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マグロ消費量の推移 日本の伝統食じゃない?アメリカ向けで発展したマグロ漁業


2013/9/20:
●マグロは日本の伝統食じゃない?アメリカ向け缶詰で発展したマグロ漁業
●昔はあまり食べなかった日本人、金持ちになって食べるように…
●日本人のマグロ消費量の推移 次第に輸入量が増えていく様子がわかる
●ピークは1993年か2002年か? 漁獲量は減るが、輸入量増加で消費増やす
●最近は言うほど食べすぎではない?漁獲量も輸入量もかなり減少している
●マグロを乱獲してしまったために安いマグロや稚魚が増えている可能性
●現在のマグロ不足は日本よりも世界のマグロ需要の増加が大きい?
2020/07/14:
●中国?韓国?日本のマグロ漁獲枠拡大の提案に反対した国
●マグロはもっと捕って良い?資源保護を優先した国のその後…


●マグロは日本の伝統食じゃない?アメリカ向け缶詰で発展したマグロ漁業

2013/9/20:うなぎ・マグロ不足は食べ過ぎだから 稚魚まで獲るから当然減るの補足。日本人のマグロ消費量について知りたかったので、マグロの漁獲量と消費量|マグロについて|WWFジャパンというページを見てみました。

 こちらには、驚きの話がありました。日本人はマグロを食べるのを日本の伝統だと思っているでしょうし、実際、これは嘘とまでは言えない模様で、「マグロは日本で昔から食べられていました」とありました。ただ、意外だったのは、日本のマグロ漁業ということで考えると、日本国内の事情ではなくアメリカの事情が大きかったという話。以下のような指摘があったのです。

<マグロは日本で昔から食べられていましたが、冷蔵技術がまだ発達していない頃は、マグロを食べることのできる場所や機会が限られていました。産業としての日本のマグロ漁業が発展したのは、第二次世界大戦後、アメリカの缶詰市場に向けた輸出が盛んになってからです>

 「マグロを食べることのできる場所や機会が限られていました」というのは、重要なポイント。「日本で昔から食べられていた」というのは、「日本人がみんな食べていた」という意味ではありません。クジラなどもそうですね。最近の恵方巻が一部の地方だけのものというのは有名ですけど、日本の伝統とされるものには、一部の人・一部の地方だけの文化というケースが意外に多いのです。


●昔はあまり食べなかった日本人、金持ちになって食べるように…

 ということで、なんと日本のマグロ漁業が大きく発展したのは、アメリカへの輸出のためだったようです。日本人がたくさん食べたからじゃなかったんですね。

 ここでは、<今では考えられないことですが、1960年代の日本では、マグロは輸出量が、輸入量を上回っていました>ともありました。しかし、日本人が豊かになったせいでこれが変わります。加えて、円高のおかげで、マグロも安くなっていったため…というのがあるようです。

<それが、日本の経済成長によって、国内のマグロの消費量が増えてきました。そして、1970 年代になると、輸入と輸出は逆転。特に1980年代半ば以降の円高に伴い輸入が増えるにつれ、国内には安いマグロが大量に流通するようになりました>


●日本人のマグロ消費量の推移 次第に輸入量が増えていく様子がわかる

 さて、私が知りたかった消費量の変化。元データは図ですので、私が非常に大雑把に読み取った値を書いていきます。「漁獲量+輸入量-輸出量」が「日本人の消費量」ってことじゃないか?ってことで、これを計算してみました。

1976年 漁獲量45万トン 輸入量10万トン 輸出量8万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=47万トン
1986年 漁獲量47万トン 輸入量15万トン 輸出量3万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=59万トン
http://www.wwf.or.jp/activities/2009/01/625530.html

 上記のように日本人の消費量と思われる値は、1986年の時点で既に上がっている感じですが、このあとさらに上がります。

1986年 漁獲量47万トン 輸入量15万トン 輸出量3万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=59万トン
1991年 漁獲量43万トン 輸入量30万トン 輸出量4万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=69万トン

 さっきは10年間でしたが、こちらは5年間。漁獲量と輸出量はずっと変わっていないのですけど、半分の期間で輸入量が倍増、日本人の消費量と思われる値(漁獲量+輸入量-輸出量)は10年分と同じくらいの伸びを示しました。非常に増えている様子がわかります。

1991年 漁獲量43万トン 輸入量30万トン 輸出量4万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=69万トン
1996年 漁獲量32万トン 輸入量37万トン 輸出量4万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=65万トン

 日本人の消費量(漁獲量+輸入量-輸出量)はむしろ減っているのですが、内訳が大きく変化しています。実は1996年だけガクンと減っていて翌年回復するのですが、この年は漁獲量が32万トンと激減していました。そして、増えてきていた輸入量が漁獲量を初めて上回っています。


●ピークは1993年か2002年か? 漁獲量は減るが、輸入量増加で消費増やす

 次の5年を見る前に言ってしまうと、日本人の消費量(漁獲量+輸入量-輸出量)のピークは上記の1996年の1~3年前あたりである可能性がありますので、1993年の数字も見てみます。

1993年 漁獲量45万トン 輸入量35万トン 輸出量5万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=75万トン

 じゃあ、先に進んでみます。先程の1996年からさらに5年です。

1996年 漁獲量32万トン 輸入量37万トン 輸出量4万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=65万トン
2001年 漁獲量36万トン 輸入量40万トン 輸出量3万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=73万トン

 こうやって見ると、ピークは1993年くらいじゃなかったかもしれません。漁獲量は以前ほどじゃないですけど、輸入量でかさ上げしていますね。本当のピークは2002年辺りかなということで、こちらもグラフから読み取って比較。2つの年はちょうど漁獲量と輸入量が反対になった感じですね。輸出量は減っているのでその分2002年のの方が食べていそうです。

1993年 漁獲量45万トン 輸入量35万トン 輸出量5万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=75万トン
2002年 漁獲量35万トン 輸入量45万トン 輸出量3万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=77万トン


●最近は言うほど食べすぎではない?漁獲量も輸入量もかなり減少している

 実はこの2002年の後、ただでさえ減っていた漁獲量が劇的に減少することになります。図の最新データである2007年まで並べてみてみましょう。

2001年 漁獲量36万トン 輸入量40万トン 輸出量3万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=73万トン
2002年 漁獲量35万トン 輸入量45万トン 輸出量3万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=77万トン
2007年 漁獲量27万トン 輸入量30万トン 輸出量5万トン 漁獲量+輸入量-輸出量=52万トン

 というか、輸入量の方がすごい下がり方していましたわ。2006年も同傾向ですが、2007年はもっと輸入量は高かったです。データがここまでなので、一時的なものなのかはわかりません。とりあえず、結果として2007年の消費量は、1980年代くらいまで日本人の消費量くらいまで下がっています。

 だとすると、2000年代後半はそれほど食べ過ぎでもないとは言える可能性がありますけど、途中で食べすぎだった期間があることは否定できません。食べすぎたためにマグロがすでに捕れづらくなっている可能性があります。


●マグロを乱獲してしまったために安いマグロや稚魚が増えている可能性

 また、より問題なのは、何万トンという数字では計れない中身の変化があることです。高級マグロを乱獲してしまったために安いマグロにまで手を伸ばしだした可能性があります。以下のような話がありました。

<全体のおよそ40%(およそ16万トン)を占めているのはメバチです。メバチは同時に、刺身や寿司としての消費も多く、その70%以上を占めています。
 クロマグロやミナミマグロは、トロが喜ばれる高級なマグロですが、最近の漁業資源の乱獲の影響もあり、流通量は全体の1割程度に過ぎません>

 そして、一番決定的なのは、前回までのところでやったように十分に生育していないマグロ、マグロの稚魚まで捕っているということです。このことは数字だけ追っているとわかりません。


●現在のマグロ不足は日本よりも世界のマグロ需要の増加が大きい?

 上記のように日本のマグロ消費量は増え続け…という状況ではありません。そういう意味では数字だけ見ていると、「今の日本人はマグロを食べすぎてはいない」と屁理屈を言うことは可能性かもしれません。

 一方、この後もう少し検索して出てきた世界のかつお・まぐろ類の漁獲量の推移(PDF:152KB) 水産庁/まぐろに関する情報で、世界の漁獲量を見ると、明らかな伸び方であり、現在もガンガンに伸びていました。そうなると、世界のマグロ不足の原因としては、日本以外の需要増加だと考えられそうです。

 しかし前回も書いたように、日本だけの問題ではないからと言って稚魚まで獲ることをやめないというのは、愚かな行為。稚魚を捕ってしまうことは、明らかにマグロ不足に拍車をかける行為であり、正当化しようがありません。

 また、「君たちが必要としだしたのは最近のことだ。だから、昔から使っている私たちによこせ」というのは、マグロ以外の他の食べ物や資源に置き換えるとどれだけ傲慢なことかがわかります。最初にも書いたように、以前は日本人もそれほど多く食べていなかったわけですしね。

 結果としてやはり規制しないわけには行かないでしょうし、日本人のマグロとの付き合い方について考え直す必要もありそうです。


●中国?韓国?日本のマグロ漁獲枠拡大の提案に反対した国

2020/07/14:最近のマグロ消費量のニュースは?と検索したのですけど、あまり記事がありません。検索した中では「日本人の魚離れ」的な消費量が減っていることをむしろ問題視して、もっと食べろ!とするものが多かったですね。そんな中では、 クロマグロ漁獲枠の拡大見送り 台湾から300トン移譲(日経新聞 2019/9/7 10:30)が、このページに関係しそうな話でした。

 記事は、2019年の太平洋クロマグロの資源管理を話し合う国際会議「中西部太平洋まぐろ類委員会」(WCPFC)の北小委員会の話し合いの結果を伝えたもの。日本は資源保護を求めたわけではなく、逆に漁獲枠全体の拡大を提案。ただ、この提案は受け入れられませんでした。

 この日本の提案に反対した国はどこだと思います? 反日国の中国や韓国だと思うかもしれませんが、アメリカでした。米国はクロマグロの資源が非常に少ない状態にあると訴えます。記事では、「米国の反対で合意に至らなかった」と書いていましたので、ひょっとしたらアメリカだけ反対したのかもしれません。


●マグロはもっと捕って良い?資源保護を優先した国のその後…

 記事によると、一方で、日本が2020年に台湾が使っていない大型魚の漁獲枠300トンを譲り受けることでは折り合ったとのこと。日本の大型魚の漁獲枠は現行の4882トンから実質的に約6%増える計算で、漁獲量拡大に成功しました。資源保護的には喜べないところなんですけど…。

 漁獲量拡大に成功はしたものの、日本の市場では、今回の会議の結果がマグロの価格に影響するとの見方は少ないとのことでした。現在、豊洲市場には南半球のオーストラリアやニュージーランドから冬の脂の乗ったマグロが多く入荷するため。あまり北半球は大事ではないんですね。

 ただ、これ、記事を読むと、「南半球ではちゃんと資源保護をしたおかげで量が捕れて質も高い」といったことが書かれているんですよ。そうだとすると、減っている北半球のマグロをさらに捕ろうという日本の提案は大バカなんじゃないかと思いますが…。

<現在、豊洲市場(東京・江東)には南半球のオーストラリアやニュージーランドから冬の脂の乗ったマグロが多く入荷する資源管理で日本より先行する大西洋のマグロ漁では「資源がV字回復している」(宮城県の漁業会社)>
<関係者からは「資源の少ない小さなマグロを北太平洋で無理して取るより、脂が乗った旬の時期に適量を出荷してくれたほうが高値が付く」(豊洲の卸)との声が聞かれる>


【本文中でリンクした投稿】
  ■うなぎ・マグロ不足は食べ過ぎだから 稚魚まで獲るから当然減る

【関連投稿】
  ■漁業衰退は政治の問題 先進国は成長産業なのに日本だけ衰退の謎
  ■主な代用魚の一覧 回転寿司の代用魚詐欺は、違法・偽装表示じゃないの?
  ■新しい魚より古い魚がおいしい?とれたて・生け簀より寝かせてから
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  ■その他の食べ物・嗜好品について書いた記事

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