●琉球方言で「ニシ」は「西」ではなく「北」? ペーは「南」とも
2010/4/11:いわゆる標準語・共通語と異なる地方の言語を「方言」だと思っている人が大半ですが、実を言うと、学術的には都市部の言語も方言と呼ぶため、東京の言葉も東京方言です。より大きく見ると、東日本と西日本で大きな違いがあるのですが、さらに琉球地方では大きな違いが見られます。この観点では、「本土方言」と「琉球方言」といった分類がなされます。
人口的には圧倒的に多い「本土方言」の方の話者からしてみればややこしいことですが、琉球方言で「北」が「ニシ」であるそうです。じゃあ「西」は何なの?というと、「イリ」と言うようです。そう言えば、西表(いりおもて)島なんかは確かにそうですね。
また、琉球方言の「南」を「ヘー」、また、サイトによっては「ペー」と発音するとしており、これまた勘違いしていまいそうなところでしょう。「北京」の「ペキン」など、「北」を「ペ」や「ペイ」と読むことを知っている人は多く、それだけに誤解してしまいそうです。
●琉球方言での東西南北の語源 本土でも南風は「ハイ」「ハエ」
これらの方位に関しては、
ニシ浜は「西の浜」ではない~沖縄の方位名と「民俗方位」 波照間島あれこれに詳しくそちらのページの表によると、以下のようになっています。このページによると、かつてはそのまま「みなみ」、「きた」、「ひがし」、「にし」と呼ばれていたのが、いつの間にか現在の形に変化したんだそうです。
場所 | 東 | 西 | 南 | 北 |
本島 | アガリ | イリ | ヘー (フェー) | ニシ |
宮古 | アガル | イル | パイ | ニシ |
八重山 | アール | イール | ハイ | ニシ |
与那国 | アガリ | イリ | ハイ | ニチ |
言われてみればなるほどと思いますが、東西の「アガリ」、「イリ」は日の「上がり」、日の「入り」というのが、由来だとのこと。また、北と南は北風、南風の呼び名であった、「にし」「はえ」が方位の呼び名へと転用されたようです。
「はえ」については、西南日本では現在でも南風を「ハイ」「ハエ」と呼ぶ地域が多いということで本土との関連性が見られます。一方で「にし」についてはやはり不思議な気がしますが、金沢庄三郎さんという方の「イニシエ(昔)」と関連する「イニシ」の語頭音イが脱落したものという説があるとされていました。
この「イニシ」説は昔住んだ場所を「にし」と呼ぶと言う説。沖縄の場合、北方から民族が移り住んだため北を「ニシ」と呼ぶと言うわけで、これは同時に本土において西を「ニシ」と呼んだ理由も示しており、本土においては西方から民族が移り住んだためであるとしています。
●意外にわかっていない本土方言の東西南北の語源 南は不明
これがちょっと気になって、
ウィクショナリーで調べてみると、一般に「にし」の語源については<古語「去(い)にし」から「い」が脱落したもの。日の暮れの方角の意か。なお、「し」には風の意有り>という説明みたいですね。由来としては琉球方言の「イリ」に近いものがあります。
ついでですので、本土方言の東西南北の由来をまとめてみようと思ったのですが、ウィクショナリーでは南北が不明で東のみが出ていました。<古語「ひんがし」「ひむかし」より、「日、向かいし(日に向かって)」の意か。なお、「し」には風の意有り>という説明です。
もう少し他を当たってみましたが、
「きた(北)」「にし(西)」「みなみ(南)」の語源についてによると、「光の方向」を意味するカゲトモが「南」を指していたのもの、「みなみ」には繋がらず語源は不明。光なのにカゲという語がついているのもまた不思議です。
ただ北については書かれており、南の「光の方向」に対する概念である「黒・汚・闇」を表す「キタ」としたようです。例えば、キタナシという語は「キタ」が「ナシ」(甚だしい意の古語)という意味であるといった具合。ただ、こうやって見ると、本土方言の方の語源も結構わかっていない感じですね。
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