「現在はプロのイラストレーターにとって不遇の時代」だとのこと。イラストの買い叩きが横行しているためです。この理由として大きそうなのは、イラストレーター人口が大きく増加したというもの。このため、使い捨てのようにイラストレーターを使っても、買い手側は困らないということになっています。
●ノーギャラ…やなせたかし氏の「タダ働き」に甘えていた自治体
2013/11/22:
イラストレーターが「買い叩かれる」実態 無報酬でも「選り好みできない」(2013.10.26 キャリコネ)では、まず先日亡くなったアンパンマンの作者やなせたかしさんのエピソードが登場。「ほぼ日刊イトイ新聞」の対談で、やなせたかしさんは"晩年に制作を依頼された約200のご当地キャラ"のうち、「2つぐらいはお金をくれた」たものの、後は「ノーギャラ」だったことを明かしていたそうです。
そして、これを知った人気漫画家の吉田戦車さんが、「あの人の『タダ働き』に甘えてきた多くの自治体とか組織は恥じろ、と思いますね」とツイートして論争になったというお話です。実は私はこの吉田戦車さんのツイートだけは知っていました。賛同意見もあったものの、2ちゃんねるのまとめ記事では批判の方がやや優勢というほど悪い反応でした。
「生きてるときに本人に言え」といった批判が多かったので、「いや、亡くなったときってたくさん逸話が出るものだから、今知ったってことじゃないの?」と疑問に思っていたのですが、やはりそうだったようです。なお、Yahoo!ニュースの意識調査では逆に、約8割の人が吉田さんの発言に「共感できる」と回答していたとのことでした。
●横行するイラストの買い叩き…政府がそもそもタダ働き要求
こういったクリエイターのタダ働きとしてすぐ思い浮かんだのが、政府がやっているクールジャパン構想。記事でも取り上げられており、"2013年4月3日に開かれた政府のクールジャパン推進会議では、ポスターやキャッチコピーの制作に関してクリエイターが無報酬で参加するべきだとも提言された"と書かれていました。
他の例はここまでひどくはなかったものの、かなり買い叩かれているという話が出ています。
「ある雑誌での話ですが、10センチ四方ほどのカラーイラストで1点2000円という仕事がありました。これはだいたい相場の3分の1から6分の1の価格。初めてお付き合いする雑誌で、描き終わってから後出しジャンケン式に提示されたため、泣く泣くその金額を受け入れました」(フリーのイラストレーター 20代・女性)
「名の売れたイラストレーターならともかく、駆け出しのイラストレーターは報酬だけでなく実績がほしい。たとえギャラが安くても『この雑誌で描きました!』という実績があれば、それが認められて大きな仕事につながるかもしれない。だから若手イラストレーターは仕事を選り好みできないし、タチの悪い一部のクライアントは足元を見て安いギャラをふっかけてくる」(30代の男性イラストレーター)
●イラストレーターになっても食えない 人口増加でイラスト価格が安くなる構造
普通の企業でも最初は利益度外視でも、仕事を取りに行くということはあります。しかし、それは後に繋がることを期待してのことです。競合相手が数社であればその後の付き合いも期待できますが、何百社から好きに選べる場合は極端な話、発注側はギャラ度外視でやってくれる相手を次々と選んでいくことで、常に激安価格で契約できます。
"ひと昔前はイラストレーターが「希少」で、仕事を依頼する側とイラストレーターとの「個人的なコネクション」が必要だった"とのこと。ところが、現在はイラストレーターは使い捨てでも困らない状況のようです。
昔はウェブで絵を公開している人が少なかったというのもありますが、私も個人的にウェブでタダで見れる絵のレベルがものすごい上がり方をしたなと感じています。昔いいなと思って保存していた絵を今見ると非常に物足りなく感じることが多いです。絵柄の流行の問題だけでなく、技術的な面を見ても、大きく上がっていると感じます。
また、単純な技術向上だけでなく、同じ技術の人の数が今と昔では全然違うということは特に重要。これらは私たち一般の人にとっては良い話のようにも見えるのですが、「現在はプロのイラストレーターにとって不遇の時代」(30代の男性イラストレーター)となったというのは確実です。ウェブ上に質の高い絵師(絵描き)が大量に登場し、なおかつ連絡が取りやすくなったことで、完全な買い手市場になりました。
「いまでは、ネット上にフリーのイラスト素材が大量にある。pixivなどのイラストSNSを通じてアマチュアのイラストレーターに依頼することも可能。『高価なプロの絵よりも、安価なアマの絵』というクライアントは少なくない。この傾向は、特にウェブサイト用のイラストやソーシャルゲーム用のイラストで顕著ですね」(30代の男性イラストレーター)
●競争激化で食えなくなるのは当然の流れ、タクシー業界などと同じ
競争が激しくなれば食えなくなる、プロとして暮らしていくのが難しくなる…というのは残念ながら必然であり、なかなかこれといった解決策はありません。
アマチュアとの競合というよりは楽しみ方の多様化のせいでしょうが、この手の話は「CDが売れない」などで既にミュージシャンに関して耳にタコができるほど言われていますし、書籍でも同様のことが言われています。他にも新規参入の増加での競争激化による採算悪化は、タクシーや理髪店などが話題になりやすいです。
望ましい対応と言えるかは別として、このうちのタクシー業界なんかは「数が多すぎるから、減らさないといかん」と再び規制するという話が最近出ていました。例えば、
タクシー:保護鮮明…減車義務付け、特措法成立 毎日新聞 2013年11月21日 06時05分という記事が出ています。
タクシーの過当競争を是正する改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法が20日、参院本会議で可決、成立した。タクシーの減車を事実上、義務付ける内容で、売り上げや賃金の低下にあえぐ業界、運転手からは歓迎の声も上がる。しかし、規制緩和で競争を促して経済を活性化させる安倍政権の成長戦略とは逆行する内容ともいえる。創意工夫で事業を拡大してきたベンチャー系業者からは「利用者置き去りの規制強化だ」などと反発の声が出ている。
◇過当競争是正狙い、成長戦略に逆行
改正法によると、競争の激しい都市部を国土交通相が「特定地域」に指定、新規参入や増車を制限する。具体的には事業者などによる協議会が、台数を減らす計画を作り、各社に減車を指示する。協議会に入らない事業者には、計画に従うよう国が命令できる。【三沢耕平】
イラストレーターもこのタクシー業界と同じように全員で集まって談合すればいいのですが、現実的には無理でしょう。そして、対策ができないとなると、残念ながらイラストレーター一本で食べていくという人はほとんどいなくなり、趣味で副業程度にという人ばかりになると思います。
(途中で書いた「一般の人にとっては良い話のように見える」ですが、プロが減ることで上位層の質低下の可能性はあります。一方で、裾野が広がってイラストレーター人口が増える分、才能のある人を呼びこむ可能性は高まるとも言えるので、どちらに転ぶかは断言できない感じ。理想論としては、才能のある人には金銭的にも十分な報いがあってほしいんですけどね…)
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