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過労死型の自殺は、仕事のできる人・責任感の強い人ほど危ない


 よくある「なぜ死んでしまう前に仕事を辞めないのか?」という話に対して、いくつかの答えが出ている話。仕事のできる人・責任感の強い人が危ないとわかる話が繰り返し出てきました。さらに、その後、<「自分が辞めたら職場が困る」で身体を壊すまで働く人々>という話を追加しています。

2022/01/18追記:
●むしろメンタル強いと自覚の優秀な自衛官、うつ病でキャリア終わる 【NEW】
●机の下に潜り絶叫する奇行を見せて病院行き…エリート自衛官の末路 【NEW】


●なぜ死ぬまで仕事をやり続けてしまうのか?和泉貴士弁護士の説明

2013/11/6:パワハラと長時間労働の魔窟で死を選んだ社員たち 遺族に寄り添う弁護士が説く「心を壊す職場」の罠|悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史|ダイヤモンド・オンライン  2013年8月27日は、自死遺族支援弁護団の和泉貴士(八王子合同法律事務所)さんへのインタビュー記事でした。

 ここで和泉貴士さんは、インタビューアーの吉田典史さんの「日本の職場では、上司などとの距離の取り方が上手く、要領のいい社員が浮かばれ、コミュニケーションなどが不器用な社員は潰れていく傾向があるように思います」という言葉に以下のように答えていました。

「『正直者がバカを見る』という構図は、確かにあるように思う。私がここ数年の間に受けた相談について言えば、月の残業時間が160~200時間になっていた社員(正社員)が数人いた。(本人たちは超長時間労働などの影響で精神疾患になり、死を選んでいた。特に、超長時間労働とパワハラなどが重なるケースでは、労働者の側はどうすることもできない。何かの歯止めをかけないと、事態は深刻になる」

 この後書いた自己責任論の蔓延が日本のブラック企業問題を悪化させている? 自己責任論を唱える人ほど責任を放棄しているでやっているように、多くの人は「仕事をやめれば解決なのに」と言います。

 しかし、彼らの多くは、自殺を選ぶ前に既に精神疾患の症状が現れていることが多いと、和泉さんは説明しています。「自殺者の9割以上が、何らかの精神疾患に罹患し、正常な判断能力が欠けた状態で自殺行動に出るという理解が有力になりつつある」とのこと。つまり、いきなり自殺するのではなく、まず正常な判断がくだせなくなり、その結果傍目に見て不可解な選択を取るということみたいです。

 私が以前聞いていた自殺の典型例は、社会との繋がりが持てなくなるからというものでしたので、精神疾患的な理由が言われていることは意外でした。

 ただ、仕事を起因とした自殺・過労死型の自殺と孤独型の自殺ではかなり異なると考えられますので、別物と見た方がいいかもしれません。


●過労死型の自殺は、仕事のできる人・責任感の強い人ほど危ない

 また、本人の性格も災いした可能性があります。やはりこれも後に書いた自己責任論の蔓延が日本のブラック企業問題を悪化させている?と絡む話で、和泉弁護士は、「いずれの人もまじめな性格で、仕事に対して責任感が強かった」としていました。
和泉 たとえば20代の人のケースでは、本人は仕事が好きで仕方がなかった。優秀だから、上司などから担当外の仕事もあてがわれ、労働時間は増え続けた。

筆者 「柔軟な職務構造」(連載第1回で紹介)のもとでは、仕事ができる人はなぜか次々と仕事が増えていく傾向があります。そこに明確なルールもなければ、歯止めもない。上司らには、他の社員との分量を公平にするという意識も乏しいように思えます。

和泉 彼は仕事の量が多くとも、それをこなした。しかし、上司との関係がもつれ、ギアが噛み合わなくなると、それまでの負荷が一気に疲れとなって現れる。責任感が強いから、それを抜け出そうとするが、なかなかできない。それで一層、精神に滅入ってしまったのかもしれない。

筆者 「柔軟な職務構造」のもとでは、抜け出そうとするほどに、それができなくなりますね。私の観察では、プロ意識を持ち仕事にのめり込むタイプは、「柔軟な職務構造」ではいいように使われ、磨滅していくことが多いように見えます。その一方、中途半端なプロ意識で職場の空気を察知し、うまく立ち回る人が得をする。

●良さそうに見える日本の「柔軟な職務構造」…実は良い意味ではない

 仕事がきでればできるほど仕事量がどんどん増えるというのは、わかります。「わかる」と言ってももちろんそれを肯定するわけじゃありませんよ。従業員にとって良いかどうはともかく…と言うか、むしろ従業員にとっては良くないことなのですが、会社からするとその方が効率的だというのは理解できるところなのです。

 よく言われる「仕事ができないから残業をする、仕事ができるやつは仕事を終わらせてさっさと帰れるはずだ」という意見も必ずしも間違いではありません。そういったタイプのだらだら残業も多いでしょう。しかし、「仕事ができるやつは仕事を終わらせてさっさと帰れる」には前提があり、すべての人に同じ量の仕事を請け負わせるといった場合にしか言えないのです。

 ところが、現実には「自分の担当範囲が明確に決まっていて、自分の仕事さえ終われば帰って良い」という会社は稀。そもそも日本の会社は責任の範囲、仕事の範囲が曖昧だと言われています。作者が「柔軟な職務構造」と文中で書いていたのも、どうやらこの仕事の範囲の曖昧さを指しているようです。

 こういった曖昧な仕事の範囲の中では、会社としては仕事ができる人に多く仕事を回した方が圧倒的に有利です。同じ残業の1時間の残業時間でも、仕事のできない人より仕事ができる人の方が多く仕事をこなせて安上がりになるため。ほとんど同じ給料なら、できる人にどんどん仕事をさせた方が儲かります。

 また、人を一人雇うといろいろと経費がかかりますので、サービス残業じゃなくきちんと残業代を支払ったとしても既存の人員の仕事を増やした方が有利です。このこと自体は仕事のできない人にも当てはまるものですが、前述したものと同じ理由から仕事のできる人への負担がますます大きくなるという要因になります。

 先ほど言った通り私はこれを認めるわけじゃないです。しかし、仕事ができる人に負荷が集中するというのは構造的に明らかだと思われます。記事では以下のような負荷が集中した事例も紹介。好景気なら良いのですけど、今は会社に余裕がないですから人をなかなか増やしてもらえません。こういったケースは増えているだろうと想像できます。

<(引用者注:メーカーに勤務する50代の男性管理職は、)ある大きなプロジェクトを任された。社員の数が少ない上に、男性は部下のことを思い、残業を減らそうとして、自らが大量に仕事を抱え込んだ。責任感が強い人だった。疲れが蓄積し、精神疾患となり、死を選んでしまった。しかも、労働時間を会社には過小報告していた>


●社会ではこれで当たり前と誤解…無知を利用されてしまう従業員

 また、最初にあった「精神的にまず壊される」以外の、常々言われている「なぜ辞めないの?」という話についても少し。一つは私も以前書いた持っている情報の違い、身も蓋もない言い方をすると「無知」です。例えば、"死には至らなかったが、精神疾患になってしまった20代の女性"の以下のような例がありました。

<女性が(引用者注:正社員として採用されて)勤務した会社は離職率も高く、人の出入りが激しかった。賃金は低く、アルバイトの時給とさほど変わらない。これでは、社員間の横のつながりはなかなかできないと思う。すると、他の社員の労働条件などについて知る機会が少なくなる。自ずと、自分が置かれている状況にも気がつきにくい>

 こういった無知な状況は企業側が意識しているところもあるようです。吉田さんは、「ブラック企業の経営側にとって、社員が1つにまとまらないように分断するのは常套手段」だと指摘。例えば、労働条件や査定評価などを比較できないようにして、都合のいいようにコントロールするとしていました。

 それから、ずっと同じ会社に勤めることが良いことだという日本の考え方や、終身雇用の風習が残る日本の採用慣行というのも災いしているでしょうね。むしろ「仕事を変えて良い」「仕事をやめて良い」と、我々は言わなくちゃいけません。


●責任感の強さから仕事を辞められずに死ぬ

 「仕事を辞めてはいけない」という強迫観念は、やはり最初に出てきた責任感の問題とも関係します。さらに他にも責任感に関する話が出ていました。
和泉  過労自死や過労死する人は、社員間のつながりが希薄であったり、社内の体制が不備であったりする中で、誠実に仕事をしようとする。まじめに考え、懸命に取り組む。誰かがカバーしなければいけないところを、自分でカバーしようとする。そこに不公平があるはずなのだが、多くの人は見て見ぬふり。その狭間で苦しみ、あがき、精神などを患うことがある。

筆者 そこまでしてなぜ会社に勤めるのか……。

和泉 私が相談を受けた人の大半は、死ぬ直前に「もう、会社を辞めたい」と家族などに漏らしている。しかし、辞めない。疾患の症状が進んでいることもあるのかもしれない。そして責任感が強いから、仕事や会社、さらに家族などに対し、思うことがあるのではないだろうか。

 会社が組織である以上、個人の力ではどうすることもできない場合はあると思う。1人でその責任を背負い込むことは、避けたほうがいい。精神的に苦しく、働くことができないならば、会社を辞めてもいいと思う。

 辞めてから初めて気がつくこともある。多くの人は、そのことを知らないのかもしれない。死を選ぶのはあまりにももったいない。私は、それを言いたくて活動している。

 この「そこまで会社に尽くすことはない」というのも、それを知らないと始まりませんね。私は日本企業の極端な新卒重視を常々不思議に思っているのですが、無知な人間を雇い、その会社のやり方を普通だと思わせることができるというのは大きな魅力かもしれません。

 ブラック企業対策にしても自殺対策にしても、「正しい情報を知らせる」というのは重要なポイントなのかなと今回感じました。


●「自分が辞めたら職場が困る」で身体を壊すまで働く人々

2017/05/17:関連しそうな劣悪な職場なのに「辞める」決断ができないのはなぜか | 転職で幸せになる人、不幸になる人 丸山貴宏 | ダイヤモンド・オンライン(2017.4.3)という記事を発見。自己責任論の蔓延が日本のブラック企業問題を悪化させている?と迷ったものの、今回はこちらに追記しました。

 作者の丸山貴宏さんが代表取締役を務めるクライス・アンド・カンパニーには、第三者から見て「そんな働き方を続けていたら身体を壊す」という状況に置かれているのにもかかわらず、なかなか辞める決断ができない人が相談に来ると言います。

 責任感の強い人は 「自分が辞めたら職場はどうなってしまうのだろう…」と思いがちですが、これがブラック企業に利用されて、比喩ではなく文字通り死ぬまで使い倒されてしまうのです。

 しかし、これは「過剰な責任感」だと、丸山代表は書いており、"突然社員が姿を消すようなケースでも、会社組織は何とかなる"という事例を挙げていました。ただ、私はこの書き方もどうかと思います。人数が少ない企業ではマジでどうにもならないケースもあるためです。

 なので、そうではなく「会社なんて潰れたっていい」くらい私は言って良いと思います。だって、あなたが死ぬかどうかって話なんですからね。


●むしろメンタル強いと自覚の優秀な自衛官、うつ病でキャリア終わる

2022/01/18追記:他で使ったメンタル崩壊から復活した30代男性が語る「教訓」 元エリート自衛官に起きたまさかの事態 東洋経済オンライン / 2022年1月14日 7時30分(松永 怜:ライター)という記事は、このページにも関連する話でした。登場する元エリート自衛官は、仮名でわびさんという30代の方です。以下のようにまず最初出てくる話は、前時代的な根性論の匂いがする話でした。

<暑さ寒さが過酷な現場では、テントの室温が50度前後にも及ぶ状況で指揮を取ったかと思えば、マイナス15度の極寒の地で訓練をしたことも。寒さのあまり、普段優しくて温厚な人でもキレやすくなったり、攻撃的になる傾向もあったそうだ。
 そんな中、わびさんは幹部上級過程において歴代優秀者の中に名を連ね、知識、技術ともに高い評価を得ていた>

 ところが、部署異動をきっかけに壮絶なパワハラに遭遇します。同期の中でもトップの成績を残し、誰よりもメンタルが強いと自負していたにも関わらず、最終的にはうつ病を発症し、休職を余儀なくされてしまいました。ただし、パワハラを受けている自覚はなかったといいます。

 「上司は自分のためを思って厳しく言ってくれている。自分の努力が足りないだけ。頑張ればいつかわかってもらえるはず」と考えていたそうな。典型的な精神論ですね。「ブラック企業だとか言って甘ったれるな!」と自己責任論を言う人もこういう考え方ですが、そうした主張がブラック企業で働く人を殺すのです。

<ところが、日に日にエスカレートしていく叱責。1日の業務量が多く、怒鳴られるたびに仕事は止まる。上司へ報告、連絡、相談を受けてくれるのは19時以降で、すべての案件に対して長時間の指導や人格否定が続く。その後、翌日上司が出勤するまでに、当日から翌日朝までに上がった情報収集や分析を行わなければならず、やれどもやれども終わりが見えない。
 当時の残業時間は月200時間を超えた。朝5~6時には出勤して、帰宅時間は深夜1時。睡眠時間は毎日3時間程度。土日休みだったものの、仕事が終わらず土日のどちらかは出勤。もう一日はひたすら寝るか、生まれたばかりの双子の子育てで妻も孤立無援となっており、一緒に家事や育児も行う日々に追い詰められていった>


●机の下に潜り絶叫する奇行を見せて病院行き…エリート自衛官の末路

 「自動販売機で缶コーヒーを買うにも、この種類を買ったら上司に怒られるのではないか。トイレにいても、途中で上司が入ってきたら、この場所を使っていたら迷惑にならないか」と考えるほど追い込まれます。フラフラになりながら、以前お世話になった上司に相談を持ち掛けたものの、返ってきた言葉は「気のせいだ」だったそうです。

 最後は、職場で叫び声を上げてデスクの下に潜り、そのまま病院に運ばれるという壮絶なエピソードで終了。当時の記憶はまったくなかったといいます。このような状態では職務ができないために、当然ながら休職。社会復帰するまでに1、2年の時間を費やすことになってしまいました。

 このケースでまずかったのは、まず、「何を言われても反抗しなかった」こと。日本企業は従順な社畜を求めますし、国民全体としても「反対意見を言う外国人は使えない。やっぱり日本人は素晴らしい」という考え方がまかり通っています。しかし、これがパワハラやいじめ、ブラック企業精神にガッツリ噛み合うんですね。

 また、「弱音を吐かなかった。逃げることは恥だと思っていた」という、一見メンタル的に強そうな思考が、実際にはメンタル崩壊に繋がりました。これもダメなんです。記事では「自分の心のサインに気付かなかった」とされていました。誰しもがストレスにダメになる可能性があり、メンタル最強の人なんかいないと考えた方が良いでしょう。


【本文中でリンクした投稿】
  ■自己責任論の蔓延が日本のブラック企業問題を悪化させている? 自己責任論を唱える人ほど責任を放棄している

【その他関連投稿】
  ■自殺のサイン・兆候 自殺は人に言わないは嘘、予防できるときもある
  ■休みの多い職業はどんな仕事?逆に休日の少ない職種は? IT、SEなど
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  ■サービス業=給料安いは海外でも当然?経験も教養もないのに高いなんてあり得ない
  ■その他の仕事について書いた記事

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