2014/2/12:
●進研ゼミ、実は会員数が激減していた?
●激減の理由はうざいダイレクトメールなど
●新規顧客獲得に一生懸命で既存の顧客のことはほったらかし
●デジタルではできず、紙でないとできないこととは?
●アナログではわからずデジタルだからわかることもある
●将来は進研ゼミがSNS化することもあり得る?
2018/07/25:
●うざいと思われた進研ゼミ、その後の会員数はどうなった?
2020/08/10:
●激減していた進研ゼミが大復活!過去10年間で最高の伸び方に
●復活は創業家一族やマクドナルドの原田泳幸氏退任のおかげ?
●進研ゼミ、実は会員数が激減していた?
2014/2/12:進研ゼミの会員数が激減していると知って驚き。徐々に落ちたというわけでなく、単年度で突然ストンと落ちたようです。なかなかないケースですね。
会員数激減、進研ゼミが見つめ直した大切なこと:日経ビジネスオンライン 第8回 ベネッセ家庭学習事業本部 成島由美氏 山口 義宏 2014年1月20日では、以下のようなやり取りがありました。
山口:「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」はとても強いブランドですが、2013年度の国内会員数は前年比で24万人減で、385万人となりました。資料を拝見すると、いきなりガクッと減っているのがよく分かります。この要因は何でしょうか。
成島:単年度で起きたことではありますが、これまでの私たちのやり方で蓄積した膿が、数値結果として出てしまったのだと思っています。会員数も落ちましたが、ブランドイメージもびっくりするほど落ちました。
●激減の理由はうざいダイレクトメールなど
激減の理由は「ダイレクトメール」とされていました。どうも非会員に向けてダイレクトメールを送りまくったところ、逆に嫌われたと見ているみたいですね。"DMにこんなにお金をかけているなら、教材にはかけていないのだろうとも思われてしまった"とのこと。
ですから、会員がどんどん辞めたというよりは、獲得の失敗ということでのですね。でも、ダイレクトメールの出し方だけでそんなに減りますかね? ちょっと怪しく感じますけど、インタビューアーの山口 義宏さんは以下のように指摘。
山口:アマゾンが日本市場に参入したときにDMをどの程度の頻度で出すか模索した、と聞いたことがあります。販促はしたいけれど、あまり送ると「ウザい」と思われてDM送付の承諾を解除されてしまうので。通販ビジネスでDMの総量規制をどの程度におくかは、顧客の心象と販促効果を天秤にかけて考える永遠の課題です。もちろん量だけでなくDMの内容の質も顧客の心象に関わりますが、非常に舵取りが難しい。
ダイレクトメールじゃなくて、ウェブ上のメールのうざさなら最も嫌われている企業は楽天でしょう。でも、あれは結果が出ているからやっているのかな?という気がします。サイトの作りなど見ても、アマゾンとは全くアプローチが違いますね。
●新規顧客獲得に一生懸命で既存の顧客のことはほったらかし
このダイレクトメールの話よりおもしろかったのは、次の話です。
成島:私の子供はいろいろ習い事をしていますが、ベネッセ以外の全てから、年賀状が来たんです。私たちも一緒に頑張る子供たちに「今年も頑張ろうね」とメッセージを出すべきです。非会員にDMを出すよりも先に、会員を大事にしなくてはなりません。来年は、年賀状にいただいたお返事をKPI(重要業績評価指標)にしようかなと考えています。
山口:2008年前後のNTTドコモの方針転換を見るようです。すでに高い市場シェアを持っていて、さらに積み増そうと新規顧客獲得にお金を使っているうちに、既存顧客の満足度にほころびが出始めたのか、既存顧客によりコストを掛けるという方針転換をアナウンスしました。
新規顧客獲得に一生懸命で既存の顧客のことはほったらかし…今回の例はトップシェア企業がという話ですが、それに限らずよくある光景でしょう。こういう感じで「特殊要因があったわけでなく、事業投資を顧客サービス品質改善より新規顧客獲得に偏重させてきたツケがたまりにたまった結果が離脱数に表れた」と分析しているみたいですね。
●デジタルではできず、紙でないとできないこととは?
その後、ではどのように顧客サービス品質改善をしていくか?という話になっていましたが、しばらく飛ばして赤ペン先生の話について。私やっていた頃は違ったと思いますが、今はマンツーマン(記事ではワン・トゥー・ワン)だそうです。コストが気になりますけど、重視している感じですね。
この赤ペン先生は「消し跡」まで見ているとのこと。成島由美さんは、「消し跡がたくさんあるということは、それだけ考えてやり直したということですよね。それで答えが合っていたら、花丸はいつもより大きくなる」としていました。で、「消し跡まで褒める」というCMを作ったようです。
さらに、これは、紙でなければできないことだというのが、最も良い視点だと感じました。インタビューアーの山口さんも「デジタル化できない部分がロイヤリティを作る話は、通信販売の世界でよく聞きます」として、化粧品の通販会社の例を出していました。
デジタルデータでは、顧客の肌悩みの細やかなニュアンスをコールセンターのスタッフ間で引き継げないため、今も「敢えて手書きで顔のイラストに課題を書き込む」やり方を残しているそうです。
●アナログではわからずデジタルだからわかることもある
なお、アナログ・デジタルの話では、「紙ではなく、タブレットを使うコースも用意して」いると聞いてびっくり。しかも、デジタルを選ぶ方の比率は、"予想より多い"とのこと。これは先程の"デジタル化できない部分がロイヤリティを作る"ができないわけですけど、時代を感じます。
ただ、逆にデジタルならではの魅力もあるでしょう。「消し跡」以上に見えてくるものがあるのです。例えば、問題や解説を何秒読んでいるのかも分かるといいます。長く読んでいればその問題は愚問だし、解説は分かりにくいということもわかります。
これは以前、アナログでやっていたみたいですね。実は世に出す前に、本社近くの子供たちに協力してもらって、どこで鉛筆が止まるか、調査をしているんとのこと。止まったら、それは問題や解説が分からないということ。まどろっこしかったり、句読点の位置が適切でなかったり、「下の図の」とあるのに、実際には下には図がないといったミスもあったようです。
なお、eラーニングについては、
ネットの普及が将棋とポーカーにもたらした変化とeラーニングや
子供のeラーニングのメリット 遅れている子も他人の目が気にならないといった話を、うちでは過去にやっています。
●将来は進研ゼミがSNS化することもあり得る?
進研ゼミを辞める子は、封を切らない状態でどんどん教材が積み上がるというのが以前からわかっていました。これは答案の提出が滞ることで、ベネッセで把握可能です。しかし、今まであまり重視していなかったといいます。
これがデジタルではっきりと可視化できたことで、親に「お子さんにお声がけください」などと働きかけるように変更しているとのこと。
このデジタル面での活用はいろいろ試していますね。趣味などでクラス分けをして「○○ちゃんが着席しました」と、友達の着席状況が分かるようにとか、「ガンバ!」と声を掛け合えるようにとかやっている(あるいは検討している)ようです。あと、「チームに分けて競わせると活性化することも分かりました」だそうな。
子供同士の関係性を活性化したいと言っており、今後はSNS的なところに向かうかもしれません。
●うざいと思われた進研ゼミ、その後の会員数はどうなった?
2018/07/25:「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」は、2013年度の国内会員数は前年比で24万人減で、385万人だったといいます。今はどうなっているか?と思って、
ベネッセの強み | ベネッセ早わかり | 株式会社ベネッセホールディングスを見て驚き。
なんと2018年4月時点での「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」国内会員数 は、257万人まで減っています。ガンガン減っていますね。これは少子化では説明できない減り方でしょう。
ただし、中国、台湾での通信教育講座の会員数合計は今127万人もいるとのこと。すでに日本のちょうど半分くらいという多さ。中国は市場が大きく、教育の熱心さは日本以上というところで、今後の所得上昇でさらに市場が拡大するでしょう。日本での落ち込みを、今後は海外市場で賄っていくという形になりそうです。
●激減していた進研ゼミが大復活!過去10年間で最高の伸び方に
2020/08/10:前回の2018年のときに減っていた2013年よりさらに激減していたという話を書いていました。また、日本での落ち込みを、今後は海外市場で賄っていくという形になっていた…という話も書きました。ところが、このふたつのトレンドがそっくりそのまま変化していたようです。
前回の2018年は2013年よりは減っていたものの、短期的に見るとすでに反転して増えている時期だったみたいですね。ベネッセホールディングスの安達保代表取締役社長によると、<今年(2018年)の4月の「進研ゼミ」の在籍(会員数)は257万人で、昨年(2017年)の4月在籍が245万人>という状況であり、1年前よりは増えていました。
<12万人増えたということで、本当に久しぶりに、「進研ゼミ」の会員数が伸びました。しかも12万人というのは……過去10年間の絶対数で、12万人も増えたことは、ないんです>とのことで、2018年はここから持ち直した…というところだったようです。(
ベネッセHD、4年来の増収・5年来の増益を達成 「進研ゼミ」4月会員数は過去10年間で最高の伸び幅 - ログミーファイナンス 2018年5月10日より)
●復活は創業家一族やマクドナルドの原田泳幸氏退任のおかげ?
さらに新しい資料もちらっと見てみると、「進研ゼミ」が伸び始めたたことで海外事業ではなく、国内教育事業が会社全体の売上を牽引する…といったことになっています。また、売上が伸びている以上に利益が大きく伸びているということも注目。中身が良くなっているようです。
2018年3月期決算説明会でも中国事業はむしろ「ちょっと停滞していた、あるいは成長が鈍化した部分がありました」といった話がありました。ただし、為替のマイナス要因があり、延べ在籍は伸びてきているということで、海外もそこまで悪いわけではなさげですね。
また、やはり利益が伸びた理由もありそうで、<「進研ゼミ」で大幅なコスト削減を実現することをお約束しておりましたけれども、順調に進み、99億円のコスト削減を実現しております>といった話をしています。単純にコスト削減するだけでなく、会員数は大きく伸ばしているわけで見事改革に成功しました。
ベネッセは以下に示すように、2016年に社長などが大きく変わっています。マクドナルドで有名な原田泳幸さんや創業家一族ではない経営陣になったことでうまくいった感じですね。今の社長の安達保さんは三菱商事出身ですが、MBAを取得してマッキンゼーに入社したコンサルタントの方でした。企業再建のプロと呼ばれる人でこうしてベネッセでも成功。コンサルタント嫌いの人には、おもしろくない話かもしれません。
2016年(平成28年)
5月6日 - 2016年3月期上期の107億円の赤字が、10-3月期(下期)は133億円に拡大。
6月25日 - 原田泳幸 会長兼社長が退任。社長には福原賢一 副社長兼CAO(最高管理責任者)が昇格。ベネッセコーポレーション代表取締役社長には小林仁が就任。
10月1日 - 福原賢一 社長が副会長に、社外取締役の安達保が新社長に就任。
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