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ディズニーの怖い話 過剰要求でバイト使い捨てのブラック企業?


 「ディズニーの怖い話」って言うときに求められているものと違う気がしますが、ある意味これもとても怖い話だというのを二つ。もともとは、「ディズニーの怖い話 劣悪環境バングラデシュを見捨てて生産撤退」と「ディズニーの怖い話 過剰要求でバイト使い捨てのブラック企業?」というタイトルで書いていた別々の投稿をまとめました。


●バイトテロが起きるのも当然?安い賃金で正社員なみの働きはムリ

2013/9/26:ディズニーランド、美談に隠されたブラックな実態〜バイトを魔法にかけ無報酬で酷使? | ビジネスジャーナル 2013.08.29 和田 実という記事では最初にアルバイトなどが「ピザ生地を顔に貼り付ける」などの問題行動を"SNS上に公開し、炎上する事件"について以下のように擁護していました。

<不安定雇用であるバイトに対して、正社員並みの愛社精神やコンプライアンスという職業意識を求めるということ自体に、そもそも無理があるのではないか。コスト削減を進め、責任が伴う仕事も低賃金労働でまかなっている企業側にも問題の背景はあるはずだ>

 「アルバイトであるから」といったレベルの問題ではない恥知らずな行動ですので、私はこの意見に賛成しません。そもそも当時流行っていた炎上騒ぎはバイトだけでなく、客も多数問題になっていました。「バイトだから」の説明は通らないでしょう。

 ただ、記事で言わんとしていることもわからないでもないです。賃金の安いバイトに過剰な労働を求めるのは、対価に対して割に合わないのではないか?という問題提起です。薄給の上にサービス残業当たり前という日本のブラック企業を思わせる構図とも言えて、一笑に付す意見でもない気がします。


●半分が1年間で退社…過剰要求でバイト使い捨てのブラック企業?

 前置きだけでずいぶん長くなりましたが、記事では9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方 [ 福島文二郎 ]が、前述のような賃金の安いバイトに正社員なみの働きを求めるという、"図々しい企業体質の象徴のような本"であると批判的に紹介しています。

 まず、タイトルでわかる通り、ディズニー運営会社・オリエンタルランドの正社員比率は1割程度のようです。正社員 約2000人、バイト 約1万8000人だとのこと。これ自体は企業の個性のうちで別にいいだろうと思うのですが、記事では「こんなに多い!」といった感じで、"バイトは1年間で半分の約9000人が退職する"と書かれていました。確かに1年で半数辞めると聞くと多い気がします。

 ただ、一般のバイトが1年間でどれくらいの比率で辞めるのかが不明で、正社員よりはかなり多かろうと思います。何とも言えませんね。最初の炎上騒ぎの話もそうですが、ここらへん記事の出来はかなり粗くなっています。その他だと、記事では以下のように書いていました。

<手間暇かけて育てたバイトがすぐに辞めることは、企業にとっても痛手のはずだが、ディズニーの場合は「1年に3回くらい3000人近くのアルバイトを採用しなくてはなりませんが、推定で5万人以上の応募者が集まります」と自慢げ。でも、単なる“安い賃金で使い捨て”とも読めるのだが……>

 本当に自慢気に書いているのであれば不道徳な企業だと思いますけど、ここらへんも作者の受け取り方の問題もあるので何とも言えませんでした。


●無報酬なのにどんどん働く!とむしろ自慢するディズニー本

 それより本質的な問題であるのは、先ほど書いたようなアルバイトが十分な対価を貰っているか?という点でしょう。こちらは上記のあら探しのような指摘に比べると、ディズニーランドを擁護しづらい内容になっています。後で詳しく書きますけど、これらは非常にブラック企業と似たところがあると言わざるを得ません。
 ディズニーでは「バイトがバイトを指導する」といい、現場の責任者に代わって、バイトたちに仕事の手順やスキルを教える「トレーナー」と呼ばれるキャストも主にバイトから採用。「(トレーナーは)キャストに自信を持たせる役割も担っています」と書いているように、指導するだけでなく、精神面でのサポートもバイトに任せているのだ。しかも驚きなのは、「トレーナーになったからといって、昇給に直接結びつくわけではありません」と断言していること。「つまり金銭的な対価はないのです。トレーナーを示すピンバッジが配られるだけです」と、わざわざ無報酬で責任ある立場をバイトにやらせていることを誇っているのだ。

 このほかにも本書では、「ディズニーのキャストたちは、職場の中でユニークなスモールステップをつくってチャレンジしています」と紹介され、例えばカヌー探検のキャストは、どれだけ河を速く回れるかを競う「カヌーレース」を行ったり、劇場型のアトラクションなら、いかに滑舌よく時間通りにナレーションできるかを競ったりと、“スモールステップ”なるステップアップにチャレンジするのだという。この“スモールステップ”は「いずれも、トレーナーをはじめとするアルバイトのキャストたちによってつくられたもの」というのだが、これだけのシステムをつくってもバイトはやはり無報酬

●逆らうバイトは異動や退職!となぜか誇らしげに紹介されている

 上記でも十分ブラック企業思想が感じられる人はいらっしゃるでしょう。ただ、別に問題ないのでは?と感じる人もいると思われます。そういった方のために、もっとよりわかりやすいブラックなところも紹介。上司に逆らう人たちは粛清した…となぜか自慢気に紹介されていたみたいです。一般人の感覚とは乖離していますね。
 本書の「間違った考えに染まった後輩を変える!」という項目も相当に刺激的だ。そこでは、著者が実際に行ったという「キャストの意識改革」を披露。(中略)「どうしても私に賛同できないので、他部署に異動させたり退職させたりせざるを得ないキャストも(いた)」とさえ書き綴っている。

 そうして「職場全体の意識をひとつに」することができた時のことを、著者は「人間って、変わるものなんだ」と実感した……と振り返る。あたかも感動エピソードのように、しみじみ著者は述べているが、要は自分とは違う考えのキャストを他部署に追放したり、退職に追い込んだ、ということではないか。

●洗脳して尊敬させてタダ働きのワタミにそっくりなディズニー

 この記事の感想をちらっと見たところ、「好きでやっているんだからいいだろう」というものがありました。そうなんですよね、ディズニーランドの場合は好きでやっているというのがあります。これは非常に深いナイーブな問題です。

 「報酬」というものは金銭的な報酬だけでなく、社会的な報酬があります。先に「5万人以上の応募者が集まります」と書いていたように、ディズニーランドの場合はどれだけハードな仕事でも憧れてやってくれる人がいくらでもいます。これはそれだけディズニーランドへの思いが強いからであり、十分な報酬を受け取っていると言えるのです。

 しかし、この論法はブラック企業肯定論にもなり得ます。 ここでは実例として、一瞬ワタミの渡邉美樹元会長のアダ名もミッキーだっけ?と思ったワタミを出します。(渡邉美樹さんはミッキーではなくミキティだったなと検索すると、ミッキーとも呼ばれている例も多数ありました)

 過労による死者も出しているワタミでは、働いている社員に宗教的とも思える自己犠牲的な姿勢が目立つんですよ。たとえば、未だ過労死を認めないワタミ 社員にはありがとうと感謝されていると主張では、社長がスタッフから「ワタミをつくってくれて本当にありがとう」という感謝の言葉をもらいましたとアピールし、ブラック企業などではないと主張していたことを書きました。

 また、渡邉美樹自民党候補、老人に「高齢者退去で病院黒字化」をアピールでは、アルバイトが自費でお店で使うリキュールを買っていることを自ら誇らしげに書いているのを紹介しました。バイトなのにタダ働きまでしてる!というパターンで、これはディズニーに特によく似ているでしょう。

 さらに別投稿で紹介した記事によると、「週に1回休めるのだからワタミはブラック企業ではない」といった反論をし、むしろ「ワタミほど素晴らしい企業は他にない」と説く現役店長が出てきました。皆さん、ワタミを信仰してワタミに身を捧げています。

 こういったワタミの社員・バイトたちとディズニーランドに身を捧げているアルバイトたちに境界線を引くのは、意外に難しいでしょう。私はディズニー=ブラック企業という断定にはこだわりません。しかし、少なくとも「賃金に比べて要求が過剰になってはいけない」という作者の問題提起そのものは、もう少し顧(かえり)みられて良いものだと思います。


●「これが最も責任ある方法」…ディズニーがバングラデシュ撤退

2013/6/26:私が「怖い話だな」と感じたディズニー、バングラデシュ撤退の波紋 米州総局・小川義也(2013/5/8 9:21 日経新聞)という記事にあったディズニーの判断。ただ、ディズニーは「最も責任ある方法」だとして胸を張っていますし、好意的な受け止め方も多いですので、人によって感覚はかなり異なりそうです。

<「慎重に検討し、議論した結果、これが最も責任ある方法だと判断した」。ディズニーのキャラクター商品を扱うコンシューマー・プロダクツ部門のボブ・チャペク社長はこう説明する。
 「これ」とは、ディズニーが3月に世界中の取引先に通知したディズニー商品のライセンス生産に関する新ルール。縫製工場の事故が相次ぐバングラデシュについてライセンス生産を認める国から除外。来年3月末までの撤退を決めた>

 撤退のきっかけは、前年11月に100人を超える犠牲者を出した首都ダッカ近郊の縫製工場火災。別の縫製工場で600人以上の犠牲者を出した崩壊事故が4月に発生した後、米メディアの報道でディズニーの撤退方針が表面化します。

<キャラクター商品を自前で生産しないディズニーは、生産を委託する業者や生産国の選定に厳しい基準を持つ。社会的責任投資(SRI)の代表的な株式指数「ダウ・ジョーンズ・サステイナビリティ・インデックス(DJSI)」を構成する銘柄として、株主の視線も厳しい。労働環境が一向に改善しないバングラデシュでの生産を続ければ「夢を売る」ブランドのイメージが傷つきかねないと判断したようだ>


●さすがディズニーすごい!バングラデシュ生産打ち切りに称賛

 記事では、ディズニーの判断は、バングラデシュの縫製業界や政府に抜本的な改善を求める強いメッセージになると評価する声があると紹介。実際、同じ内容を伝えた別記事への反応を見てみると、この判断に好意的なものもあります。

carmen _jordan 肩凝り老人 05/04
バングラディッシュに進出し,生産をすると言うことは劣悪な労働環境で生産した商品を売っているという悪評を覚悟しなければならない。

石井真弓 05/04
ディズニーがバングラデシュでの生産打ち切り 。その前に火災があったパキスタンでもだそうです。生産量は少なかったそうですが、対応している会社ですね。

 ただ、SNSでも大半は否定的なコメントだったんですよね。

安藤光展 05/06
臭いものには蓋をする的な。RT @take927: 生産を打ち切ることが問題の解決になるとは思えない。間違った米国型エシカル調達の典型的事例だと言ったら言い過ぎ!? ディズニー、バングラデシュでの生産打ち切り

おさむ 05/04
ブランドイメージ守るため?・・・ディズニー、バングラデシュでの生産打ち切り

マツモトユミ 05/03
打ち切りは英断ではなく引き上げただけ。大企業なら建築基準を満たすまともな縫製工場を準備(又は援助)して、奴隷労働になっている現状を変える努力をするのが正しい選択。> ディズニー、バングラデシュでの生産打ち切り @cnn_co_jp

吉村 宗太郎 05/03
バングラディッシュで起きていることを考えると、複雑な気持ちになる。金があるんだから設備投資してあげればいいのに。⇒ディズニー、バングラデシュでの生産打ち切り

K子@次は9月にスペインね(鼻息)! 05/03
ただ自分たちの利益のためだけに海外生産してるというのがよく分かる判断だ……夢の国の暗黒面だわ。安全に対して投資はしないと言う事だろ。


●「無責任」な対応しながら「最も責任のある方法」とどや顔

 ネガティブなコメントの多かった記事はCNNのもので、特に否定的な情報のない淡々としたものでした。にも関わらず、悪い反応だったのです。しかし、これは皆さん良いところをついていました。最初に引用した日経新聞の方では、アメリカ国内で非難の声が挙がっていたことも紹介しています。やはり問題ありと考えられるものだったのです。

<一方、「責任放棄だ」との批判もある。ワシントンに本部を置く非政府組織(NGO)、ワーカー・ライツ・コンソーシアム(WRC)は「現地にとどまって労働環境の改善に貢献すべきだ」と手厳しい>

 私は撤退の判断であっても、営利企業なんですから仕方ないとは思います。ただ、「苦渋の選択でした」と言うのならならともかく、むしろ「無責任」な方の決断をしておいた「最も責任のある方法」なんてどや顔で言われたら、「ディズニーはどんだけ傲慢な企業の?」と思わなくもないです。


●バングラデシュ重視の他の会社はディズニーと異なる対応

 記事ではさらに、ディズニーの場合、バングラデシュでの生産比率が1%に満たないことも撤退を決める理由の一つになったようだとしていました。要するにディズニーはバングラデシュが重要じゃないので、捨てても問題なかったみたいですね。バングラデシュを一大供給拠点と位置付ける衣料品メーカーや小売りチェーンは違う対応をしていたそうです。

<ウォルマート・ストアーズ、仏カルフール、香港のリー・アンド・ファンなどは4月末、ドイツのフランクフルトに集結。4000を超えるバングラデシュ国内の縫製工場の安全向上策について協議を始めた>

 "バングラデシュへの進出が相次ぐ日本企業はどうするか"とありましたけど、ディズニーのように劣悪な環境でこき使っておきながら「ハイ、さよなら」ってわけには行かないでしょう。ただ、そういった「責任のある」選択はもちろんコストアップすることを意味していますからね。企業は厳しい決断を迫られています。


【本文中でリンクした投稿】
  ■未だ過労死を認めないワタミ 社員にはありがとうと感謝されていると主張
  ■渡邉美樹自民党候補、老人に「高齢者退去で病院黒字化」をアピール

【関連投稿】
  ■ディズニーの怖い話 過剰要求でバイト使い捨てのブラック企業?
  ■ディズニーで食品偽装・不祥事隠し マスコミが批判しない理由は?
  ■アメリカのブラック企業 アマゾン・ウォルマート・ハーシーズ
  ■企業・会社・組織についての投稿まとめ

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