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親日国タイのエリートの見方 中国脅威論、日本・アメリカの重要性


2014/1/18:
ASEANと中国との関係前進は政府 国民は中国嫌い
親日国タイのエリートの見方 日本・アメリカ・中国の重要性
タイのエリートに中国脅威論は蔓延しているのか?
2014/1/23:
中国の軍事力増強や外交は、タイのエリートも警戒
日本と中国、自己主張が強すぎる外交をやっているのはどっち?
親日国タイのエリートは、中国・日本の尖閣諸島問題をどう見る?
日本はASEAN諸国のことを勘違いしている?


●ASEANと中国との関係前進は政府 国民は中国嫌い

2014/1/18:(PDF)ASEAN 中核国家対中国意識に関する調査研究 張雲 新潟大学 准教授というタイトルを見て、ASEAN各国の人に聞いたのかな?と興味を感じた話。

 しかし、読んでみるとどうやらそうではないようです。2007 年8 月から3 カ月をかけ、バンコクを中心450 名のタイ人を対象にし、タイ語での質問票を配布し、調査を実施した、という研究でした。期待したのと違って残念ですが、これでも十分に興味深いものです。

 「緒言」を見ると、ASEANと中国との関係前進は政府によるものであり、国民の対中国認識は別なのでは?というのが調べ始めた発端のようですね。要するに「悪いはずだ」という思いがあるので、こちらを強調した内容なのだと思われます。

 実際、2007年のアンケートでは"35.3%が中国はアジア各国の脅威になると答え、逆に中国は脅威ではないと答えたのは25.5%であった"といったことが書かれており、中国に悪い情報をピックアップしています。


●親日国タイのエリートの見方 日本・アメリカ・中国の重要性

 また、サブタイトルは「タイのエリート層の対中意識調査を中心に」というもの。以下のように、一般の人から無作為でというものではないようです。ですから、さっきの35.3%のアンケートとは別っぽいですね。
本研究はタイのエリート層をターゲットしている。具体的にはタイ政府高級公務員、軍の幹部、学者・専門家、企業家、マスコミ関係者などを指す。主にはタイの国会により作られたタイのエリート層の研修教育機関であるKing Prajadhipokʼs Institute のご協力を得て、アンケート調査を実施した。(中略)最終的には139 人から回答を回収した。

 質問項目が非常に多く、回答する方は途中で嫌になったんじゃないかと思いますが、そこから私がおもしろいと思った質問だけ抜き出してみます。

・世界で最もパワフルな国は?
 アメリカ 76%
 中国 24%
 日本 0%
 インド 0%
 ロシア 0%

・10 年後、世界で最もパワフルな国は?
 アメリカ 21%
 中国 76%
 日本 2%
 インド 1%
 ロシア 0%

・タイにとって最も重要な国は?
 アメリカ 33%
 中国 56%
 日本 11%
 インド 0%
 ロシア 0%
 オーストラリア 0%
 インドネシア 0%

・10 年後、タイにとって最も重要な国は?
 アメリカ 4%
 中国 89%
 日本 4%
 インド 1%
 ロシア 0%
 オーストラリア 1%
 インドネシア (空欄)

 「重要」というのは懸念すべき国という悪い意味での「重要」もあり得るのですが、中国の重要性の高さがよくわかる結果となりました。アンケートの当初の狙いとしては、これはあまり望ましくない結果だったんじゃないですかね?

 日本も選択肢に入っていて、今「世界で最もパワフルな国は?」では0%でしたが、10年後は2%。日本の復活を想定している方が多少いるようです。「タイにとって最も重要な国」で見ると、日本はぐっと多い11%。となると、10年後はもっと増えているだろうと見ると逆に減って僅か4%。日本とタイとの関係性は少なくともあまり強くなるとは思われていないようです。


●タイのエリートに中国脅威論は蔓延しているのか?

 なお、中国脅威論に関連しそうなところで、「アジア国際関係のシナリオ」について聞いています。これは理想だと「アジア共同リード」が5割、「米中共同リード」が4割ですが、10年後の予想としてはともに4割程度です。

 これに比べると「アメリカリード」「中国リード」はともに低い数字。ただ、「中国リード」は予想が4%、理想が12%であり、中国を悪く思っていない人は結構多い感じです。ここらへんも中国脅威論を強調するには弱いところですね。

 研究者の方はこの現実をどう受け止めるのかな?と本文を見てみると、"エリート層の回答と一般民意の間に明らかに差があることが確認できた。これは国際情勢への見識、自らの体験などによりできたことだと思われる"としていました。実際に中国人と接しているエリート層は現実を見ているからという解釈であり、その他の部分でも中国を脅威とする見方が薄いことも認めています。

 このアンケート結果からすればこう書かざるを得ないのはわかりますが、政治的な主張を優先してもっとこねくり回すかも…と思ったので意外でした。


●中国の軍事力増強や外交は、タイのエリートも警戒

2014/1/23:前述のアンケートでは、まだ他にも興味のある話がありました。ここまでの部分では、「研究者はどうも中国脅威論を期待していたようだけど、エリート層は民間人と違ってあまりそういった意識はなさそう」という感じ。今回引用の部分でも以下のところからそれがわかります。

・アセアン・中国関係をどう見ているか?
大変良いと思う 12%
まあよいと思う 78%
あまり良くないと思う 10%
全く良くないと思う (空欄)
どちらとも言えない (空欄)

 ただ、外交に関する質問では警戒感も見えます。(残りは面倒になったので、回答の多い選択肢だけ紹介)

・中国の軍事力増強は深刻な問題だと思うか?
まあそう思う 52%
あまり思わない 35%

・中国の外交行為をどう見ているか?
非常に自己主張強い 41%
まあ自己主張強い 43%
ちょうどいい 12%


●アメリカと中国はどっちもどっち?

 軍事力増強は深刻派が優勢で、外交行為は自己主張が強いという声が大きいので、この2つは中国を要注意と見ている様子がわかる回答でした。ところが、この後の二国間関係になると、この自己主張が強いという声はかなり小さくなります。

・中国の対米外交をどう見ているか?
非常に自己主張強い 14%
まあ自己主張強い 43%
ちょうどいい 28%

・米国の対中外交をどう見ているか?
非常に自己主張強い 17%
まあ自己主張強い 46%
ちょうどいい 25%

 依然、自己主張が強いという意見が大きいものの、アメリカと比較するとむしろ中国の方が僅かに少ないです。つまり、アメリカの対中政策の方がやや身勝手に見えているという衝撃の結果です。


●日本と中国、自己主張が強すぎる外交をやっているのはどっち?

 このアンケートは日本対中国でもやっています。

・中国の対日外交をどう見ているか?
非常に自己主張強い 16%
まあ自己主張強い 34%
ちょうどいい 21%

・日本の対中外交をどう見ているか?
非常に自己主張強い 10%
まあ自己主張強い 27%
ちょうどいい 36%

 こちらはある程度差がついて中国の方が身勝手という結果になりました。ただ、「日本の対中外交をどう見ているか?」の全ての選択肢(以下)を見てわかるように、今の日本の外交政策ですら自己主張が強いという方が多い回答なのです。

自己主張強くない 16%
どちらとも言えない 12%

 これ自体は外交問題ですので仕方ないと言えるかな?とちょっと考えました。しかし、そう言ってしまうと中国の身勝手さも責められなくなりますので、ダブルスタンダードになることに気づきました。

 日本としてはこの自己主張が強いという選択肢をなるべく下げて、日本は真摯な外交を心がけているのに中国ばかりがわがままを言っているという構図をはっきりさせるという方向でしょう。


●親日国タイのエリートは、中国・日本の尖閣諸島問題をどう見る?

 また、日中関係で衝撃だったのは、上の質問より次の「東シナ海領有権」、要するに尖閣諸島問題に関するアンケート結果です。

・東シナ海領有権の問題において中国の対日外交は?
非常に民族主義的 28%
まあ民族主義的 54%
ちょうどいい 5%

・東シナ海領有権の問題において日本の対中外交は?
非常に民族主義的 24%
まあ民族主義的 51%
ちょうどいい 11%

 日本の「ちょうどいい」が倍以上あるとは言えるものの、大半を占める「民族主義的」の項目自体はほとんど差がありません。甘く見たとしても日本に圧倒的に好意的とは言えない状況です。私としてはショックですが、対中政策を考える際にこの事実は認識しておいた方がいいです。

 残念な結果ばかりになってしまうので、論文で日本の良いところ探しをしていたところを最後に。

"タイのエリートにとって、日中米のエリート層の中に、最も信頼できると答えたのが日本のエリートで
あった。日米のエリート層が革新的と答えたのが8 割を超え、中国のエリート層には6 割にとどまっている"

 タイは日本にとっても重要な国ですので、もっと理解者を増やしていければなと思います。


●日本はASEAN諸国のことを勘違いしている?

 最初の下書きでは以上で終わっていましたが、その後読んだ記事で関連しそうなものを見つけましたのでセットで。安倍首相、ASEAN諸国に“片思い”? 対中連携で奔走も、つれない反応 | NewSphere(ニュースフィア) 2013年12月13日という記事です。

 こちらも私のASEAN諸国に対する楽観視を改めさせる内容が多いです。たとえば、このときのASEAN特別首脳会議を反中国(および韓国)の動きだとする見方に対し、ミャンマー政府高官は「中国が参加していないというだけで、今回の会議が中国への対抗を意味するとは思わない」「ASEANは、中国や韓国とも似たような会合を持っている」と牽制。

 また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、"ASEAN諸国は、中国の高圧的な外交政策に不安を見せているが、経済的結び付きを損なうのは嫌っている"としています。"例えば、カンボジアは中国の親密な同盟国であり、タイ、インドネシアなども、現在の良好な経済関係を傷つけたくないとの思惑がある"とのこと。

 タイの見方は今回のアンケート結果と符合します。また、カンボジアは以前のASEAN議長国のときに、日米の主張を退けて強引に中国に有利な形にしたという過去がありました。

 私はこういうカンボジアみたいな国は一部の国であり、他は味方に引き入れられると考えていたので、調べれば調べるほど出てくる「そうじゃない」という証拠にショックを受けています。


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