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日本の医療費が増えている理由 高齢化社会ではなく、所得の増加


 「高齢化社会だから医療費が増える」というタイトル見ておもしろそうだと思った日経ビジネスオンラインの記事。

 気になる「高齢化社会だから医療費が増える」のウソの部分はシンプルでした。
「高齢化社会だから医療費が増える」のウソ:日経ビジネスオンライン
丸山 士行 2013年8月19日(月)1/4ページ

 なぜ、医療費の対GDP比率は上がり続けているのだろうか。その理由としてしばしば挙げられるのは、高齢化の進展である。しかし図から明らかなように、この上昇トレンドは世界中で長期に渡り普遍的に観察されるものであり、高齢化が主要因ではない。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20130812/252219/?n_cid=nbpnbo_mlp&rt=nocnt

 日経ビジネスオンラインは登録が必要なため図が見えるかわかりません。

国別に見た総医療費の対GDP比率(OECD Health data 2013より作成)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20130812/252219/?SS=nboimgview&FD=593736002

 とりあえず、この図を見る限り、日本が特別に上昇しているというわけではありません。

 元サイトの説明はこういったあっさりとしたもので、高齢化が激しいイメージがある日本が、他国と同じというだけで指摘は十分かもしれません。

 ただ、念のために他国との高齢化との比較も見てみたいところです。


 図で日本と最も挙動が似ていたのはイギリスでした。

1960年 日本 3%程度 イギリス 4%程度
1965年 日本 4%程度 イギリス 4%程度
1990年 日本 6%程度 イギリス 6%程度
2002年 日本 8%程度 イギリス 8%程度
2010年 日本 9.5%程度 イギリス 9.5%程度


 人口高齢化率の推移は以下のサイトで見てみます。

図録▽主要国における人口高齢化率の長期推移・将来推計
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1157.html

1960年 日本  5.7% イギリス 12%程度
1990年 日本 12.4% イギリス 15%程度
2000年 日本 17.4% イギリス 16%程度
2010年 日本 23.0% イギリス 17%程度

 全然違いますね。日本がイメージ通り急激に高齢化しているのに対し、イギリスは極めて緩やかです。

 作者の丸山士行さんの主張はごもっとも、無理がありません。


 さて、こうして高齢化の進展と医療費の対GDP比率にはほとんど関係がないということがわかったわけですが、問題は「では、何が原因か?」ということです。

 高齢化率を確かめるのにこちらでは時間がかかりましたが、元記事では直後にすぐ答えが書かれていました。
上昇トレンドの真の要因は所得効果である。

 しかし、「所得効果」と言われてもさっぱりわかりません。

 「所得効果」はWikipediaだとこういった説明でした。
近代経済学の消費理論において所得効果(しょとくこうか)とは、財・サービスの価格の変動が、消費者の実質的な所得を通じて消費量に与える効果のこと。

たとえば、財の価格が下がった場合には、消費者の実質的な所得が増えるため、その影響のみによれば全体的に財の消費量を増やすと考えられる。
Wikipedia

 ただ、元記事では違う説明の仕方をしています。
所得効果は経済学の用語で、所得の増加がある財の消費量に与える影響のことを指す。

 財が先ではなく、所得が先という感じです。

 これは言葉で言うと難しいですけど、実例を見ると簡単です。

 例えば、年収が1割増えた場合、

正の所得効果……旅行の需要が増える
負の所得効果……カップ麺の需要が減る

 といった効果が現れるといった具合です。

 要するに所得の変化で増えるタイプの財と増えないタイプの財があるということです。

 そしてこの流れからわかるように、当然健康は需要が増える「正の所得効果」です。しかも、「強い正の所得効果が働く」ということが、実証研究でわかってきたそうです。

 つまり、日本もイギリスも医療費の対GDP比率が上がっているのは、どちらの国の人も豊かになっているためということになります。


 これは言われてみれば「当たり前じゃん」という話ですね。お金に余裕ができれば、健康増進にお金を費やすというのはごく自然にわかる話です。

 極端な話になりますけど、始皇帝などの権力者が不老不死のような究極の健康を求めるというストーリーはお馴染みでしょう。金持ちになればなるほど、健康にふんだんにお金を使おうと思いやすいのです。

 私は長生きだとか、体に良いだとか、摂取で元気になるだとかいった健康食品などの類が嫌いで、そういったものが売れるのを苦々しく思っていました。

 ただ、一線を越えて詐欺にならない程度で、所得の高い層の満足度を高めてくれるというのであれば、彼らが好きでお金の使っているのであり、私がとやかく言うようなものではないんだろうなと思いました。
(詐欺まがいなものはやはり認められませんけどね)


 なお、"医療費増加の説明の1つとして、「医療の高度化」がしばしば指摘されるが、これは結果であって原因ではない"という指摘もありました。
画期的な新薬や治療技術が開発されたところで、需要がなければ使用されない。高くついても健康でいたいという人々の願望がまずあってこそ、高価な医療が開発され利用されるのである。伝染病のような安価に直せる疾病が克服され寿命が延びても社会がそこで満ち足りるわけではなく、さらなる健康と長寿を求め、がんや慢性疾患のような社会的費用の大きな疾患への挑戦が新たに始まるというのも同様の摂理である。以上、医療需要についてまとめれば、「医療費はこれからも経済成長率を上回るペースで上がっていく」と考えられる。


 記事後半は保険に関する話。こっちはだいぶぶっ飛ばします。

 ただ、その中で一番おもしろかったところを一つ。作者の丸山士行さんは"現実には二者択一ではなく、両方の要素の折衷が模索されるだろう"としつつ、2つの極端な選択肢を示されていました。
 国民皆保険制度という名の飛行機を思い浮かべて欲しい。この全国民を乗せたかつての最新鋭機は、歳月を経て大幅なメンテナンスが必要になった。当然お金がかかる。上述の選択肢その1は、新たにファーストクラスを導入しようというものである。ファーストクラスの乗客は高額だが極上のサービスを受けられる。当然、料金の安いエコノミークラスの乗客には劣るサービスで我慢してもらう。(中略)

 これに対し選択肢その2は、新しい飛行機は導入するが、1つのクラスに全員を乗せ、全員が平等に同質のサービスを享受するというものである。当然、お金を出せない人のためにお金を出せる人が大きな額を肩代わりすることを意味する。

 丸山士行さんは"両方の要素の折衷"としていましたが、前半の医療費増大の理由を知っていると「選択肢その1」に多少傾いてしまいます。

 最低限必要な医療(というのがまた大もめにもめるんでしょうけど)だけを選んで、それらだけは何が何でも国民全体に行き渡らせる、ということに集中した方がいいと感じました。


 ただし、政治家が今選んでいる選択肢は上のどちらでもないですし、折衷案でもないそうです。
 「高額の最先端医療のようなものは贅沢品であり、国民全員で我慢すべき」という選択肢である。旅客機の例で言えば、ガタのきた機体を何とかつぎはぎしながら乗り続けるというものである。

 政治家にとっては現状維持が一番楽だということでした。


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