●世界に真のグローバル企業は9社しかない 日本はそのうち2社のみ
2013/9/24:元記事のタイトルは"真に「グローバル」な企業は、日本に3社しかない"(入山 章栄 2013年8月20日(火)日経ビジネスオンライン)というものでした。作者が注目を集めるために勝手に言っているのかな?と思いましたが、<実は、近年の世界の経営学では「グローバル企業はほとんど存在しない」という主張がされています。それどころか、これは学者たちのコンセンサスになりつつあると言ってよいかもしれません>としていました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130816/252317/?n_cid=nbpnbo_mlp 上記は本当かいな?と正直思ってしまいました。一方、次にあった「世界の海外直接投資の約9割を上位500社で占めている」という話には素直に驚かされてしまいました。これで「巨大多国籍企業」が世界を支配している!と言えるかどうかはともかく、投資額で見ると確かにすごい割合のようです。
ただ、今回の本題は<「巨大多国籍企業」が世界を支配している>ではなく、真のグローバル企業とはいえないという逆方向の話。米インディアナ大学のアラン・ラグマン教授は、この500社を用いて、2004年に「ジャーナル・オブ・インターナショナル・ビジネス・スタディーズ」(以下、JIBS)という論文を発表したそうです。考え方と結果は以下のようなものでした。
(1)2001年時点でフォーチュン誌ランキングによる世界で最も大きい500社の中から、売上データの内訳がとれる365社を抽出。
(2)「北米地域」、「欧州地域」、「アジア太平洋地域」の3地域での売り上げシェアを精査・集計。
(発見1) ホーム地域への強い依存:各多国籍企業の本社の置かれている地域(フランス企業なら欧州、カナダ企業なら北米)を「ホーム地域」とする。分析からは、365社のうち実に320社が、売り上げの半分以上をホーム地域からあげていることがわかった。逆にいえば、ホーム地域の外からの売り上げが半分を超える企業(=ホーム地域だけに依存しない企業)は、45社しかない。
(発見2) 真のグローバル企業は9社だけ:さらにこの45社のうちで、ホーム外の2地域(フランス企業なら、北米とアジア太平洋)の両方からそれぞれ2割以上の売り上げシェアを実現できている企業、すなわち「世界の主要三地域で、まんべんなく売り上げている企業」は、9社しか存在しない。
これはグローバル企業の定義によると言ってしまえばそれまでな気がしますが、上記のような定義付けにしてしまうと当時のグローバル企業はたった9社という衝撃的な結果になってしまいったんですね。ただ、やっぱり条件が厳しすぎるような気がしますね。
最低の条件では「ホーム外の2地域でそれぞれ2割以上」ですが、実は6、2、2でも定義を外れます。その前の"売り上げの半分以上をホーム地域からあげている"で先に除外されているからです。ですから、限りなく5に近いけど5に届かない5で、5、2.5、2.5もしくは5、3、2あたりが最低条件となりそうです。そこまで厳しくする必要性があるのかなぁ?と思わなくもないです。
とりあえず、この厳しい基準を突破したメンツを見てみると、なかなか納得の企業が揃っていたのはおもしろいところ。以下の9つの企業でした。元記事タイトルは<真に「グローバル」な企業は、日本に3社しかない>だったものの、日本からはソニー、キヤノンの2社のみでした。
IBM
インテル
フィリップス
ノキア
コカ・コーラ
フレクストロニクス
モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン
ソニー
キヤノン
フィリップスは知名度が落ちますが、オランダの家電メーカーです。
Wikipediaによると、日本で有名なものは、コーヒーメーカーや電気かみそり(シェーバー)などに限られるとのことでした。
フレクストロニクスはもっと聞いたことがありませんけど、シンガポールの電子機器の受託生産を行うサービス会社だそうです。名前が前面に出てこないだけで、マイクロソフトのXbox、ソニー・エリクソンの携帯電話、ゼロックスのコピー機など、そうそうたる顔ぶれの製品を作っています。(
Wikipedia)
なお、ここに入らなかったグローバル企業としては、グローバル企業の代表格とみなされて(そして批判されて)いるマクドナルドや、ヨーロッパが苦手なトヨタやホンダの名前が出ていました。また、元記事タイトルの"真に「グローバル」な企業は、日本に3社しかない"のもう1社は意外なことにマツダです。こちらはイメージと異なりますね。
"ラグマンは、その後2008年に英ウォーリック大学のサイモン・コリンソン教授と共同でJIBS誌に日本企業に特化した論文を発表"しています。こちらでは2003年のデータを使って、日本からはソニー、キヤノン、マツダの3社を選んだようです。この2003年のデータのときは世界で何社なのか書かれていませんでしたので、うちのタイトルとしては両方わかる古いときの調査である「2社」を使いました。
2001年における真のグローバル企業は9社のみという結論には疑問が残るものの、この論文は以下のような概念をもたらしたようです。
・グローバル化は2段階に分けられる
①(自国外の)ホーム地域への進出という意味でのグローバル化
②世界中どこでも成功できる「真のグローバル化」
そして、トーマス・フリードマンが唱えた「フラット化する世界(The World is Flat)」、「国と国の経済・情報交流が進んだ現代社会では、モノ・カネ・知識・人などが同じように世界中で行き渡りつつある。世界はフラット化(均一化)している」という世界はまだ実現されていないということがわかりました。
さらに「世界はフラット化しつつあるのだから、本当に強い企業ならその強みを発揮して、世界中どこでも成功できる」というのは妄想であると判明したとのことです。私はよく日本企業などの海外進出の話をやっていて、その地域の嗜好に合わせたローカライズが重要だと書いています。ですから、後半は素直に頷ける話です。
(
ライオン、歯磨きで海外へ ローカライズとガラパゴスの二刀流で売上上昇など)
ただ、たぶんそうじゃなかったとしても、「本当に強い企業ならその強みを発揮して、世界中どこでも成功できる」という楽観的すぎる妄想部分の否定は、多くの皆さんが納得できる話でしょう。どこの国でもホームグラウンドと同じように成功する…っていうのは、やっぱり普通に難しいのです。
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