2021/11/23追記:
●素手の人を銃殺して正当防衛になるのか?日本は「武器対等の原則」 【NEW】
●銃を持っていない人2人を射殺して「正当防衛」が認められてしまう 【NEW】
●日本人が知らないアメリカ 二大政党の次とその次の政党は?
2013/9/22:池上彰さんの<日本人が知らない米国>(日本経済新聞 池上彰の教養講座 戦後史の歩き方(11) 東工大講義録から)(2013/8/5 3:30)という記事を読みました。タイトルになっているように、元は東工大講義録。今回の話はまだ載っていないでしょうけど、過去のものが本にもなっています。
アメリカは二大政党だけじゃないという話が最初。3番目に勢力を持つ政党は、リバタリアン党という名前の政党です。日本では、ほとんど名前を聞かない政党ですよね。さらに4番目以降の政党もあります。日本で報じられるのは二大政党である、民主党と共和党の話ばかりです。
<3番目に勢力を持つ政党はリバタリアン党。徹底した自由主義の党です。4番目は米国憲法を守るべきだという憲法党です。日本の憲法を守れというイメージとは実は違います。米国では銃を持つ権利が認められていて、銃を持つ権利を守ろうというタカ派です。5番目が徹底的に環境を守れという緑の党です。ほかに米国共産党などもあります。
ただし、大統領選挙の場合は、各州で立候補の届けをしなければなりません。届け出には多数の推薦者が必要で、50州すべてでそれができる力があるのは、事実上、民主党か共和党しかないのです>
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGH3100E_R30C13A7000000/●アメリカに左派はいない? 3番目の政党も4番目の政党も右派的
3番目に勢力を持つというリバタリアン党だけは、気になったので検索してみました。読んでいて共和党に近いイメージを受ける政党だなと思ったら、
Wikipediaの説明にもそうありました。というか、4番目の政党も右派っぽく、リベラルっぽい政党は5番目でやっと登場。さすが左派のいない国と言われるだけあります。
<1964年大統領選の共和党指名候補バリー・ゴールドウォーターが祖とみなされることもあり、ともに小さな政府を志向する共和党と支持層が重複するとされる。上記のロン・ポールやボブ・バー、ゲーリー・ジョンソンなど、政治家が両党間を行き来することもしばしばある。一方で、テロとの戦いや麻薬取り締まりなどについて共和党の主流と政策が相反し、民主党左派のマイク・グラベルがリバタリアン党の大統領候補者指名党大会で一定の代議員票を得るようなこともある>
この前共和党で大統領候補選に出たロン・ポールさんの名前が出てきました。元はこのリバタリアン党だったようです。私が知りたかったのは上院や下院で議席を獲得しているか?でしたけど、その話はありませんでした。支持の具合がわかるのは、以下の記述くらいですね。
<2008年大統領選では、元共和党下院議員のボブ・バーを大統領候補に擁立。やはり4位である524,524票(得票率0.40%)を獲得した>
第3党なのにこのとき4位にとどまったのは、無所属で出たラルフ・ネーダー候補のせいじゃないかと。勝てることは絶対にないですけど、1人くらい二大政党以外から票を集められる有名人が出るということはしばしばあります。ああ、でも、
Wikipediaで結果を見ると、ラルフ・ネーダーさんとあまり変わりませんでした。
ラルフ・ネーダー アメリカ改革党 736,804 0.56%
ボブ・バール リバタリアン党 524,524 0.40%
チャック・ボールドウィン アメリカ憲法党 196,461 0.15%
シンシア・マッキンリー アメリカ緑の党 161,195 0.12%
●銃社会、銃容認のアメリカ 日本人留学生射殺事件の犯人も無罪判決
後半は何度か書いた銃の話になっています。やはりアメリカの特徴としては、銃は書かせませんね。すでに前述の説明でも、銃を持つ権利を守ろうという政党が4番目の勢力という話が出ていました。
<米国には国民が銃を持つ権利があります。合衆国憲法修正第2条には、「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない」と書いてあります。問題は憲法が示す「規律ある民兵」とは何かという話です。
もともと米国は英国と戦い、独立を果たしました。開拓民は皆、銃を持って自分や家族の身の安全を守ってきた歴史があります。「規律ある民兵」とは州兵のことではないかという解釈もあったのですが、2008年に連邦最高裁判所で、「これは州兵に限らない。国民すべてが銃を持つことを認めている」という判断が下りました>
知らなくて驚いたのが次の話。1992年(平成4年)10月。ルイジアナ州の高校に留学していた服部剛丈君(16)がハロウィーンの祭りのパーティーに行こうとして、うっかり間違った家に入ってしまい、撃ち殺されてしまうという痛ましい事件がありました。この話はもちろん私も知っていますが、驚いたというのは、この判決です。
なんと、
服部君を射殺した男は、実は無罪となっているのです。ルイジアナ州には、許可なく家の敷地に入ってきた者に対して発砲してもいいということが法律で決まっているためだとのこと。法律で決められた権利を行使しただけで問題ないってことでしょうか。ただ、
Wikipediaを読むと、たいへん不可解な裁判だったようです。
<ピアーズは、日本の刑法では傷害致死罪に相当する計画性のない殺人罪で起訴されたが、同州の東バトンルージュ郡地方裁判所陪審員は12名(白人10名、黒人2名)
全員一致で無罪の評決を下した。
評決の理由は裁判において、明らかにされていない。ルイジアナ州の法律では、屋内への侵入者については発砲が容認されているが、服部は屋内に入っていない。この裁判の場合、
傷害致死罪を適用するのは最初から無理があり、無罪評決は正当防衛を認めたものか、傷害致死罪の構成要因を満たしていないと陪審員が判断した結果なのかは不明である>
起訴時点で変だというのは、
アメリカの正当防衛は殺したもん勝ち 黒人少年射殺事件で無罪判決のことも思い出します。なお、Wikipediaでは民事裁判も網羅。こちらを読むと、ますます無罪判決がおかしかったのではないか?という内容でした。アメリカの公的機関による日本人差別があったことも疑いたくなります。
<この後行われた、遺族が起こした損害賠償を求める民事裁判では、刑事裁判とは正反対の結果となった。ピアーズが家に何丁も銃を持つガンマニアであり、しばしば近所の野良犬や自宅敷地内に入ってきた犬猫を射殺しており、当日は酒を飲んでいたことなどが実証されたため、正当防衛であると認められないとして65万3000ドル(およそ7000万円)を支払うよう命令する判決が出され、同州高等裁も控訴を棄却したため確定しピアーズ被告は破産した。
(中略)ロドニー・ピアーズは事件後に自己破産したため、賠償金65万3000ドルのうち、自宅にかけた火災保険から直接支払われた10万ドル以外は、現在に至るまで一切支払っていない>
●アメリカ人みんなが銃規制に断固反対…ではない では、なぜ?
池上彰さんの話に戻ります。うちでは、以前、
銃乱射事件で銃規制なんて冗談じゃない!だからこそ銃が必要…という推進派の論理を書いているのですが、まさにそのタイトル通りという話も出てきました。
<最近も、小学校に銃を持って侵入してきた男が、乱射して大勢の小学生や先生が亡くなる事件がありました。あのニュースを見た時、「だから銃を規制しなければいけない」と考えた人も多かったと思います。ところが米国には、「あのとき校長や先生たちがみんな銃を持っていれば、あの悲劇は防げたのに」という発想を持つ人が大勢いたことも事実なのです。
その結果、政界にも大きな影響力を持つ全米ライフル協会(NRA)という組織が対策を発表しました。「全米のすべての学校に武装警備員を配備すればいい」というものでした。危険な人物が来たら、被害が出る前に撃てばいいという意見だったのです。日本人には考えにくいかもしれません>
しかし、国民みんながこう考えているわけではないんですよね。
国民9割賛成の身元確認義務化含む銃規制法案、アメリカで否決でやったように、銃規制に断固反対という人ばかりではなさげな感じ。日本の自民党といっしょで一部の既得権益団体と族議員のせいってのが大きそうですね。嫌な話です。
<全米には銃砲店がおよそ25万店あるとみられています。銃器をつくるメーカーもあります。銃器類の製造や販売に携わる人々が数十万単位、あるいは100万人単位で存在していると考えられるのです。これだけの組織を持つ産業ができてしまうと、そう簡単には銃を無くせないのかもしれません>
●素手の人を銃殺して正当防衛になるのか?日本は「武器対等の原則」
2021/11/23追記:日本人留学生射殺事件では、正当防衛という話が出てきませんでした。ただ、アメリカでは、過剰で不可解な正当防衛が認められてしまう…といったことが起きます。これはアメリカの法律通りなのか、日本人留学生射殺事件で疑われるような人種差別的なものなのかはわかりませんが、日本の考え方を紹介しておきたいと思いました。
日本で正当防衛のときに考える「原則」として、「武器対等の原則」というものがあります。これは「正当防衛」と主張しつつ、武器などの状況からして過剰防衛と考えられる場合は認められない…といった感じのものですね。銃を持って丸腰の人を撃ち「正当防衛」というのは、なかなか認められづらいのです。
Wikipediaでは、以下のように説明しています。
<武器対等の原則(ぶきたいとうのげんそく)は、民事訴訟法や国際法においても用いられる概念であるが、ここでは、刑法上の概念について説明する。刑法における武器対等の原則とは、正当防衛状況における反撃行為が「やむを得ずにした行為」と評価できるか否かを判断するに際し、侵害者と反撃者の武器の対等性を基準とする原則のことである>
<原則としては、正当防衛の成立が認められた事案は、素手による攻撃に対しては素手で反撃した場合、兇器による攻撃に対して兇器で反撃した場合、兇器による攻撃に対して素手で反撃した場合であり、過剰防衛の成立が認められた事案は、素手による攻撃に対して兇器で反撃した場合である。
ただし、例外的に、素手による攻撃に対して兇器で反撃した場合であっても、力量に富み柔術を好む者に対し出刃包丁で反撃した事例など、実質的は武器対等といえる場合、侵害者の暴行の苦しさに耐えかね殺されると思い、威嚇の目的で匕首を取り出したところ侵害者が飛びかかって来たため傷害を与えた事例など、他行為への期待可能性がない場合には、相当性を認めた裁判例も存在している>
●銃を持っていない人2人を射殺して「正当防衛」が認められてしまう
この「武器対等の原則」のことを思い出したのは、
BLMデモ銃撃し3人死傷 白人の被告に無罪評決 抗議広がる可能性 | 毎日新聞(2021/11/20 10:39)という記事を読んだためでした。単純な武器の保持だけでは決まらないとは言え、日本の「武器対等の原則」からすると、なかなか考えられない評決のような気がします。
<米中西部ウィスコンシン州で昨夏、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ、BLM)」デモの参加者3人を銃撃して死傷させたとして、殺人罪などに問われた白人のカイル・リッテンハウス被告(18)に対し、地元裁判所の陪審(12人)は19日、無罪評決を言い渡した>
<被告はもみ合いになった際に発砲しており、「正当防衛」との主張が認められたとみられる。(中略)
抗議デモが連日あり、暴徒が中古車店などに放火する事件も起きていた。隣のイリノイ州に住んでいた被告は「自警団」と称して略奪から店などを守ろうと考えたといい、殺傷能力の高いAR15型ライフル銃を持って路上を歩き回っていた。
この際、BLMのデモに参加していた36歳と26歳の白人男性を射殺。さらに27歳の白人男性にも発砲して負傷させた。射殺された2人は銃を持っていなかったが、弁護側は、追いかけられて銃を奪われそうになったり、スケートボードで殴られたりして発砲したと説明。3人目も銃を向けられた後に発砲したと説明した。被告は「悪いことは何もしていない。身を守っただけだ」と主張した。
米メディアによると、被告は保釈中に極右団体「プラウドボーイズ」のメンバーと写真を撮った際に白人至上主義者の指サインを示すなどして批判されていた。検察側は、被告が銃を相手に向けて挑発し「西部劇のヒーロー」であるかのように振る舞っていたと指摘。「自ら作り出した危険に対して、正当防衛を主張することなどできない」と訴えた>
内容的には、これまた日本人留学生射殺事件と同様に人種差別問題が絡みそうな案件でもあり、ここらへんも疑いを持ってしまうところ。また、陪審は12人のうちなんと11人が白人で黒人は1人もいなかったというので、なおさら怪しく感じてしまう話でもあります。というか、アメリカの陪審制度って人選のバランスを取らないんですかね…。
【本文中でリンクした投稿】
■
銃乱射事件で銃規制なんて冗談じゃない!だからこそ銃が必要…という推進派の論理 ■
アメリカの正当防衛は殺したもん勝ち 黒人少年射殺事件で無罪判決【関連投稿】
■
国民9割賛成の身元確認義務化含む銃規制法案、アメリカで否決 ■
アメリカ、銃乱射事件による銃規制発表で銃がバカ売れして高騰 ■
銃規制反対派議員が銃撃事件に合い死亡者が出るアメリカ ギフォーズ議員のアリゾナ銃乱射事件 ■
海外・世界・国際についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|