●情報の非対称性とは「持っている情報に差がある」という意味
2013/10/24:「情報の非対称性」の話は以前も書いていた気がしますが、今回はメインで。まず、「対称」の意味を先に説明しましょう。同じ発音で「対」を使ったものが複数ありますから、この言葉もややこしいですよね。
大辞林 第三版 (三省堂)では、「互いに対応してつりあうこと。相称」と説明されています。
この他に図形の点対称、線対称、面対称などの「対称」もそうですが、要するに「つりあう」といった意味。そして、ここまでの説明の時点で「情報の非対称性」というのは、「情報がつりあっていない性質」なんだなとわかるでしょう。
「対称」の意味がなんとなくわかったところで、いよいよ「情報の非対称性」に。ただ、この手の用語は説明が難しすぎてよくわからん…ということがままあります。
Wikipediaの説明も案の定よくわからないのですが、一応さくっと引用すると以下のような感じです。
<情報の非対称性 (じょうほうのひたいしょうせい、asymmetric information) は、市場における各取引主体が保有する情報に差があるときの、その不均等な情報構造である。情報の非対称性があるとき、一般に市場の失敗が生じパレート効率的な結果が実現できなくなる>
やっぱり他のところの説明の方がわかりやすいかもしれませんね。
コトバンクでは、「取引を行う際、商品等に関して当事者がもっている情報に当事者間で格差があること」や「市場で取引される商品やサービスに関して、ある経済主体が他の経済主体よりも情報を多く持っている状態」といった説明。だいぶ良くなりましたね。
●消費者だけ損すると思ったら大間違い!情報の非対称性の具体例
情報の非対称性というのは、要するに「持っている情報に差がある」という意味だとなんとなくわかってきました。ただ、なんと言っても、一番良いのは具体例を見ること。
コトバンクでは、以下のような具体例が出ていました。これで一気にわかりやすくなると思われます。
・商品を販売する企業は詳細な情報を持つが、消費者の情報は限られる。(デジタル大辞泉を参考)
・個体ごとに使用年数、摩耗や損傷の有無・程度などの情報が異なる中古品では、売る側と買う側で著しく情報量が異なる。(ナビゲート ビジネス基本用語集を参考)
上記の例をさらっと見た感じでは、消費者側ばかり損するように思えるかもしれませんが、デジタル大辞泉が<消費者は製品の購入を控えるようになり、市場の取引が円滑に行われなくなることがある>と書いているように、結局売り手側も損をするんですよ。これをナビゲート ビジネス基本用語集では以下のように説明していました。
<買い手は価値の低い中古品を、そうとは知らずに高い価格で買ってしまうおそれがある。しかし、後になって自分が損な取引をしたことに買い手が気づき、他の買い手も購入に対して慎重になると、中古品が売れなくなる可能性が出てくる>
質の悪い品を告知せずに売ったばかりに、質の良い品まで怪しいと思われて売れなくなってしまうのです。買い手である消費者が一方的に損するのではなくて、巡り巡って売り手である業者側にとっても困ったことが起きてしまうんですね。ですから、情報を正確に表示することは、長い目で見れば売り手側にも得になると言えます。
●市場の失敗が生じる「情報の非対称性」、「レモンの原理」とも関連
デジタル大辞泉は「レモンの原理」も参照するようにと示しており、
その項目は以下のような説明をしていました。
<情報の非対称性が市場に及ぼす影響について論じたミクロ経済学の理論。中古車市場で、外見からはわからない欠陥車(レモン)と優良車(ピーチ)が混在していると、買い手が高い金額で欠陥車を買うことを恐れ、欠陥車に相当する金額しか払わなくなるため、市場に優良車を出す売り手がいなくなる。売り手・買い手の情報格差が原因で、質の悪い商品しか市場に出回らなくなる「逆選択」が起きるという理論>
「逆選択」というまた新しい用語が出てきてしまいましたね。逆選択は逆選抜、逆淘汰とも言い、悪いものが排除されることによって、良いものが選択されていくような本来の市場とは逆に、悪いものが生き残っていくという通常とは逆の望ましくない淘汰が起きるということです。
ブログ内を見ていると、
社会人が覚えたい経済学用語5つ 逆選択・機会費用・サンクコスト・比較優位・イノベーションのジレンマという過去投稿で、今回と似たような話が結構出てきていましたが、これはもう完全に市場の失敗だと言えるでしょう。
●消費者側の情報が多く、企業側が情報を持っていないというパターンも
なお、Wikipediaでは、私の言及した「企業側が情報を持っていない」というパターンにも触れていました。いわゆるモラルハザードに関するものなのですが、このモラルハザードも新しい意味(誤用?)が幅を利かせすぎてわかりづらい言葉ですので、
モラルハザード=倫理の崩壊というのは間違いも参考にしてください。
取引開始前における情報の非対称性というのは、例えば中古車市場における中古車の品質情報の格差が挙げられる。買い手が知らない情報を売り手が知っているという点から、このような情報は「隠された情報」と呼ばれている。
他方、取引開始後における情報の非対称性というのは、例えば自動車保険市場を考えたとき、保険に加入しようとしている人は自分の運転能力を知っているが、保険会社はその人の運転能力をあまり把握できない。このとき、保険に加入した人の行動が保険会社にとって完全には明らかではないという意味で、保険に加入した人の行動は「隠された行動」と呼ばれている。契約の履行は、保険に加入した人の行動に起因するが、保険に加入した人の行動について保険会社が情報劣位者となる。
情報の非対称性を「隠された情報」と「隠された行動」に区別する理由は、引き起こされる問題の性質が異なるためである。経済学の世界では一般に、「隠された情報」は市場において逆選抜の原因になり、「隠された行動」はモラル・ハザードを引き起こすとされている。
モラルハザードの意味はとりあえず置いておいて、今回の「情報の非対称性」というのは、二者の間で情報の釣り合いが取れない性質であり、多くの場合それにより不都合が生じるといった感じ。こんな感じでわかりましたでしょうか? 私は何となくわかった気分になれましたので、十分満足しました。
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