2014/2/18:
●価格で勝つか付加価値で勝つか…カクヤスが選択したのは?
●ディスカウントショップが減ったのはメーカーの方針変更が理由
●メインだった「店舗」を捨てて「宅配」に賭けたのには理由があった
2022/05/21追記:
●高付加価値とディスカウント、差別化の2大要素の境目が曖昧に… 【NEW】
●価格で勝つか付加価値で勝つか…カクヤスが選択したのは?
2014/2/18:酒屋さんのカクヤスの佐藤順一社長は自分のお店でお酒を買ってもらうにはどうするか?を突き詰めると、2点しかないと考えました。1つは<「価格」で勝負して勝つ>というもの。そして、もうひとつは、<価格以外の「付加価値」で勝つ>というものです。
このうち、価格勝負には当然限界があります。消耗戦です。しかし、「付加価値」というのも難しいですよね。あなたのお店で与えられる「付加価値」とは何か?と聞かれてもまずなかなか答えを出せません。したがって、ほとんどのお店やさんは付加価値を付けられていません。
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カクヤス自身は2000年くらいまで「価格」で勝負していたとのこと。そして、それ以降は「付加価値」路線に切り替えています。ただ、正確に言うと、「価格」路線はカクヤスの前身の会社。その当時のお店の名前は「スーパーディスカウント大安」。その名の通り大安売り路線でした。以前書いた
「潰す会」ができるほど嫌われたカクヤス 言うほど安くない?ネットの評判の話は、実はこの「大安」時代のものだったようです。
●ディスカウントショップが減ったのはメーカーの方針変更が理由
「スーパーディスカウント大安」が「なんでも酒やカクヤス」に…。価格は「まあまあ安いよね。もっと安いところを探そうと思えば、見つけられるけど」といったところです。店名の中でのポイントは「カクヤス」よりも前半部の「なんでも酒や」。「なんでも」という付加価値で勝負しようという意味です。
ここまでの話は、
ひどい立地だね……「やっちゃおうか、宅配」:日経ビジネスオンライン 日経トップリーダー 2013年7月10日(水)という記事から。一方、この転機とは何だったのか?というのは、次の記事
規制緩和が価格戦略からの脱却を後押し:日経ビジネスオンラインの後半に出ていました。
「価格」路線を捨てた理由は二つ。一つ目は、お酒メーカーが方針を変更したことだといいます。まず、お酒を安売りできていたのは、実はメーカーからの販売促進リベートがあったため、と理解するのが大事です。しかし、1996年をピークにお酒のマーケットが縮小に転じると、メーカー側の事情が変わってきます。
拡大時の場合、例えばビール工場は、大規模な設備投資をしてきました。機械化を進めて人件費率は下げています。すると、売り上げが増えれば増えるだけ、利益が出ることに。固定費さえ吸収すればいいのですから。市場拡大時に、ビールメーカーがいくら金額を使ってでも、シェアを奪おうとしていたのはこれが理由です。
しかし、市場が縮小し始め、売り上げが落ち、固定費も割り込むと赤字になってしまいます。こうなると、メーカーはシェアよりも利益に注目し始めることに…。そこで販促費=販売促進リベートを削りました。「スーパーディスカウント大安」のようなディスカウントショップ自体が成り立ちづらくなってきたのです。
●メインだった「店舗」を捨てて「宅配」に賭けたのには理由があった
もう一つの転機は「規制緩和」。2003年9月を期限にお酒の免許の規制緩和が決まりました。今までは酒屋同士で勝負していれば良かったものが、大規模資本の異業種との勝負になるということです。
普通はもうダメだと思うか、漠然とした不安を抱えているだけか、それすらないか…。でも、ここで何かやってやろう!とワクワクするのが、佐藤順一社長のようです。先の「スーパーディスカウント大安」はそうして生まれました。
縮小市場を生き残るための多角化戦略 成功事業にしがみつかないでも書いていますけど、縮小市場で対策せずに文句ばかり言う人たちとは違います。
まず、店舗の見直しについて検討。ただし、実際にはこの路線は捨ててしまっています。
1.店づくり スーパーにはかなわない。日用雑貨、食材、すべてそろって価格が安い。広くて駐車場もしっかりしている。
2.便利さ これは絶対コンビニにかなわない。圧倒的な店舗数ゆえに近い。24時間営業、お総菜もある。
ここで「スーパーディスカウント大安」で作った「宅配」という選択肢が生きてきます。"これだったら、戦えるかもしれない"と考えました。こうして今のカクヤスの路線が作り上げられたわけです。
しかし、実は「スーパーディスカウント大安」では「宅配」が、あまり売りになっていませんでした。強みにしようとしたつもりが外れだったという経緯があります。また、メインだったのは「店舗」の方でした。ですから、成功だった「店舗」を捨てて、失敗した「宅配」に賭けたということ。すごいことですよ、これは。
多角化的な要素やかつての成功事業を捨てるという点でも、
縮小市場を生き残るための多角化戦略 成功事業にしがみつかないのケースと似ていると感じました。縮小市場で伸びていけるお店には、共通点がありそうです。
●高付加価値とディスカウント、差別化の2大要素の境目が曖昧に…
2022/05/21追記:もともと書いていた話で「価格で勝つか付加価値で勝つか」という話が出てきたように、差別化の選択肢として、「高付加価値とディスカウント」という大きく2つある…という考え方は一般的なようです。ただ、最近はスーパーにおいて、この2つが対立しないケースが出てきている…という話がありました。
この話があったのは、
「「いいもの」と「安いもの」対立軸にならず共存|激変する食品スーパー|シリーズ|流通|JAcom 農業協同組合新聞(2015年7月7日)という記事。まず、差別化戦略が高度化かつ複雑化している…という事例が出ていました。
<これまで主に価格志向の強い商品構成であった、プライベートブランド(PB)においても、最近では高品質化へのシフトが始まっている。(中略)その惣菜を見ると、委託された業者が製造するアウトパック加工商品が展開されている。
これまでの食品スーパーにおける高付加価値惣菜といえば、インストア加工を前提としたものが主流であったのを鑑みれば見逃せないポイントである。
「手作り」「できたて」だけでなく、「味」や「素材」へのこだわりと製造への生鮮性や効率性とのバランスを取る動きが、高付加価値への対応から見て取れる>
他方、「ディスカウント」では、単純なバイイングパワーによる仕入れコストの削減が主流でしたが、こちらも以下のように別のやり方が増加。これにより今まで以上にコスト削減できるため、少ない利益(荒利益)でも十分採算が取れるようになります。要するに今まで以上に安くできるため、価格競争で有利なんですね。
<例えば、少ない人員で店舗運営が行える(これをローコストオペレーションと呼ぶ)ように、作業方法や売リ場の什器をはじめとした設備を作業効率の良いものに変更している。また、これまで社員でなければできなかった業務をパート・アルバイトができるように見直しを図り、パート比率の増大を図るケースもローコストオペレーションの1つの流れといえる>
<「「いいもの」と「安いもの」対立軸にならず共存>という記事タイトルにもなっていた、一番気になる<高付加価値とディスカウントを説明してきたが、その線引きが曖昧になりつつある>という話は最後に登場しています。<「いいもの」と「安いもの」は今や対立軸になっておらず、共存している>とされていました。これはおもしろいですね。
<購買頻度の高い生活必需品については、ディスカウントにも対抗した低価格で販売を行っている高付加価値品に取り組むチェーンもある。
一方で、ディスカントもまた、演出や素材にこだわり、価格以外の魅力を訴求しようと模索している。私はそれを「ハイブリット」と読んでいるが、今後はこのようなハイブリット型の食品スーパーが消費者の支持を集めていく>
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