケーブル開発を進めている。
量産化・長尺化技術ではビスマス系が先行しているが、使う銀の量が少なくて済むイットリウム系の方が最終的なコスト面では有利と言われる。
「交流の場合は、原理的に抵抗はゼロにならない」(富田さん)ということで"家庭向けなどの既存の送電網"はダメなのですが、実験のあった鉄道は最適です。
検索してみると、実は既に"実線路に超電導ケーブルが適用された"例がありました。先に出てきた住友電気工業のものです。
住友電気工業株式会社|高温超電導ケーブル 実用送電路における送電実証試験プロジェクト
現在、アメリカのエネルギー戦略では、2030年までに超電導ケーブルによる強固な送配電網を全米に構築する計画が検討されています。(中略)
アメリカ政府及びニューヨーク州の資金(税金)を使うため、アメリカのSuperPower社がプロジェクトマネージャとなり、
住友電工グループがビスマス系超電導線と端末、ジョイントを含む超電導ケーブルシステム一式を製作、施工します。(中略)経済産業省によると、このAlbany プロジェクトが、日本の企業の中でアメリカ政府資金のプロジェクトに参加した初めてのケースであるとのことでした。
(中略)8月2日にはニューヨーク州のPataki知事、Canestrari 州議員が来賓として出席される中、当社の松本社長も出席して盛大な竣工式が開催されました。この竣工式でPataki知事は住友電工の技術とリーダーシップを称え、演説されました。「最近起こったクイーンズ地区での停電は、配電系統の故障で、大電力を流すために一つの幹線のケーブルが溶けたからだ。しかし、本日からはこのようなことは起こらないであろう。何故なら、ここAlbanyで
世界の歴史上初めて、実線路に超電導ケーブルが適用されたからである。これは過去にないことであり、誇りに思うべきことである。この技術は、単に新しいテクノロジーというだけでなく、劇的なブレイクスルーである。どんな状態でも灯りは点り続けねばならない。そのためには、この新しい技術が必要である。このAlbanyの技術を改良し、将来はニューヨーク州、アメリカ全土、世界へ広がっていくことを期待している。(一部)」 この超電導ケーブルは現在まで全くトラブルなく、無人で運転され続けています。
http://www.sei.co.jp/products/energy/topics/001/ 上の記事は何年の8月2日なのかがよくわからないんですけど、じゃあ、さっきの試験は世界初じゃなかったの?と疑問に思ってきました。
しかし、まあ、日本企業の快挙であることは変わりありません。日経ビジネスオンラインでは最後にこう書いていました。
安全性が重要になる鉄道で信頼性を確立できれば、超電導送電の未来は大きく開く。省エネに貢献する超電導送電の需要は、これから世界で増えるのは確実。超電導送電網は、伸び悩む日本のインフラ輸出の起爆剤となる可能性もある。この分野でリードする日本勢は、基本技術だけでなく、敷設や運用の手法構築、特許の確保などを急ぐべきだ。
久々に明るい話題ですね。
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