西郷隆盛の話をまとめ。<西郷隆盛がいい人…は無理ありすぎ?悪さがあっても魅力なのに…>、<いい人にしすぎて『西郷どん』物語が破綻、突然の闇落ちに困惑>、<奄美大島の娘との感動的な結婚は嘘?実際には差別していた>、<『西郷どん』スタッフも平和論者ではなく、戦争好きだったと指摘>などをまとめています。
また、後に<西郷隆盛、奄美大島の人を外国人差別用語で呼んで「気持ち悪い」>、<愛加那は妻ではなく召し使い扱い?痩せてたのに豚になった理由>などを加えました。
2022/10/31追記:
●自殺図った西郷隆盛に大久保利通がかけた感動的な言葉とは? 【NEW】
●西郷隆盛、奄美大島の人を外国人差別用語で呼んで「気持ち悪い」 【NEW】
●愛加那は妻ではなく召し使い扱い?痩せてたのに豚になった理由 【NEW】
●西郷隆盛がいい人…は無理ありすぎ?悪さがあっても魅力なのに…
2018/09/18:目的のためには手段を選ばないというマキャベリストやサイコパス的な人物というのもまた魅力的であり、実際、過去の人気ある歴史人物においても、サイコパスと目される人物が多数いるそうです。現代社会においても、サイコパスはむしろ人に好かれやすいみたいですからね。
ドラマウォッチャーの吉川織部さんも、西郷隆盛が好戦的な人物として描かれようと、薩摩の利益は考えても日本全体の利益は考えていなかった人物として描かれようと、ドラマとして筋が通っていておもしろければいいと考えているとのことでした。
これが本当に一般的な見方かどうかわかりませんけど、史実上、西郷が後にブラック化したことは疑いようもないし、そうならなければ成し遂げられなかったこともあった、と指摘。ここでいう「ブラック化」は、「闇落ち」といった方がわかりやすいかもしれません。いい人だったのが、「悪」のようになってしまった感じです。
●「日本人同士が争っている場合ではない」が突然「徳川を潰せ!」
上記の話があった
『西郷どん』西郷隆盛、突然のブラック化に困惑…説得力なさすぎる展開で視聴率もガタ落ち 2018.09.11 19:20 ビジネスジャーナル (ドラマウォッチャーの吉川織部)によると、NHK大河ドラマ『西郷どん』もどうも当初は「いい人」として、西郷隆盛を描いていたようです。以下のような記述がありました。
・西郷を正義の人として描いてきた
・西郷を平和的な人物として描いてきた
・なるべく戦争を避け、戦わずに解決する道を探ってきたのだ。その理由は、「諸外国が虎視眈々と日本を狙っている状況下で、もはや日本人同士が争っている場合ではないから」であった。
ところが、第34回「将軍慶喜」で突如闇落ち。大政奉還したのだからもういいじゃないか、と話す坂本龍馬にまで「武をもって徳川を叩き潰さなければ、何も変わらない」として、やたらと好戦的になってしまいました。今まで描いてきた西郷隆盛像を、前触れなくぶっ壊してしまったようです。
●いい人にしすぎて『西郷どん』物語が破綻、突然の闇落ちに困惑
ドラマ的には、この突然の心変わりの説明のために、史実ではない「幕府はフランスに薩摩を与えるつもりらしい」という伝聞情報があったとして、西郷隆盛の行動の正当化をはかったようです。ただし、これとて、本(もと)を正すと、薩摩藩が好戦的なために起きたことであり、これによる正当化は無理のある選択だと指摘されていました。
(1)
薩摩が幕府に敵対する(2)幕府はフランスに支援を求める
(3)フランスは見返りに薩摩が欲しいと要求する
(4)それを聞いた薩摩は「異国に日本(の一部)を渡すなんてけしからん」と倒幕の意志を固める
これは、まさに西郷隆盛が危惧したという「諸外国が虎視眈々と日本を狙っている状況下で、もはや日本人同士が争っている場合ではないから」そのもの。全く筋が通っていません。
作者は、ドラマの前半で西郷を平和主義的な人物として描いたのであれば、後半ではブラック化する理由やその過程をきちんと描くべきだった、としていました。平和的な人物のまま、頑なに統幕にこだわる西郷隆盛を描いたために、矛盾が生じたようです。
●西郷隆盛が戦争を邪魔する坂本龍馬を暗殺するような流れに…
記事では、最後に、龍馬が大政奉還の仕掛け人だったことを知った西郷は、あからさまに「余計なことをしやがって」という態度を見せたことを指摘。その上で、流れとしては、西郷が龍馬を暗殺しそうな勢いだが、さすがに西郷を主人公としたドラマでそれはできないだろう、と予想。
そして、「西郷の思いを忖度した誰かが暗殺した――という落としどころが一番しっくりくると思うのだが、果たしてどのように描くのだろうか」と書いていました。ただ、この方の次の『西郷どん』の記事は見つかりませんでした。変わりに見た別記事の書き方だと、結局、作者の予想した通りに「西郷の思いを忖度した誰かが暗殺した」と思わせる流れにしたようです。
・坂本龍馬の妻お龍は、西郷隆盛に「あんたが殺した!」と怒りをぶつける。
・西郷隆盛の西郷従道も戦の鬼と化していく兄に戸惑い反発する。
・それでも、西郷隆盛は大久保利通とともに慶喜を排除するため「王政復古」のクーデターを決行する。
・民に優しい“西郷どん”らしさがなくなった姿に「人情深いキャラが一変して驚いた」「龍馬暗殺…吉之助の強い覚悟が見えた」といった反応があった。
(
鈴木亮平のニュース - 西郷どん、龍馬惨殺され…お龍の怒りにネット「やるせない思いが切ない」 スポニチアネックスより)
こういう流れにするのであれば、確かに「西郷隆盛ではなく幕府が悪い」という作り話の中途半端な言い訳を入れず、ブラック化する理由やその過程をきちんと描いた方が良かったでしょう。むしろその方が感情移入できそうですし、より名作になったと思われます。
●奄美大島の娘との感動的な結婚は嘘?実際には差別していた
2020/07/14:大河ドラマはとっくの昔に終わっているんですが、今頃
『西郷どん』を見ても、西郷隆盛のどこがスゴいかよくわからない(週刊現代) | 現代ビジネス(2018/8/26)という記事を今頃読みました。これによると、西郷の女性関係を描くことに重点が置かれたホームドラマだという指摘。なので、政治部分の扱いが軽いみたいですね。
奄美大島に流された西郷が大恋愛の末に島の娘・愛加那との結婚…というのも、ホームドラマ的な要素。ただ、これも捏造の可能性との指摘でした。正式な結婚式を挙げてはいるものの、郷土史研究家の箕輪優さんによると、実際のところ『あんご(性生活を伴う、お手伝いの娘)』に近い形で差し出されたのではないかと言われているそうです。
これくらいの脚色やホームドラマとしての描き方があっても、私は良いとは思います。とはいえ、捏造しすぎて、前述の通り、悪くない人が悪者になってしまっているのはどうかと感じました。やりすぎ感があります。そもそもやはり西郷隆盛がいい人というのに無理がありそうで、郷土史研究家の箕輪優は、以下のようにも言っていました。
「当時の書簡を読むと、ドラマでの西郷とはだいぶ異なっています。薩摩藩は奄美を260年近く植民地にしていますから、慣習的に彼も奄美の人間を見下していた。
娘たちの手の甲の刺青をバカにしたり、『もっとまともな家に住ませろ』と訴えたりしていたそうです。それを知ると、彼が単純に英雄視されていることは疑問に思います。
また、砂糖作りで生活を営む島民を見た西郷は、政府の中枢につくと砂糖を旧藩同様、鹿児島で独占するよう指示していました。結局は薩摩士族のことしか頭になかったのでしょう」
●『西郷どん』スタッフも平和論者ではなく、戦争好きだったと指摘
『西郷どん』の時代考証を担当しているという、大河ドラマでは身内にあたる原口泉さんすら、ドラマでは極端な平和論者として描かれているがそうではない面もあった…と指摘しています。ここらへんは捏造しなくても、十分、西郷隆盛を魅力的に描けると思うんですけどね。
「徳川慶喜の命を受けた第一次長州征伐では『長州を潰せ』と、過激な発言をしていたそうです。
ドラマでは先の話ですが、大政奉還の後、どうしても戦で幕府を倒したかった西郷は、徳川に挑発行為をしかけます。薩摩御用盗という浪人集団を江戸中で暴れさせたのです。
旧幕府の命令で市中を取り締まっていた庄内藩は、怒って薩摩藩の江戸藩邸を焼き討ちしました。その知らせを聞いた西郷は『我が事成れり』と言った。つまり、望み通り徳川家と全面戦争になったことを喜んだわけです」
ここらへんは最初に書いていた、日本全体の利益を考えずに、幕府をつぶすことにこだわった…という話のところ。また、前回ちょっと出てきたように、西郷隆盛は、日本の利益よりも薩摩藩の利益を優先しているという見方もあり、これはさっきの奄美大島の砂糖を薩摩が独占の話とも合致しています。
このような話でしたが、原口泉さんは、西郷隆盛をけなしているわけではありません。この事件に端を発した戊辰戦争で、敵対した庄内藩への降伏条件は極めて寛大であったことを指摘。彼は、硬軟織り交ぜた戦略で明治維新という革命を成功させたと評価していました。やはり史実通りでも西郷隆盛の魅力は十二分に描けるという話でしょう。
●自殺図った西郷隆盛に大久保利通がかけた感動的な言葉とは?
2022/10/31追記:東洋経済オンラインでやっている大久保利通の連載。「何かと誤解の多い大久保利通の実像に迫るのが、本連載の目的」とされています。ただ、実像ではなく、美化的なところも感じちゃうのは気になるところで、悪い話が全然ない一方で、いい話が圧倒的に多いですね。
例えば、
自殺図った西郷隆盛に大久保がかけた胸刺す言葉 | 近代日本を創造したリアリスト 大久保利通の正体 | 東洋経済オンライン(真山 知幸 : 著述家 2021/11/21)でタイトルになっていたのは、以下のような「いい話」でした。月照とともに海に身投げしたものの1人だけ死にきれずに生き残った西郷に対して、現場に駆けつけた大久保がかけた言葉だといいます。
「月照があの世に逝き、あなた一人が生き残ったのは、決して偶然ではありません。天が、国家のために力を尽くさせようとしているのです。どうか、これからは自死など考えることなく、自重して国家のために尽くしてください」(『大久保利通伝』より)
<西郷は、薩摩藩11代藩主で自身を引きたてた島津斉彬が死去したときも、墓前で自殺を図ろうとしている。大久保は3歳年下の後輩の身でありながら、「生き残ったからには、やるべきことをやれ」と、西郷がまたヤケを起こさないように釘を刺しながら、叱咤激励したのだ>
●西郷隆盛、奄美大島の人を外国人差別用語で呼んで「気持ち悪い」
この回では、「何かと誤解の多い大久保利通の実像に迫るのが、本連載の目的」とした上で、「一方で、大久保とは対照的に英雄視される西郷隆盛もまた、イメージ先行で語られやすい」として、違う面を指摘。私が以前書いたのと同じで、それはそれで人間臭い魅力があるでしょ?とも書かれていました。大久保利通もこのスタンスで書いてほしいんですけど…。
<「私心を持たず、人情に厚く、包容力がある豪快な革命児」
いいイメージをわざわざ覆すことはないのかもしれないが、人間臭い実像がまた別の魅力を引き立たせてくれることがある。書簡を読み解いていくと、実際の西郷は繊細で、また猜疑心が強い一面もあったようだ>
生き残った西郷は「菊池源吾」と改名させられたうえで、奄美大島に島流し。これは幕府から西郷隆盛を隠すためでしたが、「投身入水という女子のしそうな手段を講じて、自分だけ生き残ってしまった」と嘆き。これが繊細な面の逸話みたいですね。一方で、この島流しではうちでも以前書いた差別的なところも見えていました。
<何かと気分が沈みがちな西郷だったが、島民たちが薩摩藩に砂糖の生産を強いられた挙句、搾取されていると知ると激怒。役人の島民たちへの暴力に立ち向かうなど、西郷らしい正義感も発揮している。
しかしながら、西郷が島民たちと心をともにしたかといえば、首をかしげざるをえない。島での生活が5カ月ほど経過した安政6(1859)年6月7日の時点で、こんな心境を大久保らへの手紙に綴っている。
「毛唐人たちとの交わりは極めて難儀で、気持ちも悪い。生き残った人生を恨む」
「毛唐人」(引用者注:けとうじん。外国人を指す差別用語で、今でも右派系の人がたまに外国人に対して使います)とは、島の住民のこと。言葉が通じなかったため、西郷はそう表現したらしい。島民とコミュニケーションがとれないうえに、湿潤な気候も西郷の肌に合わなかった。体調不良に苦しめられた西郷は、少しでも状況を変えるため「せめて転居させてほしい」と親交のある代官に願い出ているほどである>
●愛加那は妻ではなく召し使い扱い?痩せてたのに豚になった理由
島で西郷の世話をしたことが出会いのきっかけで、33歳の西郷が23歳の愛加那を妻に迎えました。2人は仲睦まじく、目の前でイチャイチャするので、周囲が目のやり場に困ったといいます。となると、これはいい話かな?と思いきや、以下のような指摘。お殿様が使用人に熱を上げて手を出すイメージですかね。
<それでも夫婦間は対等な関係ではなかった。結婚して3年が経っても、西郷は愛加那のことを書簡で「召し使い置き候女」と記している。この時代に珍しい認識ではないが、西郷にとってあくまでも愛加那は現地妻にすぎなかった>
ちなみに、西郷さんといえば、恰幅のいい体格で知られていますが、島に流される前はむしろスマートだったそうな。寝て食うのがほとんどの島での生活が、西郷を不健康な肥満体へと変貌させたといいます。万延元(1860)年2月28日付の大久保らへの手紙で「豚同様にて」と自虐的に近況を報告しているそうです。
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