●山善「最先端の商品や成長分野は間違い。絶対もうからない」
2013/9/19:タイトルが気になって読んだ
取引先を「おまえ」…シャープの社風を感じた瞬間 :日本経済新聞(電機は負けへんで 記者座談会 2013/7/25 14:30)という記事。ただ、シャープ単体の話ではなく以下のような趣旨。関西の電機業界全般に関する話のようです。
<「関西Made」は第5部の「電機は負けへんで」で、関西の電機業界に関係する人物にフォーカスした。21回に及ぶ連載では大手メーカーの苦境ぶりを浮き彫りにするとともに、そこから抜け出そうとする取り組みやヒントを示してきた。取材に当たった記者に、書ききれなかったことや感じたことを振り返ってもらう>
ただ、出てくる話はそれでもおもしろいものがいくつかあります。まず、シャープに絡まない話で気になったものから。山善の白石忠史・上席執行役員は「最先端の商品や成長分野をやらないとあかんとよく言うけど、大きな間違い。先端商品は絶対にもうからない」と話していたのが印象的だったという話をしています。
<最先端分野は次にどのような商品が生まれてどう流れが変わるか分からない。価格もすぐに下落する。山善ではコモディティー化した製品に商機があるとみています。ローテクでありふれた製品でも、消費者が本当にほしいものを作れば利益は出る。肝心なのは消費者のニーズにしっかり向き合うことなんですね>
私は正解というのは一つではないと思います。なので、先端商品が得意な企業はそれはそれで良いと思いますよ。ただ、みんなが同じことをすれば、そりゃ負ける企業も多くなって当たり前です。いわゆる「棲み分け」という使い古された言葉ですが、案外実行されていないということなのでしょう。
そういう棲み分けで考えると、日本にはテレビが向かないのかもしれません。消費者物価指数(CPI)の推移を見ると、テレビなど家電製品の値下がりが飛び抜けて大きいとのこと。電機メーカーが日本で事業を継続するのはそもそも困難に見えるといった話がありました。
ビジネス的な学びは特にない気がするものの、「エルステッドインターナショナルの永守知博社長は起業する時、清水寺の関係者から出資してもらったそうです。さすが京都だなと思ったら、清水寺の人とは米国のボストンで知り合ったと聞いて2度驚きました」という話は単純におもしろかったです。
●「取引を続ける」という言葉を信じてシャープから独立した結果…
次からシャープが出てくるものですが、最初はそこまでシャープと強く関係ないもの。「シャープやパナソニックと取引がある中小企業に取材の打診しましたが、ほとんど断られてしまた」という話が出ていました。別の記者も以下のような話をしていました。大手メーカーが悪いという話はなかなかできないのかもしれません。
<私も中小企業に取材を申し込むと「まだ話せる段階ではない」とか「そんなこと話したらそれこそ仕事がなくなってしまう」と言われて、かなり断られました。数十社に連続して断られたときには正直、企画が成立しないのではないかと不安になりました。勇気を出して取材に応じてくれた企業やオフレコで話をしてくださった企業の方には感謝しています>
もう少しシャープに関する話としては、FUKの植村光生社長はシャープを退職するとき、複数の取引先から「独立しても取引を続ける」との口約束があったのに、実際に仕事をくれたのは1社だけだったという話がおもしろいですね。「シャープという看板がなかったら、ただの人だった」とのこと。シャープ時代を知る人からは「独立して柔らかくなった」と言われたともいいます。
個人と取引しているのではなく、会社と取引しているというのは当然の話。ただ、なかなか独立前はわからないものです。皆さんも自分の実力で仕事しているように感じるかもしれませんが、実際には「会社の看板+人」です。同じ看板を背負った同士での優劣なら能力差と考えても良いですけど、看板の力はすごく強いのでそれなしだとかなり違ってきます。
●シャープの倒産危機は必然?他社社員を「おまえ」と呼んで嫌われる
ただ、上記はシャープの人たちが特別嫌われているからかも…という可能性を感じる話もあったんですよ。「独立して柔らかくなった」にもそういう勘ぐりをしてしまいます。タイトルにあった「おまえ呼ばわり」の話などです。他の記者からもシャープの嫌われエピソードがツルツルと出ています。あまりにもポンポン出るので、読んでて笑えてきました。
岩本 <シャープは入社1~2年目の若手社員でさえも、
取引先の従業員を「おまえ」と呼ぶという話を色々なところで聞きました。ある社長は「そういう扱いを受けた社員は、
もうシャープの製品は買いませんよね。そうやって全国でファンを失っているんですよ」と話していました>
渡辺 <私が取材した中小企業の社長は、若手社員から「おまえ」呼ばわりされてプライドを傷つけられながら、仕事を失いたくない一心で歯を食いしばって厳しい要求に応えていたそうです。シャープはこれを機に、
立場の弱い取引先を見下すあしき社内文化を一新し、多くの人に愛される会社へ生まれ変わってほしいですね>
世瀬 <2007~10年のリーマン・ショック前後を電機関連の中小企業が集積している長野県の松本支局で過ごしましたが、以前から下請けに部品の値下げを迫る
シャープの悪評は広がっていました。「もうやりたくない」という声も多かったですね。今の経営危機は無理な経営のひずみが出てきたからではないかという気がします。銀行が金融支援をすれば信頼を取り戻せるような簡単な話ではないと思います>
この投稿は下書きしてから更新までにかなり長い間があり、その投稿していなかった間に「シャープ営業黒字!」なんてニュースが入ってきちゃいました。ということで今はもう大丈夫なのかもしれませんけど、こういう話聞いていると、シャープが苦境に陥ったのは必然かなという気がしてきます。
2021/09/02追記:ご存知の通り、シャープの黒字は一瞬であり、やはり本物ではありませんでした。いよいよ本格的にダメになってしまい、台湾のホンハイに買収されています。日本企業が落ちぶれて寂しい…と思う人もいたでしょうが、上記のようなエピソードの印象が強かった私はむしろ日本にとって良いことだと思ってしまいました。
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