国土交通省は10月2日、2014年春に増枠される羽田空港国際線の発着枠をANA(全日空)に11枠、JAL(日本航空)に5枠割り当てることを正式に発表しました。
この6枠の差は数字以上に大きいです。というのも、1枠しか与えられなかった4カ国はすべてANA、残りの2枠ある6カ国のうちドイツもすべてANAとなったためです。
この傾斜配分の表向きの理由は前述の通り、「格差是正」です。しかし、実際には政治的な理由が大きいです。
たとえば、毎日新聞は"ANAには政治の後押しもあった"として、以下のように書いています。
JALが民主党政権時代の公的支援で再建を果たしたことで、自民党内からは「JALは優遇されすぎだ」との批判が噴出。法人税減免などの優遇措置については安倍晋三首相も今年2月の国会で「多くの問題があり、今後、法制度が必要かも含めよく検証する」と表明。
日経ビジネスオンラインでもこの政治の圧力に対する見方は同様です。
ANA11枠、JAL5枠の「正当性」:日経ビジネスオンライン 吉川 忠行 2013年10月9日(水)
昨年11月に配分された羽田空港の国内線発着枠を巡っては、政権復帰を目前にした自民党の一部議員から、配分次第では担当部局である航空局幹部を冷遇するとも受け取れる発言が出ていた。
国内線の発着枠については、有識者会議が5回開かれた。しかしこの5回目の会議で突如、JALが破綻事業者として公的支援を受けた期間を減点する案が浮上。有識者から異論が噴出する中、各委員へ個別に説明することで幕引きを図った。
当時、航空業界関係者からは「政権復帰する可能性が出てきた自民党への配慮」との声が聞かれた。今回の航空局の判断も、空気を読んだ結果とみる関係者は多い。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131007/254259/?n_cid=nbpnbo_mlt そもそも"国際線発着枠は従来、均等配分が前提だった。このため、有識者会議などは開かれず、国交省の裁量で決められてきた"そうですから、不自然さは際立っています。
ところで、上記には自民党の「JALは優遇されすぎだ」という批判がありましたが、これには違和感を覚えます。他に「ANAと自民党は以前から蜜月関係だ」といった報道を見かけたときも首を傾げました。
というのも、自民党政権時代の国が肩入れしてきたのはANA(全日空)ではなく、JAL(日本航空)だったはずだからです。
傾斜配分の大義名分である「格差是正」は直接的には民主党の政策に関するものを指していますが、その前は自民党によるものだったはずです。「おまえが言うな」という話です。
おかしいなと思ったので検索すると、おそらく2009年頃(アドレスからして2009/11/23)だと思われるこんな記事が出てきました。
朝日新聞グローブ (GLOBE)|日本航空 再び翔べるのか -- 自民党政権下の航空行政。政治はJALを使い、JALは政治に頼った
http://globe.asahi.com/feature/091123/03_1.html サブタイトルの「自民党政権下の航空行政。政治はJALを使い、JALは政治に頼った」が私のイメージそのままです。
以下はすっかり信用を失った民主党の前原誠司さんのものですから当てになりませんが、国によって支えられるJALに対して独力で戦うANA……というのは、以前はANA自身が持っていた誇りだったはずです。
JALなどの国内便を見渡すと、有力政治家の地元の地方空港と羽田を結ぶ路線は、搭乗率が低く赤字でも、路線が維持されるケースが多かった。
空港の建設となれば、地元の建設会社などは潤うし、雇用も増える。政治家は国交省に圧力をかけ、空港を造らせる。役人の天下り先も増える。一方で、空港ができれば飛行機を飛ばさなければならない。航空会社は採算がとれなくても、地方と羽田を結び、そのかわりドル箱である羽田や成田の発着枠は既得権として確保してもらう。
国交相の前原誠司は、こうした政官業がもたれあう構図が「JAL不振の要因の一つ」と判断した。
JALを調査したタスクフォースのメンバーは、「JALは87年に完全民営化したが、経営が厳しくなった90年代以降、役所や政治家に救済してもらおうと、ますます『お上頼み』になっていった」とみる。
これを書いていて、郵政(関連:
ゆうちょ銀行が金融庁を馬鹿にして、融資業務などの新規参入承認が危ういことに)の問題なんかも思い出しました。政治的な思惑によって政治家が圧力という構図は、望ましいとは口が裂けても言えません。
言うまでもないことだは思うんですけど、本来第一に考えられるべきなのは国民の利益という観点ですからね。有権者の方も政治的な主張で原則論をないがしろにしないでいただきたいです。
(前原誠司さんだけだと怪しいので、自民党と破綻前のJALとの癒着についてはもう一つ別に書きますね
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自民党ANA VS 民主党JALの謎 JALと言えば自民党との癒着だったのに)
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