2013/10/23:
●魚は高いから売れない!でも高くても売れているあの商品は?
●古い魚が並ぶスーパー…魚が売れない理由は高い価格だけじゃない
●魚が取れない日もある…当たり前の感覚を忘れているスーパーと消費者
●定番の魚以外はいらない!と拒否されて、捨てられるおいしい魚
●捨てられる魚に価値を見出すことは漁師の収入向上にも繋がる
●消費者に伝えられていないだけ…日本の魚の価値は本来もっと高い!
●スーパーや消費者だけでなく漁師にとってもメリットがある理由
●魚は高いから売れない!でも高くても売れているあの商品は?
2013/10/23:今回の魚が売れないシリーズはこれで最後。
魚の価格は高い?安い? 漁師は買い叩かれて儲かっていないで予告した消費者がなぜ魚に価値を見出だせないかという話です。
日本人の魚離れは深刻 あと数年でスーパーの魚売り場はなくなる?では、鮮魚コーナーはスーパーのお荷物で今後縮小していくのでは?といった話が出ていました。実はこのとき使った記事の反応では、「だって、魚高いし……」というものが多かったです。このように消費者が魚を高いと思うのは、その価格だけの価値を消費者が感じていないとも言えるでしょう。
肉と魚の値段を比べてどうこうという話がありますが、肉と言ってもピンきりで鶏肉と豚肉と牛肉で大雑把に価格が違いますし、部位や品種・ブランド・産地でさらに異なります。本当に値段だけで選ぶのであれば、スーパーの牛肉コーナーはもっと小さくて良いということになるわけです。
ただ、現実の牛肉コーナーは充実しています。なぜ牛肉もたくさん売られ続けているのか?と言うと、多少高くても買う価値があると感じる消費者が多いため。魚が肉に押されているというのは単純に価格だけでなく、要するに「高いお金を出してまで買うほどおいしくないから」と言っていいんじゃないでしょうか。ここらへんに私は業界の努力不足を感じるのです。
●古い魚が並ぶスーパー…魚が売れない理由は高い価格だけじゃない
努力不足を感じるという話は、日経ビジネスオンラインの連載記事で何度か出てきました。たとえば、
闘いを忘れた漁業に、未来はない:日経ビジネスオンラインで出てきた流通の話がそうです。
取材した港では、土曜日は漁がお休み。仲買人は前日の金曜日に競り落とした魚をどうするかと見ていると、半分以上は、冷蔵庫に入れてしまいます。この魚は月曜日の築地市場に出されます。一般消費者に届くのはさらに遅く、スーパーマーケットに並ぶのは火曜日。4日も5日も経った魚が届くといいます。
これは取材した相馬双葉だけの特異な話ではなく、当たり前のように全国の漁協で起こっていることだとのこと。前に書いた話にもそういう逸話がありましたが、スーパーに並ぶのはいいだけ鮮度が悪くなった魚ばかり。これじゃあ、おいしいと思って価値を感じるわけがありません。
●魚が取れない日もある…当たり前の感覚を忘れているスーパーと消費者
また、スーパーの悪いところとして、シリーズで繰り返し出てくる「4定条件(定量・定質・定価[低価格]・定時)」があります。これにより、多くの魚を無駄にしています。
一方、スーパーが置かない魚には、見る人が見ればすごく価値のあるおいしい魚がたくさんあるようです。例えば、
ガンギエイを食べたことがありますか?:日経ビジネスオンライン( 中西 未紀 2009年11月25日)で出てきた、ガンギエイという聞き慣れない魚がそうでした。
千葉県で揚がるというガンギエイは、地元の人にはおいしいと評判の白身魚。煮付けやから揚げにすると、脂が乗ってもっちりとした身に、淡泊な旨みがぎゅっと封じ込められているといいます。1度食べたら、その味は忘れることができないと作者は言っていました。
しかし、一般には知名度が低いため、築地の魚市場などでは扱われておらず、漁師もあえて獲ろうとせず、たまたま網に引っかかることがある程度。
そのためにガンギエイを扱う日本料理店「味彩せいじ」では、「今日は『ガンギエイ』が入ってないんですよ。海の都合があるもんで、すみません」と謝ることもしばしば。ただ、安定供給に慣れた我々は、食べられないことがあるという「当たり前の感覚を忘れていたような気もする」と記事では書いていました。
●定番の魚以外はいらない!と拒否されて、捨てられるおいしい魚
「当たり前の感覚を忘れていた」というのは、4定条件の一つである「定量」の問題でしょう。一定量供給される魚を重視して、それ以外を拒否しているためです。この関係では、別の記事にあったスーパーが置かない魚についての話もおもしろいと思いました。
魚を仕入れてきて料理店などに届けるZEN風土という会社の増田紀雄さんはある日、赤い小ぶりいわゆる「雑魚」が、市場の競りにはかからない未利用魚として、端のほうに積まれているのを見て「これ、ルージュじゃないですか?!」と驚きます。
ルージュは、日本で「ヒメジ」と呼ばれる魚種に属するもの。日本では各地元のみで消費される魚です。ただ、フランスでは主に南の方で揚がり、フランス料理でも代表的な魚の1つだといいます。そんな魚が、日本では「雑魚」扱い。全国市場では、ほとんど価値が認められていませんでした。
ただし、地元民の間では「金太郎」との愛称で呼ばれており、「おいしい」と親しまれていた魚。能勢さんはお店で使うことにしました。この話が載っていた記事はズバリ
捨てた魚は、高級フレンチだった(中西 未紀 2009年12月16日)というタイトルだったのです。
●捨てられる魚に価値を見出すことは漁師の収入向上にも繋がる
ルージュと同じような事例は、ほかにもあるとのこと。今やフランス料理でも広く使われている「マコガレイ」も、以前は馴染みのない魚種だったそうです。
上記で出た増田紀雄さんのZEN風土は、捨てられる魚に価値を見出し、漁師の収入向上にも役立っていました。今回のシリーズもそうですし、その前のシリーズもそうですけど、国は余計なことばかりして役に立つことはしていませんから、民間が頑張っていくしかないです。増田さんは以下のように言っていました。
「あまり使われていなかったような魚をどんどん普及させていくことが、我が社の理念である“漁業の活性化”につながるわけです」
「漁師の懐にお金が入る仕組みを作ることがポイントなんですよ。未利用魚も5000円でも1万円でも売ってあげれば、モチベーションがものすごく上がります。国の政策もあるでしょうが、何が一番大事なのかといえば、そういう一番身近な収入につなげていくということだと、私は信じています」
●消費者に伝えられていないだけ…日本の魚の価値は本来もっと高い!
最後に最初の記事から再び持ってきますけど、「スーパーも魚に価値をつけることができるはずだ」と私が感じた話です。売り上げが落ち込んでいた大橋屋というお店に対し、アドバイスしたというのが以下でした。
「サンマやカツオ、マグロなど、どこでも食べられる魚はやめろ」
「4定条件(定量・定質・定価[低価格]・定時)を撤廃しろ」
「買参権を認めるから、相馬原釜の魚を売れ」
さらに、従業員はチラシやPOP(店頭販促)などを使って、自分たちが学んで知った魚の調理方法や旬の時季といった情報を来店客に伝えました。「この魚をオリーブオイルで炒めると、おいしいですよ!」「いよいよ生鮭の季節です!」といったものです。
店頭での販売の仕方も指導を受けました。例えばスズキの頭とアラを1袋に入れて、アラ煮のレシピもつけます。そして、店頭で「奥さん、これに醤油とネギと豆腐を入れて、アラ汁にして旦那さんに食べさせなよ! 焼酎が数段おいしくなりますから」といった売り込み。こうした工夫を常に考えているといいます。
ここらへんの話は今回のシリーズ最初の投稿(
日本人の魚離れは深刻 あと数年でスーパーの魚売り場はなくなる?)での「売れる商品を作り上げる」ことができないから、魚売り場がスーパーのお荷物部門になっているのだという話にも繋がります。
日本人は忘れかけているようですが、魚には本来もっと価値があるはずなのです。
●スーパーや消費者だけでなく漁師にとってもメリットがある理由
上記で終わった方がスッキリですけど、こうした試みにより好循環が起きるはずだといった話を再び。
前述のようなやリ方で成功し、大橋屋は市場から買う魚をそんそん増やしました。実はこの成長の理由には、撤廃するようになっていた「低価格」が関係します。
ただし、中身は一般的なお店の規模による低価格の実現とは異なるもの。大橋屋が買っていた相馬原釜には年間5億~7億円を買い付ける大手の仲買人もいますが、そこから仕入れる大手スーパーよりも、大量購買できない大橋屋の方が店頭での価格は安くなったのです。
この理由は、大橋屋では、市場からそのまま店頭に並んでいるため。大手の仲買人の場合、量で仕入れ価格を抑えたとしても、それ以上に、魚を築地市場に運んで競りにかけるなど流通コストがかさんでいます。逆に言うと、日本の魚が高いのは、築地市場などを通しているからってことでしょうね。なおかつそれで鮮度を落としているのでひどい話なんですけど…。
また、大橋屋は夕方の在庫処分セールはしていません。売れ残った分は、翌日に加工し、惣菜として販売。値引きはせず、廃棄のムダを徹底的になくすことで、低価格でも十分な利益を確保できる仕組みを作り上げました。
大橋屋の躍進は、ほかの地元スーパーにも刺激に。スーパー間の競争が激しくなれば、魚の価格は下がりにくくなり、より適正価格に近づきます。しかも、築地市場には卸せない4定条件から外れたものも買っていきますから漁師にもプラスに。こうした好循環ができ始めていると、記事では書いていました。
【本文中でリンクした投稿】
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