最初のタイトルは、"武雄市図書館、来館者3倍のまやかし TSUTAYAへの利益誘導の問題"(2014/2/11)でした。その後、税金でツタヤを儲けさせるという問題点に関しての話"ツタヤ図書館は税金を使った利益供与 高梁市でも問題に"を追加しています。(2017/04/17)
●武雄市図書館、来館者3倍のまやかし
2014/2/11:
本来の役割を忘れた図書館は泥棒と同じ 電子書籍の敵は図書館だの続き的な投稿。
多くの場合、私は新しいチャレンジに好意的で、武雄市図書館の試みについても最初は批判的ではありませんでした。むしろこの試みに対する非難の声の方に不快感を覚えていました。ただ、本来の図書館はどうあるべきか?と考えてみると、武雄市図書館の在り方として望ましいのか?という疑問が湧いてきました。
その後やった
武雄市のTSUTAYA(CCC)図書館はどうなの? その特徴と問題点でも悪い点が気にかかりました。このような問題を指摘する記事は他にもあります。
佐賀・武雄市図書館に行ってみた(下) 来館者増、本当に「高評価」?:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社 2014年1月21日 来館者数の増加は、武雄市図書館の売りの一つです。"市の直営時代の3倍以上に"なったと記事でもありました。実際、記者が行ったときも、"平日の昼間というのに、図書館に隣接する約90台分の駐車場はかなり埋まって"いました。
図書館運営へのCCC委託を主導した武雄市の樋渡啓祐市長も、昨年10月末に横浜で開かれた全国規模の見本市「図書館総合展」で「今まで図書館に縁遠かった人が来てくれるようになった」と強調しています。
来館者数3・2倍、貸し出し冊数1・6倍という数値化された実績だ。市が昨年6~7月に実施したアンケートでも、利用者の8割が「大いに満足」「満足」と回答。樋渡市長、CCCともに「市民価値を高めた」と自己評価する。図書館への指定管理者制度導入に慎重な専門家の間にも「地方のマイナーな図書館を全国的な存在に押し上げた功績は大きい」との声がある。
ところが、この数字が嘘なのです。私は「3・2倍」が図書館だけの数字だと思い込んで最初読んでいましたが違いました。図書館には"書店やレンタル店、コーヒーチェーンのスターバックス(スタバ)"が併設されており、"3・2倍に増えた武雄の来館者数には、スタバやレンタル店だけの利用者も含まれている"のです。
さらに「率直に言って、公設民営のブックカフェだと思う」と言う慶応大の糸賀雅児教授(図書館情報学)の調査によると、"武雄市図書館の来館者のうち、図書館資料を使って調べ物などをしていたのは20%にとどまり、書店やスタバだけを利用する人が大半を占めた"そうです。この数字をそのまま当てはめると、「3倍」が「0.6倍」になります。実質的に利用者は減っている可能性すらあります。
一方で「貸し出し冊数1・6」という数字はスタバ利用者うんぬんで動かないでしょうから、利用者一人あたりが借りて行く冊数は激増していることになります。となると、ちょっと「20%に」も変な気がしますが、これは"調べ物などをしていた"なので借りて行くという行為とはまた違うかもしれません。
●図書館とは本来どうあるべきか?
ここらへんの数字の話はともかく、そもそも「来館者が多ければそれで良いのか、ということが問われていない」(指定管理者制度に詳しい神奈川大の南学特任教授)という問題があります。
「何をその事業のミッションとすべきかが自治体の中で明確化されていないと、指定管理者に対する評価もできない。行政は本来、できるだけ専門知識を取り入れて調整すべき立場なのに、現状は民間への丸投げばかりだ」(南学特任教授)
南学特任教授は「従来の図書館の概念を打ち破った」と歓迎してはいるそうです。私も武雄市図書館の試み自体は、図書館の意義を問い直す良い機会になったと思います。
しかし、それは武雄市図書館が問題を起こしたことで…という意味が強く、図書館の評価軸としてはやはり武雄市の考え方は間違っているのではないか?と感じます。
●TSUTAYAへの利益誘導の問題
また、行政による「特定企業に対する利益誘導」という問題があります。
・CCCを指定管理者に選定した過程の透明性
・図書館の利用者証にTSUTAYAの会員証であるTカードを選択制で導入
"図書館の運営に関しては、「館内で600タイトルの雑誌が閲覧可能」と宣伝されているものの、書店部分で販売されている最新号がほとんどで、バックナンバーが保存されない"という数字の嘘がここでもあります。
記事では一番最後に書いていましたが、最もひどいと思ったのはこちら。
市の直営時代の図書館運営費 図書館+歴史資料館:年間1億2千万円
CCCに支払われる指定管理料 図書館単独:年間1億1千万円 市の直営の歴史資料館:年間4千万円
武雄市のTSUTAYA(CCC)図書館はどうなの? その特徴と問題点では雑誌販売を運営費に当てていると強調していたのですっかり勘違いしていましたが、直営時代よりむしろ市の負担は増えているようです。
●Tカードを作る人がほとんど
2015/04/27に追記。水増ししている来館者数も、当初と比べると減ってきたそうです。
武雄市図書館 ブーム落ち着き、前年度比12万人減|佐賀新聞LiVE 2015年04月09日 10時40分
武雄市は、レンタル大手TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に運営委託している市図書館の2014年度利用状況をまとめた。来館者は80万人で前年より12万人減り、全国的な話題になった開館初年度から少し落ち着いた。貸出利用者、貸出冊数も減少したが、民間委託前と比べると高い数字を維持した。
昨年度の来館者は80万736人。前年度より12万2300人少なかった。貸出利用者は15万3545人で前年度比1万4354人減、貸出冊数は48万153冊で6万5171冊減った。
民間委託前で年間比較できる11年度の実績と比べ、来館者は3・13倍、貸出利用者は1・86倍、貸出冊数は1・41倍になる。
このデータだと貸出利用者・貸出冊数は伸びていることになっていますね。
問題である利益誘導関連の話では、"利用登録時のカード選択は、ポイントがたまるTカードが92・7%、図書館利用カードが7・3%"というものがありました。
また、"貸出利用者の居住地の内訳は市内が54・8%、市外が32・1%、県外が13・1%"ということで、市外の人が多いですね。この"居住地、カード選択とも前年とほぼ同じ比率だった"とのこと。
●ツタヤ図書館は税金を使った利益供与 高梁市でも問題に
2017/04/17:武雄市ではなく、岡山県高梁市のツタヤ図書館の話。ここでは、当時の教育次長が「図書の貸し出しにもTポイントをつけるのかという質問がありましたが、高梁市では採用いたしません」と説明していたにも関わらず、密かに導入されて問題になっていました。
これは担当者が変わったせいではないかとされていたものの、問題であることは変わりありません。しかも、その担当者についても、ツタヤ図書館推進のためには邪魔だから左遷したという説明で、フォローになるような内容でもありませんでした。
「『Tポイント付与をしない』と答弁していた元教育次長は、図書館は直営がいいと考えていた人なんです。(中略)直営を推奨する意見が出てくると都合が悪いので、その次長は飛ばされたのです。そこに、開館準備を押し進めるように就任した現次長は、前任者がそんな答弁したことすら知らなかったのではないでしょうか」(市議会関係者)
また、本質的な問題は、税金を使って特定の企業に利益供与しているというものです。
「Tポイントでいえば、(年間)約1億5000万円の指定管理料を払うなかで、CCCが本を貸し出す人に対して、1冊3円相当をTポイントという形で還元するわけですが、これが使えるところは、CCCに加盟している店だけです。これは、市民の税金を使った利益供与です」(共産党の石部誠議員)
「1億5000万円で指定管理を出した会社が、本を借りた人に対して3ポイント、3円付与しても、受け取った人は使うことになりますが、使う先はCCCの関連や提携会社です。つまり、それらの企業にお金が流れるのです。市民の税金がそういったかたちで還流している。私は利益供与になっていると考えています」(同)
(
ツタヤ図書館、市が否定した利用者へのTポイント付与を実施…税金でCCCへの利益供与に該当か Business Journal / 2017年4月17日 6時0分 日向咲嗣/ジャーナリストより)
最初はむしろ期待していたのですけど、本当、ツタヤ図書館は何から何までひどいですね…。
【本文中でリンクした投稿】
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