2013/12/18:
名大、ディオバン事件でデータ操作なしの中間報告
ノバルティス社員の関与が薄かった名古屋大学の研究
名古屋大・千葉大の場合、メインでは別の降圧剤と差なしの結果
2018/08/26:
不正なしの最終報告だった名古屋大論文、撤回に
●名大、ディオバン事件でデータ操作なしの中間報告
2013/12/18:5つの大学のうち最後に残っていた名古屋大学の中間報告が出てきました。が、「データの操作なかった」という見解だそうです。
名大「データの操作なかった」 NHK 12月13日 22時10分
大手製薬会社「ノバルティスファーマ」の高血圧の薬の効果を調べた複数の大学の臨床研究に当時の社員が関与していた問題で、名古屋大学の調査委員会は、データの操作はなかったとする中間報告をまとめました。
この問題は、「ノバルティスファーマ」が販売する高血圧の治療薬「ディオバン」の効果を調べた京都府立医科大学など複数の大学の臨床研究に、この会社の当時の社員が関与していたもので、名古屋大学の研究チームも「ディオバンを飲んだ患者は、ほかの薬を飲んだ患者より心不全による入院が少なかった」とする結果を論文で発表していました。
13日会見した調査委員会によりますと、臨床研究に参加した1150人の患者のうち名古屋大学附属病院の患者141人について論文のデータとカルテのデータなどをつきあわせたところ、一部に入力ミスはあったもののデータの操作はなかったということです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131213/k10013822651000.html
●ノバルティス社員の関与が薄かった名古屋大学の研究
ここは千葉大のケースと同じで元社員(当時はノバルティス現役社員)の関与が薄かったようです。試験デザインの論文で、大阪市立大学講師として名前を連ねていたノバルティスファーマの元社員で明らかになっているのは、研究計画段階でのアドバイスやデータ解析への関与のみ。WEB管理システムへの患者データ入力時点などに関与できる立場にはなかった、とされています。
(
NAGOYA HEART 恣意的なデータ操作の痕跡認められず 降圧薬・ディオバンめぐる臨床研究で ミクスOnline 2013/12/16 03:52より)
千葉大も不正なしとしていましたが、あちらは
ディオバン論文でデータ不一致の千葉大、「不正なし」と謎の見解で書いたように第三者機関では操作を疑っていましたので、怪しいところが見られました。
一方、今回の名古屋大はそういった声が出ておらず、5大学の論文では一番まともそうです。
●名古屋大・千葉大の場合、メインでは別の降圧剤と差なしの結果
ただ、毎日新聞は以下のようにこれらの大学の論文についてまとめていました。
バルサルタン:臨床試験疑惑 調査出そろう 「効果あり」で不正 結論、データ操作に相関
毎日新聞 2013年12月18日 東京朝刊
別の降圧剤とバルサルタン(引用者注:商品名はディオバン)の効果に大差はなかったと結論付けた2大学はデータ操作を否定し、特別の効果があったとする3大学は不正を示唆しており、試験の結論とデータ操作との相関関係が浮き彫りとなった。【八田浩輔、河内敏康】
http://mainichi.jp/shimen/news/20131218ddm001040193000c.html
毎日新聞では、「不正はなし」とした名古屋大、千葉大とも、"バルサルタンに心臓を守る働きがあると指摘したが、脳卒中の予防など試験の
主目的だった評価項目では別の降圧剤との間に差がなかった"と書いています。
この2つの大学はノバルティスファーマ元社員の関与が少なかったという共通点があり、ディオバン(バルサルタン)の効果の強調度合い(不正の強さ)と元社員の関わり度合いには相関関係があると言って良さそうです。
●不正なしの最終報告だった名古屋大論文、撤回に
2018/08/26:名古屋大学の論文についてブログ内検索してみると、中間報告以降書いていなかったようです。ただ、2014年12月の「最終報告」でも、「データの恣意的な操作はなかった」として、「イベントの定義やNHS(引用者注:臨床研究「NagoyaHeartStudy」)に関わったノバ社員の肩書に関する修正」のみを求めていたようです。
ところが、名古屋大学は最終報告からほぼ3年経った2017年11月22日になって、同大における臨床研究「NagoyaHeartStudy」(NHS)において、妥当性に欠けるエンドポイントの判定があったなどとして、「論文撤回が適当」と勧告する追加調査を公表したといいます。
(
名古屋大、ディオバン論文に撤回勧告、2014年の「最終報告」から一転|医療維新 - m3.comの医療コラム 2017年11月23日 高橋直純(m3.com編集部)より)
私がこの話を知ったのはより最近の
ノバルティス論文、米医学誌が撤回「名大調査に基づき」:朝日新聞デジタル(西川迅 2018年8月24日12時58分)という記事でした。掲載した米医学誌ハイパーテンションにの判断で撤回に。東京慈恵会医大、千葉大、滋賀医大、京都府立医大の論文は先に撤回されており、名古屋大学は最後でした。
名大の調査委は2017年11月、この研究で
実際には入院していない患者らを「入院」に含めたことを「妥当性を欠く」と指摘。症例を分類する委員会にノバルティスの元社員が出席するなどしたことも「不適切なプロセス」として、「論文撤回が適当」と結論づけたといいます。
前述の通り、名古屋大学の論文は、ノバルティスファーマ元社員の関与が少なかったもの。逆に言えば、論文に問題があった場合、大学側が不正もしくは不適切な処理をした可能性が他より高そうです。入院していない患者らを「入院」に含める「操作」をしたのは、いったい誰だったのでしょう?
【本文中でリンクした投稿】
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