2013/10/5:
●トムソン・ロイター引用栄誉賞のノーベル賞予想は当たるの?
●山中伸弥氏はトムソン・ロイター引用栄誉賞の2年後にノーベル賞に
●細胞接着分子カドヘリン発見をした竹市雅俊氏は有力
●細胞同士がくっついて回復するしくみを発見した竹市雅俊氏
●MRIの信号変化を観測するための基礎原理を確立した小川誠二氏
●現在広まっているfMRIは、MRIでは分からない脳の機能を探ることができる
●もう審良静男氏のノーベル賞の受賞があり得ないといえる理由
●トムソン・ロイター引用栄誉賞には限界…予想が当たらないのはなぜ?
2021/07/25:
●審良静男・大阪大学特任教授が遭難か?日帰りの単独登山で戻らず捜索 【NEW】
●トムソン・ロイター引用栄誉賞のノーベル賞予想は当たるの?
2013/10/5:
水島昇氏のノーベル賞はありえない 注目は細野秀雄氏や高橋博樹氏で書いたトムソン・ロイター引用栄誉賞。前回出てきた方たちは新たに加わった3人というものですから、2012年以前に予想に入っている日本人はもっとたくさんいます。
今回は発表が最初のノーベル生理学・医学賞に関わる候補者を紹介しようと思うのですが、先に予想の的中度について。前回すごいんだかすごくないんだかわからないと書きましたけど、現在の日本人の結果としてはこんな感じだとわかりました。
<2013年発表後時点でトムソン・ロイター引用栄誉賞の日本人受賞者は19名で、うち1名がノーベル賞を受賞している。ノーベル賞は規定により故人は受賞できないので、トムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞後に故人となった人物が判るように記す。
(
Wikipediaより)
2013年発表で3人加わっていますので、2012年までで考えると16人中1人。あんまりあてにならない感じですね。
●山中伸弥氏はトムソン・ロイター引用栄誉賞の2年後にノーベル賞に
いきなりテンション下がる話を書いてしまいましたけど、トムソン・ロイター引用栄誉賞の生理学・医学分野の方たちを紹介していきます。まず、大隅良典さん(2019/09/02追記:後にノーベル賞受賞)、水島昇さんは、
ノーベル賞予想、候補者に日本人 大隅良典・水島昇・細野秀雄らで紹介済みのため省略。
また、"ノーベル賞は規定により故人は受賞できない"ため、既に亡くなっている方も別枠。2つの基礎的生化学プロセスを明らかにした細胞シグナル伝達に関する画期的貢献という西塚泰美さんも残念ながら対象外となります。
それから、トムソン・ロイター引用栄誉賞受賞で唯一実際にノーベル賞を貰った方というのも、実は生理学・医学の分野です。トムソン・ロイター引用栄誉賞は2010年の受賞だったようですね。2年後に受賞しました。
<山中伸弥 人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発 → 2012年ノーベル生理学・医学賞受賞>
僅か6年のスピード受賞、山中伸弥京大教授にノーベル賞 iPS細胞作製でで書いたように、山中伸弥さんは例外的に早い受賞でした。
それを考えると、先の「16人中1人」という悪さはまだ時間が経っていないからということで、今後的中率が高くなってくるのかもしれません。
●細胞接着分子カドヘリン発見をした竹市雅俊氏は有力
さて、一番気になる存命中でまだノーベル賞を貰っていない未紹介の方たちはこちらです。
竹市雅俊 細胞接着分子カドヘリンの発見
小川誠二 fMRI(磁気共鳴機能画像法)の基本原理の発見
審良静男 トール様受容体と先天免疫の研究
まず、最初に名前があった竹市雅俊さんから。
Wikipediaでは、以下のような説明です。
<竹市 雅俊(たけいち まさとし、1943年11月27日 - )は、日本の細胞生物学者、発生生物学者。京都大学名誉教授、日本学士院会員。理学博士(京都大学、1973年)>
Wikipediaはあっさりすぎ。発見したカドヘリンの説明ページもわけわからんかったので、別を探して
竹市研究室ホームページから。ここの方からまだわかりそうです。
<
今から30年以上昔、竹市雅俊は細胞間接着分子カドヘリンを発見しました。 カドヘリンは、細胞同士を接着させることによって、組織形成において重要な役割を果たしています。 私たちは、細胞接着、細胞骨格に注目し、細胞から組織が形成される機構を研究しています>
一番良かったのは、「カドヘリン発見の話」という以下の2ページでしたが、長いのでうちでは端折って説明していきます。
カドヘリン発見の話
http://www.cdb.riken.jp/ctp/cadherin.htmlhttp://www.cdb.riken.jp/ctp/research_menu.html●細胞同士がくっついて回復するしくみを発見した竹市雅俊氏
これらのページによると、"細胞同士をばらばらに離してしまっても、適切な培養条件下では、元の組織様に回復させることができる"「自己組織化」という現象は知られていたものの、その詳細なしくみは不明でした。
竹市雅俊さんは京大の助手時代と留学先のカーネギー研究室での細胞接着の成否の違いから、"カルシウム依存的な細胞接着とカルシウム非依存的な細胞接着があること"をまず示します。
そして、このうち、"カルシウム依存的な細胞接着"についてさらに研究を進め、"細胞間接着を担う分子"「カドヘリン」を発見。"cadherin"(カドヘリン)という名前も、"calcium + adherence"(カルシウム + 接着)から命名されているようです。
このカドヘリンの発見が身近なものでどう役だっているのかよくわからなかったんですけど、細胞接着してほしくないのに細胞接着してしまうという「がん」とも関係ありそうでした。発見が30年前と古いですし、実績的にも十分そうですね。
●MRIの信号変化を観測するための基礎原理を確立した小川誠二氏
次は小川誠二さんですけど、これまた
Wikipediaは薄い内容。とりあえず、説明と経歴は以下のとおりです。
<磁気共鳴画像法(MRI)において、神経血管結合による脳血流の変化を含めた生理現象によって生じるMRIの信号変化を観測するための基礎原理として BOLD法 (Blood Oxygenation Level Dependent) を確立した。 1992年、BOLD法に基づいた画像処理法として機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) を開発した>
<略歴>
1957年 東京大学工学部応用物理学科を卒業。工学士(応用物理)
1962年 - 1964年 メロン研究所 研究助手
1967年 スタンフォード大学でPh.D.修得、その後1968年までPDフェロー
1968年 - 2001年 ベル研究所で研究員、主任研究員を経て特別研究員
2001年 ヨシバ大学アルバート・アインシュタイン医学部客員教授
2001年 (財)濱野生命科学研究財団小川脳機能研究所所長に就任
2008年 東北福祉大学特任教授に就任
しかし、MRIの関連技術に関わるということで、これは想像しやすいすごさですね。
FMRIの方のWikipediaでは、以下のような説明がされていました。
<fMRI (functional magnetic resonance imaging) はMRI(核磁気共鳴も参照)を利用して、ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つである。最近のニューロイメージングの中でも最も発達した手法の一つである>
●現在広まっているfMRIは、MRIでは分からない脳の機能を探ることができる
一番説明の良さそうだったサイトは、
Japanest NIPPONのページ。
こちらではまず、MRIは、脳を解剖学的視点から捉え、その構造を診断すると説明。端的にいえば、脳の構造に異常が現れるかどうかを見ているとされていました。
一方、現在広まりつつあるfMRIは、MRIで得られる画像の上に、脳の血流の動態を視覚化する手法。
何らかの知覚刺激を受けたときの、脳の活動部位 を血流の状態から検出することができ、MRIでは分からない脳の機能を探る上で非常に進んだ手法です。
この手法を支える原理を1989年に発見したのが、小川誠二さんなわけですね。本当功績がわかりやすいですね。ストレートに役に立っているなぁ!という感じがします。
<MRIは、MRI画像に脳の活動の様子を重ねて直接視覚化できるとしいうわかりやすさから、1990年代後半から2000年代初頭にかけて
急速に世界中に普及、ヒトの脳機能画像化の主力をなしている。
MRIでは難しかった、脳の神経活動領域でおきる電気磁気現象を直接検出する事を可能にしたBOLD法の原理確立によって、ヒトの脳機能解析・臨床診断は大きく転換した。脳科学の新たな手法において道を拓いた小川の功績は大きい>
●もう審良静男氏のノーベル賞の受賞があり得ないといえる理由
ラストは審良静男さん。苗字が読めないなぁとは思ったのですが、
Wikipediaによると、完璧に予想外な読み方で「あきら」だそうです。
<審良 静男(あきら しずお、1953年1月27日 - )は、日本の医学者。大阪大学教授。免疫学の世界的権威。医学博士(大阪大学、1984年)。大阪府東大阪市出身>
Wikipediaによると、"米トムソンサイエンティフィックの「世界で最も注目された研究者ランキング」で、2004年度に第8位、2005年度と2006年度に第1位、2007年度に第4位と連続でランクイン"と注目の的であり、"ノーベル生理学・医学賞の受賞は確実とまで言われていた"そうです。
しかし、"2011年に同分野の研究を行っていたジュール・ホフマンとブルース・ボイトラーが受賞したため、受賞の可能性は事実上消滅した"とのこと。
つなごう医療 中日メディカルサイト | 大阪大の審良教授 ノーベル賞逃す 論文発表数カ月の差
(2011年10月4日) という記事もありました。
審良教授は自然免疫の研究で、今回ノーベル賞を受賞した米国のボイトラー氏と競うように、優れた論文を発表していた。同じく今回の受賞者であるフランスのホフマン氏とは、昨年の慶応医学賞、今年のガードナー国際賞を共同受賞している。04年のコッホ賞は、審良教授と、ホフマン氏、ボイトラー氏の組み合わせだった。
今回のノーベル賞の受賞者は、自然免疫の2人と、獲得免疫のスタインマン氏という構成となった。(中略)
岸本忠三大阪大元学長の話 自然免疫の分野では、ホフマン氏とスタインマン氏の2人は欠かせない人物で受賞は当然。だが3人目が大阪大の審良静男教授でなかったのは残念だ。今回の受賞対象となったトル様受容体の働きに関する概念を論文で発表したのがボイトラー氏で、審良氏は数カ月遅かった。審良氏のこの分野への全体的な貢献は1番大きいし、論文の引用数も多いが、ノーベル賞の選考では、最初の概念の創始者ということを重視したのだろう。
●トムソン・ロイター引用栄誉賞には限界…予想が当たらないのはなぜ?
審良静男さんは、質で勝ったものの、スピードで負けたということのようです。何となく腑に落ちないですけど、仕方ないですかね。また、これはトムソン・ロイター引用栄誉賞の弱さも示している気がします。
おそらくトムソン・ロイター引用栄誉賞は、数多く引用される良い論文といった質、論文そのものが多数あるといった量は評価できるでしょうけど、スピードは重視されていないはずです。
(2013/10/6追記:ただ、Wikipediaをよく読むと、"決定のプロセスは単純ではな"く、"ノーベル賞の受賞トレンドや受賞者の地域性などを加味して候補者を選別し、それら周辺要因まで含めて決定されていく"とありました)
ますますあてにならないなぁ……という感じになってきましたが、残りの分野の方も紹介するつもりでいます。 →
ノーベル物理学賞候補の日本人 中村修二、中沢正隆、十倉好紀、
ノーベル化学賞日本人予想 柳田敏雄、藤嶋昭、吉野彰、水島公一に続きました。
●審良静男・大阪大学特任教授が遭難か?日帰りの単独登山で戻らず捜索
2021/07/25:「審良教授が遭難」などといった記事の見出しが目に入りました。「審良」という名字が珍しいので、ニュース欄に並んでいた名前だけ見て、あああっ!と驚き。アクセスして記事を読んでみると、やはりノーベル賞候補だった審良さんでした。
免疫学研究の阪大・審良教授が遭難か 登山から帰宅せず:朝日新聞デジタル(2021年7月25日 11時42分)などの記事が出ています。
<25日午前0時ごろ、奈良県天川(てんかわ)村の観音峯山(標高1347・7メートル)に日帰りで単独登山に行った大阪大学特任教授の審良(あきら)静男さん(68)=大阪府摂津市=が帰宅しない、と長男から奈良県警に相談があった。県警は遭難した可能性があるとみて、25日朝から地元の消防とともに一帯を捜索している>
もともと趣味が登山だったんだろうか?と検索してみたものの、特に趣味に関する記事は見つからず。一方、登山のキーワードを加えると、今回の話ばかり出てきます。また、観音峯山は過去に遭難があったんだろうか?とも検索。こちらもわかりませんでしたが、「今年はアイゼン(登山用具)が必要ない」といった感想が見られるので、逆に言えば、十分難易度が高い山なんだろうと思われます。
2021/07/27追記:無事見つかりました! 26日はおよそ40人態勢で午前7時ごろから捜索を行ったところ、午後2時すぎに観音峰の登山道から800メートルほど離れた山の中で審良特任教授を発見。「道に迷ってしまい歩いていたら石につまずいて転び、動けなくなった」と話していたとのこと。右膝の骨を折るなど大けがをしているものの、命に別状はありませんでした。
(奈良の山で行方不明 大阪大学特任教授を発見 膝骨折の大けが NHK 07月26日 17時00分より)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210726/2000049027.html
【本文中でリンクした投稿】
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水島昇氏のノーベル賞はありえない 注目は細野秀雄氏や高橋博樹氏 ■
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