どこに追加するか迷った、"実は勝てるとは限らない特許侵害訴訟、勝訴率はわずか2割"(2017/03/12)という話。特許関係ということで、地味すぎて読まれていなかった"特許出願(申請)における先願主義と先発明主義と先「発表」主義"(2014/2/27)に加えました。最初に新しい話を入れています。
●実は勝てるとは限らない特許侵害訴訟、勝訴率はわずか2割
2017/03/12追記:別件で検索して驚いたのが、この特許侵害訴訟の勝率に関する話。弁護士事務所のサイトで、特許侵害らしきものを見つけた際にただちに警告状を出すべきではないですよ、と説明する中で、勝訴率の話があったのです。
2001~2007年の特許庁調べのデータを元に、判決件数と、一部勝訴を含む権利者勝訴件数を調べて、勝訴率を出してみると、大体2割程度になるというのです。
(
警告状を出すべきか出さざるべきか | 知財弁護士.COM 内田・鮫島法律事務所より)
調査した最新年2007年とその前の2006年はやや特殊で30%、13%と極端でした。ただ、これも2年合わせれば2割程度です。
モデルケースとして良さそうのは、その前の2005年ですね。この年は、63件の判決が出て、勝訴は11件。勝訴率は17%であり、ほぼ2割。他の4年も15~22%で、2割前後でした。
一部勝訴を含んでこの数字というのは衝撃的です。実際には判決前に和解に至ったなど、勝訴に近いケースもあるのかもしれないと思うものの、やはり意外な数字だと思います。なかなか特許侵害を認めさせるのは難しいのかもしれません。
●中身がなくても特許を出せば勝ちなのか?
2014/2/27:ここから最初の投稿。この投稿は、もともとは小保方晴子さんがネイチャーで発表したSTAP細胞論文で追試が成功しないのは、方法論が詳細に書かれていないからという話から調べ始めたものでした。
そういう風に詳細を隠すことがアリなのかどうかはよくわからないので私は断定しませんが、科学で言うのなら、原則的にはきちんと実験手法を記載していない論文、他の人が追試して再現性を得られない論文に価値はありません。
また、小保方晴子さんの例はそうではないにしても、成功していないのに結論だけ言っておいて手法は適当、後で誰かが本当に成功したら「それ、先に言ったので私のもの」とされるケースが出かねない考え方とも思います。
小保方晴子STAP問題で浮上 単純ミスで結論OKなら論文は問題なし?で書いたように、競争原理からするとまじめに実験する研究者が馬鹿を見るということになりかねません。
科学も分野によっては先見性を示すだけで価値を認められるのかも知れませんが、何か腑に落ちませんでした。
●STAP細胞の追試がうまくいかないのは特許のせい?
とりあえず、そのSTAP細胞論文に関する話。
STAP細胞の論文に「酷似した2枚の画像が使われている」との指摘、著者側は「単純ミス」を説明 | スラッシュドット・ジャパン サイエンス
追試がまだなのは特許問題が原因? by Anonymous Coward on 2014年02月20日 14時11分 (#2548415)
追試にの件でちょっとググって見ましたが、追試が成功しないのは、特許がまだ認められていないので、何かノウハウを隠しているのではないかという分析がされていました。
理論自体は単純でも、成功させるには実は(わかってしまえば単純な)コツがあり、そういうものが秘匿されているのではないかと。
Re:追試がまだなのは特許問題が原因? by saitoh (10803) on 2014年02月20日 16時16分 (#2548511)
特許は成立した時点ではなく申請した時点で「先願」が成立する(もちろん、審査請求して不成立ならチャラ)ので、「特許がまだ成立してないから」ってのはちょっと筋が通らないような。
うーん、たとえ方法論をわざと不十分にしていろいろと隠していたとしても、特許とは直接関係ない気がします。私は科学論文で手法を隠すこと自体が腑に落ちないんですけどね。
●特許出願(申請)における先願主義と先発明主義
上で出ていたのは先願主義というものでしょう。ここらへんについて検索。
先願主義(せんがんしゅぎ)とは、最初に特許出願を行った者に特許権を与える制度。例えば、同じ発明をした者が二人いた場合、どちらが先に発明をしたかにかかわらず、先に特許庁に出願した者(出願日が早いほう)が特許を受ける権利を有する。これに対して、先に発明した者が特許を受ける権利を有することを先発明主義という。
現在では米国以外のほとんどの国で、先願主義が採用されている。また米国においても2006年、国際会議において先願主義の採用に同意しており、米国特許法改正が2012年から段階的に開始され、2013年3月16日には移行が行われる 。(特許、先発明主義、米国の特許制度参照)。
先発明主義と比較すると、先願主義では出願状況を見ることによって他者によって発明されているかどうか知ることができ、二重投資を避けることができるという長所がある。
Wikipedia
"米国特許法改正が2012年から段階的に開始され、2013年3月16日には移行が行われる"とありますが、実は他国の先願主義とはかなり異なるようです。これについては後述します。
ここでは先にそのアメリカがつい最近まで採用していた先発明主義について。
先発明主義(せんはつめいしゅぎ)とは、最初に発明をした発明者に特許権を与える制度。例えば、同じ発明をした者が二人いた場合、出願日にかかわらず、先に発明した者が特許を受ける権利を有する。
Wikipedia
長所
発明が出願に値するか否か見極めてから出願することができ、無意味な出願が減ること
発明者保護の効果は強いとされている
短所
発明日を立証するためには常にラボノートなどを付けておく必要があり研究者の負担が大きいこと
権利成立後に新たな発明者が現れ事後的に権利が不安定になる場合があること
先に発明した者を特定する手続(インターフェアレンス)が煩雑であること
●アメリカはまだ先願主義じゃない?先「発表」主義ともいうべきか
アメリカというのは不思議な国で、世界一の大国でありながら、何でそんな遅れたことを?と思うことをたまにやっています。先発明主義から先願主義への転換というのもアメリカが世界で一番遅かったそうです。そして、先願主義に転換したはずの新しい特許法というものも、前述の通りきっちりした先願主義になっていないんですね。
難しくてよくわからないところもあるのですが、下記によれば、改革への抵抗勢力のせいで中途半端で複雑なことになったみたいです。
第66回「新米国特許法は純粋な先願主義ではない」 日米特許最前線
6年前に最初の先願主義の改正案が発表された時、米国大学は「我々は学会で新しいアイディアをすぐ発表してから特許出願するから純粋な先願主義は受け入れられない。先発明主義では発明して発表したら必ず特許が取れたので、先願主義でも同じように発表しても特許が取れるような特許制度にしろ」と要求して先願主義が変形されたのである。
変形点は、もし発明者が発明を発表して(世界のどこでもよい)1年以内に出願したら、自分の発表は自分の出願の先行技術にならないだけでなく(標準的グレース期間であり、世界の国々はほとんど6ヶ月のグレース期間を設けている)、その後に第3者が同じ発明を発表しても、米国出願をしても、先に発表した者に特許が得られるようにするという先発表主義の改正点が入ったのである(こういう絶対的グレース期間を用いている国は他にない)。
米国企業は先発表主義を入れると発表合戦になり、他社にすぐにまねされるからと大反対したが、米国では特許制度については学会の方が発言力、政治力がはるかに強いので押し切られたいう背景がある。
先に発表すれば、特許が取れる事(絶対グレース期間)は、結局米国は先発明主義の亡霊から抜け切れないのである。
http://dndi.jp/08-hattori/hattori_66.php
元サイトはちょっと長い文章ですが、この先「発表」主義のメリット、デメリットなど、他にもいろいろ書かれていますので、ご興味ある方はどうぞ。
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