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アマゾンの配送から佐川急便が撤退 ヤマト運輸も本当はキツイ 日本の宅配便崩壊危機の原因は「再配達」だった


2021/11/16追記:
●アマゾンの配送では失敗したが、本当に規模の経済が効く業界はある! 【NEW】


●Amazonの全品送料無料、運輸業者は採算度外視だった

2013/10/1:完全にというわけじゃないようですが、佐川急便がアマゾンの配送業務から手を引いたようです。私はこれで以前アマゾン、方針転換の理由 全品送料無料終了、「あわせ買いプログラム」導入で、<そもそも全品送料無料という試みに無理がありすぎたのでは?>と<全品配送無料というのは消費者にとってはありがたいサービスでしたけど、割を食っているのは他の日本企業という状況だったのかもしれません>と書いたことを思い出しました。

 当時こうした感想の理由となったのは、<Amazonのゴリ押し大量物流で、佐川・日本郵政が限界に!? >(2012.12.14 ビジネスジャーナル 松井克明/CFP)という記事でした。以下のような話があったんですよね。読み直してみると、ここではちゃんと佐川急便の話が出ていて、「不採算事業」であること、今回の撤退の布石となる「断られることを覚悟で」での「大幅値上げを打診」という話も出ていました。

<最近、佐川急便は同社に大幅値上げを打診。多くの運輸業者がその規模の大きさゆえに、取引を続けてきている。しかし、採算度外視の取引のために、現場が疲弊しているのが現実だ。佐川急便としてはこれ以上不採算事業はできないと、Amazonとの取引を断られることを覚悟で大幅の提案を行ったのだ。
 Amazonの大量の取引は現場を大きく歪めている。
 日本郵便では、Amazonとの料金は本社のトップ交渉で決まるために、支社・支局レベルではまったく数字が開示されていない。現場では、同社の物流量に追いついておらず、Amazonの郵送を優先する「計画配送」を行なう一部郵便局もあるという。休日中に配りきれない書留や特定記録郵便など(中身はクレジットカードやキャッシュカードだ)の郵便物を後回しにして、Amazonを優先しているのだ。
 だが、こうした取引も限界を迎えつつあるようだ>
http://biz-journal.jp/2012/12/post_1153.html


●ついにアマゾンの配送から佐川急便が撤退? 公式は謎のコメント

 以上を踏まえた上で、日経新聞が書いた<急成長アマゾンに背を向けた佐川男子の勝算  :日本経済新聞>((1/5ページ) 2013/8/19 7:00)を見てみましょう。

<配送の大半は、ヤマトホールディングスのヤマト運輸、SGホールディングス傘下の佐川が引き受けてきた。宅配便首位のヤマトの配送ドライバーは6万7000人、2位の佐川が3万人。佐川はヤマトとともにアマゾンの配送網を支える有力パートナーだった。
 「佐川男子が消えた」という話が本当なら、佐川が上客であるアマゾンを袖にしたのか。「注文客から『タバコの匂い』のクレームが重なり、アマゾン側が佐川の配送員たちに禁煙を求めたことがきっかけらしい」「拒否されることを覚悟で、佐川がアマゾンに配送単価の値上げを要求した」……。業界内では諸説が飛び交う>
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2502Z_V20C13A7000000/

 上の単価値上げの話も出てきましたが、飽くまで噂という扱いです。そこで社員に尋ねてみたところどうやら社内でも事情を知らないらしく、判然とせず。会社の公式も「個別の取引なので、話せません」(佐川)「一切コメントできません」(アマゾン日本法人のアマゾンジャパン)というコメントで、よくわかりません。

 ただ、日経新聞は「いずれも取引中止は否定しない」として、取引中止になったことを匂わせる書き方をしていました。


●アマゾン問題は佐川急便だけじゃない…ヤマト運輸も本当はキツイ

 とりあえず、オフィシャルなところは口が堅いです。で、ライバル会社ですので信頼性が落ちますが、物流他社の幹部にも聞いてみると、「撤退した」と断言しています。

「この業界で今春からアマゾンと佐川の取引がなくなった、ということはみんな知っている。公然の秘密だよ。佐川さんは結局、激増する配達件数とアマゾンからの単価引き下げのプレッシャーに耐えきれなくなったのではないだろうか」

 はっきりしているのは、宅配業者はどこもキツイということ。私が書いた"割を食っているのは他の日本企業"という話そのものですね。佐川急便は"非上場会社で、アマゾンも取引条件を公開していない"ものの、"平均単価は5年前に530円近くあったが、今は460円"と減っています。

 ヤマト運輸の場合、"2013年1~3月期の宅配便の取扱量は実質7~8%伸びたが、アマゾンを中心とする大口顧客の単価は2%近く下落"しています。

 佐川急便グループの純粋持株会社SGホールディングス会長兼社長の栗和田栄一は3月末に、「国内の宅配便事業には、もう頼れない。我々は変わらなくてはならない」と、海外企業のM&A(合併・買収)や企業の物流に経営資源を集中すると方針転換しました。個人向けの宅配分は儲かっていないのです。


●取扱量を減らしすぎると今度は効率が低下する物流業界のジレンマ

 ただ、物流業界は規模の大きさが大切な業界だと言われています。全体の取扱量の違う2社を比べた場合、取扱量の大きい会社の方が効率的に荷物を届けられるようです。ここらへんの理由を勝手に推測してみます。

 たとえば、A社がある地域内で配達する荷物がB社の2倍であって、なおかつA社の荷物の量が1人で配達するちょうど良い量だったとします。これを荷物が半分のB社が配達する場合、1人でやると大幅に時間が余ってしまい、無駄になります。

 では、B社の社員はA社の社員の配達地域の2倍担当すれば同じになるか?と言うと、実はそうはなりません。配達地域が2倍になれば、当然移動距離は大きくなり、無駄が大きくなります。配達地域が増えれば増えるほど、配達の効率は悪くなるわけです。

 こういうところが物流業界で規模の大きさが大切だという理由じゃないかと思います。ですから、耐え忍んでアマゾンとの契約を続けるという選択肢も、あるにはあるんじゃないかな?と思いました。


●それでもAmazonと取引したい!運輸業者が思う理由

 私が想像したような話はしていないものの、以下にはアマゾンとの取引を続けたいという企業の話も載っています。
 アマゾンに背を向けた佐川とは違って、「アマゾン経済圏」の拡大に乗っかろう、という物流企業もある。

 「アマゾンとの取引は薄利だけども、ついていかないと我々も成長できない。コスト削減の要求がシビアなアマゾンは、徹底したカイゼンを続けるトヨタ自動車にどこか似ているところもある。だから、我々は期待しているんだ」。この会社の幹部は、複雑な思いを吐露する。

 いずれにせよ、物流業者は立場が下でしょうから苦しそうですね。トラック業界では残業代の支払いを求めると社長が人間不信に陥るという話も思い出しましたが、物流業界は配送料金低下の分、どこかでひずみが出ているのでは?という心配があります。

 ここらへんに法的な問題があれば当然対処すべきですし、現在の法律では扱えないのであれば、何か新たな策を検討しても良いと思います。送料無料は消費者としてはたいへん嬉しいのですけど、それが非人道的な行いの上で達成されるものであるならばサービス低下もやむを得ないでしょう。


●アマゾンの負担転嫁に耐えられなかった佐川急便

 タイミングが良いんだか悪いんだかわかりませんが、投稿直前に<佐川急便、アマゾンの負担転嫁に耐えられず取引停止…ヤマト一極集中への懸念 | ビジネスジャーナル>という記事を見つけました。"佐川急便、アマゾンの負担転嫁に耐えられず取引停止"と断言したタイトルです。
http://biz-journal.jp/2013/09/post_2999.html

 これはビジネスジャーナルが取材したわけでなく、週刊誌を読んだというものです。以下の元ネタ自体は週刊 東洋経済 2013年 9/28号 [雑誌]のようです。

"「アマゾンは当日配達地域の拡大、送料の無料化など、配送サービスの拡充を強力に進めてきた。その負担を転嫁されることに耐えられなくなった佐川は、大幅な値上げを持ちかけて決別した」。SGホールディングス(佐川グループの持ち株会社)の栗和田榮一会長は「海外では、サービスをすればきちんと対価を払うのが原則。よいサービスをしても、ろくに払ってもらえないのではおかしい」と語り、採算重視路線への転換を決めたのだ。
 アマゾンの宅配便は事実上の「ヤマト一極」となったが、不安材料がある。「佐川の分まで引き受けて、今後も荷物が増加し続ければ、ドライバーをほとんど正社員で抱えるヤマトの負担は際限なく膨らむ」のだ")


●日本の宅配便崩壊危機の原因は「再配達」だった

2017/02/19追記:ネット通販の激増で日本の宅配便は崩壊する | 卸売・物流・商社 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準(森田 富士夫 :物流ジャーナリスト 2017年02月19日)という記事がありました。国交省によると、不在による宅配便の再配達率は19.1%で、2割弱が再配達となっています。また、配達車両の走行距離の約25%も再配達だとされており、宅配便の生産性を低下させている原因だと指摘されていました。マンションだけでなく、コンビニエンスストアや駅などに、「宅配ボックス」を設置する動きが広がっており、これが解決策になるのでは?という内容です。

 私は宅配ボックスへの配達にインセンティブをつけて良いんじゃないかと思います。再配達のコストを考えれば、宅配ボックス配送を安くできる可能性はありそうです。送料無料であっても、例えば、ポイント付与などで、通販業者が宅配ボックス利用を促し、配送料を安くしようとするでしょう。

 記事では、以下のように販売業者がきちんと負担しているという考えでしたが、立場の強さの違いで、正当な料金を要求できていないのでしたら、それも問題だと思います。前述の通り、以前の記事は「採算度外視」だとしていましたからね。

<「アマゾン」や「楽天市場」など、最近のネット通販では”送料無料”のサービスが増えている。が、これは販売業者が送料を負担するので、利用者は負担しなくてもよい、という意味だ。結局はどこかが被らなくてはならない>

 コンビニ本部とオーナーとの関係などもそうですけど、立場の強さの違いで負担を強制しているようなことがあれば問題です。ここらへんは、行政はきちんと仕事をしているのだろうか?と気になるところでもあります。


●アマゾンの配送では失敗したが、本当に規模の経済が効く業界はある!

2021/11/16追記:百貨店とスーパーの話なのですが、関西スーパー買収劇、H2Oとオーケーの対立が泥沼化。“百貨店の凋落”が背景に bizSPA!フレッシュ / 2021年11月14日 8時47分という話をこちらに追記。なぜここに追記したのか?というと、最初のときに書いていた「規模の経済」の話が出ていたためです。

 その話の前に記事タイトルの話を軽く説明。2021年10月29日の関西スーパーの臨時株主総会で阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)との経営統合案への賛成が3分の2(66.67%)を上回りました。ただし、これに首都圏地盤のディスカウントスーパーのオーケーが不正があったと訴えて、決着は持ち越しとなっています。(2021/12/19追記:その後オーケーが買収を断念しました)

 タイトルになっている「百貨店の凋落」はエイチ・ツー・オーが何としてでも関西スーパーを手に入れたかった理由と関係。理由の1つは本業の百貨店事業がコロナでズタズタになり、回復の見通しが立っていないこと。今は百貨店よりスーパーの方が儲かる業界であり、エイチ・ツー・オーとしてはもスーパー事業を強化したいのです。

 そして、エイチ・ツー・オーが何としてでも関西スーパーを手に入れたかった理由のもう一つが、規模の経済の働きやすいビジネスであることでした。規模の経済とは、生産規模を高めることで単位当たりのコストが低減されることを指します。要するに店舗数を拡大すればそれだけ利益が出るということ。スーパーは規模の経済が働きやすいという特性があるそうです。

 これは売上規模による営業利益率の違いを見ると一目瞭然。2020年のスーパーの平均営業利益率は1%を下回っていますが、売上規模が1000億円以上になると、1.98%という2倍以上の数字。300億~999億円までで1.55%です。30億~99億円までのスーパーは0.34%、それ以下は赤字…とわかりやすく規模が大きいスーパーが成功しているのです。

 最初に書いていたように、宅急便においても規模の経済が効くと言われていて、だからアマゾンの安い配送料でも利益が出る…と言われていたのに、結局、大手配送業者がアマゾンから撤退する結末に。規模の経済の利点以上にアマゾンの配送料がきつかったということでしょう。しかし、規模の経済がうまく働く業界もちゃんとあるんだ…と勉強になりました。


【関連投稿】
  ■アマゾン、方針転換の理由 全品送料無料終了、「あわせ買いプログラム」導入
  ■トラック業界では残業代の支払いを求めると社長が人間不信に陥る
  ■アマゾンが今後成長する理由・しない理由 悪い利益率とライバルの存在
  ■ワシントン・ポスト買収 アマゾンのジェフ・ベゾスCEOの狙いは?
  ■企業・会社・組織についての投稿まとめ

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