"奨学金を返済できない学生・社会人は悪者か?返還訴訟が100倍に"(2014/2/11)に追記修正して、"今の奨学金制度は学生ローンの金儲け事業 返済できない人が増える理由に"としました。
●奨学金を返済の返還訴訟が100倍になった本当の理由
2014/2/11:産経新聞が昨年11月に報じたところによると、"2004年に58件だった奨学金返還をめぐる訴訟が、2012年には約100倍の6193件"にまで増えたそうです。これだけ聞くとすごいのですが、奨学金を返済できない学生・社会人の比率が100倍になったわけではないのです。
借りたカネを返さない若者は怠け者か時代の犠牲者か 批判を浴びる「奨学金返済苦問題」に潜む本質的課題 ダイヤモンド・オンライン 2014年1月24日 小川 たまか
まず、「奨学金滞納問題」の背景から説明しよう。前述の「2012年までに約100倍」というデータは、単純に返還しない人が激増したということではない。行政改革によって日本育英会が日本学生支援機構に引き継がれ、「金融事業」と位置づけられたため、回収を強化せざるを得なかったという見方がある。
事実、ここ十数年で奨学金の未返還率が著しく増加しているというデータはない。日本学生支援機構が2010年に発表した「奨学金返還回収状況について」によれば、1998年度の返還率は80.5%で、2008年度は79.7%(第一種奨学金と第二種奨学金の合計)。
未返還額は10年間で267億4300万円から723億2900万円へ増えているが、これは要返還額(貸した額)が、1369億1900万円から3557億6200万円に増加しているからである。
http://diamond.jp/articles/-/47631
20年間での返還率の低下は、僅かに0.8%。今までも返還できていなかったのだけど、最近になって取り立てを激しくしたから返還訴訟が増えたということが大きいようです。
うーん、意外ですね。ここのところの景気の悪さを考えると、もっともっと下がっていて良さそうなものです。
●奨学金を返済できない学生・社会人は悪者か?
記事の趣旨としては「奨学金を返済できない学生・社会人は悪者じゃない」というものなのですが、根拠としてはまず「大学の謳う就職率がまやかしであり、就職できない人が多い」というのがあります。
『つまずかない大学選びのルール』(ディズカバー・トゥエンティワン)などの著書を持つNPO法人NEWVERYの理事長・山本繁氏は、自身のブログで「奨学金で人生を台無しにしない大学選び8つの鉄則」という記事を書いています。今回の話に関係するのは鉄則の5つ目で、「就職実績を批判的に見る」という項目があるのです。
就職実績というのは、例えば、大学パンフレットにある「就職率が95%以上」といったデータ。多くの学生は「95%以上が就職できるなら、この大学に入った自分も、よほどのことがない限り就職できるだろう」と思うでしょう。ところが、これ、違うのだそうです。
というのも、こういった就職率の算出方法は、「卒業者数を母数にして算出した就職率」ではなく、「就職希望者数を母数にして算出した就職率」になっていることがあるのです。
これはおそらく、不況を背景に就職を諦めた学生が数字に入っていないといった批判でしょう。待機児童ゼロなんかもそういうものですね。諦めている人は含まれていないため、実際のはもっとひどい状況なのです。
というわけで、実際には就職できない卒業生が多く発生しているわけです。そして、当然のことながら、就職できていない人たちは、奨学金を返済できません。奨学金を返済できない人が多くなっているのです。
これは就職率で騙されて進学してしまっているということですから、この時点で予想しようがありません。
●そもそも奨学金というのは「借金」である
「将来の自分が奨学金を返せるかどうかを予測できない若者は甘いのではないか」に対する反論は、他にもありました。
全ての高校生が、大学卒業後の自分の職業や年収、生活状況を想定できるか、4年後の日本の経済状況を予測できるのか。また、卒業と同時に数百万円の「借金」を背負ってそれを毎月返していくことが、精神的にどれほどの負担になるかを想像できるだろうか。
ただ、これらは言い訳にならないと思います。以前
学生の奨学金は借金と同じこと 安易な申請より家計を変える努力をで書いたように、奨学金というのは借金と考えた方がいいです。
たとえば、社会人が借金をしたり、ローンなどを組んだりした後にリストラに遭いました…というときに、「リストラに遭うのは予見できなかった。返済しろと言われても無理」という言い訳が通用するでしょうか?
記事冒頭では「無理ですよ! 学費の返済無理ですよ!」という学生のデモの声を紹介していましたけど、同じように「無理ですよ! ローンの返済無理ですよ!」とデモやります? 非常識でしょう。
また、「学生だから」と甘く見がちな奨学金ですが、そもそも学生が独断で奨学金を使うことを決めているケースばかりではないでしょう。
大学に入る人のほとんどは未成年者であり、社会人である親が奨学金を借りる際の意思決定に関わっている場合が多いです。何しろ学費を出すのはほとんどの場合親ですからね。以前書いた
学生の奨学金は借金と同じこと 安易な申請より家計を変える努力をのケースも家計の問題となっていました。
子どもが勝手にやってしまったのなら情状酌量の余地があるかもしれませんが、そうじゃない親世代の社会人が関わって無計画に「借金」をした末に「返済できない」と開き直るのはどうかと思います。
記事であった"奨学金返済苦に陥る学生がいるならば、そのリスクは知らされるべきだ"という意見は建設的であり、賛成します。ただ、安易に返済できないのは仕方ないとしてしまうのにも、違和感を覚えます。
●今の奨学金制度は学生ローンの金儲け事業 返済できない人が増える理由に
2017/04/06:最初の投稿時には書いていませんでしたが、そもそも「借金」を「奨学金」と呼ぶのが諸悪の根源だと思われます。「学生ローン」「教育ローン」など、借金であることを明確化した方が良いでしょう。
そして、この本質はローンという話に、関連しそうな記事がありました。最初の記事でも、"行政改革によって日本育英会が日本学生支援機構に引き継がれ、「金融事業」と位置づけられた"とあったように、ここらへんは政府の方針変更の影響を大きく受けているのです。
奨学金が地獄と化しているのは昔の奨学金とは違うから ニューズウィーク日本版 / 2017年4月4日 18時17分 本来、奨学金とは返済の必要のない給付型の援助のことを言います。ところが、2004年に日本育英会から引き継いだ日本学生支援機構の「奨学金」は、返済しなければならないローンなのです。
また、金儲け的な性格が強くなってしまったのが、しっかり利子をつけたローンだそいうこと。かつては無利子奨学金がメインだったにも関わらず、国の政策によって有利子奨学金が激増。2003年には有利子奨学金を借りる学生の人数が無利子を逆転してしまいました。金儲けなんで、どんどんと貸した上で、激しく取り立てているという形です。
これはもう本来の奨学金の趣旨から、大きく離れてしまっていると考えられますので、できれば改めた方が良いです。ただ、ここを変えられないにしても、少なくとも奨学金を借金だと明確化すること、学費の高騰や不況によって奨学金返済が困難であることをきちんと告知すべきでしょう。
現状は、弱者を騙して稼ぐ悪徳業者のようになっています。これが国のやることか?というひどい話です。
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