改変された童話 鬼と仲直りの桃太郎、人魚姫の結末がハッピーエンドなどとセットにできたような話。逃がした魚は大きい的な心理で、書き終えた後にいい話を見つけることが多い気がします。
元記事は東洋経済オンラインで、「トンデモ本」とタイトルに入れていました。
ハックルベリーがコレラ菌になるトンデモ本 | 東洋経済オンライン 古書山 たかし :古書蒐集家
http://toyokeizai.net/articles/-/28930 しかし、科学的な解説書じゃなくて物語です。東洋経済オンラインは以前「原発事故で奇形が増えた」という記事を書いており、そういうのを「トンデモ」と呼ぶのは正しいと思いますが、空想の物語を「トンデモ」という表現にはちょっと違和感を覚えました。
ということで、迷った末に私は「カオス」と表現しました。
では、児童文学にするに際して省かれてしまった原作の「カオス」を見ていきます。
●スウィフトの『ガリヴァー旅行記』
「船乗りガリヴァーが遭難した結果、小人国と巨人国に辿り着き、愉快な冒険を繰り広げる物語」は4篇からなるこの作品の前半部分のみ。
ラストに位置する馬の国・フウイヌム国渡航記では、徹底的な人間への不信と軽蔑と憎悪が強烈に描かれています。
ちなみに作者のスウィフトは、"アイルランドで発生した飢饉を解決するためには、アイルランドで生まれる赤ん坊を食用に供すればいい、そうすれば二重の意味で飢える人が少なくなる、というグロテスクで悪意に満ちた提案書"を出した方だそう。強烈ですな。
●メーテルリンク『青い鳥』
"19世紀末ヨーロッパの象徴主義の濃厚な影響のもと、死の予感漂う詩や小説、戯曲を発表していたメーテルリンクの代表作だけあり、夢幻的な中に死の観念が色濃くたちこめ"ているとのこと。
●マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』
『トム・ソーヤーの冒険』ではトムのよき相棒役だったハックが、「奴隷を人間として扱ってはならない」という絶対的に信じていた「道徳」に反し、逃亡黒人奴隷ジムを助けようと決意する壮絶な話。
●マーク・トウェインの『細菌ハックの冒険』
『トム・ソーヤーの冒険』の続編の一つ。"ハックが魔術師によって鳥に姿を変えてもらおうと思ったら、間違えてコレラ菌にされてしまい、やむなくそこいらにいた浮浪者の体内に入り細菌として暮らし始めるという"話。
どうも"読んでいてあまり面白くない"作品な上に、風刺も精彩を欠いており、"有名作家のトンデモ作品(=珍書)になってしまったゆえん"とのこと。ここが元記事タイトルの由来のようです。
全部がリメイクされて児童文学にという話じゃなかったですね。後半は続編にあたる話でした。
最後のマーク・トウェインについてだけ少し。
Wikipediaでおもしろかったのが「あしながおじさん」との関係です。
1893年に『あしながおじさん』のモデルと言われているヘンリー・H・ロジャーズの助力を得て、資産の再編成を行っています。『あしながおじさん』と言うと子どもを思い出しますが、このときトウェインが子どもだったというわけではなく、もう60歳近くですね。
ただし、"『あしながおじさん』で知られる作家ジーン・ウェブスターは、トウェインの姪の娘"だそうです。トウェインさんの関係があったのか、なかったのか?
あと、ミステリアスな話というのもありました。
生年の1835年はハレー彗星が観測された年でしたが、トウェインは後年『自分はハレー彗星とともに地球にやってきたので、ハレー彗星と共に去っていくだろう』と周囲の人間に吹聴し、その通りにハレー彗星が現れた日に亡くなりました。
また、"弟のヘンリーが爆発事故で死ぬ数週間前、ヘンリーの死体が柩に横たわる夢を見ていた"と言います。
さらに彼の"死亡から7年後の1917年、エミリー・グラント・ハッチングズという女性がマーク・トウェインの霊と交信し『ジャップ・ヘロン』という氏の新作小説を口述筆記したとして本を出版した"というのもあります。
『細菌ハックの冒険』より、この『ジャップ・ヘロン』の方が「トンデモ本」と言うにふさわしいですね。
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