人種差別批判を歌ったボブ・ディラン、人種差別発言で訴えられる

2013/12/4：
●ボブ・ディラン氏、人種差別発言で訴えられる
●発言の何が問題になったのかわからない？
●「奴隷を使った主人」だけでなく「KKK」にも言及か？
●ボブ・ディラン氏は人種差別批判を歌った歌手では？
2018/12/09：
●当初無視していたノーベル文学賞、結局受賞したんだっけ？


●ボブ・ディラン氏、人種差別発言で訴えられる

2013/12/4：歌手のボブ・ディランさんの以下の発言が問題になりました。２０１２年、ローリングストーン誌フランス語版に掲載されたインタビューで、米国の白人に根強く残る人種差別感情に言及した部分。つまり、発言自体は、白人の人種差別を批判する文脈です。

「奴隷を使った主人の血が流れていれば、黒人には分かる。ユダヤ人に（迫害した）ナチスの血が分かり、セルビア人にクロアチア人の血が分かるようにね」

　ところが、この発言が、クロアチア人をナチスになぞらえ憎悪をあおったとして、フランスで事情聴取を受け、刑事訴追された模様。フランスでは人種や民族に基づく憎悪扇動は刑事罰の対象となり、仏国内のクロアチア人組織がディランさんを刑事告訴。

　だいぶ経ってから刑事訴追というのは不思議でしたが、コンサートのためフランスを訪れた2013年１１月中旬に、当局の事情聴取を受け、刑事訴追された、ということだそうです。
(ディラン氏、仏で刑事訴追＝クロアチア人への憎悪扇動（2013/12/03-07:29）より)


●発言の何が問題になったのかわからない？

　何が問題になったのかわかりづらい発言だと思います。ということで、少し整理。ボブ・ディランさんの発言では、迫害された側と迫害した側が以下のようになっています。

迫害された側　黒人、ユダヤ人、セルビア人
迫害した側　奴隷を使った主人、ナチス、クロアチア人

　そして、ここでクロアチア人をナチスや黒人奴隷を用いた人と同列視しているという部分が問題となったのでしょう。クロアチア人は、奴隷の主人・ナチスと異なり、人種そのものになっています。


●「奴隷を使った主人」だけでなく「KKK」にも言及か？

　なお、「奴隷を使った主人」については、「KKK」としている記事や、両方を併記している記事があり、バラバラでした。

仏当局がＢ・ディランを事情聴取、人種差別的発言の疑い ：朝日新聞デジタル
2013年12月3日01時27分

　［パリ　２日　ロイター］　問題の発言があったのは、２０１２年９月に発行された米誌ローリング・ストーンでのインタビュー。ディランはその中で、米国では人種差別感情が根強く残っていると指摘。

　「奴隷の雇い主の血やＫＫＫの血が流れていれば、黒人には分かる。ユダヤ人にナチスの血が分かり、セルビア人にクロアチア人の血が分かるように」と述べた。
http://www.asahi.com/culture/reuters/CRETYE9B201H.html

　KKKってのは有名なのでご存じの方が多いでしょうけど、一応補足。殺人などの暴力の方が有名な極右団体ですが、合法的な活動で勢力を非常に拡大したときもあったようです。(2018/12/09追記：KKKはその後、トランプ大統領支持で話題になりました)

クー・クラックス・クラン（英: Ku Klux Klan、略称：KKK）は、アメリカの秘密結社、白人至上主義団体。

「白人至上主義団体」とされるが、正確には北方人種を至上とし、黒人やユダヤ人、アジア人、近年においてはヒスパニックなどの他の人種の市民権に対し異を唱え、同様に、カトリックや、左翼団体、同性愛者の権利運動やフェミニズムなどに対しても反対の立場を取っている。
Wikipedia

●ボブ・ディラン氏は人種差別批判を歌った歌手では？

　ボブ・ディランさんの話に戻りますが、私が最初記事の見出しを見てあれ？と思ったのは、彼がもともと人種差別を批判する行動で有名だったため。確かめるために他も検索すると、やはりそういった話が出てきました。

ロックの歴史～ビートルズとボブ・ディラン

　ビートルズをはじめとしたイギリス勢が渡米した頃のアメリカでは、主に学生を中心とした、反体制・反政府運動の炎が広がりつつあった。ある者は反戦平和を掲げ、ある者は人種差別撤廃を叫び、またある者は男女平等を謳い、ある者は表現の自由・言論の自由を求めて走り回る。６０年代は若者が積極的に政治に参加し、問題意識をぶつけた時代であった。
　こうした運動熱心な学生たちに支持されていたのがボブ・ディラン等のフォークミュージシャン達だった(中略)

　６３年のサード・アルバム「時代は変わる」、６４年の「アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン」の成功によって、彼(引用者注：ボブ・ディラン)はフォーク・ファン達から厚い信頼と支持を勝ち取ることになる。
　特にセカンド・アルバムに収録されている「風に吹かれて」や「戦争の親玉」などの歌詞は、反戦や人種差別をモチーフにした歌詞が歌われ、運動家のフォーク支持者たちにスローガン的な曲として扱われる。
http://history.sakura-maru.com/dylan.html

真っ正直なアメリカ人が、アメリカ人でいることに恥ずかしさを覚える曲 ～ ♪ハリケーン / ボブ・ディラン - A Day In The Life ～ 懐かしき１曲

自らを“ハリケーン”と呼び、ボクシングの世界チャンピオンにもなれる逸材だったルービン・カーター！
しかし、彼は、黒人であるが故、無実の罪で投獄されました！

この、アメリカ人の恥部である、人種差別による冤罪をテーマに歌われた曲が、ボブ・ディランの「ハリケーン」です。
http://blog.goo.ne.jp/beatle-lennon/e/2420e2954eaf8ccc423e8dc5edc02677

　ミュージシャンの方は商売として割りきって自覚してやっているのか、それとも、他人に厳しく自分に優しくで、自分のこととなると全く見えなくなるといった無自覚でやっているのか、言っていることとやっていることが違う方は大勢います。

　ボブ・ディランさんの今回の件は悪い意図があったようには見えませんけど、クロアチア人への思いやりがなかったということは否定できないでしょうね。


●当初無視していたノーベル文学賞、結局受賞したんだっけ？

2018/12/09：読み直していて、あれ、その後ノーベル文学賞貰わなかったっけ？と思ったらやはり彼でした。あと、最初ノーベル賞への反応がなくて、ノーベル賞を最終的に受け取ったかどうかも忘れていたので検索。どうも規定は満たしたみたいですね。

　ディランさんは2016年10月の受賞発表後、一時期連絡が取れない状態に。12月の受賞式も「先約のため」欠席。受賞の賞金800万クローナ（約1億円）を受け取るためには、受賞式の6カ月後の6月10日までに講演しなければならないというルールがあるんだそうです。

　しかし、翌年の6月5日、ノーベル財団が受賞記念講演を公開。講演では、歌と文学は似ている部分もあるが違っていて、「歌は読まれるのではなく、歌われることを意図してつくられている」などと語っていましたが、無事受賞が決まったようです。
(ボブ・ディラン、やっとノーベル賞の受賞講演「でも、歌と文学は違う」 | ハフポスト　2017年06月06日 00時07分 JST | 更新 2017年06月06日 00時08分 JSTより)


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