一度さらっと読んでいたのですが、どうも流し読みだったせいで肝心の部分を軽く受け止めていました。よくよく読んでみると、相当ひどい話です。
私が読んだというのはうちでよくやっている論文不正の関係でした。
子宮頸がん論文「自社に有利」=ワクチンメーカー社員が執筆-市民団体 時事ドットコム
子宮頸(けい)がんワクチンは医療費を削減する効果があるとの論文を、ワクチンを製造販売するグラクソ・スミスクラインの社員(退職)が身分を明かさずに発表していた問題で、薬害オンブズパースン会議(代表・鈴木利広弁護士)は25日、「自社に有利な結論を導いている」と批判する見解を発表した。
同会議は問題の論文について、
1人当たり約5万円の接種費用がかかるのにゼロとして計算しているほか、がんを防ぐ効果を過大に見込んでいると指摘した。(2013/12/25-12:19)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013122500362 まず、計算などがおかしいという点が一つ問題です。前提が覆されるおそれがあります。
さらに問題なのは、社員が関わっているという点です。ノバルティスのディオバンと似たケースですね。(
製薬株式ノバルティス社員の研究参加で波紋 ディオバン論文捏造問題など)
「社員(退職)」とありますが、論文発表時は社員です。おもっくそ利益誘導になっています。
同社によると、論文は「若年女性の健康を考える子宮頸がん予防ワクチン接種の意義と課題」と題し、2009年9月に国内の専門誌で発表された。12歳の女子約59万人に接種すると、がんを防ぎ医療費など約12億円が節減できると結論付けた。
社員は医薬品にかかる費用と効果を分析する部門の課長だったが、論文では東京女子医大講師の肩書を使用。社員であると明かしていなかった。社員は10年6月に退職した。
今回問題となったのは、この論文が"厚生労働省の審議会はワクチンへの公費助成などを決める際の資料として、問題の論文を用いていた"という点もあります。
今読み直してみるとここまででも十分すぎるほどひどい話なのですが、書くことが他にありましたし、初見時はスルーして話が大きくなったら書こうと思っていました。
ただ、私は大事なところを読み逃していました。副作用まで発生していたのです。
子宮頸がんワクチンは今春定期接種の対象となったが、副作用の訴えが出されたため、6月に接種勧奨が中断された。
最初の方の記事によれば、市民団体は"副作用の訴えを受けて中止された接種勧奨の再開を厚労省が検討していることについて、「断じて再開すべきでない」と"していたそうですが、そりゃそうですね。役満レベルで悪い条件が揃っています。
・製薬会社社員が身分を明かさずに論文を発表した。
・論文の内容に不正の疑いがある。
・国はワクチンへの公費助成などを決める際の資料として、問題の論文を用いていた。国は接種も勧奨していた。
・ワクチンの接種によって副作用が生じたおそれがある。
薬には多かれ少なかれ必ず副作用があるものであり、副作用を大げさに言っている可能性はあります。
ただ、報道によると、この副作用の内容や発生の確率というのがまた洒落になっていません。
東京新聞:子宮頸がんワクチン接種1795人回答 45%が体調不良訴え:神奈川(TOKYO Web) 2013年12月12日
鎌倉市は、11日の市議会観光厚生委員会で、子宮頸(けい)がんワクチンの接種者全員を対象に独自に行ったアンケートで、回答者の45.6%が痛みやはれ、脱力感などの体調不良を訴えたとする集計結果を報告した。生理不順や発熱、頭痛などの症状が現在も続いている人は11人。中には2~3年続いている人もおり、市は電話で状況を聴くなど追跡調査を行っている。(中略)
今回の接種に対する意見では、「実験されたようで嫌な気分」「国は安全性を確認してほしかった」「副作用の情報があれば受けなかった」など、国への批判が目立った。
市は、今回の結果について接種との因果関係は判断できず、国の調査を待って対応を検討するとしている。(斎藤裕仁)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20131212/CK2013121202000115.html もう一つ、こちらは個別のケース。
子宮頸がんワクチンの“罪”(上)「いつ学校に行けるのか」 副作用の苦痛、狂わされた人生 2013年12月14日 神奈川新聞社
痛みやだるさを押し、つえを突きながら高校に通った。だが、欠席もたびたびで、学校側から「このままでは進級は難しい」と告げられた。「もう、頑張れるだけ頑張った」。検査入院を先延ばしにしてまで勉学にこだわってきた女子生徒と母親は、退学を決意した。“元凶”は、子宮頸(けい)がんワクチンの接種。副作用とみられる苦痛にとどまらず、人生まで狂わされようとしている。(中略)
副作用とみられる症状が出始めたのは、中学3年の春。最初に左膝の関節が痛みだした。一気に悪化、一定時間おきに激痛が走り、夜も眠れないほどだった。
左膝をかばって歩くことで、やがて右膝も痛み出した。通院と転院を繰り返しながら、何とか学校生活を続けたが、今年1月、ついに歩けなくなった。
横になっていても両ふくらはぎがじんじんと痛む。腕を上げると肩が激痛に襲われ、衣服の脱ぎ着もままならない。「夜に十分眠れないだるさと微熱から、気持ちも後ろ向きになっていった」。生徒は振り返る。
1、2月はほとんど学校に通えなかった。(中略)
中高一貫で進学した高校では、学校生活の悩みが一気に膨らんだ。単位取得のために授業は欠席できず、無理をして通学し続けた。
5月、副作用問題がテレビの特集番組で取り上げられ、出演していた宮城県の専門医に問い合わせると、「副作用と考えてほぼ間違いない」。国が子宮頸がん予防ワクチンの接種について「積極的に勧奨しない」と異例の見解を示したのは、その翌月だった。
「さまざまな支援体制が動きだしてくれるはず」。母親の淡い期待はだが、あっさり裏切られた。
夏になると、生徒には足のけいれんやめまいの症状も出始めた。教室に居続けられず、移動にも車いすやつえを使わなければならないほどだった。しかし「教室に25分間いないと出席と認められない」「学習支援や介助など特別な配慮はできない」と断られた。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1312140008/ 上記の話は国もひどいですね。論文に騙されて推奨などをしたところまでは仕方ない面があるものの、副作用の問題が明らかになって「積極的に勧奨しない」と国側も事実上問題を認めているにも関わらず支援はなし…というのはつじつまが合っていません。
しかし、読めば読むほどひどい話です。最悪の場合、製薬会社社員が自社への利益をもたらすために不正を行った論文によって、多数の人に重篤な副作用を与え、人生を狂わせたということになります。
ただ、こういったことの重大さに比べると、メディアの扱いがやや軽めな感じなのは気になります。もっと追求されるべきでしょう。
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