日本の「失われた20年」や「失われた10年」って当の日本人も信じて疑っていませんし、積極的に攻撃材料として利用している人もいます。
しかし、主に言われているのは海外だったんですかね? フォーブスの記事ではこうありました。
語られ始めた「日本の失われた20年はウソ」という真実
2013/8/29 7:00(2013年8月11日 Forbes.com)By Eamonn Fingleton, Contributor
現代史を振り返っても「日本経済は1990年代初頭に燃え尽きた」という説ほど疑いようのない「事実」として定着しているものは少ない。(中略)
日本の「失われた20年」というのは、単なる作り話どころではない。英語メディアがこれまで広めてきた中でも、とびきり不合理で、あからさまなでっちあげの一つである。私の話が信じられないのであれば、『インターナショナル・エコノミー』誌最新号に掲載されたウィリアム・R・クライン氏の記事を読んでいただきたい。今年に入ってポール・クルーグマン米プリンストン大教授も同じような主張をしているが、一見低迷しているような日本経済は、それは経済的根拠とは無縁の、人口の変化に基づく幻影であるとクライン氏は指摘している。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2700G_X20C13A8000000/ これは経済政策の失敗による「失われた20年」というのは嘘という主張でしょうか? 政治家の言い訳に使ってほしくなく、むしろだからこそ以前とやり方を変える必要があるのですが、私も人口構造の変化が経済的低迷の主要因だと最近思ってきています。
ただ、「一見低迷しているような」だから、そもそも実は低迷していないって意見なのかも。続きを読んでみましょう。
「日本という錯覚:“失われた20年”説のまやかし」と題する記事で、クライン氏は1991年から2012年にかけて米国の労働人口が23%増加したのに対し、日本ではわずか0.6%しか増加しなかったことに言及している。つまり労働者1人あたりで見ると、日本の生産量はかなり伸びたことになる。日本の成長率は、現在経済的に成功している国の代表例とされるドイツより相当速い(日本の労働人口は約10年前に減少に転じたが、これは長年の政策の結果である。中国と同じように日本も病的なまでに食糧安全保障を憂慮し、中国よりも早くから人口削減策を実施してきた。1948年の優生保護法※ 制定がその始まりである。そのうえ人口削減計画の補強策として、世界でもまれに見る厳しい移民制限を実施している)。
やはり「実は低迷していない」の主張っぽいですね。
クラインさんというのはリフレ派やインフレターゲット派が読むと卒倒しそうなことも言っているようです。
米ワシントンDCのピーターソン国際経済研究所のシニアフェローであるクライン氏は、重大な問題とされている日本のデフレも実は嘆くような話ではないとしている。むしろその逆で、過去20年を振り返ると日本経済は物価が下落しているときのほうが、上昇しているときよりも好調だったというのだ。そして米国の人々が、日本の穏やかなデフレと1930年代初頭に米国を悩ませた極めて破壊的なデフレとの間に多少なりとも共通点があると考えているのは、とんでもない誤解だと説く。現実には、日本のデフレは1880年から1900年にかけて建国間もない米国で見られた「良いデフレ」と似ている。
「物価が下落しているときのほうが、上昇しているときよりも好調だった」は気になりますね。データが見たいです。
作者は加えて"貿易面では、米国の悲惨な状況を尻目に、日本がすばらしい成功を続けてきた"としています。あら、そんなこと知りませんでした。
1989年以降、主要先進国の中で経常黒字を拡大したのは日本とドイツだけだ。対照的に、米国は言うに及ばず、英国、フランス、イタリアの赤字は近年とみに拡大している。この間、円が上昇してきたことを考えると、日本の貿易面の成功はなおさら驚異的といえる。
さらに企業の業績。
円が上昇しつづけたにもかかわらず、日本企業はほぼ例外なく収益を拡大し、雇用を維持してきた。
例えば日本の自動車産業はケタ外れの利益をあげてきた。トヨタ自動車は2011年度に2595億ドルの売上高があったが、これは1989年の841億ドルの3倍以上だ。(中略)日本の自動車産業のほかの企業も、同じようにますます力をつけている。
また、電力も目安になるそうです。
実体経済のデータは悲観主義者の言説と明白に矛盾するものであったことだろう。例えば電力生産だ。世界銀行と国際通貨基金(IMF)が、政府が経済成長率を操作していないか確かめるために使う指標である。日本の人口1人あたりの電力生産は1990年代を通じて、米国の2倍のペースで伸び続けた。
あと、今回のテーマと関係ないですが、私が「自民党政策が中国っぽくて嫌い」と常々書いているのと逆のことを書いていました。中国が真似たというのです。順番的には確かにそうですね。
あのやり方は後進国だからこそであり、先進国となった日本がいつまでもやってちゃマズいと私は思っていましたが、日本がアメリカより成長しているのであれば間違っていないという可能性もありますね。
「弱い日本」説は、東アジアのすべての国にプラスに働いている。中国がその最たる例だ。まず、この説によって米国政府には、中国が経済のあり方を変えない限り、米国にとって真の脅威となることはないだろうという認識が生まれた(中国は日本モデルに従っていたので、日本が壁にぶつかったのと同じように、いずれ中国も同じ運命をたどるだろう。さもなければ米国式の自由市場主義を採用するしかない、というのが米国の認識だった)。この結果、中国が1990年代末に世界貿易機関(WTO)への加盟交渉をした際には、米国から市場開放に真摯に取り組むように強く迫られることはなかった。
公言こそしないものの、米国と日本のどちらの経済モデルが優れているか、中国の認識ははっきりしている。その貿易の実態を見れば、一目瞭然だ。中国では長年、日本からの輸入が米国からの輸入を大幅に(直近の数字では約40%)上回ってきた。日本の労働人口が米国の3分の1強であるにもかかわらず、この結果である。しかも中国が日本から輸入するのは、ほとんどがハイテク製品である。具体的には中国の工場が世界に消費財を供給するための先端材料、部品、生産設備などである。
一方、中国が米国から輸入するのは基本的なコモディティーで、特に多いのがコモディティーの中のコモディティーともいえる金属スクラップや古紙だ。中国が「紙クズ超大国」など目指していないのは当然だろう。
うーん、結局経済成長の指標としては、何使えばいいんでしょうね? どこが伸びている国なんだかわからなくなっちゃいました。
ただ、日本人の実感として言えば、先進国で最高レベルに成長って感じはしませんよね。感覚とは合わない説です。
追加
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