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東京オリンピックの経済効果 メリットは限定的、デメリットは無視


●東京オリンピックの経済効果 メリットは限定的、デメリットは無視

2014/2/3:東京オリンピックに関しては競技よりも経済効果などの話に興味があり、そういう投稿をいくつも投稿しています。その後にもちょこちょこと経済効果に関する記事はあったものの、たくさん書きすぎて食傷気味かな?というのと、旬を外したかな?というので使っていませんでした。

 ただ、ここらへんで一つということでもう一度。まずは、経済効果は新たな付加価値とは別 支出先の変更・需要の先食いも経済効果?と重なる話から。米証券会社ソロモン・ブラザーズで働いていたという赤城盾さんの解説です。

 ロンドン五輪は経済効果1.5兆円だったのに東京は150兆円ってあり得るの?で紹介したような、150兆円はご愛嬌としても、オリンピックのような大きなイベントの際にマスメディアでよく使われる、この「経済効果」という言葉には注意が必要だとしていました。

<この言葉は、「資産効果」や「乗数効果」などを連想させて、その金額の分だけ「景気がよくなる」すなわち「GDPが押し上げられる」かのような響きを持つ。しかし、マスメディアにおける通常の語義は全く異なる。
 たとえば、地方から東京にオリンピック観戦に訪れる一家は、恒例の温泉旅行を取りやめたり、日常の外食や買い物を控えたりすることによって、費用を捻出するかもしれない。一家の消費がGDPの増加に寄与するのは、差額の増加分があった場合に限られる。
 ところが、イベントを囃し立てたいマスメディアは、観戦のためのチケット代に加えて旅費、宿泊費、その間の飲食費などオリンピックによるプラスの効果だけをこれでもかとばかりに数え上げ、裏に潜むマイナスの効果には目をつぶってしまうのだ>
(五輪「経済効果」報道は注意が必要 負の効果は無視されがち 2013.12.31 07:00 ※マネーポスト2014年新春号より)


●オリンピックで逆に観光客激減で観光スポットが閑散…なぜ?

 前回のロンドン・オリンピックでは、このマイナス効果が見事に出ていました。オリンピックともなれば、観光客がたくさん来る…と思ってしまうところなのですが、実はあべこべに減っていたところがあったのです。オリンピック経済効果はあるか ロンドン後の現状を学ぶ|ダイヤモンド・オンライン 2013年11月11日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] では、以下のような話がありました。

<運営当局は今年7月に、オリンピックに伴った経済活動は99億ポンドであり、投入資金89億ポンドを上回ったと発表したが、多くのメディアはその推計を疑うコメントを掲載していた。
昨年8月のロンドンの観光客数は前年比5%の減少だ。観戦目的の国内観光客は増えたのだが、例年なら来るはずの海外観光客がホテル代高騰を嫌って激減した。観光スポットは「ゴーストタウンと化した」と報じられた。アンケートではオリンピックの経済効果が感じられたと答えた人は29%にとどまり、67%は全くなかったと答えている>

 ダイヤモンドのような経済誌ならともかく、先のマネーポストなんかはオリンピックで株が上がると煽って売りたい口でしょうから、こういう現実的な見方を書くのは意外ですね。"実際に景気をよくする効果が確実に見込めるのは、施設の建設と道路整備の公共事業の他は、外国人の観戦旅行くらい"であり、"日本経済全体に与える影響は自ずと限定的であろう"とも指摘していました。


●ロンドン市民「五輪なんかのために税金を無駄遣いするべきではない」

 ダイヤモンド・オンラインの方に戻りますが、そもそもロンドン市民の多くは、開催前から"オリンピックの経済効果に極めて懐疑的"だったようです。作者の加藤出さんによると、"金融市場関係者から、オリンピックで景気がよくなるという話を聞いた記憶はほとんどない"どしていました。

 それどころか、"むしろ「たった2週間のイベントのために税金を無駄遣いするべきではない」という声のほうが多かった"そうです。株を売る口実にしていた日本の金融関係者とえらい違って健全な考え。日本では、前述のように150兆円の経済効果があると吹かしていた人までいるんですから。

 ただ、ロンドンの人がおもしろいなぁと思うのが、オリンピック自体はすごく楽しんでいたということです。加藤出さんの知人の老夫婦も「素晴らしかったのは、パラリンピックが感動的であることをわれわれが知ったことだ」と話していたそうです。こういうところも大いにロンドン市民を見習うべきでしょう。

 パラリンピックに関しては、日経ビジネスオンラインの以下の車いすだったら、日本に住みたくない:日経ビジネスオンライン 五輪招致の顔、佐藤真海氏が語る7年後の東京 染原 睦美 2013年11月25日という記事も思い出しました。日本だと全く注目されそうにないパラリンピックも満員で、すごく盛り上がっていたそうです。

<2013年9月7日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された五輪招致プレゼンテーションで見事なスピーチを披露し、五輪開催を一気に引き寄せた佐藤真海氏。自身が19歳で経験した骨肉腫との闘い、2011年に地元宮城県気仙沼を襲った東日本大震災を振り返り、「大切なのは、私が持っているものであって、私が失ったものではない」とプレゼンをし、スポーツの力を訴えた。(中略)
佐藤 ロンドンで何が起きていたかというと、パラリンピック期間開催中ずっと、スタジアムが8万人の観客であふれかえっていたんです。朝の部も夜の部も満員。オリンピックと同じかそれ以上の盛り上がりがあると現地の人も言っていて、まさしく目指すべきパラリンピックの姿だなと感じました>


●開催国の景気はオリンピック開催の翌年に悪化 バブル崩壊も多い

 また、ロンドン・オリンピックは徹底して無駄遣いを削ったオリンピックであり、たいへん特殊でした。ダイヤモンド・オンラインでは、<税金の使い方に当局が気を使ったこともあって、アンケートでは69%の人が「オリンピックは税金のよい投資先だった」と答えている。オリンピックの翌年に「バブル破裂で経済失速」というありがちなことも起きていない>としています。

 この「バブル破裂で経済失速」は、夏季五輪、「翌年は景気鈍化」という経験則:日経ビジネスオンライン  上野 泰也 2013年9月3日(火)が関連する記事。夏季オリンピックに関連してよく知られているのが、「開催国の景気はオリンピック開催の次の年には弱くなる」という経験則だそうです。

 84年の米国から2012年の英国までの8つのケースのうち、オリンピックが開催された年よりもその翌年の経済成長率が低くなった事例が6つもあるとのこと。例外の一つはもちろん前述のイギリス、ロンドン・オリンピックで、もう一つは1996年のアメリカでした。

 "米国は当時、91年3月に景気がボトムをつけた後、「ITバブル」が崩壊して2001年3月に景気がピークをつけるまで10年間にわたって続いた長期好況の最中にあった"そうです。ところが、これも「バブル」ですので当然良い話じゃありません。さっきのダイヤモンド・オンラインも「バブル破裂で経済失速」と書いていましたしね。

 日経ビジネスオンラインによれば、アメリカはITバブルの崩壊に加えて、例の"住宅とクレジット商品のバブルが膨張して、2007年に崩壊"しています。1992年のバルセロナ・オリンピックからはやや離れますが、2000年代には、スペインで住宅のバブルが発生・崩壊しており、遠因となっているのかもしれません。(イギリスについても開催前に住宅バブル崩壊があったとのこと)

 もう少し記憶に新しいところだと、中国では、"北京オリンピック開催の前年である2007年に株式バブルが崩壊したほか、2011年秋からは住宅など不動産価格がいったんバブル崩壊の兆候を示し"ました。また、"ギリシャが債務危機に陥ったのは、欧州通貨統合に参加したことで手に入った低金利での資金調達環境が、バブル的な経済・財政の放漫化につながり、市場の信認を失ったことが大きな原因"だとしています。


●格差拡大!経済効果が大きかった場合には別の問題も発生する

 最後の記事。先ほどロンドン市民は冷静だったという話がありましたけど、日本では盛り上がる東京都民・冷めたそれ以外の国民という形かもしれません。東京五輪に地方は冷たい?:日経ビジネスオンライン 染原 睦美 2013年11月26日では、居住地による温度差が見えていました。

<「日経ビジネス」11月25日号の特集「東京五輪 点火」では、日経ビジネスオンラインの読者に対して、東京五輪開催後、自身が勤める企業や居住する地域への影響についてアンケートを実施した。(中略)
 「2020年の東京オリンピックは、あなたがお住まいの地域に良い影響をもたらすと思いますか」という問いに対して、東京都在住の回答者は4人に1人の割合の25.5%が「そう思う」と答えたのに対し、そのほかの地域ではほとんどが10%を切る数値。唯一12.4%だった南関東(神奈川県、千葉、埼玉)も、東京に近いことから、かろうじて影響があると考えた結果だろう>

 この都民と日本国民全体の温度差は、実はかなり良いところをついていると言えます。というのも、以下のように東京オリンピックによる経済効果は地方にはほとんどありません。仮に東京オリンピックの経済効果が大きくても、もともと格差のある東京都がさらに肥えて、地方との差を広げる…という結果にしかならないようです。

<実は関東の他地域に対する生産誘発係数は、全国で最も低い。三菱東京UFJ銀行の調べでは、関東内の生産誘発係数は1.33だが、ほかの地域に対しては0.34にとどまる。つまり、場当たり的に準備を進めていけば他地域への波及効果はあまり見込めず、産業が一極集中している東京が「一人勝ち」する可能性が高い>

 ただ、東京都民でも「お住まいの地域に良い影響をもたらす」が僅かに25%程度とは、思ったより少ないですね。金融関係者や政治家の思惑とは異なり、意外に冷静なのかもしれません。このうち金融関係者の下心は、「仕事や勤め先に好影響や特需が期待できるかという質問」への回答で露骨に出ていました。"景気の押し上げや個人の財布がゆるむことを期待してか、「金融・証券・保険」分野における期待感が68.6%と最も多かった"そうです。

 この次に良かったのが「公共的サービス業」。テレビ放送などのメディアの特需、インフラ整備が高まることによる周辺特需といったところのようです。最初の記事でも"日本経済全体に与える影響は自ずと限定的であろう"とありましたが、誰のためのオリンピックなのか?というのが何となく見えてくるアンケート結果でした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■ロンドン五輪は経済効果1.5兆円だったのに東京は150兆円ってあり得るの?
  ■経済効果は新たな付加価値とは別 支出先の変更・需要の先食いも経済効果?

【関連投稿】
  ■オリンピックは儲からない?五輪の経済効果への評価が議論に
  ■オリンピックの招致活動は負けるが勝ち?開催国はマイナスが多い
  ■東京オリンピックの建築は、北京の失敗に学べるか 新国立競技場の不安
  ■文化・芸術・宗教・海外との比較についての投稿まとめ

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