初めて聞きましたが、「沖縄経済特区」というものがあるそうです。
この内容を読むとものすごいメリットがありそうで、うるま市企業立地ガイドでも以下のようにアピールしていました。
日本で唯一の「経済特区」 - うるま市企業立地ガイド
国内で唯一、法人課税所得の35%控除が受けられる地域であることから、「経済特区」と呼ばれています。
「経済特区」に進出した場合、上記の他、国税・地方税・関税等の優遇措置、投資額や若年者の雇用に対する助成及び沖縄振興開発金融公庫の長期・低利融資制度など国内では他に類を見ない投資環境が整備されています。
http://www.city.uruma.lg.jp/4/3313.html しかし、これだけすごい「経済特区」がなぜ知られていないのでしょう?
「お前の勉強不足だ」と言われてしまえばそれまでなのですが、実際この一見いかにもすごそうな「経済特区」は閑散とした状態だそうです。
規制緩和を骨抜きにする霞ヶ関の常套手段|財部誠一の現代日本私観|ダイヤモンド・オンライン
2013年8月30日 財部誠一 [経済ジャーナリスト]
①物流特区(国際物流拠点産業集積地域)
②金融特区(金融業務特別地区)
③情報特区(情報通信産業特別地区)
これらの特区に進出した企業は税制上大きなメリットを受けられることになっている。たとえば法人税は最大40%免除される。現在法人税の実効税率は36%。その40%が免除されると、沖縄の特区に進出した企業の法人税は20%程度。最大で19.5%まで法人税が下がるとされている。これならシンガポールとも競争できる。さぞや多くの企業が沖縄の特区に進出しているのだろうと思われるが、沖縄県の企業誘致に携わるベテラン職員によれば、
「実績はほぼゼロ」だという。
http://diamond.jp/articles/-/40954 内容を見ると、以下のようにさんざんです。
①物流特区(国際物流拠点産業集積地域)
「これまでに5社が事業認定を受けています。しかし5社すべてが『税制上のメリットは大きくない』と答えています」
②金融特区(金融業務特別地区)
「過去に1社が認定された実績がありますが、『実際にはなんのメリットもない』として撤退してしまいました。じつは金融特区に進出した金融機関(証券会社)は過去に7社ありましたが、6社は認定も受けなかった。そして今現在どうなっているかといえば、7社すべてが撤退してしまいました」
③情報特区(情報通信産業特別地区)
「情報特区は平成14年の制度創設以来、実績がありません」
ひどいです、ひどすぎます。
このように悲惨なことになっている理由は"ひとことで言えば、ハードルが高すぎる"というものだそうです。官僚お得意の骨抜きですね。
特区のメリットを享受するために必要とされる条件設定が厳しすぎて、実際は誰も特区を利用できなくなっている。まさに特区とは名ばかり。骨抜きにされている。
たとえば、金融特区制度の場合、"野村証券や大和証券が金融特区に支店を設けても法人税の優遇措置は受けられない"そうです。
なぜかと言うと、「沖振法」によって"新設法人でなければならない"とされているため"、「沖縄野村証券」あるいは「沖縄大和証券」のように新たな法人を設立しなければならない"からです。
しかし、これは"沖縄以外にある本社の利益を沖縄に付け替えて、不当な税制優遇を受ける企業が出てきかねない"ということで、正当なものだと作者の財部誠一さんは言います。
ところが、この後の条件がキツイようです。
特区に進出した企業が税制上の優遇措置を受けるためには、東京や大阪など沖縄以外の地域での営業活動をしてはならない、となっている。さらに雇用者制限がつく。現状では「10名以上雇用しなればならない」と政令で定められている。また、物流特区では、雇用者制限のハードルが「20名」とさらに上がる。
私は会社なんか何ぼでも作ればいいじゃんと思ったのですが、他地域で活動できないってところは確かにキツイですね。
まあ、こういう制限をつけないと沖縄振興という目的からすると仕方ないとは思うのですけど、それがこの現状を生んでいます。
また、「20名」のハードルも意外に高いとのことです。
物流特区に新設法人をかまえた計測器メーカーがある。アジア各地で部品を生産し、それらを沖縄の物流特区に集約して、組み立てを行い、「メイドインジャパン」として再びアジアに輸出している。技術力も高い優良企業だが、やはり税制上の恩典を受けられていない。
「上場している大企業が、1つの事業部を子会社化して移転するのなら、物流特区に課された20人の雇用条件をクリアすることも簡単なのかもしれませんが、中堅中小企業は段階的に沖縄での事業拡大を行うため、20人の雇用条件を満たすのは容易ではない」(同職員)
一応、本当に賑わっていないのか確かめのために検索。以下の記事はたぶん2010年9月20日のものですね。
「特別自由貿易地域(特自貿)」って名前であれ?と思いましたが、どうやらこれが今の物流特区(国際物流拠点産業集積地域)のことです。名前が変わったということでした。
朝日新聞グローブ (GLOBE)|沖縄 -- 脱基地経済への胎動 -- 経済のいま 宮城栄作
沖縄本島の中ほど、南東に突き出た勝連半島の根元に位置する中城(なかぐすく)湾は、天然の良港として知られる。
この湾の奥を埋め立ててできた新港地区に、東京ドーム約20個分、89.7ヘクタールの「特別自由貿易地域(特自貿)」が広がる。アジアと競争できる輸出加工拠点にすることを目指し、1999年に、法律に基づく国内初の「経済特区」として開かれた。
だが、開設から10年近くたっても、一帯は閑散としている。
今年6月時点で、96区画ある分譲地に7社しか入っていない。面積では7.2%にすぎない。23棟ある賃貸工場への入居も16棟にとどまる。分譲価格を最大5割引きにするといった「セールス」もしているが、企業数、雇用者数とも想定を大幅に下回っている。
https://globe.asahi.com/feature/100920/03_2.html 同様に"名護市の「金融特区」では制度開始以来、法人税控除の適用を受けたのは進出28社中1社のみ"であり、効果が出ていないという見方で先ほどの記事と一致しています。
一方、こちらの記事では「情報通信産業(IT)特区」は成果アリとしていました。
沖縄の半分以上の自治体が対象となっている情報通信産業振興地域や、那覇市などのIT特区では、法人税などを優遇。県によると、沖縄に進出したIT関連企業は、特区開始時の02年の52社から09年には202社に増え、この間、1万3000人以上の雇用を生んだ。05年ごろまでは低賃金労働力を当て込んだコールセンターの進出が多かったが、最近ではソフトウエア開発、データセンター運営の企業も目立つ。
そうですよね、ITなら距離の壁をある程度緩和できます。
ただ、先の「情報特区は平成14年の制度創設以来、実績がありません」とあまりにも違っていて、これがよくわかりませんでした。
とりあえず、他の2つの経済特区が確実に失敗してそうなのは確かめられましたし、成功と言い難いのは本当のようです。
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