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知能指数(IQ)は80%が遺伝 遺伝子か?環境か?の二択ではない


 遺伝や知能指数、教育法の話をまとめ。<双子の研究をしている安藤寿康慶應義塾大学教授、双子と結婚する>、<どんな子でも育て方で決まる!むしろ極端な環境派だった安藤寿康教授>、<知能指数(IQ)は80%が遺伝 遺伝子か?環境か?の二択ではない>などをまとめています。

 その後、<グーグル創業者など!活躍者を生み出すモンテッソーリ教育>、<モンテッソーリ教育の子が優れているのは、単に遺伝のせい?>を追記しました。

2023/04/20追記:
●グーグル創業者など!活躍者を生み出すモンテッソーリ教育 【NEW】
●モンテッソーリ教育の子が優れているのは、単に遺伝のせい? 【NEW】




●双子の研究をしている安藤寿康慶應義塾大学教授、双子と結婚する

2014/1/5:知能に対する遺伝と環境の関係 行動遺伝学の安藤寿康「遺伝マインド」知能と遺伝と環境 行動遺伝学「遺伝子の不都合な真実」の問題点に続いて、安藤寿康(あんどうじゅこう)慶應義塾大学文学部教授の研究に関連してもう一つ書きます。

 安藤教授は後述するように双子の研究をしているのですが、おもしろいことに奥さんが双子だそうです。安藤寿康|ふたごラボでは、以下のような話がありました。できすぎた話であり、「究極の愛」説や「究極の打算」説が生まれるのもわかりますね。

<才能は生まれつきか環境かに興味を持ってふたご研究を始めました。
 私自身はふたごではありませんが、私の妻は一卵性のふたごです。学生の間には「だからふたごの研究を始めた」という「究極の愛」説と、「だからふたごと結婚した」という「究極の打算」説がささやかれているようですが、いずれでもなく、これは平凡な「ご縁」です。
 私は科学者ですが、こういう「ご縁」は大切だと感じています。このホームページでみなさまと出会うことができるのも何かの「ご縁」、そこから遺伝子と環境と人間との結びつきを解き明かすことに少しでも貢献できればと思っています>


●双生児法の研究は昔からある…ナチスも優生学で利用された過去も

 では、研究の話です。「知能指数は80%遺伝」の衝撃 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト 川端裕人というインタビュー記事がありました。前述したように、双子の研究をしています。この研究について、「わたしがやっている双生児法の研究は、オリジナリティなんてない」という言い方をしていました。

「学説史的にいえば、古くは19世紀、チャールズ・ダーウィンの従兄で、生物統計学の祖のひとり、フランシス・ゴールトンがすでに双子に興味を持っていました。その頃はまだ一卵性と二卵性の区別がなかったので、血縁者はこんなに似ていて、特に双子はこれほど似ている、とかやっていたわけです。のちに集団遺伝学や育種学につながっていく研究です」
「一卵性と二卵性の区別をした上での観察は、20世紀の前半、1920年から30年代ぐらいには方法論としてはできていました。まずはドイツで、これはもちろんナチスなんですけど、人種政策に反映される優生学の基盤になった残念な研究。それから1940年代ぐらいからアメリカでも研究が始まります。特に1970年代以降、行動遺伝学会というのができて、テキストもたくさん書かれ、一つの学問領域として確立されました」

 当然ナチスやアメリカの優生学にはいろいろと問題があったわけですが、現代人の感覚からすると遺伝子が無関係だというのもまた変な話であり、遺伝子の影響があることは確か。とはいえ、以前書いたように2ちゃんねるの人たちの中には、ここらへんを「遺伝のみで決まるか・そうでないか」という単純な話に持って行ってしまっている人が多かったので、今の人だって本当にバランス感覚を持っているかどうか怪しいですけどね。


●どんな子でも育て方で決まる!むしろ極端な環境派だった安藤寿康教授

 ところが、このバランス感覚ということで言うと、おもしろいことに、安藤さんも遺伝より断然環境!と最初は偏っていたといいます。

「バイオリンのスズキ・メソードってあるでしょう。創始者の鈴木鎮一は、我が国が生んだ幼児教育の天才だと思うんですね。それこそモンテッソーリやペスタロッチといった人達と同じレベル。子どもの頃から母語を話しかけるのと同じように、周りでバイオリンを弾いて遊んであげる。そして、超一流の作曲家の曲を超一流の演奏家が演奏するのをいつも聞かせてやれば、美しい心が子どもの中に育っていくという、すごく楽天的な考え方。でも実際、天才しか弾けないと思われていたバッハやビバルディのコンチェルトを6歳、7歳のどこにでもいる子どもに弾けるようにさせてしまったわけで。彼の言い分を聞くと、環境を完璧にコントロールできたら、どんな能力でも育っちゃうんじゃないかと思えたわけです」

 ちなみに、スズキ・メソードのスローガンは、「どの子も育つ 育て方ひとつ」「人は環境の子なり」。安藤さんはこれをアカデミックに基礎づけたいと思って、大学院に入ったといいます。まさにピッカピカの環境派、という言い方をされていました。私が一番批判的なタイプかもしれません。しかし、"大学院での指導教官だった教授から行動遺伝学の本を紹介され、衝撃を受けた"そうです。

「1970年頃、ジェンセンという心理学者が、実は知能指数IQは遺伝によって80%決まっているんだと、双子の研究で明らかにしたんです。黒人と白人との間にはかなり大きな遺伝によるIQの差がある可能性を述べた論文を出して、社会的大事件になって。それについての本と、それに対する批判の本っていうのが、ちょうど日本の翻訳書として出ていたんです」

 ここで今度は遺伝一辺倒に偏ってしまう……という極端な人がたまにいます。以前、脱原発から原発推進派に転向した海外の人とか、左翼から右翼に転向した日本の人とか聞いたことがあったので、トンデモな主張をする人には結構あるのかなぁと思います。幸い、安藤さんはバランス感覚があったようで、環境要因も忘れませんでした。"ピッカピカの環境派から方向を修正し、「遺伝と環境」の影響の仕方を見る行動遺伝学を学んでいくことにな"ったようです。


●知能指数(IQ)は80%が遺伝 遺伝子か?環境か?の二択ではない

 なお、ここで出てきた「ジェンセンという心理学者」が、前々回2ちゃんねるで出ていたと書いた「時代遅れの研究」といった批判をされていた方です。ただ、以下のような説明があり、"方法論的な問題もひとつひとつ洗練させていった"とされていたので、ジェンセンさんへの批判をそのまま現代の行動遺伝学に当てはめるのはアンフェアでしょうね。

<1970年代は、行動遺伝学や双子研究にとっては冬の時代。人種差別の学問というレッテルをはられて、挽回するために費やした10年だったという。政治的な批判にこたえるのはもちろんのこと、方法論的な問題もひとつひとつ洗練させていった>

 方法論的な問題を洗練させていったという例としては、双子研究に関する話がありました。当初は別々に育った双子の研究ばかりだったのですが、これは問題もあったといいます。別々に育った一卵性双生児を比較する研究はわかりやすいものの、そのわかりやすさゆえに問題があったそうです。

<別々に育ったのに、一卵性双生児はかくも似ているといえば、「すべてが遺伝で決まる」かのようなセンセーショナルな解釈をされやすい。環境の違いを軽視する(遺伝を強調する)方向にバイアスがかかるかもしれない。また、倫理的にもどうか。この問題をクリアした、緻密な双子研究が始まり成果が出始めたのが、安藤さんが大学院に入った1980年代頃だという>
「もともと環境によってこれだけ変わるという研究をしたかったのに、あらゆることに遺伝の影響が入ってるっていう論文ばかりなわけですよ。で、考えてみりゃ当たり前じゃないかと。人というのは遺伝子の産物なんだから、遺伝の影響が現れてくるのは当然なのに、社会科学では結局ナチス以来のタブーのベールに覆われてしまっている。これはむしろ、知的に不誠実だと感じたんです」

 知能指数(IQ)は80%が遺伝…という説でも、飽くまで遺伝要因は80%であり、全部ではないんですね。環境の影響も遺伝の影響も両方関係ある。当たり前だと思うんですけどね。それなのに一般人は極端な反応になりやすいです。ただ、このジェンセンさんに関する部分については、もう少し補足。こちらは、ヴィゴツキーの最近接領域説とジェンセンの環境閾値説 遺伝は否定される?で書きました。


●グーグル創業者など!活躍者を生み出すモンテッソーリ教育

2023/04/20追記:最初に書いていた部分で「バイオリンのスズキ・メソードってあるでしょう。創始者の鈴木鎮一は、我が国が生んだ幼児教育の天才だと思うんですね。それこそモンテッソーリやペスタロッチといった人達と同じレベル」という話が出ていました。ここで言うモンテッソーリというのは、モンテッソーリ教育の創始者のことだと思われます。今回新たに読んだ記事では以下のような説明がありました。

<料理人のジュリア・チャイルド、作家のガブリエル・ガルシア=マルケス、歌手のテイラー・スウィフト、そしてグーグルの創業者ラリー・ペイジの共通点は何か。それは全員、子供の頃にモンテッソーリ教育の学校に通っていたことだ。(中略)
 マリア・モンテッソーリが、「子供の敏感期に最適な刺激を与えることに軸をおいた新しい学習法」の開発を思いついたのは、ローマの精神病院で学習障がいがある子供たちがパンくずで遊ぶ姿を見たことがきっかけだった。
 そのアプローチの根底には、教具は子供の体の大きさに合わせ、五感に訴えるものにする、という原則がある。子供たちは創造力を発揮して問題解決に取り組むことが奨励され、同時に教師は「強制や監視をせずに子供たちをサポートする」導き役を果たす>


●モンテッソーリ教育の子が優れているのは、単に遺伝のせい?

 上記のように読むと、モンテッソーリ教育は素晴らしいものだと感じるかもしれません。ところが、これを紹介した記事は、「モンテッソーリ教育」には本当に効果があるのか 専門家たちが追跡調査を実施 | 世界的に広がっているけれど… | クーリエ・ジャポン(2023.4.18)というもの。そもそも有効性が証明されていないというのです。

<いくつかの研究は、子供の発達にとって多くの利点があることを示しているようではあるが、「それがモンテッソーリ教育法によるものなのか、あるいはただ単にモンテッソーリ教育を受ける子供たちが恵まれた環境で育っているからなのかは確かめることができない」(引用者注:おそらくBBC記事から引用)。
 たとえば米バージニア大学で心理学を教えるアンジェリーン・リラードは、ウィスコンシン州ミルウォーキーにあるモンテッソーリ教育の学校に通う児童たちを5歳の頃から観察した。その結果、他の学校に通う児童よりも、読み書きの能力、計算力、そして社会的能力が優れていることが示された。また、12歳になると、ストーリーテリングの力でも勝っていることがわかっている。
 スイスのローザンヌ大学病院(CHUV)の神経内科医ソランジュ・ドネルヴォの研究でも、モンテッソーリ教育の学校に通う児童は、他校の児童と比べて創造性が高い傾向があり、それが良い成績につながっていると考えられると指摘した>

 上記研究を見ると、効果があるのはやはり確定に思えます。ただ、科学ではこうした説を証明するのには多数のデータが必要でまだまだ足りないみたいですね。さらに、ややこしいことに最近は「モンテッソーリ教育」を謳いながら実態は違う「偽モンテッソーリ教育」の方が多いくらいに流行っていて、ますます実態がわからなくなっているとのことでした。

 あと、「ただ単にモンテッソーリ教育を受ける子供たちが恵まれた環境で育っているからなのかは確かめることができない」のところは、最も重要部分なのに記事では軽く流されていたので補足。こうした比較をするには、比較対象が同じ条件で揃っていけなければいけないのですけど、そうではない場合があるんですよね。

 例えば、モンテッソーリ教育を行う学費の高いお金持ちの子が多い学校と、一般家庭の子が通う学校を比較するのは不適切だとわかるでしょう。これでは遺伝の差など、お金持ちの子と一般家庭の子との差である可能性が出てきます。モンテッソーリ教育は人気であるがゆえに、この現象が起きている可能性は十分あると感じました。


【本文中でリンクした投稿】
  ■ヴィゴツキーの最近接領域説とジェンセンの環境閾値説 遺伝は否定される?
  ■知能に対する遺伝と環境の関係 行動遺伝学の安藤寿康「遺伝マインド」
  ■知能と遺伝と環境 行動遺伝学「遺伝子の不都合な真実」の問題点

【関連投稿】
  ■教育格差は所得格差のせいじゃない 単にお金持ち家庭の子の頭が良いだけ
  ■子供の遺伝子と性格 家庭の影響はほとんどなし、親の性格も関係は薄め
  ■科学・疑似科学についての投稿まとめ


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