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報道は人を殺せる マスメディアの報道の自由と表現の自由は無限ではない


 引用記事が多いのに書きたいと思うことがしっかりまとまっていませんし、とりとめない感じになりますが、報道やそれ以外のマスメディアの発信について思ったところをつらつらと…。

 児童養護施設に関する日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」に批判が集まっています。このドラマに関しては以前ドラマ「明日、ママがいない」 児童養護施設出身者の意外な評価で表現の自由はあるものの、多数の人が簡単に見れるようなところで害悪をもたらしかねないものまで許容されるべきだとは思わないと書きました。

 このときの投稿自体はドラマへの好意的な声の紹介に文量を裂きましたし、児童養護施設の問題にもっと光を当てるべきだとも書きましたが、この他にドラマが本当にそこまで深く考えて作られたものなのか?という点にも疑問を示していました。

 実際、内容的には高い志があるわけでなく、普通にひどいドラマの可能性はありそうです。また、自傷行為などの実際の被害も出てきました。
からかわれたり自傷行為の女子も 児童養護施設 「明日ママ」に再抗議 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能

 全国児童養護施設協議会は29日、日本テレビの連続ドラマ「明日、ママがいない」の放送を見た児童が不安を訴えるなど実際に悪影響が出ているとして、新たな抗議書を日テレに送った。

 協議会によると、放送を見た女子児童が自傷行為をして病院で手当てを受けたり、別の児童がクラスメートから「どこかにもらわれるんだろ」とからかわれたりした。[ 2014年1月29日 12:45 ]
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/01/29/kiji/K20140129007480830.html

 今回の投稿タイトルには「報道は人を殺せる」というショッキングな言葉を入れましたけど、マスメディアの放送というのは多くの人を傷つける危険性と隣合わせだということは忘れてはいけません。


 ただ、このドラマへの批判も首を傾げたくなるものが多いです。以下の記事の作者の竹井善昭さんは以前何度か読んでいて、むしろ良い内容のコラムを書かれていたと思いましたが、今回はタイトルの時点で眉をひそめました。

ドラマ「明日、ママがいない」が大炎上!あえてやっかいな問題に斬り込んだ日テレに「正義」はあるのか? ダイヤモンド・オンライン  2014年1月29日 竹井善昭
http://diamond.jp/articles/-/47774

 「正義」と言い出すが多いのは、マスコミが報道を批判されたときの正当化のためです。「正義」であれば多くの人を傷つける報道をしても良いのか?ということになりかねず、危ない言い方です。

 で、内容を読んでみると、ドラマを見て"リアリティを欠いていると感じてしまった"と批判しています。
 今回、慈恵病院や児童養護施設、里親関係者が怒っている要因には、この「リアリティの欠如」がある。これに対して、「これはフィクションだから、設定が事実と違っていることもある。そこを突つかれたらドラマなんか作れない」という意見もある。しかし、ドラマにおけるリアリティというのは、それほど単純なものではない。

 たとえば、セーラー服を着た女子高生がヤクザの親分になって機関銃をぶっ放したり、刑事なって難事件を解決したとしても、あるいは生物学的にあり得ない巨大怪獣が空を飛んだり、街中を走り回ったりしても、それがドラマや映画として成立するのは、そこに「リアリティ」というものが成立しているからだ。ただし、現実や事実をそのままなぞればリアリティが出るというものではないし、現実にはあり得ないことにもリアリティを持たせるのが、ドラマや映画の監督や脚本家の力量でもある。

 ただ、この「明日、ママがいない」には、少なくとも第2話を見る限りは、ドラマに不可欠なリアリティというものが感じられない。虐待を受けた子どもと里親になろうとする大人の、関係構築の困難さの描き方も稚拙だ。とても、熟慮した表現には見えない。その浅さが、リアリティを殺いでいるのだ。

 今回の話の流れとは関係ありませんが、リアリティに関してはドラマ「明日、ママがいない」 児童養護施設出身者の意外な評価で紹介したもの以外にも以下のようなものがありますので、リンクだけしておきます。

明日、ママがいない リアルはドラマを越える 児童虐待 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/623191

 記事の話に戻ります。以前も書きましたが、創作においてリアリティを基準にモノを言っても仕方ないですし、そこは全く問題じゃありません。さっきの「正義」と同じですが、じゃあ、リアリティがあるなら視聴者が自殺するような番組を流していいのか?という話です。

 作者はこの後"しかし、この「リアリティの欠如」以上に問題なのは、「熟慮のなさ」ではないだろうか。僕はそこに、騒動の根本的原因があるように思えてならない"と書いていますが、普通なら最初からこの「熟慮のなさ」を問題にします。リアリティの重要性を語ることは、「熟慮のなさ」を容認するおそれがありむしろ危険です。

 で、ここからタイトルになっている「正義」に行くんですね。
 そもそも、児童養護施設に限らず、社会問題をテーマに(あるいはモチーフに)作品を作るというのは、とてもやっかいなものなのだ。(中略)超メジャーなメディアが斬り込んでいくためには、絶対的に必要なものがある。それは、自分たちの「正義」だ。

 何かを表現するということは、その表現で傷つく人を生み出してしまう可能性もある。インドで頻発する集団レイプ事件の報道だって、日本で暮らすマジメで親日的なインド人の気持ちを何がしか傷つけることになるかもしれない。ドラマだろうが、バラエティだろうが、報道番組だろうが、番組を流すことで傷つく人もいる。しかし、それでもなお、伝えなければならないものが表現であり、そこにはやはり表現者としての正義や視点が必要なのだ。

 誤解を恐れずに言えば、このドラマを放送することによって、たとえ施設の子どもたちや関係者のなかに傷つく者がいたとしても、児童福祉問題の根源的な解決につながる何らかの革新的なインサイトやコンセプトがあるとすれば、それは放送するに値すると思う。

(中略)このドラマの表現が児童養護施設の子どもたちを傷つけるかどうかも、(これも誤解を恐れずに言えば)あまり関係がない。むしろこの問題の本質は、児童福祉や児童養護施設といった社会問題への根源的な問いかけがこれほどの大きな騒動になってもまだ、きちんとしたメッセージとして発信されていないことだ。

 かなりナイーブな話ですね。何となく言わんとすることはわかりますし、私の考えに近いところも多いと思うのですが、言い方としては危ういものを感じます。

 同じダイヤモンド・オンラインの記事では、他にも「明日、ママがいない」について触れた記事がありました。
「明日ママ」議論はどう収れんするか ネットに出る「幽霊」に惑わされない方法は? ソーシャルをブレない視点で活用する受け手の姿勢|ダイヤモンド・オンライン  2014年2月3日 藤田康人

 ドラマはあくまでもフィクション、エンターテインメントであり、表現の自由は当然ながら認められるべきだと私は思います。

 しかし、その表現によってモデルとなった実在の人物に対する差別や偏見が助長されたり、子どもなど社会的に弱い立場にある人がいじめを受けるなど、実害が発生してしまうと本末転倒です。ここが、私が「明日、ママがいない」に危惧する点です。

 メディアから発信された情報によって、情報の受け手が新しく何かを知ることができたり何かが改善されたりすることもあれば、同じ情報によって傷ついたり不快感を抱く人もいるでしょう。あらゆる物事にプラスとマイナスの両側面があるのは当然です。
http://diamond.jp/articles/-/47972

 先の話も結局プラス・マイナスについてですね。

 なお、記事自体で最も言いたい点は、ソーシャルメディアで影響力のある一部の「声の大きな人」とそれを取り上げるメディアでのループによって、実質的に「声の大きな人」が一般の声を代表していると錯覚してしまう危険性についてです。


 「明日、ママがいない」における「表現の自由」の話はここまで。この後はタイトルにした「報道の自由」に重きを置いたものです。

 以前ある人が放火の報道をすると模倣犯が出るために、マスコミが放火の報道をすべきじゃないと訴えていました。先程のもので言うプラス・マイナスでマイナスの方が大きいのだという主張ですが、ネットの意見らしい極端な意見です。

 模倣犯が出るおそれがあるので報道できないとなると、事件の類はすべて報道できません。現実的にはやはりプラス・マイナスの影響を考えながらという形でしょうね。先程の記事で言う「熟慮」ある報道をすべきというのが、妥当な線です。

 これは別にマスコミを擁護しているというわけではなく、むしろマイナスの影響はもっと重視すべきだという考えです。

 たとえば、9・11同時多発テロでのショッキングな映像を繰り返し流したせいで死者が増えたという話を飛行機と自動車の事故の確率 同時多発テロで死亡事故が急増した米で書いています。

 "同時多発テロは強烈すぎたので、放映回数を少なくするなど気を遣っても、死者は増えたような気がします"と書いたように、このテロはあまりに強烈過ぎましたが、マイナス面を最小限に抑える努力はしなくてはいけませんでした。

 こういった問題は日本の東日本大震災の津波映像などでも言えます。きちんとした調査結果などがあるのかはわかりませんが繰り返しショッキングな映像を流したせいでうつが増えたという訴えもありました。可能性はあると思います。


 また、それは別の話だ!という非難がありそうなのですけど、東日本大震災の関係でもう一つ。私が「明日、ママがいない」放映の是非について読んでいて重なったのが、福島第一原発事故での報道に関する意見です。

 以下の記事の最初は「ラブホテル」を「ホテル」と報道するNHKの話。
窪田順生の時事日想:NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由 (1/3) - Business Media 誠 2012年05月15日 08時02分 窪田順生

 ここまで徹底して「ラブホテル」という言葉を毛嫌いする背景には、放送コードもあるが「プライバシー」によるところが大きい。(中略)

 世間体もあるんだから勘弁してよ、という当然の遺族感情もある。もし仮に不倫カップルなどの場合、死者にムチ打つような事態を招く恐れもある。そういうリスクを総合的に考えると、「ラブホはNG」という判断をするテレビ局もある。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1205/15/news015.html

 作者の窪田順生さんは"個人的には報道の権利よりも優先すべきものがあると思っているので、「ラブホをホテル」はしょうがないなあと思う"と許容しているのですが、そうじゃないというのが原発事故報道の件です。
 某ニュース番組のテレビカメラマンから「お蔵入り映像」を見せてもらった。

 震災直後、関東某所の避難所に、福島第一原発の作業員が妻と娘をつれて訪れた。彼は協力企業の人間からサーベイメーター(携帯用の放射線測定器)を奪うと、愛娘を調べ始める。すぐに針が振り切れ、ピーピーという大きな音。なだめる協力企業の人間から、「俺は毎日つかってっからわかんだ! やべえだろ、これ!」と怒鳴って取り乱す作業員。震災からまだ1週間ほどだったので、モニターを見て思わず息を呑んだ。

 この映像はテレビ局幹部から「あまりにショッキングで、視聴者の恐怖心をいたずらに煽る恐れがある」としてボツになった。(中略)

放射線の人体への影響はいまだに議論があるが、あの時、福島第一原発の作業員がこのような形で避難し、恐怖を感じていたというのはまぎもれない「事実」だ。あれはやはり報じるべきではなかったか、と個人的には思う。

 プライバシーや世論の反応を気にして言葉を選ぶのはいい。ただ、「報道」を名乗っているのだから、あまりに度を過ぎて事実から目を背けるというのは、逆に「道」を踏み外していることになるのではないか。

 先程の「リアリティ」とほぼ同じですが、「事実」なのだからというもの。これが非常に危ないと思うんですよ。

 震災関連死・原発事故避難による死者 環境の変化が自殺を誘引で書いたように避難先の生活で多くの人が亡くなりましたが、避難中にも少なからぬ人が亡くなっています。仮にパニックが起こっていれば、もっと大勢の方が犠牲になっていたでしょう。

 事故直後にはとにかく広い範囲で逃げるべきだとか、もっと最大限に危険だと言えとかありましたが、個人で危険だと判断して避難することは全く問題ないものの、マスメディアや大勢の人に影響力のある個人はそれによって増える死者もあることを踏まえて、よく考えてから情報発信しなくてはいけません。

 一応書いておきますが、これは最大限の危険性を考えないというのは全く別の話ですよ。現場での作業・安全、企業としての危機管理などでは不確定な部分は悪い方で考えて対処するのが安全サイドです。「では、メディア報道ではなぜ最大限の危険を伝えないのか?矛盾じゃないか?」と思うかもしれませんが、報道でパニックを起こして大勢の人を殺さないのが安全サイドであり、同様の考え方になっています。
(むしろ私には煽っている人が目につきましたし、当時そこまでマスコミが考えていたのかは甚だ疑問ではありますが)

 報道が人を救うということはあるのでしょうが、逆に報道は人を殺すこともできます。これは表現でも同様であり、マイナス面を無視してはいけません。報道の自由と表現の自由は無限ではないのです。


 関連
  ■飛行機と自動車の事故の確率 同時多発テロで死亡事故が急増した米
  ■ドラマ「明日、ママがいない」 児童養護施設出身者の意外な評価
  ■震災関連死・原発事故避難による死者 環境の変化が自殺を誘引
  ■テレビのやらせはもう少し叩かれても良い
  ■フジテレビやらせ疑惑 ほこ×たてのラジコン・セキュリティなど
  ■その他の社会・時事問題について書いた記事

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