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水島昇氏のノーベル賞はありえない 注目は細野秀雄氏や高橋博樹氏


2018/09/25追記:
●水島昇氏のノーベル賞がありえない理由 他のふたりは依然注目
2020/09/30追記:
●予想外な超伝導体の発見、そもそも超伝導体の研究はしてなかった!
2021/10/03追記:
●細野秀雄栄誉教授「娘が生まれて材料への意識が大きく変わった」 【NEW】


●トムソン・ロイターによるノーベル賞予想、今年は日本人が3人も!

2013/9/26:トムソン・ロイターによるノーベル賞予想が出ていました。有力候補者28人を発表しており、その中には、日本人も含まれています。

医学生理学賞に大隅良典おおすみ・よしのり・東京工業大特任教授(68)
水島昇みずしま・のぼる・東京大教授(47)
物理学賞に細野秀雄ほその・ひでお・東京工業大教授(60)
ノーベル賞に大隅氏予想 水島や細野両氏も - 中国新聞 '13/9/25

 選び方は自動的なんですかね? 説明では"同社のデータベースから、各分野で論文引用数が上位0・1%に入る研究者から選定"とありました。

 これでどれくらい当たっているか?と言うと、"2002年から昨年までに日本人16人を含む183人を候補に挙げ、うち27人がノーベル賞を受賞した"とのこと。当たっている人数は多いものの、候補者もべらぼうに多いので、すごいんだか、すごくないんだかよくわかりませんね。


●大隅良典氏(実際にノーベル賞に)と水島昇氏はオートファジーの研究

 気になるのは具体的な研究内容です。最初のお二人、医学生理学賞候補の大隅良典東京工業大特任教授と水島昇東京大教授は、どうやら同じ研究での受賞候補の模様。"細胞の内部で異常なタンパク質などのごみを分解する「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる現象の仕組みを解明した"と記事にはあります。

 Wikipediaにも項目がありました。以下のような説明。オートって言われるとつい「自動」かと思っちゃいますが、「自分」って意味なんですね。

<オートファジー (Autophagy) は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つ。自食(じしょく)とも呼ばれる。酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構であり、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体の恒常性維持に関与している。このほか、個体発生の過程でのプログラム細胞死や、ハンチントン病などの疾患の発生、細胞のがん化抑制にも関与することが知られている。auto-はギリシャ語の「自分自身」を表す接頭語、phagyは「食べること」の意>


●京都賞も受賞、東大で長く研究した大隅良典氏

 オートファジー のWikipediaの説明には特に個人名の記載がありませんでしたので大隅良典さんで新たに検索してみると、2012年の京都賞を受賞していらっしゃるのがわかりました。

第28回(2012年)京都賞2012
基礎科学部門
大隅 良典 (日本、1945-)
生命科学(分子生物学・細胞生物学・神経生物学)
(京都賞 年度別受賞者|稲盛財団より)

【細胞の環境適応システム、オートファジーの分子機構と生理的意義の解明への多大な貢献】
細胞が栄養環境などに適応して自らのタンパク質分解を行う自食作用「オートファジー」に関して、酵母を用いた細胞遺伝学的な研究を進めて世界をリードする成果をあげ、その分子機構や多様な生理的意義の解明において、多大な貢献を果たした。
http://www.inamori-f.or.jp/laureates/k28_b_yoshinori/prf.html

 経歴見ると今は東工大ですが、学士から博士まで東大。一旦海外に行きますが、その後も助手から教授までと長く東大で研究されていたようです。


●定説を覆す発見をして物理学賞とされる細野秀雄氏

 一方、物理学賞の細野秀雄さんの説明は記事だと、<鉄を主な成分とする化合物が、冷却すると電気抵抗がゼロになる超電導になることを発見。鉄は超電導になりにくいという常識を覆した>とありました。 これはWikipediaで見ると、「鉄系超伝導物質」の項目にあたるでしょうか?
鉄系超伝導物質(てつけいちょうでんどうぶっしつ)は、鉄を含み超伝導現象を示す化合物。銅酸化物以外では、二ホウ化マグネシウムなどを抑え、2008年現在最も超伝導転移温度(Tc)の高い高温超伝導物質である。研究が活発化した2008年の1年間でTcが2倍以上に急上昇したことから、さらなる研究の発展が期待されている。

 意義

水銀などとは異なり、鉄自体はいくら冷却しても超伝導を示さない。また、「鉄は磁性の象徴であるので、その化合物が超伝導を示すはずがない」という考えが以前は一般的であったが、鉄系超伝導物質の発見によりこれらの常識が覆され、新たな超伝導物質の可能性が広がった。

 こういう定説を覆す発見は、いつの時代のものでも気持ちいですね。スカッとします。こちらのWikipediaには細野さんのお名前も載っていました。
 研究の推移

従来、磁性元素における電子スピン間の強い相互作用はクーパー対の形成を阻害すると考えられてきた。このため、典型的な磁性元素である鉄を含む物質は超伝導の研究において非主流の存在であった。

一方、東京工業大学の細野秀雄らは磁性半導体を探索する研究の一環として、LaTMPnO(TMは+2価の遷移金属イオン、PnはP(リン)またはAs(ヒ素))で表される組成の物質を系統的に合成し、低温における電気抵抗をルーチンワークで測定していた。遷移金属にはMn(マンガン)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)、Feなどが用いられた。これらの物質の中で、LaFePOやLaNiPO、LaNiAsOが超伝導性を示すことが2006年から2007年にかけて発見されたが、超伝導転移温度(Tc)が6K(約マイナス267℃)と低いことから、それほど大きな注目は集めていなかった。

●細野秀雄氏とともに研究する高橋博樹氏も注目

 候補者には挙がっていませんでしたが、Wikipediaではもう一人高橋博樹さんという日本大学の方の名前も出ていました。
さらに高温で超伝導性を発現させるために正孔や電子のドープが行なわれた結果、F-(フッ素イオン)を4%以上ドープするとLaFeAsO1-XFXが超伝導体となり、10%のドープでTcが26Kに達することがわかった。また、高圧を印加することでTcは43Kになることを日本大学の高橋博樹らが発見し、これは二ホウ化マグネシウムなどの値を超えて銅酸化物以外では最高温度の新記録となった。さらに、サマリウムなどイオン半径の小さい希土類イオンでLaを置換する事により、4月には中国科学院などのグループがTcを55Kまで引き上げている。

 お二人はいっしょに活動されているんですかね? Wikipediaの「社会への影響」では以下のように書いていました。 ただ、近年盛り上がってきた!といった感じで、ちょっとノーベル賞には早い感じもありますね。
Tcの記録更新を受けて2008年2月に細野と高橋らによってNature誌へ論文が投稿・受理され、2月18日には特許出願とプレス発表が行なわれた。翌日には全国紙などで報道がなされている。同年6月には早くもNature誌で「鉄時代の可能性」という記事が書かれている。

2008年の夏には応用物理学会の講演会で臨時セッションが組まれ、低温物理国際会議(LT-25)でも基調講演とナイトセッションが追加されている。また、2009年2月までの1年間で500報近くの論文が発表され、論文誌の特集号も3冊以上刊行された。

●鉄系超伝導物質よりオートファジーの方が可能性があると言える理由

 「鉄系超伝導物質」はちょっと早すぎる気がすると書いたのですが、じゃあ、先ほどのオートファジーの方は?ということで、こちらも見てみました。

<当初、大隅が研究対象としていたのは酵母だった。しかしその後、この現象は酵母に限らず植物から人類に至るまでありとあらゆる動植物に共通する、細胞の最も基本的な機能であることが、自らの手によって判明した。それに伴い、現在、世界中でオートファジー研究に関する一大ブームが起こっている。オートファジー関連の論文は、1990年代初めは年間10件程度だったものが、今や年間2000件を超えており、その数は今なお急増中だ>
(東京工業大学 | 大学案内 | 大隅 良典より)
http://www.titech.ac.jp/about/introduction/faculty_profohsumi.html

 また、大隅良典さんは1996年、愛知県岡崎市にある、研究スタッフや研究設備が充実した基礎生物学研究所に移り、ATG遺伝子にコードされるタンパク質の機能の解明に尽力。オートファジーがあらゆる動植物の細胞が持つ最も基本的な機能であることを明らかにしました。その一連の成果が認められ、2005年から2008年にかけて、藤原賞や日本学士院賞、朝日賞などを立て続けに受賞。2012年には京都賞を受賞しているそうです。

 <オートファジー関連の論文は、1990年代初めは年間10件程度だったものが、今や年間2000件を超えており、その数は今なお急増中だ>とのことで、こちらもまだまだ伸び盛り!といった感じです。しかし、「鉄系超伝導物質」よりは時期が早いので、可能性はありそうな気がします。前年の山中伸弥京大教授はかなり早かったですし、スピード受賞ってのでももちろん嬉しいんですけどね。


●水島昇氏のノーベル賞がありえない理由 他のふたりは依然注目

2018/09/25: 以上のように、2013年の投稿では、鉄系超伝導物質は時期尚早。オートファジーもまだ早そうだけど、可能性があるのではないかと書いていました。そのオートファジーは3年後の2016年に受賞が決まっています。

 ただし、大隅良典さんのみで、水島昇さんは選ばれず。ノーベル賞では基本的に同じテーマが二度選ばれることはないので、水島昇さんのノーベル賞はなくなったと考えて良いです。

 一方の鉄系超伝導物質の方はまだですので、依然として期待できます。予想で名前の挙がっていた細野秀雄さんやWikipediaで名前の出ていた高橋博樹さんは、そのまま注目していて良いと思われます。


●予想外な超伝導体の発見、そもそも超伝導体の研究はしてなかった!

2020/09/30:電子を巧みに操り、物質の潜在能力を引き出す ― 細野秀雄(上) | 研究ストーリー | 研究 | 東京工業大学によると、細野秀雄教授が2008年に「鉄系超伝導体の発見」を報告した最初の論文は、年間の引用件数が世界一に。引用はその後も続いており、2014年5月時点で5000回以上引用されているそうです。

 こちらでは、発見の経緯に関する話もありました。他のノーベル賞もしくはノーベル賞クラスの研究でもよくあるように、偶発的な要素のある発見だったみたいですね。「この大きな成果は、長年にわたる超伝導研究から生まれたのでしょうか?」という質問に「それが、違うんです」とした上で、以下のように答えていました。

「1986年の銅酸化物系超伝導体の発見をきっかけに、超伝導研究を始めた人が僕の周りにもずいぶんいました。しかし、僕は手を付けませんでした。(中略)
 ところが2007年に、長年研究してきたセメント物質(C12A7、次回で紹介)が、狙ったとおりに超伝導体になることがわかりました。超伝導体になる温度は予想に反して低かったのですが、この研究をきっかけに、超伝導研究をやってみようという気になりました。でも、鉄系超伝導体は、こうして遅ればせながら始めた超伝導研究の中で発見したものではないんです。こういうところが、研究は面白いですよね。
 実は、超伝導研究とは別に、「半導体に磁石の性質をもたせる」研究をしていたんです。(中略)鉄系超伝導体はこの流れの中で、見い出すことができたんです。
 半導体に磁性をもたせる研究では、鉄のような大きな磁気モーメントをもつ遷移金属の層状化合物を対象に選びました。その中の1つとして鉄を主成分とするオキシニクタイド化合物(LaOFeAs)を調べました。しかし、この物質では、狙った性質が得られなかった。もちろん、超伝導体でもありませんでした。そこで、LaOFeAsの中の酸素イオンをフッ素イオンで置き換えるという手法を使って、電気的な性質を変えてみることにしたんです。原子価の違う大きさの類似したイオンを置換することでキャリアをドープするというのは、半導体の研究では一般的な手法です。そうしたら、超伝導体になった。これが、2008年の鉄系超伝導体の発見です」

 日本政府は有望な研究にお金を集中投入する戦略をとってきたのですが、結果、もたらされたのは、日本の科学力の劇的な低下。古い研究ではノーベル賞候補が多いものの、最近は明らかに日本の重要論文が減っています。政府の政策はむしろ逆効果だったように見えるんですよね。この理由の一つとして、予想しやすいところではなく、予想しづらいところに画期的な発見が多いということがあるのではないかと思われます。


●細野秀雄栄誉教授「娘が生まれて材料への意識が大きく変わった」

2021/10/03追記:ノーベル賞、mRNAワクチンに注目 自然科学分野は4日から発表:朝日新聞デジタル(2021年10月2日)では、タイトルの通り、「m(メッセンジャー)RNAワクチン」関連を有力とする記事。ファイザーと共同開発した独ビオンテック社の上級副社長カタリン・カリコさんなどが候補。2021年にノーベル賞の登竜門ラスカー賞を受賞しています。

 医学生理学賞以外の話もあり、ノーベル賞物理学賞では、またしても東京工業大の細野秀雄栄誉教授の名前が挙がっていました。電気抵抗がゼロになる超伝導を、鉄を含む物質で初めて実現したことで注目されており、スマホなどに使われる透明な酸化物半導体の研究も高く評価。スマホ関連というのは、現代の生活に役立っていると実感しやすい分野です。

 ところで、前回追記で書いた「そもそも超伝導体の研究はしてなかった」に関連して、分野転向の話が、電子を巧みに操り、物質の潜在能力を引き出す — 細野秀雄(下) | 研究ストーリー | 研究 | 東京工業大学でありました。「ご自分を材料科学者と呼んでいるそうですね。聞き慣れませんが」という質問に対して以下のように回答。娘の誕生もひとつの転機となったといった話もされています。

「僕は、もともと化学が専門です。でも、固体物質の研究をしていると化学も物理も関係してくるから、分ける必要を感じなくなって「科学」というようになりました。
 僕自身は、もともと材料をやろうという強い意志はありませんでした。名古屋工業大学の助手に採用して頂き、阿部良弘教授(現名誉教授)の下で働くようになって、新しい材料を開発するとこんなに世の中に大きな影響を与えられるものかと感じる出来事があった。これをきっかけに、材料は凄いと思うようになり、自分の進む道に選びました。
 さらに、材料への意識が大きく変わったのは、娘が生まれた時です。材料の世界では、新しい材料を「次世代材料」というでしょう。それって、自分には当面は関係ないってことですよね。でも娘が生まれた時、これが“次世代”なんだと実感した。それで、材料研究は世の中の役に立つ、生きるために必要な研究(Essential for Life)だと、材料に関わっていることを誇りに思うようになりました。それで、僕は、自分を材料科学者ということにしているんです」


【関連投稿】
  ■ノーベル生理学・医学賞予想 竹市雅俊、小川誠二、審良静男(トムソン・ロイター引用栄誉賞)
  ■ノーベル物理学賞候補の日本人 中村修二、中沢正隆、十倉好紀
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  ■6年連続でイグノーベル賞に日本人受賞者 過去の日本人の受賞一覧
  ■日本がノーベル文学賞やノーベル平和賞を受賞しない理由 村上春樹より本来筒井康隆や村上龍の方が行ける
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