●配達エリア制限と配送無料制限をお客様目線で考えた結果…
2014/2/24:
価格で勝つか、付加価値で勝つかどちらかしかない カクヤスの選択でカクヤスが「価格」路線を捨てて、「付加価値」路線へ移ったという話を書きました。また、店舗で売るという路線も大手スーパーなどに敵わないと見て見限っています。そこで辿り着いた答えが、「宅配」のカクヤスです。
ただ、「宅配」自体も大手スーパーの進出は可能。カクヤスだからできるというものではありません。そこで佐藤社長が考えたのが配達エリアの撤廃です。「宅配」について考え直してみると、この配達エリアの縛りが不便だと感じたためです。
(
規制緩和が価格戦略からの脱却を後押し:日経ビジネスオンラインより)
同時に配送無料となる量(個数、ロット)の制限もなしとしました。やはり不便だからです。さらに届け出時間も短い方がいいということで、こちらも短時間を目指しました。こういうところがまさに「付加価値」といったところですね。本当のお客様目線です。アマゾンのジェフ・ベゾスさんのことも思い出しました。
アマゾンの場合は価格勝負と付加価値の両取りという無茶な感じで、より価格嗜好が強いでしょうか。ただ、ジェフ・ベゾスさんの徹底して顧客が便利なようにという原点は、同じようなものを感じます。ベゾスさんは非常に考えの極端な人で、平気で赤字になる価格設定や条件で売り出して、後から黒字にすればいいと考えるようです。
●『東京23区どこでも』を実現するには137店舗も必要…どうする?
話がそれていきそうですね。カクヤスの話に戻ります。先程の条件のうち、まず配達エリアの縛りについて。
Wikipediaには、"東京都全域と神奈川県・大阪府の一部の地域で無料配送しているのが特徴"としているのでもう少し広いのでしょうが、当時まずカクヤスが目指したのは『東京23区どこでも』というものです。
前述したものの中で問題となるのは、配送時間。当時の1.2キロという商圏は2時間以内だったそうで、これをベースに考えて計算すると、137店舗も必要という数字が出てきてしまいました。それでも、佐藤社長は137店なら「できるかもしれないぞと思ってしまった」といいます。
この感覚がさすがという感じですね。普通はダメだと思います。で、これにチャレンジして大成功…という話だと思ったら、てんでダメだったみたいなんですよ。"118店まで達したところで、東京23区をすべて商圏とすること"は達成しました。"夢の島や羽田空港、それから皇居も商圏でなくていいと判断し"て店舗を減らしたというのもありますが、どうにかできました。しかし、一番が肝心なところが駄目でした。売れなかったのです。
前述のように今は"東京都全域と神奈川県・大阪府の一部の地域"とありますが、このやり方は人口密度が高い地域でないと無理でしょう。しかし、東京23区という日本で最も人口密度の高いところでもダメだったのです。"さすがに本当に会社は持たないなと思うように"なったそうです。
●殿様商売をやっていた業務用の酒販店からカクヤスに飲食店が乗り換え
ところが、もう1回転機が訪れます。この記事は、
一般家庭から飲食店へ…「転機」は自分の都合を捨てた時に訪れる:日経ビジネスオンラインというタイトルでした。"営業の若い子が「社長、どうして一般家庭だけに行くんですか」"と言ったそうです。カクヤスになる前のお店(2つ前?)はもともと業務向けに売っていたのに、家庭向けに切り替えてからは業務向けの販売はしていなかったのです。
営業の若い彼は「お酒を出す飲食店がいくらでもある。それも、一般家庭よりもはるかにたくさんの量を消費する。だから、そこへ営業をしましょう」と主張。当時の業務用の酒販店さんの注文の締め切りは前日の夜。注文忘れをした場合、近所の酒屋で定価でビールを買って、それを店で出すしかなかったそうです。
しかし、カクヤスなら2時間で届きます。そこで「注文忘れで困ったとき、酒販店さんが休みのときに使ってください」と営業してみました。ところが、お店やさんは「注文忘れで困ったとき」だけでなく、普段からカクヤスを使うようになりました。サービス悪いお店をわざわざ使う必要はありませんものね。
ただし、かつてのお店がやっていたような前日注文は来ません。当日に注文しても2時間以内に届くと分かると、飲食店さんは前日に注文しなくなりました。お店の在庫も減らせますし、いつ来るか分からないルート営業に対して、注文すればジャストインタイムで来るんで楽。つまり、今までのやり方は、顧客本位ではなかったんでしょうね。
こうして業務用もやるようになってから、途端に売れるようになりました。やっと成功です。"全国平均では25%から30%が外飲み"なのに、"東京23区だけは、51%が外飲み"という事情もあるようです。さっき私が言った人口密度だけではわからない話でしたね。逆に言うとその不利な中で「なぜ家庭向けだけにしていたの?」という話ですが、佐藤社長は「余裕がなかったから思いつかなかった」といったことを書いていました。
●できない理由を探すか、できる理由を探すか?カクヤスは社員もすごい
別の記事(
甘んじるな! 本当の強みとは「次に生み出される強み」だ)では、"組織風土のマネジメント"も大切にしていると佐藤社長はおっしゃっていました。ここらへんの社員の前向きさはこの風土のおかげかもしれません。
多くの人は困難に直面したときに、どうすれば打開できるか?とあまり考えません。できない理由を一生懸命考えて、「社長、それ無理です」と言う方が得意です。でも、カクヤスの場合は上記の逸話以外にも、以前の
「カクヤスを潰す会」発足のときにも、若い社員が「大丈夫です」って言っていました。前向きです。
また、
甘んじるな! 本当の強みとは「次に生み出される強み」だであった、配達時間を2時間から1時間にできないか?と聞いたときの逸話もそうでした。2時間でも結構キツかったらしいので普通はできない理由を並べて社長を説得しようとするものですが、逆にピザ屋がもっと早いのに酒が2時間で良いわけがないと言われたそうです。社員もすごい会社ですわ。
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