2020/06/22:
●小さくたくさん失敗しながら変化する…TDKはビジネスのお手本企業?
●カセットテープのTDK、HDD用磁気ヘッド企業に さらにセンサーへ転換
●ダメになってから慌てて転換ではない!好調時にすでに次を探していた
●自前の技術にこだわらない…弱小企業を買収して大きく育てることも
●えっ、それを売るの!?成功している事業も未来を見据えて売却
●ウサギ飼育斡旋などで失敗…TDK創業者の齋藤憲三氏は「2勝98敗の男」
●小さくたくさん失敗しながら変化する…TDKはビジネスのお手本企業?
2020/06/22:
TDKの事業転換、秘けつは2勝98敗のDNA:日経ビジネス電子版(佐伯 真也 日経ビジネス記者 2020年4月10)という記事をブックマークしていました。「2勝98敗」というのは、うちで繰り返しやっている「小さくたくさん失敗して大成功を見つけ出す」というのを思わせます。
ただ、記事の概要を見てみると、だいぶ雰囲気が違っているんですよ。<祖業の磁気技術をセンサーに応用>して、<電子部品大手のTDKが、センサー事業への転換を急いでいる>といった説明。<社内に根付く健全な危機意識が原動力。今回も事業転換を果たせるか>とも書かれています。
うちで繰り返しやっているビジネスの話は「小さくたくさん失敗して大成功を見つけ出す」以外にもいくつかあります。この内容ですと「主力事業を変えない伝統的で保守的な企業よりも、主力事業を変えてしまう変化する企業が強い」というテーマに近いかもしれないと思いました。
●カセットテープのTDK、HDD用磁気ヘッド企業に さらにセンサーへ転換
中身を読んでみると、やはりタイトルとは異なり、変化する企業というところが主体ですね。TDKは1935年創業。東京工業大学で発明された磁性材料「フェライト」の工業化を目指して設立された企業だそうです。
このフェライトをベースに、磁石に加えて、インダクター(コイル)、コンデンサーなど数多くの受動部品に応用。私の場合、TDKというとカセットテープの企業というイメージがありましたが、実はこれも最初ではなく、カセットテープは70年からです。
さらに、80年代からはHDD用の磁気ヘッドなど、TDKの屋台骨を支える事業を次々に入れ替えてきた歴史があるとのこと。やはり変化する企業のお手本みたいな感じですね。そして、現在は、センサーへの事業転換を急いでいるというわけ。現在「センサ応用製品」の割合は5.5%にすぎないものの、戦略的に転換をはかっているそうです。
●ダメになってから慌てて転換ではない!好調時にすでに次を探していた
記事では、<注目すべきは、主力事業が元気なうちに新事業の種をまき育てた点>ともしていました。同じ日経ビジネス電子版では、今の時代はもう企業が変化するのは無理…というかなり雑な内容の記事もあったものの、今回の記事はそういう内容ではありませんでした。
<浅間テクノ工場を見てみよう。センサーの開発を始めたのは2009年。当時の工場責任者だった石黒現社長が主導して着手した。そのころのTDKといえば、HDDヘッドが会社の屋台骨。10年3月期には磁気ヘッドを含む「記録デバイス」事業の売上高は、2789億円と連結売上高の約35%を占めていた。そんな時期から「次なる一手」を探っていたことになる。
磁気ヘッドの技術を何に生かすか。石黒社長と酒井技監を含むわずか4人での「闇テーマ」として検討がスタート>
●自前の技術にこだわらない…弱小企業を買収して大きく育てることも
変化する企業としては、M&A (合併・買収)も重要とされています。自前技術ではないリチウムイオン2次電池では、創業メンバーが元TDK子会社出身だった縁で、香港のアンプレックス・テクノロジー(ATL)を2005年に買収しています。
そして、これも私が好きなやり方ですね。小さな事業を大きく育てる戦略。当時は当時は、三洋電機(当時)やソニー(現在は村田製作所に売却)、パナソニックなど日本勢が7割のシェアを占め、サムスンSDIなど韓国勢も台頭し、アンプレックス・テクノロジーは最後発企業。ここから米アップルや韓国サムスン電子などの大手の優良顧客になり、スマホ向けの世界市場ではシェア首位になっているそうです。
<正攻法では勝てない。そこでTDKは、「当時はニッチだった『パウチ型』市場に特化した」(指田執行役員)。フィルムでパッケージするパウチ型は、硬い樹脂で覆う既存品に比べて形状の自由度に優れる点を訴求したのだ。
このニッチ戦略でアップルなど主要顧客の心をつかむことに成功。TDKは、フィルム加工などの生産技術を惜しみなく提供し、大型の設備投資も断行したことで、「ドル箱」事業へと変貌した>
●えっ、それを売るの!?成功している事業も未来を見据えて売却
なお、失敗もあるんですが、私は前述の通り、失敗はあって良いと思っています。TDKが素晴らしいのが、売却の判断も早いこと。村田製作所とシェアを2分していて、5G時代には「収益の柱候補の一つ」とされていたスマホ向けの高周波部品「SAWフィルター」事業をまさかの売却。
TDKによると、確かに当時のシェアは高かったものの、競争軸は個別部品単体ではなく半導体などの周辺部品とのモジュール化に移行しつつあったとのこと。将来的には個別部品単体では戦えなくなり、広範な部品を揃える必要があり、それは資金的にTDKには無理と判断。そこで、その分野の王者、クアルコムに事業を売却したそうです。
これ、簡単に書かれていたんですけど、すごいんですよ。成功事業にしがみつく…というのは、多くの人や企業がやりがち。なかなかできません。石黒成直社長によると、「経営陣は『事業は永遠に続かない』という健全な危機意識を持っている」とのことで、かなり特殊な会社だと思います。
●ウサギ飼育斡旋などで失敗…TDK創業者の齋藤憲三氏は「2勝98敗の男」
石黒社長は、「危機意識は社内に浸透しているが、それを組織として動かすのはトップの仕事。TDKの歴代トップはこうした資質で選ばれてきたと思う」とも言っていました。そのルーツは、創業者の齋藤憲三さんだといいます。「2勝98敗」はこの齋藤憲三さんの話が出典でした。
<齋藤氏は1922年に早稲田大学を卒業後、炭焼きや養豚、アンゴラウサギの飼育斡旋など数多くの事業を立ち上げては失敗を繰り返した人物。ようやくたどり着いたのがフェライトを軸とするTDKの設立だった。その後、政治家に転身し科学技術庁の創立に尽力。TDKと科学技術庁の2つの成功と数々の失敗から「2勝98敗の男」と称された。こうしたDNAがTDKの経営陣には脈々と受け継がれている>
石黒社長は浅間テクノ工場の責任者として赴任する際に当時社長だった上釜健宏さんから言われた言葉をきっかけとして、磁気ヘッドが好調なうちに次の事業を探し始めました。こう見ると、歴代トップは創業者一族ではなさそうな感じですね。
創業者一族が実は良い…という話も日経ビジネス電子版ではやっているのですけど、個人的には政治家などを含めて世襲が大嫌い。なので、今回の話で、強力なリーダーシップを出しづらいとされる創業者一族ではないトップでも、大胆な変化ができるのではないか?とも感じました。
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