●世界初の先物取引市場は江戸時代の日本!大阪の堂島米会所のコメ先物
2021/08/07追記:
Wikipediaによると、堂島米会所(どうじまこめかいしょ)というのは、江戸時代の享保15年8月13日(1730年9月24日)、摂津国西成郡の大坂堂島に開設された米の取引所のこと。当時の大坂は全国の年貢米が集まるところで、米会所では米の所有権を示す米切手が売買されていたそうです。
堂島米会所では、正米取引と帳合米取引の2種類の取引が行われていました。正米取引というのが現物取引、そして、帳合米取引というのが先物取引のことです。敷銀という証拠金を積むだけで、差金決済による先物取引が可能であり、現代の基本的な先物市場の仕組みを備えた、世界初の整備された先物取引市場であったとされています。
設立経緯としては、まず、米座御為替御用会所というものができていたという話から。江戸幕府が米価下落への対策に苦慮していたとき、江戸の三谷三左衛門、中島蔵之助、冬木彦六の3名の取り計らいでできたものだそうです。これそのものは、まだ先物取引ではありませんし、名前を見てわかるように堂島米会所とも異なっていました。
ただ、正銀正米の売買だけでなく、廻米の入津季節以外にも1年を通じて市場を繁栄させようと、大坂の米商備前屋権兵衛、柴屋長左衛門が売繋買繋の方法を案出したそうです。これは建物米を定め、限月限日を建て、その期限内に延売買を行うものだったと説明されていました。先物取引ですね。
幕府は当初、不正取引のかどで延売買を禁じていました。ただ、当時の幕府は結構柔軟性があったようで、延売買を禁じた翌年か同年(時期ははっきりせず)である享保7年(1722年)12月には早くも、1000石以内の延売買を許し、享保9年(1724年)2月、空米相場(お米の先物取引)をも認めたそうです。
●コメで世界初の先物取引市場ができた日本で、コメ先物が禁止に!
こうした話を書いたのは、
コメ先物、なぜなくなるの? 自民農林族が上場反対―ニュースQ&A:時事ドットコム(2021年08月06日)という記事を見かけたためです。「どうして本上場は認められないの」などの質問に対して、記事では以下のような説明が出ていました。
<農水省は取引に参加する生産者らが増えていないことを理由に挙げている。一方、堂島商取は申請前から協議を重ねてきたのに、申請後に突然、こうした点を問題視したと、農水省を批判している。JAグループや自民党農林族には本上場に反対論が強い。次期衆院選が近い中、JAなどへのアピールを狙った農林族の動きが、農水省の判断に大きく影響したと不信感を強めているようだ>
<JAは組織としてコメ先物に反対しているが、単位農協には先物のメリットを認め、利用するところもある。有識者から「族議員に振り回される旧態依然の密室行政」と批判が出ている>
農水省の指摘「全く当たらず」 堂島商取が反論―コメ先物本上場:時事ドットコム(2021年08月05日)によると、大阪堂島商品取引所の中塚一宏社長は、「(反対派は)先物が現物取引に悪影響を及ぼし、価格が乱高下すると、根拠なく主張している」と指摘した他、以下のように主張していたそうです。
<農水省は本上場申請が認められない理由として、取引する生産者らが増えていないことを挙げているが、中塚社長は取引開始からこの10年間、一貫して増えていると反論。「農水省の指摘は全く当たらない」と強調した>
<堂島商取によると、農水省が問題視したコメ先物に参加する生産者は、10年前の試験上場開始直後の2社から、直近は66社まで増えたという。このため中塚氏は、農水省が不認可にする明確な根拠を示していないとし、「どれほど参加者が必要か、ぜひ明らかにしてほしい」と訴えた>
●JAが先物取引に反対なのは、農家を食い物にして稼げなくなるから?
実を言うと、先物取引ではコメ以外の農作物が昔からあったのですが、「廃止で当然!」という意見の人もネットでは多く見かけました。どっちが正しいのかわからん…と思って、自民党政権に比較的近い日経新聞はどう書いているかな?と検索してみると、
コメ先物取引 認めぬ理由を問う: 日本経済新聞(2021年8月5日 11:30 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下 一仁)という記事が出ていました。まだ決定前だったときの記事です。
<世界で最初の先物市場は、1730年に開設された大坂堂島米市場だ。この自由な市場は、統制経済に移行した1939年に閉鎖された。
米を統制していた食糧管理法が1995年廃止され、2005年商品取引所が米の先物市場を農水省に申請した。しかし、JA農協の意向を受けた自民党は認めず、民主党政権の2011年やっと試験上場が認可された。自民党政権下で4回も期限が到来したが、取引低迷を理由に本上場への移行が見送られ続けている。今回本上場できるかどうかが最後のチャンスとなる>
一般的にこうした市場は価格を安定させるものだと理解されています。記事でも、<契約時の価格が保証される先物取引は、生産者にとって価格変動へのリスクを回避し、経営を安定させるための手段だ。生産者が先物を利用すれば、政府も財政負担をして米価を維持する必要はなくなる。納税者も利益を受ける>としていました。
自民党農林族が肩入れしているという反対派のJAは、「米を投機の対象としてはならない」とも主張していたとのこと。よくわからん主張でスルーでも良さそうですが、これにも反論。現在と比較にならないほど米が重要だった時代に、200年も米の先物市場は日本経済の中心だったと指摘。さらに、JAの主張を認めるなら、今では米より重要な原油や通貨の先物取引は廃止すべきとしています。
その後はさらにボロクソに批判していてびっくり。<先物価格が上がると農家は利益を受けるが、現物取引の価格で手数料収入が決定されるJAは利益を受けない。JAは主食である米を減産して米価を維持してきた。JAが先物取引に反対するのは、現物取引である米の価格を自由に操作できなくなるからだ>と書いていました。
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