<石油は植物の化石…は間違いだった?近年注目の石油無機起源説>など、石油の話をまとめ。<日本人が唱えている第三の説「石油分解菌説」というのもある>などをまとめています。
2023/06/26:
一部見直し
●従来の説である石油は植物の化石という生物由来説の証拠
2013/10/10:石油無機起源説は今までの信じられている説と違う説です。しかも、怪しさ満点なサイトでも取り上げられており、ここだけ見ると胡散臭すぎて話にならないように思えます。ただ、説明を読んでみると、意外にもまともなんですよ。見るからにトンデモ…という感じではありませんでした。
ただ、この石油無機起源説の話をするために、従来の説についておさらい。
生物由来説(有機成因論)を見てみましょう。このウィキペディアの説明の中でも石油無機起源説(無機成因説)について触れられており、なおかつこの説について否定しています。
<現在の学説の主流である。百万年以上の長期間にわたって厚い土砂の堆積層に埋没した生物遺骸は、高温と高圧によって油母 (en:kerogen) という物質に変わり、次いで液体やガスの炭化水素へと変化する。これらは岩盤内の隙間を移動し、貯留層と呼ばれる多孔質岩石に捕捉されて、油田を形成する。この由来から、石炭とともに化石燃料とも呼ばれる。
有機成因論の根拠として石油中に含まれるバイオマーカーの存在がある。 葉緑素に由来するポルフィリンや、コレステロールに由来するステラン、あるいは、酵素の関与しない化学反応では生成が困難な光学活性をもつ有機化合物などが石油に含まれるバイオマーカーとして知られている。
これら石油の大部分は油母(kerogen、ケロジェン)の熱分解によって生成していると考えられている。 これは、石油中に含まれる炭化水素の炭素同位体比を調べた結果、炭素数の少ない炭化水素ほど、質量の軽い炭素同位体を含む割合が多くなるという傾向が、熱分解による炭化水素の生成の傾向と同じであることが知られているためである>
石油無機起源説(無機成因説)の話が出るのはこの後。上記のような結果になることは、
メタンのような炭素数の少ない炭化水素の重合によって石油が生成したとする無機成因説とは矛盾するため、多くの学者が有機成因説を支持している理由になっているそうです。その他、以下のような説明もありました。
<また地球物理学者の石井吉徳は、発表している論文のなかで、2.25億年前に超大陸パンゲアが次第に分離、現在の姿になるまでの過程で2億年前の三畳紀(Triassic)に存在したテチス海(Tethys)が中東油田の始まりであるとする説を唱えている。石井によれば、「石油とは有機物が熟成したもの、太陽光による二酸化炭素の光合成で出来た植物、藻などの有機物が海底に堆積し石油になったものである。堆積盆地とは、盆のようなところに堆積した地層の集積で、これがその後の地殻変動で褶曲し、馬の背のような形のように盛り上がった地質構造の上部にガス、油、水が軽い順に移動、濃集したものである。油田とは堆積盆地内の背斜構造にある。
ところでこのテチス海は、地球史上の石油生成に極めて特異だった。中生代は二酸化炭素の濃度が今より10倍も高く、気温は10℃も高かった。つまり地球温暖化で、植物の光合成は極めて活発であった。しかもこのテチス海は2億年もの間赤道付近に停滞し、内海であったため海水は攪拌されず長く酸欠状態が続いた。このため有機物は分解されず、石油熟成に好条件であった。この偶然が中東油田を作った。石油は探せばまだまだある、という単純な発想は地球史から見て正しくない」という>
●石油は植物の化石…は間違いだった?近年注目の石油無機起源説
次が問題の石油無機起源説(無機成因説)です。先に有機成因論を「従来の説」と書いたものの、これは旧西側諸国から見た場合であり、厳密には間違い。石油無機起源説自体は古く、「旧東側諸国では従来から定説とされていた学説」なんだそうです。これがなかなかそれっぽい感じなんですよ。
これはWikipediaだと「無機成因論」という名前で出ています。石油「無機」由来説は、1870年代、元素の周期律表で知られるロシアの化学者メンデレーエフが唱えたのが始まりです。
(後に、
ドミトリ・メンデレーエフの功績 元素周期表と石油無機起源説という話も書きました)
前述の通り、旧東側諸国では従来から定説とされていた学説なのですけど、旧西側諸国では、定説とされてきた石油「有機」由来説に真っ向から反対するものであったため長く顧みられることがありませんでした。
では、近年注目を集めるきっかけとなったのは?というのは、天文物理学者であるトーマス・ゴールドさんが取り上げたためとのこと。この方については後でもう少しだけ紹介するのですけど、彼の紹介により、西側諸国でも脚光を浴びることとなったそうです。
●トーマス・ゴールド氏が生物起源論に矛盾する含有成分や発見場所を指摘
この天文物理学者であるゴールドさんの説く石油無機由来説は、以下のようなものでした。
「惑星が誕生する際には必ず大量の炭化水素が含まれる」
「炭化水素は地球の内核で放射線の作用により発生する」
「この炭化水素が惑星内部の高圧・高熱を受けて変質することで石油が生まれる」
「炭化水素は岩石よりも軽いので地上を目指して浮上してくる」
また、無機成因論の根拠として、以下のようなものが挙げられています。
「石油の分布が生物の分布と明らかに異なる」
「化石燃料では考えられないほどの超深度から原油がみつかる」
「石油の組成が多くの地域でおおむね同一である」
「ヘリウム、ウラン、水銀、ガリウム、ゲルマニウムなど、生物起源では説明できない成分が含まれている」
さらに、生物起源論が根拠としている、石油中に含まれる炭化水素の炭素同位体比を調べた結果、炭素数の少ない炭化水素ほど、質量の軽い炭素同位体を含む割合が多くなるという傾向は、地下から炭化水素が上昇する過程で、分子の熱運動により重い同位体が分離されたと説明することも可能だとされていました。
このせいで胡散臭さが増してしまっているのですが、この無機由来説に基づけばいろいろと都合が良いことが多いんですよ。例えば、一度涸れた油井もしばらく放置すると再び原油産出が可能となる現象を説明することがでます。つまり、どんどん原油をとっても問題ない!と都合よく解釈する人が出てくるでしょう。
さらに、超深度さえ掘削できれば、日本はもちろん世界中どこでも石油を採掘できる可能性があることになり、膨大な量の石油が消費されたとしても、掘削技術の問題さえ解決されれば枯渇する危険性はほぼ皆無である、となります。ちょっと虫が良すぎて眉に唾をつけたくなる話ではありますね。
●日本人が唱えている第三の説「石油分解菌説」というのもある
Wikipediaを見ていると、実はこれ以外の別の説もありました。京都大学大学院にいた今中忠行さんが唱えている石油分解菌説というのがあるんだそうです。
石油分解菌説
<無精製でも内燃機関を動かす事が出来る程の世界的にもまれな軽質油を産出する静岡県の相良油田では、有機成因論とも無機成因論とも異なる第三の説が唱えられている。
1993年、京都大学大学院の今中忠行(現在:立命館大学生命科学部)は、研究室内の「無酸素実験装置」において、 相良油田から採取した石油分解菌「Oleomonas sagaranensis HD-1株」が通常状態では石油を分解する能力を持ちながら、 石油も酸素もない環境におかれると、細胞内に逆に原油を作り出すことを発見した。この際生成された石油は相良油田産の軽質油と性質が酷似しており、相良油田が形成された一因として唱えられているほか、今中忠行らはこの石油分解菌がメタンハイドレートに関係していると指摘した。
このHD-1株の研究が進めば、将来的には石油醸造プラントでの有機的な石油の生成が可能になるとも言われており、今後の研究が待たれるところである。>
●石油無機起源説を有名にしたトーマス・ゴールド氏とは何者?
石油無機起源説に戻ります。近年西側での注目を集めるきっかけとなったトーマス・ゴールドさんについて検索してみると、
『未知なる地底高熱生物圏』トーマス・ゴールド: わなざうというサイトさんによって
未知なる地底高熱生物圏―生命起源説をぬりかえる
という本で書かれているということがわかりました。この本は「石油無生物起源説」を中心に炭化水素で生活する土中の何キロも、何十キロも深い地下に展開される生命世界の可能性を指摘したものなんだそうです。
トーマス・ゴールドさんに関してはその本の冒頭の紹介を元に、"多様なジャンルで奇説を展開し定説を塗り替える画期的な成果を残すものの、決定的な反証がなされ玉砕してしまうこともある"としていますので、間違いも多々あるようです。
ただ、この本の書かれた時期では、地下深くに生物が存在するということすらなかなか受け入れられなかったそうですので、先見の明があるのも確かでしょう。Wikipediaでは上記三説の優劣を特に記載していませんでしたが、特にどの説が正しいといった偏見なしに、いろいろな方向に探って行ってもらえれば、科学の発展としては申し分ないと思います。
(その後、
石油無機起源説のトーマス・ゴールドってどんな人? 定常宇宙論など天文物理学者としても有名、
ドミトリ・メンデレーエフの功績 元素周期表と石油無機起源説といった話も書いています)
【本文中でリンクした投稿】
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石油無機起源説のトーマス・ゴールドってどんな人? 定常宇宙論など天文物理学者としても有名 ■
ドミトリ・メンデレーエフの功績 元素周期表と石油無機起源説【関連投稿】
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