私は朝残業に批判的なのですが、"朝残業の残業時間削減効果 仕事の効率化以外の意外なメリット"というポジティブなタイトルで、2014/2/5に書いていた話。
その後、朝にやる仕事の効率の悪さ、健康面で悪さについての情報を補足して、タイトル変更しています。(2017/11/26)
2017/11/26:
朝残業・朝型勤務は科学的には最悪で根性論・精神論の無理な要求
朝は仕事をするのに向いている…は科学的には全く逆
●朝残業だと通常業務前に終わらせるために効率的に
2014/2/5:
伊藤忠「朝残業」で挑む374万円の壁:日経ビジネスオンライン(清水 崇史 2013年12月12日)という朝残業の記事を読みました。ただ、実はあまりおもしろいと思うところがありませんでした。
でも、本当におもしろいと思うところが全く無かったら触れずにおしまい…ですので、興味深いところもあるにはありました。以下のような部分です。
"伊藤忠はこれまでも午後10時以降の残業を原則禁止とし、残業を減らす取り組みを続けてきた。だが仕事の効率と人件費の両面から、思ったほどの効果が上がらなかった経緯がある。残業を早朝に移せば、午前9時には通常業務が始まるため、何としてもそれまでに業務を終了させようと努力することになる。結果として総残業時間が減るという試みだ"
仕事の内容によるのか、通常業務と残業業務で内容が異なるというのは、私には予想外でした。ただ、通常業務と残業業務が異なるところであれば、時間的制限のある朝残業は残業を減らす効果があるかもしれません。
●仕事も勉強も朝にした方が効率が良い…に科学的根拠なし
ところで、私はあまり朝残業を良いとは思っていませんでした。その理由は効率性の問題です。岡藤正広社長は「(深夜に)ダラダラやるよりは、受験勉強と同じで仕事も朝方にした方が効率が良い」と強調しているそうですが、これは単なる思想であって科学的な裏付けがあるわけではないでしょう。
大人の例ではありませんが、私はむしろ逆効果であることを示唆する研究を知っていましたので、朝残業に懐疑的だったというのがあります。
寝る子は育つ 子どもの成績は何より睡眠時間が大事・肥満も減少で出てきた話です。
間違いだらけの子育て―子育ての常識を変える10の最新ルール
のレビュー
ミネソタ州のミネアポリス郊外にある裕福な家庭が多いエディーナという学区では、高校の始業開始時間を午前7時25分から8時半に変更したところ、成績優秀者のテストの点数が劇的に上昇した。この学区の高校生1600人の上位10%は、SAT(大学進学適正試験)の数学と英語の点数が平均683点と605点だったが、始業時間変更の1年後にはそれぞれ739点と761点に上がった。さらに、多くの生徒の抑うつレベルも下がった。始業時間を遅らせたことで、生徒の睡眠時間が増えたことが原因と見られる。ケンタッキー州のレキシントンという学区でも、始業時間を1時間遅らせることを行った。その結果、この地区の高校生による自動車事故がケンタッキー州の他の学区と比べて25%も減少した。
朝か夜かという問題より、睡眠時間の方が大事ではないでしょうか? 朝残業に合わせて睡眠時間を削った場合、効率はむしろ落ちるおそれがあります。(2017/11/26:この朝の悪さに関する研究は、後半で追記しています)
夜の残業の効率が悪いのは夜だからではなく、労働時間が長いからです。残業時間そのものを減らすということが第一です。
●朝残業の残業時間削減効果 仕事の効率化以外の意外なメリット
朝残業に関して検索して出てきた以下は最初のものとほぼ同じ内容ですが、ちょっと違っているところもあります。
特定社会保険労務士 和田 栄さんが提案していた「始業前に限って残業を認める朝残業制」は、予想外の狙いでした。
「早朝出社を苦手とする社員は多く、自主的な残業は減るはず。残業したとしても、夜の残業と違って時間に制限があるので、だらだらと働くことはなくなり、無駄な残業は減るでしょう」
(
朝残業 -残業代ドロボーを退治する方法 PRESIDENT 2013年11月4日号 文=ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=特定社会保険労務士 和田 栄より)
朝だと面倒くさいからそもそも残業するのをやめてしまうという考え方もあるんですね。それで無くせる残業は、すなわち完全に無駄な残業だったということです。
こちらも結局根本的な対策になっていないので、私は「朝残業」の導入というのは小手先の技術であり、無駄な残業はもちろん失くす、仕事の効率化を進めるというのが正攻法だとは思います。ただ、まあ、それが難しいのでこういう変則技に頼っているんでしょうね。
●朝残業・朝型勤務は科学的には最悪で根性論・精神論の無理な要求
2017/11/26:働き方改革コンサルティングを行う古川武士さんによると、朝型勤務を実施しても形骸化してしまってうまくいかない会社があるそうです。
「形骸化している会社は、社員が深夜残業のリズムを変えられないパターンです。朝型勤務は、夜は断ち切って、朝、その分、早く会社に来て仕事を済ませることが原則ですが、上手くいかない会社は夜断ち切らせる制度が甘かったりします。退社時間の徹底、早帰りの徹底が不十分です」
(
「朝型勤務」のリアル。残業削減につながらない会社の悪習慣 スマダン 2017年6月16日 10時35分 ライター情報:石原亜香利より)
"確かに夜型になってしまったサイクルを朝型に戻す際には非常に苦労する。それを会社全体でやるというのだから大変だ。やはりねばり強さが必要か"と記事では書いていました。要するに根性でやるしかないということです。
確かに難しくてもやり遂げなければならないということはあります。まさに残業削減なんかはそういうものでしょう。ただし、朝型勤務は残業削減策としては、オススメしません。
"夜型になってしまったサイクルを朝型に戻す際には非常に苦労する"とあったんですが、そりゃそうですよ。この後紹介するように、そもそも人間は朝型勤務に向かない動物なのです。身体的に不向きなことを無理やりやろうとしているのですから、こうなるともう完全に根性論・精神論の世界です。
●朝は仕事をするのに向いている…は科学的には全く逆
先程のコンサルタントの方は、「朝型勤務スタイルがうまく定着すれば、間違いなく生産性は高まります」と断言していました。記事では、「朝、頭が冴えた中でクリエイティブな思考力、分析力、構成力などを要する“頭脳集約”的な仕事をすると、生産性は飛躍的に高まる」などとも書いています。
こういったことは昔からよく言われることなんですが、実を言うと、科学的には正反対。人間は朝の活動が苦手なので、最悪の選択なんです。
実際には、人間のパフォーマンスというのは体温に依存しており、そのピークは夕方だとされています。現在の仕事や勉強の時間というのはパフォーマンスの低調なときに多く行っており、ピークの頃に終わるという非効率的なものなのです。
(関連:
早寝早起きが健康に良いに科学的根拠なし むしろデメリットだらけ)
オックスフォード大学睡眠概日神経科学研究所のポール・ケリー名誉臨床研究フェローなんかは、体内時計が刻む「概日リズム」とは合っておらず、
9時始業の仕事や学校は拷問のようなものだとしています。現在のスケジュールですら拷問なので、朝型勤務・朝残業は、拷問よりさらに悪い行いようです。
さらに起床時間を途中で変更してしまうというのが、さらにひどいんですよ。例えば、サマータイムをすでに導入している欧米各国の研究者の調査では、時刻の切り替え時期に死亡事故や心筋梗塞など心身の不調が顕著に増加することが明らかになっています。現在のスケジュールをさらに悪くする朝型勤務や朝残業は、拷問以上で殺人的なところがあるかもしれません。
(関連:
朝型勤務「ゆう活」やサマータイム制度のメリットとデメリット)
コンサルタントの方は以下のようなハードな要求もしていたのですが、以上のように朝残業にはそこまでやる価値がないどころか、むしろ「害悪」です。
「家族が朝型勤務に付き合う場合、早起きが必要になるのはもちろん、生活リズムを変えて朝型にするには、夜寝る時間を早める必要もあります。そのためには、食事や風呂など、夜の習慣も連動しますので、家族の理解は必要です」
健康を犠牲にして効率の悪い仕事をわざわざしようというのですから、たいへん馬鹿げた話ですね。
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