ニトリの話をまとめ。<家具屋ではない!実はニトリには「ライバルがいない」という指摘>、<先制主義で先行者利益を取るニトリ 利益が出てても早めに閉店>、<ニトリが学ぶべきというチェーンストアの失敗企業が全然似てない…>などをまとめています。
2023/08/03まとめ:
●ニトリが学ぶべきというチェーンストアの失敗企業が全然似てない… 【NEW】
●店舗を増やすほどコストダウンで儲かる法則…アマゾンの出現で崩壊 【NEW】
●ニトリも実はネット移行推進中、最大の成功例はやはりヨドバシ? 【NEW】
運は創るもの 似鳥 昭雄 (著)

●ニトリ似鳥昭雄社長が最も重視しているのは「先制主義」だった
2014/2/24:結構話題になったニトリの似鳥昭雄社長の日経新聞での連載。実は2013年夏のものですが、まとめて5つくらい一気に読んでやっと読み終わりました。ただ、個人的には終盤の連載にそれほどいいなと思った話は今回はあまりなし。連載の前半の方がおもしろかったと思います。
そんな中でも一つ、心に残ったものを。
先んじて「乗り物」を変えよう (似鳥昭雄氏の経営者ブログ) 2013/6/28 7:00 日本経済新聞 電子版には、私好みの話がありました。
<最も重視していることは先制主義ということです。乗り物に例えますと、最初は歩きだったのが自転車に変わり、そしてバイク、四輪車になり、小型セスナ機、ジェット機、ロケットへと進化していきます。新しい乗り物の免許を取るには失敗もするし、時にケガもします。
しかし、怖いからといって乗り物を変えていかないと、会社はだめになります。みんながいいなと思い始めている頃に、すでに乗りこなしているのが理想です。先制主義にこそ、利があります。守ることが経営という方もいますが、私は変えないとだめになると確信しています>
●ビジネスでは「小さく失敗」が大事、ニトリの場合は「早く失敗」か
私も常に世の中は変わっていくものだから、会社も変わり続けるべきという考え方。"失敗もするし"とあるように、新しいものに挑戦することはリスクがあるというのは事実でしょう。ただ、リスクは限定することも可能。いきなり社運を掛けて失敗したらおしまいですから、そういうのはさすがにオススメしません。いつも私が書いているのは「小さく失敗」ですね。
ニトリの場合、「先制主義」という言い方をしていますので、「小さく失敗」というよりは「早く失敗」という感じかもしれません。ライバルがいないときなら安心して失敗できます。いち早く挑戦して失敗するというのは傷が浅くなるだけでなく、失敗した経験によってより良いやり方の確立も早くなりそうです。
そして、良いやり方を確立したとなると、もう普通に「先行者利益」を享受できる段階に。「先行者利益」とは、いち早く新しい新しい市場に参入しておけば、後から来る人たちより利益を得られるという考え方です。当たり前ですね。相手が誰もいないんですもの。上記のニトリのケースは「新しい市場」ではなく、主に「新しい製品」とか「新しいやり方」とかそういうものでしょうね。やはり「先行者利益」と言って良いところだと思います。
●家具屋ではない!実はニトリには「ライバルがいない」という指摘
あと、「新しい市場」の方に関して驚いたのは、ニトリには実を言うとライバルがいない…という分析があったことです。
ニトリの経営戦略や強みなどを独自分析-経営コム-で、そういう話がありました。本当に「相手が誰もいない」状態なんですね!
なお、ここで出てくるSPAを先に説明しておきます。SPAとは、製造小売業のこと。その名の通り、製造から販売まで自社で行うビジネスモデル。
25期連続増収増益のニトリは不景気とリスクが好きでも少し書いていますが、物流などを含め一貫して自社でやっていることがニトリの特徴。このSPAのせいで「低コスト」なのにも関わらず、「高収益」という一見矛盾した現象が起きています。
<高い利益率とライバルの不在>
<ニトリは家具・インテリアを販売する会社ですが、製造小売業に分類され、他の家具・インテリア販売会社とは一線を画しています。国内企業において家具・インテリア分野でSPAを実践し、全国的に展開・成功している企業は今のところ見当たりません。
厳密な意味でのライバルと言えば、世界展開を仕掛けるイケアとなります。イケアはニトリ同様、企画から製造までを手掛けるSPAで価格帯や商品などで競合となります。したがって、ニトリの実質的なライバルはイケアとなります>
●先制主義で先行者利益を取るニトリ 利益が出てても早めに閉店
冒頭の引用部に関連する話だけでずいぶん長々と書いちゃいましたが、実を言うと、「先制主義」の例として一番書きたかった部分はあそこじゃなかったんですよ。一番印象に残ったのは、以下の部分でした。
<店舗も同じことが言えます。ニトリHDでは営業利益率が5%を下回ると閉鎖の対象になります。というのも老朽化した店では、ライバル店が来るとあっという間に顧客を奪われてしまうからです。このため先回りして悪い店は閉め、顧客が集まりそうな所に新たな店を作ります。
当社の店舗の平均年齢は6歳です。(中略)若さを維持するのは大変ですが(笑)、やはり先手を打ってスクラップ・アンド・ビルドを進め、遅くとも店舗平均年齢は10歳以内に抑えなければなりません>
これ、たぶん利益が出ているうちに閉めてしまうってことでしょうね。本当早いです。ニトリはどっちかと言うと試行錯誤を繰り返して、多少失敗しても踏ん張りつつやってきたイメージでした。ただ、見切りの早いところ、切り替えの早いところがあるようです。
●ニトリが学ぶべきというチェーンストアの失敗企業が全然似てない…
2023/08/03まとめ:グーグルやアマゾンによる既存サービスの破壊…という別のテーマのところで書いたニトリの出てくる話があったので、こちらにも転載しておきます。
ニトリの話をよく書いているので、
ニトリや無印良品も学ぶべき? 米高収益チェーンストアの末路:日経ビジネス電子版(2021.11.22 後藤 文俊 流通コンサルタント)という記事が気になってブックマークしていました。ただ、本文では、全然ニトリや無印良品は出てきていません。最後にちょこっと以下のように出ていただけ。内容的にはうちだとアマゾンの投稿に近いと思ってここに追記しました。
<雑貨店「無印良品」を運営する良品計画の米子会社「ムジUSA(MUJI U.S.A.)」(2006年に米国事業へ進出)は2020年7月、連邦破産法11条を申請し、店数を大幅に縮小しています。
2012年に米国へ進出したニトリUSA(Nitori USA,Inc.)の「アキホーム(Aki-Home)」も低迷が続き、ピーク時は6店舗でしたが現在は2店舗のみです。
日本では「ユニクロ」のファーストリテイリングが上場以来高値をつけて話題になっていましたが、米国ではまだ利益が出ていません>
詳しい内容については今度追記しますが、記事を読んでいて全体に違和感あったのは、記事の説明を読む限り、失敗例の企業が全然ニトリと似ていないこと。さらに、上記引用の最後の部分でも気になる点が…。ニトリのアメリカ撤退最大の理由は、トランプ大統領による中国への異常すぎる高い関税だったんですよ。チェーン店理論の問題ではなさそうなのです。
ニトリやユニクロや無印良品の場合は小売業ではなく製造小売業。製造業色が強いことも特徴であり、ここにも大きな違いがあります。また、その後、アメリカのユニクロは黒字転換。さらに、そもそもこのユニクロは失敗例と順番が逆。アメリカのユニクロは大成功だったのに失敗に転換という例ではなく、最初が失敗という例です。
このユニクロにしてもニトリにしても、最初はうまく行っていなくてもとりあえずチャレンジして続けて、なんとか成功に持って行こう…という企業なんですよね。ユニクロは他の国でもど派手に失敗しています。記事のメインでは、アメリカで大成功して拡大したのに破綻…というパターンであり、つくづく似ていないと感じました。
●店舗を増やすほどコストダウンで儲かる法則…アマゾンの出現で崩壊
さて、記事の中身の話です。流通先進国である米国で、数々の成功・失敗事例を参考に、流通企業などにコンサルティングを提供しているという作者が、ニトリも学ぶべきという失敗例として挙げていたのは、米ベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)でした。経営トップの成功体験が変化を遅らせたといいます。
ベッド・バス&ビヨンド社はリネン(寝具)からキッチン、浴室回りなどの洗練されたホームファッションをEDLP(エブリ・デー・ロー・プライス)で提供。かつては40%以上の粗利益率を誇り、米フォーチュンの「急成長企業500社ランキング」に入ったこともある、超がつく優良小売業だったそうです。
ベッド・バス&ビヨンドを日本からも多くの視察が訪れるほどの 優良企業に育てたのは、スティーブ・テマレス(Steven Temares)さんだとのこと。創業者ではないようで、たたき上げから頭角を現して2003年にCEO(最高経営責任者)に就任との説明。企業買収を繰り返し、CEO就任時に490店だった店舗数は2018年には1500店以上と、3倍に増やしました。
作者は彼を「チェーンストア理論の推進者」と説明。このチェーンストア理論は、「本部に権限を集約し、標準化された均一な質のサービスを多店舗で展開するための方法論」との説明。多店舗展開による大量販売に裏付けされたバイイングパワーで、本社(本部)はスケールメリットを生かしたコストダウン効果を得られます。
買収を繰り返したのは、このスケールメリットを生かしたコストダウン効果を期待したもの。ただし、米アマゾン・ドット・コムなどのネット企業の台頭で、状況が一変します。人々がそもそもリアルで買わずにネットで買うようになってしまったために、成功の方程式が根本から崩れました。これが私がアマゾン関係のページに追記した理由です。
ベッド・バス&ビヨンドはこれに対して、20%オフクーポンを使った販促などを実施。ただ、ブランドイメージの毀損につながり、利益が回復するどころか、底なし沼のように下落し続けたとの説明。もともと安売り企業であれば、そこまでブランドイメージの毀損はないような気がするのですが、そういった説明でした。
●ニトリも実はネット移行推進中、最大の成功例はやはりヨドバシ?
前回書いたように、ベッド・バス&ビヨンドの崩壊は、アマゾンのような全く別ジャンルの脅威によるもの。これ自体はニトリなどの他のチェーンストアも注意すべきものなのですが、作者の「チェーンストア理論の限界。ニトリなどのチェーンストアも学ぶべき」といったまとめ方は違和感がありました。
この違和感については、前々回も書いています。これは、アメリカで苦戦しているとして名前を出されたニトリやユニクロとベッド・バス&ビヨンドが全然似ていないためでした。似ていないところは他にもあり、これらの企業はアメリカだと大量の店舗を有していたわけじゃないんですよね。日本国内での指摘ならまだマシだったんですけど…。
とりあえず、一般論でネットの脅威を言うのでしたら理解できた内容。ニトリなんかはおそらく危機感も持っているでしょう。以前、紹介した記事によれば、ニトリは2017年にショールーミング専用店舗を作りましたし、当時の記事の時点で「ネットで注文し、店舗での受取り」のパターンをすでに約16万件まで増やしていました。
これにより、ニトリがすでに安泰となったとは私も考えておらず、飽くまで危機感を持っているだろう…といった感じ。日本企業でのリアルからネットへの転換で、成功モデルとして良さそうなのはヨドバシカメラですかね。ヨドバシカメラの場合はそれこそアマゾン対抗などともてはやされれたことがあり、学ぶべき点は多いと思われます。
(ニトリのショールーミング専用店舗のやり方は、ちょっとヨドバシカメラと似たところを感じましたし、すでに参考にしているのかもしれません)
運は創るもの 似鳥 昭雄 (著)

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