まず、『週刊ダイヤモンド』(5月25日号)の話から。
雑誌の「株式投資特集」とどう付き合うか|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン
2013年5月22日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
この特集号は自分自身にも鋭い鉾先を向けた。それが、
「週刊ダイヤが株特集を組むとなぜ株価がピークを打つのか」(P46~47)と何とも直裁な見出しを付けた、2ページにわたる反省文的な記事である。
http://diamond.jp/articles/-/36279 週刊ダイヤモンドは時折こういった反省を見せます。形だけのものだろうと思うかもしれませんけど、それすら他誌ではなかなか目にすることはないので、やはり特殊だと思います。
なお、「~が株特集を組むとなぜ株価がピーク」ということはときどき言われており、「~」の部分に日経新聞など他の媒体が入ることがあります。結局他のところであっても同じだという話はこの後も出てきます。
リードには「ここまでは、他のメディアの誤報を批判してきたが、本誌も経済誌の本領ともいえる株特集で予測をはずしまくっているのだ」とある。そもそも、「先の予測を届けよう」というつもりで株式投資特集をつくっているのだとすると、それ自体がかなり問題だが、週刊ダイヤモンド編集部がどう自己反省しているのか興味深い。
編集部の反省によると、株特集が外れる原因は大きく言って2つある。
1つ目は、紙媒体の宿命とも言える、元データの発表と記事掲載までのタイムラグの存在だ。
ダイヤは、決算発表のある5月初旬を待って、株特集を企画するのが定番だったが、投資家の注目度の高い決算発表(それよりも今期の予想の発表が重要だが)時の情報はただちに株価に反映する一方で、その「数週間後」に特集号が発表されるという構造的な間の悪さがあった。
これはじゃあネット媒体のような即時性のものなら大丈夫という宣伝文句に使われそうなのですけど、どちらにしろ当たらないのです。
山崎元さんも結局"
一相場がどの程度続くのかは、プロでもわからない"と書いています。
こういった危うさとしては、次の要因の方がより根本的だと思います。
これは
専門家や市場関係者の株価予想は当たらない 読者に株を買わせるためのものの話も思い出します。
株特集のもう1つの外れ要因は、毎号の売り上げが気になる雑誌の場合、株価が上昇するほど株特集が売れやすいので、株価のピークに向かって、あるいは株価のピークを見てから株式投資特集号を企画してしまうことだ。
(中略)ビジネス上の必要性に忠実であれば、週刊ダイヤのような経済誌でも相場が盛り上がっているときには、高値が怖くても株特集をやらざるを得ない。そして、特集をする以上、雑誌の売り上げ増を狙って、相場の盛り上がりに乗った「順張り」的な記事を並べることになるだろう。
「ビジネス上の必要性に忠実であれば」ってのは、要するに「金になれば何でもよし」ってことですね。
予想が当たっても当たらなくても「順張り」=「株が上がる」という方向性の特集をすれば売れるのだから、雑誌としては読者の利益に関係なしにやるということです。
次は聞いたことのなかった話ですけど、"ブームのピーク、すなわち高値圏で世に出てしまうのは、雑誌の株特集ばかりではなく、投資信託にも言える"そうです。
「大量設定された時期のファンドは、運用で苦戦する」とは、投信業界で昔からよく言われることだ。
古くは、2000年のネットバブルのピークの時期に1本の、しかも日本株ファンドで1兆円以上の金額を集めた某大手証券のファンドなどが典型例だ。
ひどい詐欺です。投資信託は運用成績と売上が全然比例しない、そもそも大半がゴミなんて話もあります。
相場にはいつかピークがあり、ピーク付近では人々の関心が集まる傾向がある。ダイヤモンドに限らず「株式投資特集号」が、いずれは天井圏で発行されて、読者に高値での投資を勧めてしまうのは、雑誌ビジネスのインセンティブ構造を考えると止むを得ないことだ。
ただ、それは読者を騙しています。私は擁護できません。
先ほど雑誌発売までの時間の話がありましたけど、私が大嫌いな個別銘柄の推奨に関しても以下のようにありました。
一般誌の場合、経済専門誌のように、株特集を何週間もかけてつくるわけではない。多くの場合は、雑誌の発売の数日前にある原稿〆切のそのまた2、3日前に取材の電話がかかってくることが多い。ただし、「専門家○人に聞いた有望銘柄○○」のような手間のかかりそうな取材は、さらに1週前から取材がスタートしている場合がある。
つまり、雑誌の発売から数えて、相場の雰囲気全体に関するコメントは1週間前のもの、また個別銘柄に関する情報は2週間前くらいのものだと考えて、記事を読む必要がある。率直に言って、相場の世界で2週間は長すぎる。(中略)
個別の推奨銘柄に関しては、雑誌に載っている株価が発売時点に近いものに修正してあるとしても、銘柄選びの根拠が古いので、情報としてあまり影響を受けない方がいいように思う。これが月刊誌ともなると、さらに情報が古い。
私が山崎元さんを好感しているのは変な投資の進め方をしないせいですが、今回は"私は個別銘柄の推奨はしない"ともおっしゃっていました。読者に優しいです。
ただ、上の流れから「雑誌は古いけど鮮度のあるネットなら向いている」という話に行ってしまいましたし、以下のような話も。
株式を実際に持っている読者は、これからも株価が上がるという話を聞くと心強いし、自分が持っている銘柄が推奨されているのを見ると、自分が褒められたようないい気分になる。
株式投資特集には、情報提供の目的の他に、こうした読者に向けた娯楽目的がある。こう考えると、当たり外れや情報の価値を検証して目くじらを立てる必要がないような気もしてくる。
それが既に持っている銘柄ならそれでも良いのでしょうけど、実際には特集を元に買う方が存在するのです。やはり私は目くじらを立てる必要があると思います。
ここらへんは感心できない内容でしたが、以下には賛成です。
結局、投資に関する記事で真に役に立つのは、その時々のマーケットの解説と予測を述べたものよりも、投資に関する「考え方」や情報の「読み方」を教えてくれるような記事ではないだろうか。
当たるとも思っていない個別の銘柄推奨で読者をペテンにかけるよりも、投資の「考え方」などを教えるべきです。
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